iata dgrとは航空危険物規則の種類と申告義務

IATA DGR(航空危険物規則書)とは何か、危険物の9分類から申告書の作成義務、違反時の罰金まで実務に役立つ知識をわかりやすく解説します。輸出担当者が知らないと損するポイントとは?

iata dgrとは:航空危険物規則の基礎と実務

あなたの輸出貨物が無申告扱いになると、50万円以下の罰金と貨物没収が同時に科される。


📋 この記事の3つのポイント
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IATA DGRの正体

IATA DGRとは、世界の航空会社が唯一共通で使用する航空危険物の国際規則書。ICAOの条約に基づき毎年改訂され、2026年は第67版が発効済み。

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危険物は9分類・約3,000品目

火薬類・ガス・引火性液体など9分類で約3,000品目が危険物リストに掲載。香水・スプレー缶・リチウム電池も対象で、見た目だけでは判断できない。

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申告義務は荷送人にある

危険物の分類・梱包・申告書(DGD)作成はすべて荷送人の責任。代行可能だが最終署名は荷送人。違反時は50万円以下の罰金+損害賠償リスクあり。


iata dgrとはどんな規則書か:ICAOとの関係と法的根拠

「IATA DGR」という言葉を初めて目にしたとき、「IATAが作った独自ルールなのか」と思う方は多いかもしれません。しかし実態は少し違います。


IATA DGRとは、国際航空運送協会(IATA) が発行する「Dangerous Goods Regulations(航空危険物規則書)」の略称で、世界中の航空会社が航空危険物を安全に受託・輸送するために使用する国際規則書です。その法的根拠はICAO(国際民間航空機関)が定める「技術指針(Technical Instructions)」にあり、さらにその上位には国連の「危険物輸送に関する勧告(UNモデル規則)」が存在します。


つまり、規則の階層はこのようになっています。


階層 規則・機関名 適用範囲
国連モデル規則(UNModel Regulations) 陸海空すべて共通
ICAO技術指針(Technical Instructions) 航空輸送に特化
各国国内法(日本:航空法第86条) 国ごとの法律
IATA DGR 実務向け再編集版


IATA DGRはICAO規則をより使いやすく実務向きに再編集したものです。各国政府の例外規定(Government Variation)や航空会社ごとの追加規定(Operator Variation)も一冊にまとめられており、輸送実務の現場では「必携書」として扱われています。


重要なのは、IATA DGRに違反した場合はICAO規則への違反にも該当し、日本の航空法第86条に基づく罰則の対象になる点です。これが原則です。


日本の場合、国土交通省の定める航空法および施行規則がICAO技術指針に準拠しており、IATA DGRで規定された内容から逸脱した輸送を行えば、最大50万円以下の罰金が科されます。航空会社のルールではなく、法律に基づく義務という認識が重要ですね。


一般社団法人航空危険物安全輸送協会(JACIS):航空危険物規則の概要(入門編)PDF ※ICAOとIATA DGRの関係、荷送人の法的義務を詳しく解説


iata dgrが定める危険物の9分類:見落としがちな「隠れた危険物」

IATA DGRにおける危険物の分類は、国連モデル規則に基づき9つに分けられています。それだけ聞くと少なそうに感じますが、危険物リスト(DGR 4.2のブルーページ)には代表的なものだけで約3,000品目が掲載されており、その範囲は日常的な製品にまで及びます。


分類番号 名称 主な品目例
第1分類 火薬類 発煙筒・花火・弾薬
第2分類 ガス類(引火性・非引火性・毒性) ライター・消火器・酸素ボンベ
第3分類 引火性液体 ガソリン・アルコール・塗料・香水
第4分類 可燃性固体・自然発火性物質ほか 安全マッチ・活性炭・金属粉
第5分類 酸化性物質・有機過酸化物 漂白剤・化学酸素発生装置
第6分類 毒物・感染性物質 殺虫剤・バクテリア・ウイルス
第7分類 放射性物質 医療用放射性同位元素
第8分類 腐食性物質 酸・アルカリ・水銀・湿式バッテリー
第9分類 その他の有害物質・物品 ドライアイス・リチウム電池・磁石


特に注意が必要なのは「隠れた危険物」と呼ばれるカテゴリーです。貨物の外見や品名だけ見ても、危険物かどうか判断できないケースが実際の現場で多発しています。


- 🧴 化粧品(香水・除光液・マニキュア) → 第3分類(引火性液体)
- 🧰 工具セット(スプレー缶入り) → 第2分類(可燃性ガス)
- 📦 機械部品(溶剤・接着剤含む) → 第3分類または第8分類
- ⚡ モバイルバッテリー単体 → 第9分類(UN3480、IATA DGR第67版で受託手荷物禁止に変更)
- 🚗 自動車部品(エアバッグ・燃料タンク) → 第9分類


「化粧品を輸出したいだけなのに危険物扱い?」と驚く方もいますが、香水には引火性を持つアルコール成分が含まれているため第3分類に該当します。これは意外ですね。


とくに近年問題となっているのがリチウム電池関連です。スマートフォン・ノートPC・電動工具など、現代の製品のほぼすべてに搭載されている成分であり、IATA DGRでは毎年規制が強化される傾向にあります。2026年発効の第67版(第67版)では、機器同梱のリチウムイオン電池(包装基準966)の充電率(SoC)を30%以下にすることが必須要件へと格上げされました。2025年まで「推奨事項」だったものが、今や義務になっています。危険物の範囲と規制内容は毎年変わるということです。


ANA Cargo:IATA航空危険物規則書第67版(2026年)改定に伴うご案内 ※リチウム電池の充電率規制変更など最新の改訂ポイントを公式解説


iata dgrにおける荷送人の責任:DGDの作成義務と2年ごとの資格更新

IATA DGRにおいて、すべての責任の起点となるのは荷送人(Shipper)です。航空会社や通関業者ではなく、「貨物を出す側」の企業または個人が、危険物輸送の最終責任者として定められています。


荷送人が果たすべき義務は、IATA DGRの第1章(DGR 1.3)に明記されており、主な内容は次のとおりです。


- ✅ ICAO/IATA規則および発地国・経由国・着地国の全規則を遵守すること
- ✅ 当該危険物が航空輸送禁止品目に該当しないことを確認すること
- ✅ 危険物を正しく識別・分類・包装し、マーキングとラベリングを施すこと
- ✅ 危険物申告書(DGD: Dangerous Goods Declaration)を作成し、署名して提出すること
- ✅ 出荷準備に携わる全員が所定の教育訓練を受けていること


このうち最も実務上で重要なのが、DGD(危険物申告書)の作成です。DGDとはIATA DGRに基づいて作成する書類で、以下の情報を正確に記載しなければなりません。


| 記載項目 | 内容例 |
|--------|------|
| UN番号 | UN3480(リチウムイオン電池) |
| 正式輸送品目名 | Lithium ion batteries |
| 危険物の分類 | Class 9 |
| 包装基準番号 | PI966 |
| 1包装物当たりの量 | 5kg × 3boxes |
| 荷送人・荷受人情報 | 社名・住所 |
| 発地・目的地空港 | TYO / FRA |
| 荷送人の署名・日付 | 責任者の直筆署名 |


通関業者やフォワーダーがDGDを代行作成することも可能ですが、その場合でも最終的な確認と署名は荷送人が行うことになっています。署名した時点で「この貨物はDGRに準拠している」と宣言したことになるため、内容の責任は荷送人にあります。これが原則です。


もう一点、見落とされがちなのがDGR教育訓練の資格要件です。危険物を取り扱う事業者には、IATA認定の「DGR講習」を修了した担当者を配置することが義務付けられており、この資格は2年ごとの更新が必要です。更新を怠った状態で危険物の出荷業務を行うと、航空会社の受託を断られるだけでなく、法令違反として処理されるリスクがあります。2年という期限があります。


LOGISTIDA:DGD(危険物申告書)の概要と記載内容・実務上の注意点 ※DGD未提出による没収事例と記載ミスの影響を詳しく解説


iata dgrの違反リスク:無申告危険物が引き起こす50万円以下の罰金と損害賠償

関税や輸出入の実務に携わる方に最も知っておいてほしいのが、IATA DGR違反の現実的なリスクです。「知らなかった」は免責理由にならないのがこの規則の厳しいところです。


航空法およびIATA DGRに違反した場合に科される罰則は以下のとおりです。


- 💸 50万円以下の罰金(航空法違反として)
- 💥 無申告危険物によって事故が起きた場合の損害賠償(無制限に及ぶ可能性あり)
- 🏢 社会的責任・信用毀損(取引先・輸送業者との関係悪化)
- 🚫 貨物の没収・廃棄(空港で発見された場合)


痛いですね。特に「損害賠償」は金額が青天井になりえます。過去には、アジア圏の空港でDGD未提出のまま出荷された危険物が没収され、日本企業側に数十万円規模の損害が発生した事例も報告されています。


さらに問題なのが、無申告危険物の発見事例が現場で頻繁に起きている現実です。実際に報告されている発見事例のパターンを見てみましょう。


- ❌ 「化粧品」と記載された貨物 → 開封するとヘアスプレーや除光液が含まれていた
- ❌ 「工具」と記載された貨物 → スプレー缶が同梱されていた
- ❌ 「薬品」と記載された貨物 → 腐食性物質(分類8)のラベルが貼付されていた
- ❌ 引越し貨物 → カセットガスボンベや石油ストーブが含まれていた
- ❌ 機械部品 → リチウムイオン電池ラベルのある包装物が混入していた


これらのケースでは、運送業者の送り状に記載された品名が「化粧品」「工具」などの一般名称であったため、受け付ける段階では危険物と気づかれなかったものです。これは使えそうな教訓ですね。


関税の申告実務に詳しい方であれば、品名の正確な記載の重要性はよく理解されているはずです。IATA DGRでも同じ考え方が適用されますが、ここで求められる「正式輸送品目名(Proper Shipping Name)」は一般的な商品名ではなく、規則書に定められた英語の専用名称です。たとえば「ライター」ではなく「Lighters」ではなく「UN1057, Lighters, 2.1」のように記載しなければなりません。つまり専用の知識が必要です。


日本貨物航空(NCA):危険物はありませんか? ※50万円以下の罰金と航空法関連法規の根拠を明記した公式案内


iata dgrを実務で使いこなす:毎年改訂への対応と輸出担当者が取るべき行動

IATA DGRは毎年1月1日に新版が発効されます。2026年現在は第67版が最新版です。つまり「去年覚えた知識」が今年には通用しないケースが生まれることになります。毎年の改訂が必須確認事項です。


第67版(2026年発効)における主な変更点を整理しておきましょう。


| 変更カテゴリ | 変更内容の要旨 |
|-----------|------------|
| 🔋 リチウム電池(充電率) | PI966(機器同梱)の充電率30%以下が「推奨」→「必須」に変更 |
| 🔋 パワーバンク(モバイルバッテリー) | 予備電池(パワーバンク含む)の受託手荷物への持ち込み禁止 |
| 🚗 車両関連 | UN3166にハイブリッド車が追加。IMP専用コード4種も新設 |
| 🇹🇭 タイの政府例外規定 | 新規追加。放射性物質・病原性物質に事前承認が必要 |
| 📋 受託チェックリスト | 「軽微な不備」の定義が「安全性を損なわないもの」に改定 |


これらの変更は、輸出担当者にとって実務に直結する内容です。特にリチウム電池を含む製品(スマートフォン・ノートPC・電動工具など)を輸出している企業にとって、充電率30%ルールの「必須化」は直接的なオペレーション変更を要します。


では、輸出担当者は具体的にどう対応すればよいのでしょうか。最低限おさえておきたい行動を示します。


- 📌 毎年1月にIATA DGR最新版の変更点を確認する(JACIS・ANA Cargo・JAL Cargoなどの無料案内を活用)
- 📌 DGR教育訓練の修了証の有効期限(2年)を社内カレンダーに登録する
- 📌 輸出する製品にリチウム電池が含まれるか、梱包前に確認する
- 📌 危険物か不明な場合は、フォワーダーかIATA認定業者に分類確認を依頼する
- 📌 DGDのテンプレートを最新版に更新し、記載例を手元に用意しておく


「分類が不明なものは危険物として扱う」という基本原則も覚えておくと安心です。IATA DGRでは、危険物リストにない品目であっても、DGRに定める基準に従えば分類されうる物質はすべて危険物とみなされます。「リストに載っていないから大丈夫」は通用しません。これだけ覚えておけばOKです。


最新版のDGRに関する改訂情報は、JACIS(一般社団法人航空危険物安全輸送協会)やNCA Japanが日本語で定期的に公開しています。無料で確認できる資料も多く、まずこれらを年1回チェックする習慣をつけることがスタートラインになります。


NCA Japan:IATA DGR第67版(2026年)変更点まとめ ※日本語版PDF付きで実務担当者向けに重要変更点を解説


JACIS(一般社団法人航空危険物安全輸送協会):航空危険物規則書第67版主要な改定点PDF ※モバイルバッテリーの受託手荷物禁止など第67版の全改訂一覧