PSEマークが付いていても、あなたのモバイルバッテリーは発火で100万円の罰金対象になる場合があります。
PSEマークとは、電気用品安全法(通称「電安法」)に基づき、製品が定められた技術基準に適合していることを示す日本独自のマークです。「PSE」は「Product Safety of Electrical Appliance & Materials(電気用品安全)」の略で、消費者が安全に電気製品を使えるよう設けられた制度です。
モバイルバッテリーがPSE規制の対象になったのは、2019年2月1日から。それ以前は規制対象外だったため、品質管理が不十分な海外製品が大量に流通し、発火・爆発事故が多発していました。これが直接のきっかけです。
規制対象です。
現在、日本国内でモバイルバッテリーを製造・輸入・販売するためには、丸形(○PSE)マークの表示が必須です。菱形(◇PSE)ではなく丸形なのは、モバイルバッテリーが「特定電気用品以外の電気用品」に分類されるためで、形の違いには明確な意味があります。一方、AC一体型モバイルバッテリーのように充電器機能も内蔵している製品は、◇PSEと○PSEの両方が必要になります。
PSEマークは、実は「国が認定した機関での必須テスト合格証」ではありません。事業者が自主的に技術基準への適合を確認し、その証として自ら表示できるマークです。つまり「義務を果たした証」であって、「国の認証を受けた証」とは異なります。この点は多くの人が誤解しているポイントです。
規制対象になっていても、ポータブル電源(AC出力できるもの)やジャンプスターター、Wi-Fiルーター内蔵バッテリーなど、「主たる機能が外部機器への給電でない製品」はPSE対象外となるため、マークがなくても違法ではないケースがあります。
参考リンク(PSEマークの種類・モバイルバッテリーの対象範囲について詳しく解説)。
モバイルバッテリーのPSEとは?安全マーク・安全基準をわかりやすく解説 | ELECOM
「PSEマークが付いているから大丈夫」という認識は、実は大きな落とし穴です。意外ですね。
まず最初の盲点は、「偽造マーク」の存在です。中国をはじめとする海外では、PSEマークを偽造した製品が流通していると報告されています。PSEマークは国からライセンスを受けて付けるものではなく、事業者の自主申告が基本の制度のため、悪意ある業者が検査を受けずにマークだけを印刷してしまうケースがあります。見た目は本物と区別がつかないため、何も知らない輸入業者がそのまま仕入れて国内販売しているケースも報告されています。
2つ目の盲点は、「自主検査の形骸化」です。PSEの技術基準適合確認は、登録検査機関への依頼が義務ではなく、事業者が自主的に行うことが原則です(経済産業省FAQ Q.14より)。つまり、コストを省くために十分な検査を行わず、書類だけ整えてマークを付けている業者が存在し得るのです。製品の品質は当然ながらバラつきが生じます。
3つ目の盲点が最も見落とされがちです。PSEマークがあっても、「使い方次第で発火する」という事実です。製品評価技術基盤機構(NITE)の調査によると、2024年だけでモバイルバッテリーの発火事故は123件発生しており、これは2020年(47件)の約2.6倍です。PSEマーク付き製品でも夏場の車内放置・膨張後の継続使用・衝撃による内部ショートなどで発火は起きています。
つまり「マークは必要条件だが十分条件ではない」ということですね。
発火のメカニズムはリチウムイオン電池の「熱暴走」にあります。正極板と負極板がセパレーターで隔離されているリチウムイオン電池は、内部ショートが起きると急激な発熱が連鎖し、可燃性ガスを噴出しながら発火・爆発に至ります。一度熱暴走が始まると消火が非常に難しく、万一発火した場合はNITEが「大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で119番通報」することを推奨しています。
参考リンク(PSEマーク付きでも発火が起こる実態とNITEの注意喚起)。
リチウムイオン電池搭載製品の事故と防止ポイント | NITE(製品評価技術基盤機構)
関税や輸入ビジネスに興味を持つ方にとって、モバイルバッテリーは単価が安く需要も大きい人気カテゴリです。しかし、電安法の規制を無視して輸入・販売した場合、非常に重い罰則が待っています。
罰則は具体的に次のとおりです。電気用品安全法第57条6号により、PSEマークなしの製品を輸入・販売した場合、個人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(あるいは両方)、法人の場合は1億円以下の罰金が科されます。これは「知らなかった」では通用しない話です。
輸入事業者の義務が条件です。
具体的な義務は以下の3点です。
| 義務の内容 | 詳細 |
|---|---|
| 📋 事業届出 | 輸入事業開始から30日以内に経済産業大臣(経済産業局)へ届出必須 |
| 🔬 技術基準適合の確認 | 電安法が定める技術基準への適合を自ら確認(第三者機関への依頼も可) |
| 📁 検査記録の保存 | 定格電圧・外観の全数検査を実施し、3年間分の記録保存が義務 |
さらに2024年12月28日に技術基準が改正されました。過充電による発火事故を防止するための電圧監視に関する新しい要件が追加されており、2025年以降に輸入・販売する製品は、この新基準への適合が求められます。既存の検査証明書が最新基準に対応しているか確認が必要です。
経済産業省は2025年末から、安全性に懸念がある製品を輸入・販売しているにもかかわらず問い合わせに3回以上回答しない事業者36社の名前を公表し始めています。公表されるだけでも企業の信頼は大きく損なわれますが、最終的には行政処分・罰則適用に至る可能性があります。
コスト面でも注意が必要です。モバイルバッテリーをPSE適合させて輸入・販売する場合、検査費用・関税・送料等を合わせると初期投資として少なくとも80万円程度かかるケースも報告されています(PSE取得費用30万円+送料・関税等10万円+その他が目安)。安易に「格安で仕入れて高く売れば儲かる」と考えると、コンプライアンス対応で想定外の費用がかかることになります。
参考リンク(輸入事業者の届出義務・技術基準適合義務など公式FAQ)。
モバイルバッテリーに関するFAQ(事業者の義務・表示等)| 経済産業省
市場には粗悪品が増えています。これは使えそうですね。
安全なモバイルバッテリーを見分けるためのポイントを整理します。まず絶対に確認すべきが「丸形○PSEマーク」の表示です。本体に直接刻印または印字されているか確認しましょう。パッケージにのみ表示されている場合は、本体が小さく直接表示が困難な場合に限って認められる例外的な扱いです。本体表示が通常のルールです。
次に「製造・輸入事業者名の表示」です。PSEマークに近接して事業者名が表示されている必要があります。事業者名が見当たらない、または社名を検索しても企業情報が出てこない製品は要注意です。
以下のポイントも合わせてチェックすることをおすすめします。
- ✅ 定格電圧・定格容量の表示あり(例:5V、10000mAhなど)
- ✅ 過充電・過放電・短絡保護など5種類以上の保護機能を搭載していることを確認
- ✅ 極端に安い価格や過大なスペック表示に注意(「50000mAhで2000円」など物理的にあり得ない表示は偽物の可能性大)
- ✅ 2024年12月改正後の新技術基準適合品かどうかをメーカーに確認
- ✅ JBRCへの加盟メーカーかどうかを確認(廃棄時にリサイクル回収が利用可能)
容量と飛行機持ち込みの関係も知っておくと便利です。100Wh以下なら制限なし、100〜160Whは航空会社の事前許可が必要、160Wh超は持ち込み不可です。一般的な10,000〜20,000mAhのモバイルバッテリーは定格電圧3.7Vで計算すると37〜74Wh程度で、持ち込み制限には引っかからないケースが多いです。
また、消費者が個人で使用する分には、PSEマークのない製品を持っていても法律違反にはなりません。しかし安全面では大きなリスクがあり、事故が発生した際の補償や修理対応が受けられないというデメリットがあります。
参考リンク(安全なモバイルバッテリーの選び方と保護回路の解説)。
モバイルバッテリーの安全性とは?知らなかったでは済まない | オウルテック
発火を未然に防ぐために、使用中のモバイルバッテリーの状態を定期的に確認することが大切です。NITEが推奨する「要注意サイン」は次のとおりです。
- 🚨 本体が膨らんでいる・変形している(可燃性ガスが内部に充満している危険な状態)
- 🚨 充電中に以前より熱くなる
- 🚨 充電できない・すぐ放電してしまう
- 🚨 落下・衝撃を受けて変形した
- 🚨 異臭・異音がする
特に膨張は見逃せません。膨らんだバッテリーを元に戻そうと力を加えると、内部ショートが起きて発火するリスクが一気に高まります。「まだ使えるから」と放置しないことが鉄則です。
廃棄の方法にも盲点があります。モバイルバッテリーは一般ごみ・燃えないごみに捨てることが禁止されています。ゴミ収集車やゴミ処理施設での発火事故が実際に起きているためです。正しい廃棄方法は以下の通りです。
- ♻️ 家電量販店・ホームセンターのリサイクル回収ボックスへ持ち込む(JBRCの小型充電式電池リサイクルBOXが全国展開)
- ♻️ メーカーの回収サービスを利用する
- ♻️ 自治体の指定方法に従う
ただし、膨張したモバイルバッテリーは通常のリサイクルボックスでも受け付けてもらえないケースがあります。膨張している場合は、金属製の容器に入れて密封した状態でメーカーや自治体に相談するのが安全な対応です。
関税や輸入ビジネスの視点から見ると、廃棄コストも輸入品のトータルコスト計算に含める必要があります。PSEなし品・品質不明品を大量に輸入して万一リコールや回収が必要になった場合、廃棄・回収費用が発生するリスクがあります。輸入段階でのコスト試算に「後処理コスト」を含めることが、リスク管理として重要です。
モバイルバッテリーの一般的な買い替え目安は約2年です。リチウムイオン電池のサイクル寿命は約300〜500回で、毎日充電すると約2年で劣化が進み膨張・発熱のリスクが高まります。輸入品を保管して長期間在庫を抱えると、販売前から劣化が進む可能性もあります。これは輸入ビジネスで見落とされがちなリスクです。
参考リンク(消費者庁によるモバイルバッテリー事故の注意喚起・廃棄方法について)。
モバイルバッテリーの事故に注意しましょう!| 消費者庁