食品検疫輸入の手続と検査の流れ

食品を輸入する際の検疫手続きや検査制度について、通関業務に携わる方向けに解説します。初回輸入時の注意点や検査省略の条件、違反時のリスクを知っていますか?

食品検疫輸入の手続と検査

初回輸入でも検査省略が使えます。


この記事の3つのポイント
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届出と審査の基本

食品等輸入届出書の提出から食品衛生監視員による審査まで、検疫所での手続きの流れを解説

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検査の種類と省略制度

モニタリング検査・検査命令・指導検査の違いと、外国公的検査機関の活用による検査省略方法

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違反時のリスクと対策

令和6年度は731件が法違反となり積み戻しや廃棄処分、違反率0.03%でも命令検査対象になるリスク

食品検疫輸入における届出の基本


販売または営業上使用する食品等を輸入する場合、食品衛生法第27条に基づき、輸入者は検疫所へ食品等輸入届出書を提出する義務があります。この届出を行わない食品等については、販売または営業上使用することはできません。


参考)食品等輸入手続について|厚生労働省

届出に必要な主な書類は、食品等輸入届出書と原材料及び製造工程に関する説明書(加工食品等で必要に応じ)です。加工食品等で初めて輸入されるものは、製造者名の記載された商品説明、または輸入者が確認の上作成した書類が必要となります。


参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/16811.php


令和6年度の輸入届出件数は約247万件、重量では約3,191万トンに達しています。届出が検疫所に受理されると、食品衛生監視員が適法な食品等であるかの審査や、検査の要否を判断します。


参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001548392.pdf


審査では、法定基準への適合性、添加物の使用状況、有害物質の有無、過去の違反歴などが総合的に確認されます。届出件数の約8.4%にあたる約20万件について検査が実施されており、審査で問題がなければ迅速に輸入手続きを進めることができます。


参考)食品衛生法に基づく輸入手順を簡単解説|国際輸送で押さえる重要…


つまり届出と審査が基本です。


食品検疫輸入の検査種類と実施率

輸入食品の検査には、大きく分けてモニタリング検査、検査命令、指導検査(自主検査)の3種類があります。それぞれ目的と実施条件が異なるため、輸入者は各検査の特徴を理解しておく必要があります。


参考)食品を輸入するときの検疫所での検査とは?流れと種類をやさしく…

モニタリング検査は、多種多様な輸入食品等の食品安全の状況について幅広く監視するために実施される検査です。令和6年度は約4万8,050件を実施し、このうち127件に法違反が確認されました。検査は無作為抽出方式で行われ、統計学的手法に基づき特定の食品群に1%以上の違反食品が含まれている場合、95%の信頼度で1件以上の違反を発見できる件数が設定されています。


参考)https://www.forth.go.jp/keneki/yokohama/01_info/pdf/20250530-1.pdf


検査命令は、食品衛生法違反の可能性が高いと判断される場合に実施される強制的な検査です。令和7年3月31日時点で、全輸出国が対象の15品目及び42の国・地域が対象の114品目が検査命令の対象とされています。令和6年度は7万34件を実施し、198件に法違反が確認されました。検査結果が出るまで輸入は認められず、不合格なら積み戻しや廃棄処分となります。


参考)https://asif.or.jp/mado/m-81.html


指導検査(自主検査)は、初回輸入時や定期的に、輸入者の責任において行う検査として国が指導するものです。輸入者が費用負担し、結果判明まで輸入手続きは保留されます。


検査費用は全て輸入者負担です。


食品検疫輸入における検査省略制度の活用

輸入手続きの迅速化と効率化を図るため、食品衛生法では複数の検査省略制度が設けられています。これらの制度を適切に活用することで、輸入業務のコスト削減と時間短縮が可能になります。


参考)食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化制度: 日本


外国公的検査機関の検査結果の活用制度では、輸出国政府が厚生労働省に登録した輸出国公的検査機関で輸出前に検査を受け、その成績書が添付されている場合、輸入時の検査が省略されます。ただし、輸送途上で変化するおそれのある項目(細菌、カビ毒等)は除かれます。令和6年度は3,597件がこの制度を利用しました。


参考)https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/ysk_13/tp0419-1p.html


継続輸入における検査省略制度も重要です。初回輸入時に試験成績書を届出書に添付して提出し、審査の結果特に問題がないと判断された場合、同一の食品等を繰り返し輸入する際には次回から一定期間、指導検査が省略できます。


参考)https://www.forth.go.jp/keneki/yokohama/04_import/05/index.html


輸入食品等事前確認制度は、輸入される食品等が食品衛生法に適合することを事前に確認し、当該食品等およびその製造加工業者を登録する制度です。登録された食品等については、輸入時検査が一定期間省略され、届出後速やかに届出済証が交付されます。


初回でも省略できる場合があります。


継続輸入の場合、適切な事前準備により指導検査の負担を大幅に軽減できるため、初回輸入時に外国公的検査機関の試験成績書を取得しておくことが推奨されます。この対策により、2回目以降の輸入では検査待ち時間とコストの両面でメリットが得られます。


食品検疫輸入での違反事例とペナルティ

令和6年度の輸入食品監視統計によると、届出約247万件のうち731件(延べ777件)が法違反として確認され、積み戻しや廃棄等の措置が講じられました。届出件数に対する違反率は0.03%ですが、一度違反すると検査命令の対象となり、以降の輸入業務に大きな影響が出ます。


違反の条文別内訳を見ると、法第13条違反(食品の成分規格、残留農薬、残留動物用医薬品、添加物の使用基準等)が477件(65.9%)と最多です。次いで法第6条違反(アフラトキシン等の有害・有毒物質の付着等)が193件(25.0%)、法第12条違反(指定外添加物の使用)が43件(5.8%)となっています。

どういうことでしょうか?
違反が確認されると、輸入者は積み戻し、廃棄、食用外転用のいずれかの措置を取らなければなりません。これに加え、検査命令の対象品目に指定されると、以降の輸入時には毎回強制的に検査が必要となり、検査結果が判明するまで通関できない状態が続きます。


参考)https://www.mhlw.go.jp/content/001138795.pdf


輸入前相談(輸入前指導)を利用すると、違反を事前に防ぐことができます。令和6年度は21,654件の輸入前指導が実施され、このうち477件(2.20%)が法に適合しないことが判明しました。輸入時の違反率0.03%と比較すると、事前相談により法違反に該当する食品等の輸入を効果的に防止できています。

事前相談なら違反率は2.20%です。


違反リスクを回避するには、初回輸入前に検疫所の輸入前指導(輸入相談)を活用し、製品の法適合性を確認することが重要です。この段階で問題が発見されれば、輸入後の廃棄・積み戻しコストや検査命令による継続的な負担を回避できます。


食品検疫輸入でのFAINS活用と効率化

FAINS(Food Automated Import Notification and Inspection Network System)は、食品等輸入届出業務を電子化したシステムで、届出手続きの効率化に大きく貢献しています。このシステムを利用することで、書面での届出に比べて手続き時間を短縮できます。


参考)https://www.asif.or.jp/import3.html


FAINSによる届出では、事前に検疫所窓口で登録手続きを行うことで、品目登録制度を利用できます。品目登録制度とは、輸入届出事項の一部及び関係情報についてあらかじめ登録をすることで、届出書の記載の一部を簡略化できる制度です。


参考)https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/_files/00139243/FAINS.pdf

システム利用には新規登録が必要で、登録手数料は6,600円(消費税込)です。登録後は、関西空港検疫所食品監視課(TEL:072-455-1290)などの各検疫所でサポートを受けられます。


参考)https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/syokuhin/syokuhin%20top/denshisinsei_annai.pdf

品目登録で記載を簡略化できます。


FAINSと外国公的検査機関の試験成績書を組み合わせることで、さらなる効率化が可能です。品目登録により毎回の入力項目を削減し、事前の試験成績書で検査を省略すれば、継続輸入における業務負担を大幅に軽減できます。


輸入業務の効率化には、FAINSへの登録と品目登録の活用が有効な対策となります。初期費用は必要ですが、継続的に輸入を行う場合には投資に見合う時間とコストの節約につながります。


参考リンク(厚生労働省の食品等輸入手続について、届出に必要な書類と手続きの流れの詳細):
食品等輸入手続について|厚生労働省
参考リンク(JETROの食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化制度について、外国公的検査機関の活用方法):
食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化制度: 日本
参考リンク(厚生労働省の令和6年度輸入食品監視統計、検査実施件数と違反状況の詳細データ):
https://www.mhlw.go.jp/content/001548392.pdf



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