発展途上国一覧アジア|通関業務で知るべき特恵対象国基準

アジアの発展途上国一覧と通関業務における特恵関税制度の適用条件を解説。中国やタイなど主要国の卒業状況、原産地証明書の取扱いなど実務に直結する情報をまとめました。あなたの通関業務は大丈夫ですか?

発展途上国一覧アジア

中国からの輸入品は特恵関税の対象外です。

この記事の3つのポイント
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アジアの発展途上国

アジア地域には東南アジアや南アジアを中心に約40カ国の発展途上国が存在し、通関業務で特恵関税の対象となる国が含まれる

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特恵関税制度の卒業

中国は2019年に特恵関税から全面卒業し、タイやマレーシアなども経済発展により卒業済み。通関業務では最新の対象国リストの確認が必須

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通関実務での注意点

特恵関税適用には原産地証明書の提出が必須。卒業国からの輸入では一般税率またはEPA税率が適用されるため関税額が変動する

発展途上国の定義とアジア地域の対象国


発展途上国とは、経済発展や開発が遅れ、経済成長の途上にある国のことです。開発途上国や途上国とも呼ばれます。
参考)発展途上国とはどこの国?定義や先進国の違いは何か

定義の基準は複数あります。世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々が該当し、2016年時点では一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々です。国連では後発開発途上国として、一人当たりGNI、人的資源指数(HAI)、経済脆弱性指数(EVI)によって判断されます。
参考)第5回 発展途上国と先進国を分ける基準って何ですか?《おしえ…


アジア地域の発展途上国は東アジア・太平洋と南アジアに大別されます。東アジア・太平洋には、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム、東ティモールなどが含まれます。南アジアには、アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカが該当します。
参考)発展途上国とは?先進国は何か国ある?一覧で紹介!ランキングと…


中国は統計上は発展途上国に分類されていましたが、経済発展により特恵関税制度からは卒業しています。これは通関業務において重要な変更点です。

発展途上国向け特恵関税制度の基本

特恵関税制度とは、開発途上国の輸出所得増大と経済発展促進のため、一般の関税率よりも低い税率を適用する制度です。一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)として先進国が導入しています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/t_kanzei/

制度の受益国は政令で指定されています。経済が開発途上にあり、固有の関税及び貿易制度を有し、特別の便益を受けることを希望する国が対象です。つまり自動的に対象となるわけではありません。​
日本の制度には2つのレベルがあります。一般特恵関税制度では一定の農水産品や鉱工業産品に対し低い税率が適用されます。特別特恵関税制度では後発開発途上国(LDC)47ヶ国・地域の原産品に対し原則無税となります。​
通関業務では、輸入申告時に特恵原産地証明書の提出が原則として必要です。証明書がない場合は一般税率が適用されるため、関税額が大きく変わります。例えば特恵税率が無税でも一般税率では10%以上になる品目も存在します。​

アジア主要国の特恵関税卒業状況

経済発展した国は特恵関税の対象から除外されます。除外には「全面卒業」と「部分卒業」があります。​
全面卒業の基準は明確です。3年連続して世界銀行統計の「高所得国」に該当した国が対象となります。高所得国の基準は2015年時点で1人当たりGNIが12,476ドル以上でした。ただし後発開発途上国(LDC)は卒業の対象から除外されます。​
アジア主要国の卒業時期は以下の通りです。2019年4月1日にタイ、中国(香港・マカオを除く)、ブラジルが全面卒業しました。メキシコ、マレーシアも同様に卒業済みです。これらの国からの輸入品には特恵税率が適用されません。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/tokkeikanzei/graduate.htm


卒業後の代替措置も存在します。メキシコ、マレーシア、タイは日本と経済連携協定(EPA)を締結しており、EPA税率が適用されるため影響は限定的です。しかし中国はEPAを締結していないため、一般税率が適用されます。輸入コストが上昇する品目が多数あります。
参考)知っておきたい特恵関税制度と特恵卒業

通関業務では最新の対象国リストの確認が不可欠です。卒業予定国の情報は税関のウェブサイトで公開されており、年度更新のタイミングでチェックすべきです。

通関業務における特恵関税適用の実務

特恵関税を適用するには原産地証明書が必須です。この証明書は特恵受益国等を原産地とする物品であることを証明するもので、輸入申告の際に提出します。​
原産地規則の確認が重要です。単に発展途上国で製造されただけでは適用されません。実質的な変更が加えられたか、付加価値基準を満たしているかを確認する必要があります。例えば中国で最終組立のみ行われた製品は、部品の原産国によって判断が変わります。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/manual/pdf/favorable_tariff_201607.pdf

HSコードの特定も欠かせません。各国の関税や特恵関税の原産地規則はHSコードごとに規定されています。対象輸入品のHSコードの特定は輸入国税関が輸入者の情報をもとに行いますが、事前に正確なHSコードを把握しておくべきです。​
卒業国からの輸入には別の対応が必要です。特恵関税が使えない場合、EPA税率の適用可能性を検討します。EPA締結国であれば、EPA原産地証明書を取得することで低い税率が適用されます。EPA未締結国の場合は一般税率となり、関税額が大幅に上がる可能性があります。
特恵関税マニュアルを参照すると詳細が分かります。税関が公開している「一般特恵関税マニュアル」には、適用除外措置の条件や手続きが記載されています。通関業務に携わる方は定期的に最新版を確認することをおすすめします。​
税関「一般特恵関税マニュアル」では特恵関税の適用条件と除外措置の詳細が解説されています

後発開発途上国(LDC)の特別扱いと通関での注意点

後発開発途上国は特別な優遇を受けます。LDCは国連が定めた基準に基づいて認定され、特別特恵関税制度の対象です。​
アジアのLDCは限定的です。2024年時点でアジアには8カ国のLDCがあります。アフガニスタン、バングラデシュ、カンボジア、ネパール、東ティモール、ミャンマー、ラオスが該当します。ブータンは2026年に卒業予定です。これらの国からの輸入品はほぼ全ての品目で無税となります。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ohrlls/ldc_teigi.html


LDC認定の基準は3つです。一人あたりGNI(3年間平均)が1,088米ドル以下であること。人的資源指数(HAI)が60以下であること。経済脆弱性指数(EVI)が所定値を満たすこと。これらすべてを満たし、当該国の同意が前提となります。​
通関実務でのメリットは大きいです。LDC原産品は原則無税のため、関税計算が簡素化されます。ただし原産地証明書の提出は必須で、LDC原産であることの証明が求められます。偽造や不正申告を防ぐため、証明書の真正性確認が厳格に行われます。
3年に一度リストが見直されます。卒業予定国の情報は外務省のウェブサイトで公開されており、通関業務では卒業時期を事前に把握しておく必要があります。卒業後は一般特恵または一般税率が適用されるため、関税コストが変動します。​
外務省「後発開発途上国(LDC)」ページでは最新のLDCリストと卒業予定国が確認できます




応用情報社会学 発展途上国における 情報社会構築の指南書