ghs分類の区分一覧と通関実務での活用ポイント

GHS分類の区分一覧を通関実務の視点から解説。危険有害性クラスとUN番号の対応関係や、SDSの確認ポイントを押さえることで、危険品申告ミスを防ぐことができるのでしょうか?

GHS分類の区分一覧と通関実務で押さえるべき基本知識

GHS分類のSDSを確認すれば危険品かどうか一発でわかる、と思っていませんか。


この記事の3つのポイント
📋
GHS分類の区分一覧を把握する

物理化学的危険性・健康有害性・環境有害性の3カテゴリ・全クラスの区分を一覧で整理します。

🚢
GHS区分とUN番号(TDG)の対応を理解する

GHS区分がそのままUN番号に対応するわけではありません。引火性液体区分4のように「非危険物」扱いになる例外が存在します。

⚠️
SDSのどこを確認すべきか

通関業者がSDSを読む際に必ずチェックすべき項目と、2025年末のJIS改正による変更点を解説します。


GHS分類とは何か:通関業者が知っておくべき基本の「き」

GHSは「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」の略称で、国連が2003年に勧告として採択した国際基準です。日本では、この内容をJIS Z 7252(分類方法)とJIS Z 7253(情報伝達方法)に落とし込んで運用しています。


通関業務においてGHS分類が重要なのは、化学品を輸出入する際の「危険品かどうかの判定」に直結するからです。通関申告書を作成する場面では、SDS(安全データシート)の第14項「輸送上の注意」にUN番号が記載されているかどうかを確認します。つまり、GHS分類の区分を理解していないと、SDSの内容を正しく読み取れません。


重要なのは、GHSは「ラベルとSDSを世界共通にするための基準」であって、「どの化学品が危険物か」を国際輸送規制(TDG)と一対一で決めているわけではないという点です。つまり、GHS分類の区分がわかれば自動的にUN番号が決まる、というわけではありません。ここが多くの実務者が見落としがちなポイントです。


なお、2025年12月末にJIS Z 7252およびJIS Z 7253が改正されています。改正では国連GHS文書の改訂9版が反映され、「爆発物」の区分体系が大幅に変わり、「加圧下化学品」という新クラスも追加されました。2026年以降に入手するSDSでは、新しい区分表記が使われている場合があります。確認が必要です。


参考:GHS区分一覧(危険有害性情報早見表)を確認したい場合は厚生労働省の職場のあんぜんサイトに掲載されています。


厚生労働省 職場のあんぜんサイト:危険有害性、区分、シンボル、注意喚起語早見表


GHS分類の区分一覧:物理化学的危険性クラスと危険品輸送(TDG)との対応

GHS分類は「物理化学的危険性」「健康に対する有害性」「環境に対する有害性」の3カテゴリに大別されます。通関業務で特に重要なのは物理化学的危険性クラスです。なぜなら、UN番号(国連危険物番号)の付与に直接関係するからです。


以下に、主要な物理化学的危険性クラスとGHS区分、そしてTDG(国連危険物輸送勧告)との対応をまとめます。


GHS危険有害性クラス GHS区分 TDGクラス / 容器等級
爆発物(旧:不安定爆発物) 区分1.1〜1.6(新:区分1, 2A, 2B, 2C) クラス1(1.1〜1.6)
可燃性ガス 区分1A / 1B クラス2.1
可燃性ガス 区分2 ⚠️ 非危険物(UN番号なし)
引火性液体 区分1 クラス3 容器等級Ⅰ
引火性液体 区分2 クラス3 容器等級Ⅱ
引火性液体 区分3 クラス3 容器等級Ⅲ
引火性液体 区分4 ⚠️ 非危険物(UN番号なし)
可燃性固体 区分1 クラス4.1 容器等級Ⅱ
可燃性固体 区分2 クラス4.1 容器等級Ⅲ
自己反応性化学品 タイプA ⚠️ 輸送禁止
自己反応性化学品 タイプB〜F クラス4.1(UN番号個別指定)
自己反応性化学品 タイプG ⚠️ 非危険物(UN番号なし)
自然発火性液体・固体 区分1 クラス4.2 容器等級Ⅰ
自己発熱性化学品 区分1 クラス4.2 容器等級Ⅱ
自己発熱性化学品 区分2 クラス4.2 容器等級Ⅲ
水反応可燃性化学品 区分1〜3 クラス4.3 容器等級Ⅰ〜Ⅲ
酸化性液体・固体 区分1〜3 クラス5.1 容器等級Ⅰ〜Ⅲ
有機過酸化物 タイプA ⚠️ 輸送禁止
有機過酸化物 タイプB〜F クラス5.2(UN番号個別指定)
有機過酸化物 タイプG ⚠️ 非危険物(UN番号なし)


上の表でわかるように、GHS区分が「危険」に分類されていても、TDGでは非危険物になるケースが複数存在します。引火性液体の区分4がその典型例です。引火点が60℃超93℃以下の液体(例:潤滑油の一部)がここに該当し、GHSラベルでは「可燃性液体」と表示されますが、国際輸送ではUN番号が付与されず、危険品申告が不要になります。


逆に、GHS区分が低くても容器等級Ⅰが付く物質は梱包規格が非常に厳しくなります。通関実務では「区分が低い=取り扱いが楽」という先入観を持たないことが重要です。区分と容器等級は別の概念です。


参考:GHS分類とTDGの詳細な対比表は労働安全衛生総合研究所が公開しています。


労働安全衛生総合研究所:国連危険物輸送勧告(TDG)とGHSの対比


GHS分類の区分一覧:健康有害性・環境有害性クラスと通関申告への影響

健康に対する有害性クラスには、急性毒性・皮膚腐食性・眼損傷性・発がん性・生殖毒性など11種類のクラスが存在します。各クラスの区分は数字やアルファベットで細分化されており、一部のクラスは1Aと1Bに分かれているのが特徴です。


以下に健康有害性・環境有害性の主要区分をまとめます。


GHS危険有害性クラス 区分の範囲 注意喚起語
急性毒性(経口・経皮・吸入) 区分1〜5 区分1〜3:危険 / 区分4〜5:警告
皮膚腐食性・刺激性 1A / 1B / 1C / 2 / 3 区分1A〜1C:危険 / 区分2〜3:警告
眼に対する重篤な損傷・眼刺激性 1 / 2A / 2B 区分1:危険 / 区分2A〜2B:警告
呼吸器感作性・皮膚感作性 1A / 1B 呼吸器:危険 / 皮膚:警告
生殖細胞変異原性 1A / 1B / 2 区分1A〜1B:危険 / 区分2:警告
発がん性 1A / 1B / 2 区分1A〜1B:危険 / 区分2:警告
生殖毒性 1A / 1B / 2 +授乳区分 区分1A〜1B:危険 / 区分2:警告
特定標的臓器毒性(単回ばく露) 区分1〜3 区分1〜2:危険または警告 / 区分3:警告
特定標的臓器毒性(反復ばく露) 区分1〜2 区分1:危険 / 区分2:警告
誤えん有害性(吸引性呼吸器有害性) 区分1〜2 区分1:危険 / 区分2:警告
水生環境急性有害性 区分1〜3 区分1:警告 / 区分2〜3:表示なし
水生環境慢性有害性 区分1〜4 区分1〜2:警告 / 区分3〜4:表示なし
オゾン層への有害性 区分1のみ 警告


健康有害性クラスは、通関申告書における「毒物・劇物」や「化審法」「化管法(PRTR法)」の対象品確認とも関連します。たとえば、急性毒性区分1〜3の物質は、毒物及び劇物取締法上の「毒物」または「劇物」と重なるケースが多いため、輸出時に輸出許可が必要かどうかを改めて確認する必要があります。ただし、GHS区分と毒物・劇物の指定は法律が異なるため、完全に一致するわけではありません。GHS区分はあくまで「有害性の目安」として使い、法令確認は別途行う必要があります。


環境有害性に関しては、水生環境急性有害性の区分1だけが絵表示(魚と木のマーク)の対象となり、区分2・3は絵表示なしになります。慢性有害性では区分1・2が絵表示対象です。絵表示がないからといって無害ではないということです。この点を誤解すると、船積み時の環境規制(例:バラスト水管理条約や海洋汚染防止法上の確認)でトラブルが生じることがあります。


参考:発がん性・生殖毒性など健康有害性の詳細分類は、厚生労働省の分類結果をもとに確認できます。


厚生労働省 職場のあんぜんサイト:GHS危険有害性区分・シンボル一覧


通関業者のためのSDS確認ポイント:GHS区分からUN番号を読み解く手順

通関業者がSDSを確認する際、どこを優先的に見ればよいのかを整理します。まず確認すべきはSDS第14項「輸送上の注意」です。ここにUN番号・品名・TDGクラス・容器等級が記載されていれば、その化学品は国際輸送における危険物として扱われます。


ただし、ここで一点注意が必要です。SDSの第14項の記載をそのまま信じ込むのは危険な場合があります。実務では、SDS第2項の「GHS分類結果」と第14項の「輸送情報」が矛盾していることが稀にあります。たとえば、第2項で「引火性液体 区分2(非常に引火性の高い液体)」と記載されているにもかかわらず、第14項に「非危険物」と記載されているケースです。このような場合、GHS分類結果と輸送情報のクロスチェックが欠かせません。


具体的な手順は次のとおりです。


  • 📌 ステップ1:SDS第2項でGHS分類区分を確認する(物理化学的危険性クラスと区分を特定)
  • 📌 ステップ2:上述のGHS区分とTDGの対応表をもとに、UN番号があるかどうかを確認する
  • 📌 ステップ3:SDS第14項の記載内容と照合し、矛盾がないかをクロスチェックする
  • 📌 ステップ4:UN番号がある場合は、IATA DGRまたはIMDG Codeで梱包規格・ラベル要件を確認する


また、英文SDSと日本語SDSでUN番号が異なるケースも報告されています。これはNITE-CHRIPの分類(日本)とEU CLPの分類(欧州)で区分の判定基準が異なることが原因です。輸入品のSDSを英文で受け取った場合は、日本の法規制で改めて確認することが原則です。


SDS自体は荷主(メーカー)が作成するものですが、通関業者もGHS分類の基礎知識を持つことで、明らかな誤記や区分の矛盾に気づくことができます。これがトラブル防止の大きな武器になります。


参考:SDS第14項の国連番号の確認方法や英日SDSの相違点については以下の記事が詳しいです。


GHS Assistant:SDSの国連番号はなぜ変わるのか(英文SDSと日本語SDSの違い)


GHS分類の2025年JIS改正で変わった区分:通関実務への影響を独自視点で解説

2025年12月末に改正されたJIS Z 7252は、2026年以降の通関業務に直接影響を与えます。この改正は単なる細かな修正ではなく、爆発物の区分体系が根本から変更された大改正です。対応が遅れると、誤った区分でSDSが作成・受け取られるリスクが高まります。


改正の主要ポイントは以下の3点です。


  • 💥 爆発物の区分変更:旧来の「等級1.1〜1.6」という等級表記から、「区分1(大量爆発危険性)・区分2A(激しい飛散危険性)・区分2B(火災/爆風危険性)・区分2C(火災または飛散危険性のみ)」という新しい体系に移行しました。
  • ⚗️ 「加圧下化学品」の新設:旧「高圧ガス」の区分に代わり、「加圧下化学品(区分1〜3)」という新クラスが追加されました。
  • 🔬 感作性の区分の整備:呼吸器感作性および皮膚感作性の区分に1A・1Bのサブ区分が追加されました。


通関業務への影響として特に注意が必要なのは爆発物の区分変更です。旧体系では「等級1.4」と記載されていたものが、新体系では「区分2C」に相当します。荷主から受け取るSDSが旧体系で作成されている場合と、新体系で作成されている場合が混在する過渡期が当面続くと考えられます。SDSの作成日や改訂日を確認することが重要です。


また、「加圧下化学品」の追加により、スプレー缶類(エアゾール)のGHS分類表記が変わる可能性があります。エアゾール製品の輸出入を取り扱う場合は、荷主に最新SDSの提出を求めることを徹底してください。2025年末以降に発行されたSDSかどうかが判断の基準です。


GHS区分の変化は、IATA DGRやIMDG Codeとの対応関係にも影響を及ぼします。改正内容の詳細と新旧区分の対照表は、NITEや経済産業省の資料で確認できます。


参考:2025年JIS改正の詳細および新旧区分一覧は以下のページで確認できます。


スマートSDSジャーナル:【2026年更新】GHSとは?分類方法、区分、絵表示やSDS・ラベルとの関係