反対申込みは契約を失効させる
counter offer(カウンターオファー)とは、貿易取引において相手から提示された申込条件に対して、異なる条件を提示し直す「反対申込み」を意味します。通関業務従事者が輸出入契約を進める際、輸出者からの見積条件に対して価格・納期・数量・支払条件などを変更して返答する行為がこれに該当します。
単なる質問や確認とは異なり、counter offerは法的に重要な意味を持ちます。相手のオファーに対して条件変更を伴う返答をした時点で、元のオファーを拒絶したと見なされるのです。
つまり最初のオファーは失効します。
参考)counteroffer/厳選ビジネス英単語|コピーライツ
これは契約法上の原則です。
実務では、輸入者が「FOB価格を10%下げてほしい」「納期を2週間延ばせないか」といった要求を出すケースが典型的なcounter offerです。この時点で元の取引条件は法的拘束力を失い、新たな交渉が始まることになります。
参考)貿易取引のオファーの働きと種類 - 税金Lab税理士法人
通関業務では書類に残る形でのやり取りが基本なので、FAXやメールで条件変更の記録を残すことが重要です。口頭での合意は後々トラブルの原因になるため、必ず書面で確認しましょう。
counter offerと混同されやすい用語に「buying offer(買いオファー)」があります。buying offerは輸入者側から能動的に購入条件を提示する行為で、最初から買い手が主導する申込みです。一方counter offerは、相手の申込みに対する「返し」として条件を修正する点が決定的に異なります。
firm offer(ファームオファー)も重要な関連用語です。これは承諾回答の期限を明示した確定申込みで、期限内は申込者が撤回も変更もできない拘束力を持ちます。ところがcounter offerが出された瞬間、このfirm offerは期限内であっても即座に失効するのです。
失効が原則です。
revised offer(修正オファー)やmodified offer(変更オファー)という表現も実務では使われますが、これらは基本的にcounter offerと同義です。いずれも元の条件を見直して再提示する行為を指します。
参考)counterofferとは?交渉で使う意味と使い方を徹底解…
注意すべきは、日本法と英米法でfirm offerの扱いが異なる点です。日本の法律では期限内の撤回・変更は禁止されますが、英米法系の国(アメリカ・イギリスなど)ではいつでも撤回可能とされています。相手国の法制度を確認しておかないと、予期せぬ契約解消に直面するリスクがあります。
counter offerを出すと、元のオファーは法的に「拒絶された」と見なされ、その時点で失効します。これはウィーン売買条約第19条でも明文化されている国際的な原則です。承諾を意図する返答であっても、追加・制限・変更が含まれていれば、それは承諾ではなく新たなオファーとして扱われます。
具体例で見てみましょう。輸出者が「単価100ドル、納期3月15日、支払条件L/C」というfirm offerを3月10日を回答期限として提示したとします。輸入者が3月8日に「単価90ドルなら購入する」とcounter offerを出した場合、その瞬間に元のfirm offerは失効します。たとえ期限内であっても、輸入者が後から「やはり100ドルで買います」と言っても、輸出者に応じる義務はありません。
参考)https://ameblo.jp/greenleaf-skyblue/entry-12600828544.html
契約成立には新たな承諾が必要です。
参考)【最適なオファーの提示📃】貿易における勧誘(proposal…
実務では双方がcounter offerを繰り返しながら条件を詰めていくのが一般的です。交渉は「オファー→counter offer→再counter offer→承諾」という流れで進みます。各段階で前のオファーが失効し、新しいオファーが生まれる構造になっています。
有効期限の管理も重要です。firm offerには承諾の「到着期限」が設定されており、発信期限ではないことに注意が必要です。期限までに承諾が相手に届かなければ契約は成立せず、オファーは自動的に失効します。
価格交渉でcounter offerを活用する際は、相手の予算範囲を探りながら段階的に条件を調整するのが効果的です。例えば出品価格100ドルの商品に対して40ドルのオファーが来た場合、いきなり拒否するのではなく、85ドルのcounter offerを提示することで、最終的に80ドルで合意に至る可能性があります。
参考)eBayで価格交渉を成功させる!カウンターオファーの使い方
最低利益を確保しながら柔軟に対応するのが原則です。
交渉記録を書面で残すことは必須です。口約束だけでは後から「言った・言わない」のトラブルになり、最悪の場合は訴訟リスクもあります。FAXやメールで条件変更の履歴を明確にしておけば、万が一の紛争時にも証拠として使えます。
参考)カウンターオファーとは?成功させる手順と人材流出を防ぐ実務ポ…
counter offerを出す際は、変更箇所を具体的に示すことが重要です。「価格を10%下げてほしい」「納期を2週間延ばせないか」「支払条件をT/TからL/Cに変更したい」など、修正内容を明示します。曖昧な表現は誤解を生み、契約不成立の原因になります。
メッセージを添えると親切ですね。商品の状態や条件変更の理由を簡潔に説明すると、相手の理解が得やすくなります。例えば「この商品は新品同様の状態を保証しており、公正な価格での提供を目指しています」といった一文を加えるだけで、交渉の成功率が上がります。
最も危険な失敗は、counter offerを出した後に元の条件に戻ろうとする行為です。前述の通り、counter offerを出した時点で元のオファーは失効しているため、相手に応じる義務はありません。「やはり最初の条件で」と言っても、相手が拒否すれば交渉は終了します。
これは取り返しがつきません。
承諾期限の誤解も頻発するトラブルです。firm offerの期限は「到着期限」であり「発信期限」ではありません。3月10日が期限なら、その日に相手の手元に届く必要があります。9日に発信して11日に到着した場合、期限切れで無効になります。ただし期限日が休日の場合は、次の営業日まで自動延長される規定もあります。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H21-003.pdf
無返答による失効も注意が必要です。オファーに対して何も返答しないまま期限が過ぎれば、自動的に契約は成立しません。「沈黙は承諾」という原則は、契約書に明示されている場合を除き、通常は適用されません。
参考)USCPA 一発合格のためのサブノート REG#14 ~Co…
相手国の法制度を確認しないことも大きなリスクです。日本では期限内のfirm offerは撤回不可ですが、英米法系では撤回可能とされています。相手が英米法系の国の場合、期限内でも一方的に取り消される可能性があるため、契約書で準拠法を明確にしておくべきです。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/69df9d2209fe638c/UKrp_201502.pdf
英国法を準拠法とする契約の注意点(JETRO)
上記リンクでは、英国法における申込と承諾の特殊性が解説されており、国際契約のリスク管理に役立ちます。
実際の貿易取引では、複数回のcounter offerを経て最適な条件に着地させるケースが大半です。輸出者が「単価50ドル、最低発注数量1000個、納期30日」と提示し、輸入者が「単価45ドル、数量500個、納期45日」とcounter offerを返し、最終的に「単価47ドル、数量700個、納期35日」で合意するような流れです。
段階的な譲歩が合意への近道です。
見積書を使った交渉が実務の基本です。まず輸入者が希望価格・数量・納期・引渡場所などを明記して見積依頼を送ります。これが最初のオファーとなり、返ってきた見積書がcounter offerに相当します。この往復を繰り返しながら条件をすり合わせていきます。
参考)オファーを出す、輸入条件について交渉する « J…
eBayのような電子商取引プラットフォームでも、counter offer機能が標準装備されています。セラーが120ドルで出品した商品に65ドルのオファーが来た場合、100ドルのcounter offerを提示し、最終的に妥協点を見つける仕組みです。メッセージで商品の詳細や状態を伝えることで、理解が得られやすくなります。
条件変更の優先順位を決めておくことも重要です。価格・数量・納期・支払条件のうち、どこまで譲歩できるかを事前に整理しておけば、交渉がスムーズに進みます。最低限の利益を確保できる範囲を明確にしておくと、相手の予算に応じた柔軟な提案ができます。
輸入条件の交渉方法(京浜トレーディング)
上記リンクでは、オファーとcounter offerの実務的な使い分けが詳しく解説されており、初めての輸入交渉でも参考になります。