製造物責任条項を契約書で正しく定める通関実務の要点

通関業従事者が見落としがちな製造物責任条項の契約書への盛り込み方を徹底解説。輸入業者が「表示製造業者」として法的責任を負うリスクや、免責条項が第三者に対抗できない盲点とは?

製造物責任条項を契約書で正しく定めるための通関実務

契約書に「製造者が責任を負う」と書いても、あなたが輸入者である限り第三者への賠償責任は消えません。


この記事の3ポイント
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輸入業者は「製造業者」と同等の責任を負う

製造物責任法(PL法)では、業として輸入した者は実質的な製造業者と同じ責任主体とみなされます。製造に関与していなくても免責されません。

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免責条項は第三者(消費者)に対抗できない

取引当事者間で免責特約を結んでも、製品の欠陥で被害を受けた第三者への責任は回避できません。契約書の盲点として必ず把握が必要です。

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契約書には責任分担・求償権・PL保険加入条項が必須

通関実務では輸入時の契約書に「責任分担条項」「求償権の明記」「PL保険加入義務」を盛り込むことで、万が一の損害賠償リスクを大幅に低減できます。

製造物責任条項とPL法の基本:通関業者が知るべき法的位置づけ

製造物責任法(PL法)は1994年に制定され、製造物の欠陥によって消費者の生命・身体・財産に損害が生じた場合、製造業者等が無過失責任を負う法律です 。通関業従事者にとって重要なのは、この「製造業者等」の定義に輸入業者が含まれている点です。


参考)製造物責任法(PL法)とは?対象の製造物や欠陥の定義、事例な…


輸入業者は、自らの意思で欠陥製品を国内市場に流入させた「流通の起点」として位置づけられます。 そのため、製品の欠陥が海外の製造元に起因していたとしても、輸入業者は消費者から直接損害賠償請求を受けるリスクがあります。


参考)製造物責任の主体−輸入業者|マニュアル|弁護士法人朝日中央綜…


つまり、輸入行為そのものが法的責任の引き金です。


この事実を知らずに「欠陥は製造元の問題だから関係ない」と考えていると、訴訟対応や高額賠償に直面する可能性があります。PL法の責任対象を正確に理解することが、通関業務における契約書レビューの出発点となります。


責任主体 PL法上の区分 通関業との関係
製造・加工業者 製造業者等(第2条3項1号) 直接関与なし
輸入業者 製造業者等(同1号) ⚠️ 通関業者が輸入者名義となる場合は該当
表示製造業者 製造業者等(同2〜4号) ⚠️ OEM・PB商品で自社ブランドを表示する場合は該当
販売業者(国内) 原則対象外 ✅ ただし表示内容によっては該当

製造物責任条項の契約書への盛り込み方:責任分担と求償権の設計

契約書に製造物責任条項を設ける目的は、事故発生時の「誰が一次的に賠償するか」を明確にするためです。 重要なのは、契約書の定めはあくまで当事者間の内部的な責任配分であって、第三者への対外的責任とは別物だという点です。


参考)製造物責任に関する契約書のポイント


具体的には、以下の条項を契約書に盛り込むことが実務上求められます。


  • 📌 責任分担条項:製造者・輸入者・販売者のうち誰が一次的責任を負うか明記する
  • 📌 求償権条項:一次的責任者が賠償した後、真の原因者(製造元等)への求償手順を規定する
  • 📌 品質保証条項:製品がJIS規格等の安全基準を満たすことを売主が保証する旨を明記する
  • 📌 クレーム対応条項:事故・苦情発生時の通知義務・費用負担・対応手順を定める
  • 📌 製品仕様条項:製造対象・品質基準・納品検査の方法と仕様変更時の対応を明確化する

求償権の設計が最も重要です。


輸入業者は消費者から賠償請求を受けた場合でも、輸入契約において外国の製造業者・販売業者への求償権を留保することが可能です。 この求償権の条文を契約書に明記していないと、輸入業者が実質的に全額負担を強いられるケースがあります。


条文例(責任分担条項):

本製品の欠陥に起因する損害については、製造者が一義的に責任を負う。ただし、輸入者が第三者より損害賠償請求を受けた場合、輸入者は製造者に対し、支払済み賠償額の全額を求償できる。

製造物責任条項で見落とされる盲点:免責特約が消費者に対抗できない理由

「契約書に免責条項を入れれば大丈夫」という認識は、危険な思い込みです。


製造物責任法では、取引当事者間(たとえば輸入業者と海外製造元)で結んだ免責特約は、契約の外にいる第三者(被害を受けた消費者)には一切対抗できません。 これは実務上の大きな盲点で、「免責特約あり」と社内資料に記録していても、消費者から訴訟を起こされれば応訴する義務が生じます。aig+1
厳しいところですね。


具体的な場面を想定すると分かりやすいです。A社(輸入業者)とB社(中国の製造元)の契約書に「製品の欠陥に関する消費者への責任はB社が負う」と記載していたとします。 消費者がA社を相手取って訴訟を提起した場合、A社は「契約書でB社の責任とした」という抗弁が通じません。 A社は消費者へ一次的に賠償を行い、その後B社への求償という手順を踏む必要があります。
一方で、欠陥が「買主の設計指示のみに起因し、かつ売主に過失がなかった場合」には、売主(製造元)の責任が免除される例外規定(製造物責任法第4条2号)が存在します。 通関業務でOEM製品を取り扱う際は、設計指示の経緯を記録しておくことが重要な証拠となります。


参考)製造物責任とは?


OEM・PB商品の通関で特に注意すべき「表示製造業者」リスク

自社ブランドを貼って輸入販売する場合、あなたは「表示製造業者」として法的責任を負います。


OEM(相手先ブランド製造)やPB(プライベートブランド)商品の輸入で自社ブランド名・ロゴを製品に表示した場合、PL法上の「表示製造業者」に該当し、製造業者と同等の責任を負います。 ある家電メーカーが海外企業に製造委託し、自社ブランドで販売したところ製品の欠陥による火災が発生した事例では、契約書に「製造者責任の明記あり」にもかかわらず、メーカーが損害賠償を負う結果となっています。


これは通関業者が貿易実務を担う場面でも無関係ではありません。


  • 🏷️ 輸入通関申告書上の「輸入者」欄に記載された社名が、法律上の輸入業者として責任主体になる
  • 🏷️ 関税申告に際し通関業者が輸入者として名義を貸した場合、責任の所在が問われるリスクがある
  • 🏷️ OEM製品の場合、製品パッケージのブランド表示内容を事前に確認し、「表示製造業者」に該当しないか契約書レビュー時にチェックする

対策として有効なのが、製造委託契約書への「ブランド表示と法的責任の帰属」条項の明記です。「本製品に係るブランド表示は委託者が行うが、製造物責任法上の製造物責任は製造委託先が負うことを確認する」といった条文があれば、少なくとも当事者間の責任配分は明確になります。


参考:表示製造業者の法的定義と輸入業者の責任範囲について詳しく解説されています。


製造物責任の主体−表示製造者|朝日中央綜合法律事務所マニュアル

通関業従事者が実務で使える製造物責任条項チェックリストと保険対策

契約書が整っていても、賠償能力がなければ机上の空論です。


製造物責任(PL)保険への加入義務を契約書に明記することで、万が一の際の損害賠償支払能力を担保できます。 契約書の保険加入義務条項には、「製造委託先は国内販売開始前までにPL保険に加入し、保険証書の写しを委託者に提出する」「販売店・委託元を被保険者に含める」旨を盛り込むことが理想的です。


これが実務での最後の砦です。


以下は通関業従事者が輸入時の契約書チェックで活用できるリストです。


  • 責任分担条項:製造者・輸入者のどちらが一次的責任を負うか明記されているか
  • 求償権条項:輸入者から海外製造元への求償手順と期限が定められているか
  • 品質保証条項:JIS規格・PSC規格等の国内安全基準への適合を売主が保証しているか
  • クレーム対応条項:事故発生時の通知義務(速報・詳報の期限)が定められているか
  • 免責条項の範囲確認:免責が当事者間限定であり、消費者への責任が残ることを認識しているか
  • PL保険加入義務条項:保険加入・証書提出・被保険者の範囲が明記されているか
  • 製品仕様・検品条項:納品時の検査基準と不良品対応(修理・代替・減額)が定められているか
  • 設計指示の記録:OEM製品の場合、設計指示の経緯・書面記録が保存されているか

輸出入の契約書のうちPL条項(Product Liability Clause)は、英文契約でも同様に確認が必要です。 米国向け輸出の場合、契約上の免責条項があっても被害者が提訴すれば応訴義務が生じます。 日本のPL法よりも厳格な懲罰的損害賠償が認められる国での訴訟リスクも念頭に置いて、PL保険の補償範囲(国内のみ・海外対応別)を確認しておくことが実務上の重要な行動です。aog-partners+1
参考:輸出製品向けPL保険の補償範囲・保険料の目安について確認できます。


海外における製造物責任リスクと保険対策|AIG損保(弁護士解説)
参考:取引基本契約における製造物責任条項の修正方法を買主・売主それぞれの視点から解説しています。