有機JAS認証の付いていない輸入有機食品は、「有機」と表示した時点で法律違反になり、輸入者に100万円以下の罰金が科される可能性があります。
有機JAS認証とは、農林水産省が定める「日本農林規格(JAS)」に基づき、化学農薬・化学肥料を原則使用しない農業生産方法によって生産された農産物や加工食品を認証する制度です。正式には「有機農産物のJAS規格」「有機加工食品のJAS規格」として規定されており、認証を受けた事業者だけが対象食品に有機JASマークを貼付できます。
この制度の目的は大きく2つあります。1つは消費者への正確な情報提供、もう1つは有機農業の健全な発展促進です。「有機」「オーガニック」という言葉は消費者の購買行動に直結する強いキーワードですが、その定義があいまいなままでは品質保証にならないため、国が規格を設けて第三者機関が認証する仕組みを整えました。
重要なのは、有機JAS認証はあくまで「生産・加工の方法」を認証するものであり、「栄養価」や「安全性」を保証するものではないという点です。つまり有機JASマークは製法の証明です。
JAS法(日本農林規格等に関する法律)第30条は、有機JAS規格に適合していない食品に「有機」「オーガニック」などの表示をすることを禁止しています。違反した場合、農林水産大臣による是正命令の対象となり、命令違反には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。通関業従事者として荷主にアドバイスする際には、この法的リスクを具体的に伝えることが重要です。
参考:農林水産省「有機食品の検査認証制度について」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
有機JAS認証を取得するためには、複数の厳格な要件を同時に満たす必要があります。最も重要な要件の一つが「転換期間」です。農産物の場合、播種または植え付けの2年以上前(多年生作物は3年以上前)から、化学農薬・化学肥料を使用していない圃場でなければなりません。この期間を「有機転換期間」と呼びます。
転換期間が終わっていない圃場で生産された農産物は、いかに農薬・肥料の使用を控えていても有機JAS認証を取得できません。これは通関業従事者にとっても重要な知識です。輸入農産物の産地証明書に「In-conversion(転換中)」と記載されている場合、日本国内では有機表示が認められないケースがあるため、書類精査の段階で確認が必要です。
農薬・肥料に関しては以下の条件が原則です。
加工食品については、原材料の95%以上が有機農産物・有機畜産物でなければなりません。残りの5%以内に使用できる原材料も、農林水産省が認めたものに限定されています。添加物については許可リストに掲載されたもの以外は使用できず、放射線照射も禁止です。これが条件です。
認証取得の手続きとしては、農林水産大臣が登録した「登録認定機関」に申請します。2025年時点で国内外合わせて60以上の登録認定機関があり、有名なところではJANFS(一般社団法人 日本農林水産品認証機関)、オーガニック認証センター、SGS JapanなどがJAS認定機関として活動しています。
通関業従事者にとって、有機JAS認証の知識が直接実務に影響するのが輸入通関の場面です。ここを押さえておけば大丈夫です。
日本は一部の国・地域と「有機同等性協定」を締結しており、協定締結国の有機認証を取得した農産物・加工食品は、一定条件のもとで有機JASマークを付けて国内販売できます。2025年時点で日本が同等性を認めている相手国・地域はアメリカ、EU(欧州連合)、スイス、カナダ、オーストラリアです。
| 相手国・地域 | 協定の方向性 | 主な対象品目 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アメリカ(USDA Organic) | 相互承認 | 農産物・加工食品 | 畜産物は対象外 |
| EU(EU Organic) | 相互承認 | 農産物・加工食品 | 一部品目に注意 |
| スイス | 相互承認 | 農産物・加工食品 | EUルールに準拠 |
| カナダ(Canada Organic) | 相互承認 | 農産物・加工食品 | 水産物は対象外 |
| オーストラリア(Australian Certified Organic 等) | 相互承認 | 農産物・加工食品 | 認定機関の確認必須 |
同等性協定を活用して輸入する場合でも、輸入者は輸出国の認証機関が発行した「有機認証証明書(Organic Certificate)」を入手し、保管する義務があります。この証明書が通関書類として必要になる場面はほとんどありませんが、国内での表示・販売段階で農林水産省の立入検査が入ったときに提示できなければ、JAS法違反のリスクが生じます。
通関業者として荷主から「有機と表示して輸入したい」という相談を受けた場合のチェックフローは以下の通りです。
意外な落とし穴として、中国・韓国・東南アジアなどの国々は2025年時点で日本との有機同等性協定を締結していません。これらの国からの輸入農産物に「有機」「オーガニック」表示をしたい場合は、日本国内の登録認定機関が現地の生産者・加工業者を認証するか、輸入者が国内で加工し認証を取り直す必要があります。実務上は荷主が把握していないことも多いため、通関業者からの早期情報提供が荷主の損失防止につながります。
参考:農林水産省「有機農産物等の相互承認に係る協定の情報」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-53.pdf
有機JASマークには「認定機関コード」と呼ばれる固有の番号が記載されており、このコードを確認することで、どの登録認定機関が認証したかを特定できます。農林水産省の登録認定機関一覧と照合することで、認証の正当性をすぐに確認できます。
マークには3種類あります。
輸入品の場合、外国語で書かれたパッケージに有機JASマークを貼付するには、国内の輸入業者または荷受人が認定を受けている必要があります。つまり、外国の生産者が有機JASマークを自分で貼ることは原則できません。この点は多くの荷主が勘違いしやすいポイントです。意外ですね。
実際の通関書類(インボイス・パッキングリスト・産地証明書)の確認時には、以下の点に注目してください。
農林水産省の登録認定機関リストはウェブ上で随時更新されており、PDFで閲覧・ダウンロードが可能です。認定機関コードの体系も掲載されているため、通関業務の参照資料としてブックマークしておくと実務で役立ちます。これは使えそうです。
参考:農林水産省「登録認定機関一覧」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-49.pdf
「オーガニック」という表示は法的にどう扱われるのかという疑問は、荷主からよく寄せられます。結論はシンプルです。
JAS法において「有機」「オーガニック」「有機栽培」「有機農法」など、消費者が有機JAS認証品と誤認するおそれのある文字列はすべて規制対象です。英語表記の「Organic」も同様に規制の対象となります。つまり、パッケージに「Organic」と書かれた外国製品を有機JAS認証なしにそのまま日本国内で販売することはJAS法違反になります。
この場合、輸入者(荷主)はラベルを貼り替えるか、国内で認定を取得するか、「Organic」の表示を隠蔽・除去するかの対応が必要です。ラベル修正を行う場合は食品表示法の要件も同時に満たす必要があるため、通関前の早い段階で荷主に確認を促すことが重要です。
実際の違反事例として、農林水産省は毎年JAS法の指示・命令事例を公表しています。有機表示に関する違反は年間数件から十数件程度が報告されており、小規模輸入業者から大手食品メーカーまで幅広く発覚しています。罰則は命令違反で1年以下の懲役または100万円以下の罰金であり、行政処分として認定取消や公表もあり得ます。厳しいところですね。
通関業者としての具体的なリスク管理の提案は「インコタームズ(貿易条件)ごとに書類確認のタイミングを設ける」ことです。例えばFOB・CIFなどの条件では、船積み前の書類確認段階で有機認証証明書を荷主に確認依頼することで、到着後のラベル問題を未然に防げます。
有機JAS認証に関する法令解釈で判断に迷う場面では、農林水産省の「消費・安全局表示・規格課」への問い合わせか、農林水産省が公表している「有機食品の検査認証制度に関するQ&A」が実務上の参考になります。荷主に「確認先」として案内するだけでも、通関業者としての付加価値は大きく高まります。
参考:農林水産省「有機食品のJAS規格に関するQ&A」
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/attach/pdf/yuuki-56.pdf