NACCS連携していても修正は手動入力です
EDI(Electronic Data Interchange)とは、企業間の取引情報を標準化された形式で電子的にやりとりする仕組みです。通関業務では、輸出入申告書や船積書類、インボイスなどの貿易関連文書を電子化し、システム間で自動処理します。
水産物の貿易では、貨物情報を船会社、フォワーダー、通関業者、税関の間で迅速に共有する必要があります。EDIを利用することで、1回のデータ入力で複数の関係者に情報が伝達され、手作業による転記ミスや処理遅延を防げます。
参考)https://www.customs.go.jp/zeikan/pamphlet/report/pdf/report_005j.pdf
日本の通関業務では、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)が中心的な役割を果たしています。NACCSは2008年に港湾EDIと統合され、輸出入手続きと港湾手続きを一元処理できるようになりました。通関業者はNACCSを通じて税関や他省庁のシステムと連携し、1回の送信で関連するすべての手続きを完了できます。
2022年12月に施行された水産流通適正化法により、特定水産動植物(アワビ、ナマコなど)を扱う事業者には厳格な情報管理が求められています。取扱事業者は取引記録として5項目(取引年月日、取引相手の氏名・住所、水産動植物の名称・数量、漁獲番号または荷口番号)の記録・保存義務があり、違反すると50万円以下の罰金が科されます。
参考)水産流通適正化法とシステム対応|EDIサービス スマクラ
流通BMSなどのEDIシステムでは、既に4項目は標準メッセージで対応済みですが、「漁獲番号または荷口番号」を追加する必要があります。具体的には、出荷メッセージの自由使用欄に漁獲番号をセットすることで、法令要求を満たせます。
EDI取引データは電子帳簿保存法により7年間保存されるため、水産流通適正化法が要求する3年間の保存期間も自動的に満たされます。
つまり法令対応が自動化されるということですね。
水産庁は「漁獲番号等伝達システム」を開発中で、小売業も利用可能になる予定です。
動物検疫所:水産動物輸入時の検疫手続き詳細(到着5日前までの申請要件)
NACCSでEDI申告した後に内容を修正すると、オーロ点数(誤り点数)が加算され、通関業者の評価に影響します。修正の内容と時期により点数が異なり、申請人自身による修正は基準点数、税関職員の職権による修正は2倍の点数になります。
参考)https://blog.naver.com/PostView.naver?blogId=bear7519amp;logNo=223271459353
特に重いペナルティとなるのは以下のケースです。蘭(品目行)の追加・削除は輸出18点、輸入22点です。金額・重量・数量の修正で100倍以上の差異がある場合は50点です。選積完了後に取引区分を原状態や契約相違に変更すると100点が加算されます。
成実申告支援システムで予想オーロを通報されたにも関わらず修正しなかった場合、職権修正時の点数は通常の4倍になります。修正により各蘭で発生するオーロ点数には上限があり、輸入は蘭別88点、輸出は蘭別72点を超えません。
通関業務従事者にとって、初回申告の正確性が極めて重要です。EDIシステムとNACCSが連携していても、データの事前チェックと正確な入力が不可欠ということです。
EDIシステムに障害が発生すると、通関業務全体が停止するリスクがあります。システムダウンタイムやデータ不整合が生じると、取引先との連携が滞り、貨物の引き取り遅延や保管料の追加発生につながります。
参考)リーナー購買
水産物は鮮度が命であり、通関遅延は商品価値の直接的な損失を意味します。冷凍コンテナの場合でも、港湾での保管期間が延びればフリータイム超過料金(デマレージ)が発生し、1日あたり数万円の追加コストとなります。
障害対応として、EDIベンダーとのSLA(サービスレベル契約)を確認し、バックアップ手順を整備しておく必要があります。緊急時には紙ベースやFAXでの代替手続きも考慮すべきですが、その場合も後日EDIデータとの整合性確認が必須です。
参考)https://www.eokashi.net/content/files/dl_service/about_sub05_20170526.pdf
また、EDI送信データ作成時にカンマ(,)を項目内で使用すると、受信側で項目ずれが発生する可能性があります。これはWeb-EDIシステムがカンマを区切り文字と判断するためです。
データ作成時の基本ルール遵守が重要ですね。
貿易EDIの将来構想として、初回受注時に商品情報(品名、数量など)をウェブ入力すれば、必要な貿易文書が自動作成され、フォワーダー・保険会社・船会社と情報共有される仕組みが議論されています。これが実現すれば、通関業務従事者の負担は大幅に軽減されます。
参考)貿易業務の電子化、情報共有を実現する「貿易EDI」を知ろう!…
原産地証明書のデータ交換(e-CO)も進展しており、タイとのEPAでは2025年6月から本格運用が開始されました。輸出国政府機関のシステムからNACCSへ直接電子証明書が送信されるため、紙の証明書が不要になります。
参考)https://www.customs.go.jp/roo/procedure/data/news.html
日本水産株式会社の事例では、オンプレミスのEDIサーバからEDIアウトソーシングサービスに切り替えることで、顧客ニーズへの迅速な対応が可能になりました。日配品のような鮮度重視の商品では、受注から出荷までのスピードが競争力を左右します。
参考)日本水産株式会社様/EDIアウトソーシングサービス導入事例|…
通関業務の電子化は今後も加速し、AIによる申告内容チェックや、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ強化なども視野に入っています。通関業務従事者には、システム活用スキルと法令知識の両方が求められる時代です。