指図式船荷証券と記名式船荷証券の違いと使い分け

指図式船荷証券(Order B/L)と記名式船荷証券(Straight B/L)の違いを徹底解説。流通性・裏書・L/C取引での使い分けまで、関税・貿易実務に関わるあなたが知らないと損するポイントとは?

指図式船荷証券と記名式船荷証券の違いと正しい使い分け

記名式B/Lで輸出したら、銀行に書類を受理されず、代金回収が止まった実例があります。


📋 この記事の3ポイント要約
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流通性の有無が最大の違い

指図式(Order B/L)は裏書により第三者へ譲渡可能。記名式(Straight B/L)は荷受人が特定されており、原則として流通性がない。

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L/C取引では指図式が必須

信用状(L/C)取引において銀行は指図式B/Lを担保として機能させる。記名式B/Lを持ち込んでも受理されないケースがある。

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裏書の有無が貨物引き取りの鍵

指図式B/Lは輸出者(Shipper)による裏書署名が必須。裏書が抜けると現地で貨物を受け取れない深刻なトラブルに発展する。


指図式船荷証券(Order B/L)とは何か:基本と仕組み

指図式船荷証券(Order B/L)とは、B/LのConsignee(荷受人)欄に特定の会社名や個人名ではなく、「TO ORDER」または「TO ORDER OF SHIPPER」と記載された船荷証券のことです。この「TO ORDER(指図により)」という文言が、証券の大きな性質を決定します。


荷受人が特定されていないため、輸出者(Shipper)が裏書(Endorsement)を行うことで、その証券を持った者が誰であっても貨物を受け取る権利を得られます。これが「流通性がある」という状態です。株式や小切手のように権利が流通するイメージに近いと考えると分かりやすいでしょう。


B/Lは通常オリジナルが3通発行されます。この3通のうち最初に到着した1通が使用されれば、残りは無効になる仕組みです。つまり有価証券としての機能が非常に強力で、取り扱いには細心の注意が求められます。


指図式B/Lが使われる場面として最も代表的なのが、信用状(L/C)取引です。輸出者・輸入者の間に買取銀行・開設銀行が介在する取引で、銀行はB/Lを担保として輸出代金を立て替えます。この担保機能が成立するためには、誰にでも譲渡できる「指図式」B/Lである必要があります。


「TO ORDER」と「TO ORDER OF SHIPPER」は実質的な差はほぼありません。ただし、信用状の条件に「TO ORDER OF SHIPPER」と明記されている場合に「TO ORDER」で発行すると、銀行に受理されない場合があります。信用状の文言とB/Lの記載を厳密に一致させることが原則です。


パソナ シゴ・ラボ:B/LのConsignee欄の「To order」の意味と指図式・記名式の違いについて詳しく解説


記名式船荷証券(Straight B/L)とは何か:特徴と流通性

記名式船荷証券Straight B/L)とは、Consignee(荷受人)欄に「ABC Trading Co., Ltd.」のような特定の会社名・個人名が直接記載されたB/Lです。荷受人が最初から特定されているため、原則として第三者への譲渡はできません。


流通性がない、という点が指図式との決定的な差です。記名式B/Lは「non-negotiable(流通不可)」と記載されることもあり、その名の通り有価証券としての譲渡機能が制限されています。


ただし、日本国内においては例外があります。日本では商法の規定により、記名式B/Lであっても記載された荷受人が裏書を行えば譲渡が可能とされています。一方で中国や英国・米国では、記名式B/Lは裏書による譲渡が認められていません。同じ「記名式B/L」でも、国によって取り扱いが異なる点は見落としやすいポイントです。


記名式B/Lが使われるのは主に、輸出者と輸入者が長年の取引実績があり、代金前払いや信頼関係が確立されているケースです。また、代金引換(D/P)・送金(T/T)取引など、銀行が書類の担保として介在しない場面でも利用されます。







































項目 指図式(Order B/L) 記名式(Straight B/L)
Consignee欄の記載 TO ORDER / TO ORDER OF SHIPPER 特定の会社名・個人名
流通性 あり(裏書で譲渡可能) なし(原則として譲渡不可)
銀行の担保利用 可能 不可(または制限あり)
L/C取引での利用 ✅ 標準的に使用 ❌ 原則として使用不可
裏書の必要性 必須(Shipper署名) 原則不要(日本は例外あり)
主な使用場面 L/C取引・銀行介在取引 前払い取引・親密な取引先との取引


NVOCC Club:船荷証券の裏書の重要性と記名式・指図式の実務上の注意点


指図式船荷証券の裏書(Endorsement):種類と実務でのリスク

指図式B/Lを使う際、最も重要な実務作業が「裏書(Endorsement)」です。裏書とはB/Lの裏面に荷送人(Shipper)が署名することで、貨物の所有権を次の権利者に移転させる行為です。会社の社印と担当者のサインを組み合わせるケースが一般的です。


裏書には大きく分けて3種類あります。



  • 🖊️ 白地裏書(Blank Endorsement):被裏書人を指定せず、Shipperが署名のみを行う方法。B/Lを持参した者が誰でも貨物を引き取れる状態になります。L/C取引で最も一般的に使われる方法で、「made out to order and blank endorsed」という信用状の文言で要求されます。

  • 🖊️ 記名式裏書(Full Endorsement):被裏書人を特定して名前を記載する方法。裏書の連続性が求められるため、途中で途切れると権利の連鎖が断たれます。

  • 🖊️ 指図式裏書:被裏書人を指図する人を特定して記載する方法。


実務上のリスクとして最も怖いのが、裏書の抜け・不備です。国際標準銀行実務(ISBP)の第102条では、「指図式船荷証券の場合、荷送人の裏書を要求する」と定められています。つまり、裏書がないB/LはISBPのルールにより銀行に受理されません。


もし裏書の記載漏れが受理後に発覚した場合、銀行が代理で「for or on behalf of the shipper」として署名することが例外的に許されています。ただし、これはあくまで救済措置であり、最初から正確に裏書することが原則です。


また、指図式B/Lで裏書が一切ない場合、港の運送人(船会社)は貨物の引渡しを拒否することがあります。その際は全通のオリジナルB/Lを呈示した上で、補償状(LOI)の提出を求められるケースもあります。補償状の発行には銀行保証がつく場合もあり、金利や手数料が発生する点にも注意が必要です。


つまり裏書ミスは損失に直結します。


JETRO:船荷証券の白地裏書の意味と指図式・記名式の実務上の違い(調査・専門家監修)


L/C取引で記名式B/Lを使うと代金回収リスクが生じる理由

信用状(L/C)取引において、記名式B/Lを使おうとすると重大な問題が起きます。これは関税・貿易実務を学ぶ上で特に押さえておきたいポイントです。


L/C取引の仕組みを整理しましょう。輸出者はB/Lを含む船積書類を銀行(買取銀行)に持ち込み、輸出代金を受け取ります。銀行はB/Lを担保として代金を立て替えているわけです。この担保として機能するためには、B/Lが誰にでも譲渡できる「有価証券」としての性質を持っている必要があります。


記名式B/Lでは荷受人が特定されているため、銀行がB/Lを持っていても、「銀行が貨物の所有者である」とは断言できません。銀行の手元にある間も、本来の荷受人が権利を主張できる余地があるからです。これでは担保として機能しません。


ISBP(国際標準銀行実務)の第101条は「信用状が記名式B/Lを要求している場合に指図式B/Lは受理されない、逆も同様」と明確に定めています。信用状で「指図式」が求められているのに記名式B/Lを持参しても、銀行は書類を受理しません。その結果、荷為替手形の買い取りが行われず、輸出代金の回収がストップします。


代金未回収は輸出者にとって経営上の致命傷になりかねません。


実際の信用状開設依頼書には、あらかじめ「BILLS OF LADING MADE OUT TO ORDER AND BLANK ENDORSED」という定番の文言が印刷されていることが多く、これが銀行から輸出者への指示です。この文言の意味を正確に理解せずにB/Lを発行すると、書類の不備(ディスクレパンシー)として扱われ、再提出の手間と時間ロスが発生します。



  • 📌 信用状取引では「指図式B/L + 白地裏書」が原則

  • 📌 記名式B/Lで銀行に持ち込むと書類受理を拒否されるリスクがある

  • 📌 信用状の文言(TO ORDER or TO ORDER OF SHIPPER)に厳密に従うことが必須

  • 📌 書類の不備(ディスクレパンシー)が発覚すると、再提出・代金回収遅延につながる


株式会社マリタイム:ISBP(国際標準銀行実務)に基づく銀行の書類点検の基準と記名式・指図式B/Lの判定ルール


指図式・記名式の選択を間違えないための実務チェックポイント

ここまで解説してきた内容を踏まえ、実務でB/Lの種類を選択・確認する際に役立つチェックポイントを整理します。B/Lの種類を間違えると、代金回収の遅延・書類の差し戻し・最悪の場合は貨物が受け取れないという深刻なトラブルに発展します。これは覚えておくべき原則です。


まず確認すべきは「取引方法(支払い条件)」です。L/C(信用状)取引なら、指図式B/Lを選択することがほぼ確実に求められます。T/T(電信送金)や前払いなど、銀行が書類担保に介在しない取引であれば、記名式B/Lも選択肢に入ります。


次に確認すべきは「信用状の文言」です。信用状には B/Lに関する条件が記載されており、「TO ORDER」「TO ORDER OF SHIPPER」「TO ORDER OF ○○ BANK」など具体的な指示があります。この指示と完全一致しないB/Lは受理されません。特に「TO ORDER OF SHIPPER」と指定されているのに「TO ORDER」だけで発行するミスは起こりやすいので注意が必要です。


3点目は「裏書の確認」です。指図式B/Lを銀行に持ち込む前に、Shipperの署名・社印が正しく入っているか必ず確認してください。白地裏書(blank endorsement)の場合は被裏書人の記載なしにShipperのみが署名します。



  • ステップ①:取引条件を確認(L/Cか、T/T前払いか、D/Pか)

  • ステップ②:信用状の文言を確認し、Consignee欄の記載方法を特定する

  • ステップ③フォワーダーに「Consignee欄をTO ORDER(または信用状指定の文言)にするよう」依頼する

  • ステップ④:B/L受領後、裏書(Shipper署名・社印)が正確に入っているか確認する

  • ステップ⑤:銀行に書類を持ち込む前に、信用状の条件とB/Lの記載内容を照合する


実際の貿易現場では、輸出者が直接フォワーダーにB/Lの発行条件を伝え、フォワーダーが船会社との手続きを代行します。重要なのは輸出者自身が信用状の条件を理解した上でフォワーダーに正確に指示を出すことです。「フォワーダーに任せればいい」という姿勢では、細かいミスが生じやすくなります。


また、記名式B/Lを使う場面であっても、輸入者がいる国の法律によって裏書の可否が変わることは前述の通りです。取引相手国の法制度を事前に確認しておくことも実務上の重要なリスク管理です。例えば、中国向け輸出で記名式B/Lを発行した場合、中国の商法では裏書による譲渡が認められていないため、転売や第三者への所有権移転はできません。これは知っていると損を回避できる知識です。


B/Lの種類と使い方を正確に理解しておくことは、貿易実務において代金回収の安全性・スピードを守るための基礎中の基礎です。信用状取引であれば指図式B/L+白地裏書、これが基本です。関税・通関の手続きと同様に、B/Lの知識も一度しっかり身につけてしまえば、実務上のトラブルを大幅に減らすことができます。


JETRO:指図式船荷証券の白地裏書と信用状取引における実務上のルールの解説