svhc候補物質リストで通関業者が知るべき最新義務

svhc候補物質リストとは何か、最新の253物質への更新内容、通関実務で必要な0.1%閾値の正しい計算方法、SCIP届出義務まで徹底解説。あなたは正しく対応できていますか?

svhc候補物質リストと通関業者が押さえるべき最新義務

SVHCリストに追加された直後から、6か月以内にECHAへの届出義務が発生します。


この記事の3つのポイント
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SVHC候補物質リストは2026年2月時点で253物質

最新の第35次更新でn-ヘキサン等が追加。年に複数回更新されるため、輸出準備のたびに最新版の確認が必須です。

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0.1wt%の閾値は「製品全体」ではなく「部品単位」が原則

2015年の欧州司法裁判所判決により、複合製品でも個々の部品ごとに濃度計算する解釈が確立。計算の分母を誤ると義務見落としに直結します。

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SCIP届出はEU域内事業者の義務だが、日本側も情報提供が必要

2021年1月5日以降、SVHC含有成形品のSCIPデータベース登録が義務化。EU輸入者から情報提供を求められた際、45日以内に回答できる体制が求められます。


svhc候補物質リストとは何か:REACH規則における位置づけ

SVHC(Substances of Very High Concern)は、日本語で「高懸念物質」と訳されます。EU規則であるREACH規則(化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規則)の第57条に定められた基準を満たす物質で、発がん性、変異原性、生殖毒性(いわゆるCMR物質)のほか、難分解性・生物蓄積性・毒性を持つPBT物質、極めて難分解性かつ生物蓄積性が高いvPvB物質、さらには内分泌かく乱性や神経毒性など「同等の懸念」がある物質が対象とされています。


SVHCの中から優先的に選ばれたものが「認可対象候補物質リスト(Candidate List)」、通称「SVHC候補物質リスト」に掲載されます。これが記事タイトルにある「svhc候補物質 リスト」そのものです。


日本国内ではこの用語が曖昧に使われることが多く、注意が必要です。「SVHC」という言葉だけでは、①発がん性など有害性のある1,500物質以上の広い意味での高懸念物質全体、②認可対象候補物質リスト(Candidate List)に収載された253物質(2026年2月時点)、③さらにその中から認可対象(付属書XIV)に確定した物質、この3つのいずれかを指す場合があります。会話の文脈によって意味が変わるということですね。通関実務では「Candidate List収載物質」=狭義のSVHC候補物質リストを指すことがほとんどです。


このリストはECHA(欧州化学品庁)が公式に管理・公表しており、2007年のREACH規則発効以来、段階的に追加が行われてきました。2026年2月4日に行われた第35次更新でn-ヘキサンとビスフェノールAFおよびその塩の2物質が追加され、現在253物質が収載されています。


なぜ通関業者が注目すべきかといえば、Candidate Listに収載された物質を0.1重量%を超えて含有する成形品(アーティクル)は、リスト掲載から6か月以内にECHAへ届出が必要になり、さらに受領者への情報伝達義務も即時発生するからです。輸出書類の不備や情報提供の遅延は、EU側での通関拒否や取引停止リスクに直結します。


化学物質と法規制研究所:REACH規則SVHCリスト(最新253物質の一覧・更新履歴を確認できます)


svhc候補物質リストの最新更新内容:253物質への増加と注目すべき点

2026年2月4日、ECHAは第35次SVHCの更新を正式発表しました。今回の更新で特に注目されるのがn-ヘキサンの追加です。n-ヘキサンは接着剤、洗浄剤、塗料・インクの溶剤、ポリマー加工助剤として広く使用されている汎用溶剤で、工業製品を製造・輸入する企業にとって身近な物質です。


n-ヘキサンが今回SVHCに指定された理由は、反復ばく露による神経毒性です。これがポイントで、従来は発がん性・生殖毒性・PBT・vPvBなどが主な指定理由でしたが、神経毒性を主要な根拠としてSVHCリストに追加されたのは今回が史上初です。REACH規則第57条(f)の「同等の懸念(ELOC)」カテゴリが適用されました。化学物質管理の裾野が広がっているということですね。


直近5回の更新でどのような物質が追加されたかを確認すると、以下のとおりです。


公表回次 公表日 追加物質の例 主な指定理由
第35次 2026年2月4日 n-ヘキサン、BPAF(ビスフェノールAF)およびその塩 神経毒性(ELOC)、生殖毒性
第34次 2025年11月5日 デカブロモジフェニルエタン(DBDPE) vPvB(極めて難分解・高蓄積)
第33次 2025年6月25日 シロキサン類3物質、染料(Reactive Brown 51) vPvB、生殖毒性
第32次 2025年1月21日 オクタメチルトリシロキサン、トリフェニルホスファイト誘導体等5物質 生殖毒性、PBT、vPvB
第31次 2024年6月28日 ビス(α,α-ジメチルベンジル)パーオキサイド、トリフェニルホスフェート 生殖毒性、内分泌かく乱性


このペースを見ると、ほぼ年3〜4回の頻度で更新が行われています。リスト更新は年2回(6月・12月が目安)とされていますが、実際には複数回行われる年もあります。これが原則です。


通関業者にとって重要なのは、輸出・輸入のたびに「輸出時点で有効な最新リスト」を基に確認することです。「前回通関時に問題なかった物質が今回はSVHCに該当していた」というケースは珍しくありません。更新のたびにサプライヤーへの情報照会が必要になることも覚えておきましょう。


DGer:第35次SVHC更新の解説(n-ヘキサンの指定経緯と用途例を詳細に説明)


svhc候補物質リストが発動させる3つの義務:届出・情報伝達・SCIP登録

SVHC候補物質リスト(Candidate List)に物質が追加された瞬間から、EU域内事業者には具体的な義務が発生します。通関業者はこの3つの義務を正確に理解しておく必要があります。


① ECHAへの届出義務(REACH第7条第2項)


成形品中にSVHC候補物質が含まれており、成形品中の濃度が0.1重量%を超え、かつその物質のEU域内での年間取扱量が1トンを超える場合に届出が必要です。届出期限はCandidateリスト収載から6か月以内。EU域内の輸入業者・製造業者が届出主体です。


② 情報伝達義務(REACH第33条)


成形品中のSVHC候補物質濃度が0.1重量%を超える場合、川下ユーザーに対して少なくとも物質名と安全な使用に必要な情報を提供する義務があります。こちらは1トン要件はなく、濃度要件を超えた時点で発生します。さらに消費者からの問い合わせには45日以内に情報提供が必要です。


③ SCIPデータベース登録義務(廃棄物枠組指令・WFD)


これは使えそうです。SCIP登録はEU域内の輸入業者の義務ですが、日本の輸出企業がEU側から材料の成分情報を求められる場面が急増しています。chemSHERPA(化学物質管理促進協会が推進するサプライチェーン化学物質情報共有ツール)での情報整備が実務上の近道です。


注意しなければならないのは、「SCIP登録はEU側の義務だから日本企業には関係ない」という思い込みです。実際には、EU輸入者がSCIP登録をするための成分情報を日本のサプライヤーに求めることが一般的になっており、情報提供に応じられなければ取引継続が困難になります。


情報機構:SCIP情報の伝達に関するQ&A(日本企業側の情報提供義務の範囲を詳しく解説)


svhc候補物質リストの閾値0.1%:正しい計算の分母を理解する

「0.1重量%」という数字は多くの実務者が知っています。ところが、この計算の分母が何かを正確に把握していると、通関トラブルを未然に防げます。


2015年9月10日に欧州司法裁判所が出した解釈が重要です。それは「0.1重量%の閾値は、成形品全体の質量ではなく、その成形品を構成する個々の部品(アーティクル)単位で計算する」というものです。


具体的な例で考えてみましょう。電子機器全体の重量が1kgだとします。その中に含まれる小さな樹脂部品の重量が5gで、その樹脂部品にSVHC候補物質が0.006g含まれているとします。


- 機器全体で計算すると:0.006g ÷ 1,000g = 0.0006%(閾値以下→義務なし?)
- 部品単位で計算すると:0.006g ÷ 5g = 0.12%(閾値超→情報伝達義務あり)


このように、全体質量で割って計算していると義務を見落とす可能性があります。結論は「部品単位で計算する」が原則です。


ただし、実務上は「成形品から成形品が最初に生まれるタイミング」を正確に追うことが難しいため、購入品単位で計算したり、RoHS(有害物質使用制限指令)の計算方法と同様に「均質材料単位」で計算・管理する企業も見られます。自社でどの管理基準を採用するか、明確にルール化しておくことが大切です。


また、0.1重量%の計算で見落としがちなポイントが、包装・梱包材の扱いです。製品本体だけでなく、パレットやクッション材、ラベル用インク等の梱包材もSVHC含有の確認対象になり得ます。物流担当者との情報共有が不可欠ですね。


eudirective.net:SVHCと認可対象物質・Candidate List・閾値の関係(0.1%の分母に関する解説が充実)


svhc候補物質リストの見落としが招く通関リスクと実務上の対応策

SVHCリストの更新を見落とすと、何が起きるのでしょうか?


最も直接的なリスクは、EU側での通関拒否です。REACH規制に対応した証明書類(SDS、SVHC非含有証明、成分表など)が不十分な場合、EU税関当局が荷物を留置し、追加書類の提出を英語で求めてきます。この対応に数週間を要することもあり、その間の保管費用・輸送の遅延損失が発生します。


さらに深刻なのは、EU内の取引先との信頼失墜です。EU輸入者はSCIP登録のためにサプライヤー側から最新のSVHC情報を求めます。「前回通った書類がある」と安心して同じ書類を使い続けると、最新のリスト改訂に対応していないとして受け取りを拒否されるケースがあります。痛いですね。


では、通関業者として実務でどのような対応をとるべきでしょうか。


✅ ECHAの公式リストを定期チェックする習慣をつける


ECHAのウェブサイトでは、最新のSVHCリスト(Candidate List)がPDFおよびCSV形式でダウンロードできます。更新通知のメールサービスも提供されています。輸出準備と並行してリストを確認するルーティンが欠かせません。


✅ サプライヤーへの最新SVHC対応確認の仕組みを作る


「SVHCの含有有無を証明する書面」を取得する際、いつ時点のリストに基づく回答かを明記させることが重要です。「SVHC非含有証明(●年●月時点のリスト準拠)」という形で取得しておけば、後から更新があった際に再確認が必要な範囲を絞り込めます。


✅ chemSHERPAを活用した情報共有の体制を整える


製品・部品に含まれる化学物質情報をサプライチェーン全体で共有するツールとして、chemSHERPAが国内製造業界で広く普及しています。SVHCのバージョンアップに対応した管理対象物質リストの更新も行われており、情報一元化に有効です。製品の含有調査に使う際は、最新バージョンを利用することを確認しましょう。


newji:EU向けREACH対応品輸入で通関拒否を回避するための事前確認ポイント(書類不備のトラブル事例と対策を詳説)