コルレス契約の不備で送金が3週間遅延した事例も
correspondent agreement(コルレス契約)は、銀行が外国の銀行と為替業務を代行してもらうために結ぶ契約です。国際決済では日本銀行のような中央銀行が存在しないため、各銀行が個別に契約を結んで送金や決済の方法を取り決めています。
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この契約では、送金事務、信用状業務、為替手形の取立、決済勘定などの具体的な内容や手順が定められます。契約の相手先銀行は「コルレス銀行」または「コルレス先」と呼ばれます。
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通関業務に携わる方にとって、この契約は単なる銀行間の取り決めではありません。輸出入代金の決済が滞れば、通関手続きや貨物引取に影響が出るためです。
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コルレス契約には、為替取引の基本的な枠組みが記載されます。送金手続きの方法、信用状の授受、決済口座の管理、手数料の配分など、実務上必要な事項を網羅します。
参考)https://www.sigmabase.co.jp/correspondence/sample/BG.pdf
契約締結時には、相手銀行が適切な監督を受けているか、マネーロンダリング対策の体制が整っているかを確認する義務があります。犯罪収益移転防止法では、コルレス先がシェルバンク(実体のない銀行)でないことの確認も求められます。
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つまり契約は単なる事務手順の取り決めではなく、コンプライアンス上の責任も含むものです。
国際送金では、日本の銀行がコルレス銀行を通じて海外の銀行に送金指示を出します。例えば、日本の東銀行がニューヨークのA社に100ドルを送金する場合、ニューヨークにあるコルレス銀行に連絡を取り、東銀行の預金口座から100ドルを引き出してA社の口座に入金するよう依頼します。実際に現金を移動させることなく、口座振替で送金が完了します。
参考)コルレス契約
この仕組みはSWIFTという国際送金ネットワークを利用しており、通常1週間程度で着金します。
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通関業務では、輸入代金の支払いや輸出代金の受取が貨物の引取条件になるケースが多々あります。L/C(信用状)取引では、銀行を介した決済が通関書類の取得に直結します。
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コルレス契約の有無や内容によって、送金のスピードや手数料が変わります。送金に伴う銀行手数料には、電信料、コルレスチャージ、リフティングチャージ、取扱料などがあり、通常は輸出地の費用は輸出者が、輸入地の費用は輸入者が負担します。
コルレス銀行手数料は1,000円から3,000円程度かかることが一般的です。
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売買契約の段階で、銀行手数料の負担者を明確にしておくことが重要です。手数料負担が曖昧だと、通関後に予想外の費用請求を受ける可能性があります。取引条件(インコタームズ)と合わせて、送金費用の負担も書面で確認しておきましょう。
コルレス契約がない銀行同士では、送金に時間がかかるか、そもそも送金できない場合があります。契約の有無を事前に確認せずに取引を進めると、決済段階でトラブルになります。
参考)https://www.khk.co.jp/upfiles/cnv/bookpdf/2346.pdf
マネーロンダリング対策の強化により、コルレス銀行の審査が厳格化しています。コルレス先の顧客基盤、業務内容、テロ資金供与やマネーロンダリングを防止するための体制整備の状況などを定期的に監視することが求められています。
この厳格化の結果、送金が一時的に止まるケースが増えています。
通関業務従事者としては、取引先の銀行に対して「相手国のどの銀行とコルレス契約があるか」を確認する習慣をつけることが有効です。特に新規取引先や取引実績の少ない国への送金では、事前確認が必須です。送金ルートが複雑になると、中継銀行が複数入り、その分手数料も時間もかかります。
コルレス契約の不備や相手銀行の体制不足は、送金遅延の直接的な原因になります。respondent(被仕向銀行)の金融犯罪対策が弱い場合、correspondent(仕向銀行)が取引を停止することもあります。
参考)Correspondent Banking and how …
契約の責任分担が文書化されていないケースでは、送金トラブル時にどちらの銀行が対応すべきか不明確になります。犯罪収益移転防止法では、責任分担を文書化することが推奨されていますが、必ずしも契約書に明記される必要はないとされています。
つまり契約の曖昧さがトラブルの火種です。
決済遅延が発生すると、通関後の貨物が保税地域に留め置かれたり、船積みが遅れたりします。保管料や延滞料が発生すれば、最終的に荷主負担になる可能性が高いです。貿易取引では「お金の流れ」と「物の流れ」を同期させることが基本ですが、コルレス契約の問題はこの同期を崩します。
新規の貿易取引を始める際は、以下の項目を取引銀行に確認しましょう。
これらを売買契約書に反映させることで、後のトラブルを防げます。
信用状取引の場合、発行銀行と通知銀行の間にコルレス契約があることが前提です。契約がない場合でも通知義務を負わないという判断がありますが、受益者(輸出者)の立場を考慮した対応が求められます。
銀行の担当者と定期的にコミュニケーションを取り、最新の契約状況や規制動向を把握しておくと安心です。
マネーロンダリング対策の影響で、送金審査が長引くケースが増えています。特に高額送金や初回取引では、送金目的や取引内容の説明を求められることがあります。通関書類のコピーやインボイスを銀行に提出できるよう、事前に準備しておくとスムーズです。取引の透明性を示す資料があれば、審査期間を短縮できる場合があります。
海外送金サービス会社を利用する選択肢もあります。これらのサービスは世界中に自社口座を持ち、コルレス銀行を介さないため、手数料が安く着金も早い傾向にあります。ただし、サービスによって対応国や手数料体系が異なるため、比較検討が必要です。
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