haccp認証取得の流れと輸出通関で使える認証規格の選び方

haccp認証の取得を検討している通関業従事者向けに、認証の種類・費用・手順・輸出先別の選び方を解説。JFS-Bが輸出に使えない理由など、知らないと損する落とし穴も紹介。読む前に確認しておきたいポイントとは?

haccp認証取得の手順と輸出通関に役立つ認証規格の選び方

取得したHACCP認証が輸出先で一切通用せず、商談がゼロになった事例があります。


この記事のポイント3選
🏷️
HACCP認証は「義務」ではなく「任意」

2021年6月にHACCP導入は全食品事業者に義務化されましたが、「認証取得」は任意です。ただし輸出や大手との取引では、認証がないと商談の土俵にすら上がれないケースが急増しています。

⚠️
JFS-Bは輸出に使えない

国内で人気のJFS-B規格は、国際規格ではなくジャパンスタンダード。輸出目的で取得すると海外バイヤーに認められない可能性があり、費用と時間が丸ごと無駄になりかねません。

🌏
輸出先によって必要な認証が違う

米国向けはFSMA対応+FSSC22000、EU向け水産物はEU-HACCP認定、イスラム圏向けはハラール認証——国と品目によって求められる認証は完全に異なります。最初の選択を間違えると二度手間になります。


haccp認証とは何か:導入義務と認証取得の違い

HACCP(ハサップ)とは、食品製造の全工程において危害要因(ハザード)を科学的に分析し、重要管理点(CCP)を継続的にモニタリングする衛生管理手法です。元はNASAが宇宙食の安全確保のために1960年代に開発したシステムで、その後コーデックス委員会(国連FAO/WHO合同機関)が国際基準として各国に普及を推奨してきた経緯があります。


日本では2018年に改正食品衛生法が可決され、2021年6月からすべての食品等事業者にHACCPに基づく衛生管理が義務化されました。ここで通関業に携わる方が注意すべきなのは、「HACCP導入の義務化」と「HACCP認証取得」はまったく別物であるという点です。


義務化されたのはあくまでも「HACCPを実施すること」であり、第三者機関による認証取得は求められていません。つまり、保健所の立入検査でチェックされるのはHACCPが実際に運用されているかどうかであり、認証マークの有無ではないのです。これは基本です。


ただし、輸出食品を扱う現場ではこの話は変わってきます。海外のバイヤーや大手小売チェーンは、取引条件として第三者認証の証明書の提出を求めることが一般的です。認証がなければそもそも商談に進めない、という場面が輸出現場では珍しくありません。通関業従事者として荷主企業をサポートする立場なら、この点を頭に入れておく必要があります。


また、認証の維持には年間を通じた管理コストが発生します。認証機関への更新審査費用(年数十万円)、微生物検査・水質検査・機器校正などの検証費用、そして日々の記録対応にかかる現場の人件費です。特に記録にかかる人件費は見落とされがちなコストで、デジタル化による効率改善を検討する企業が増えています。


項目 HACCP導入 HACCP認証
義務 ✅ 全事業者に義務(2021年〜) ❌ 任意
実施主体 企業自身 第三者認証機関
費用 比較的低い 比較的高い(108万円〜)
輸出・大口取引 証明力なし 証明力あり


haccp認証取得までの流れと期間の目安

HACCP認証を取得するためには、大きく3つの段階を順番に進めていく必要があります。取得期間は規模や業種によって異なりますが、準備から審査完了まで一般的に半年〜1年程度かかります。


まず最初の段階がHACCPシステムの構築です。コーデックス委員会が定める「7原則12手順」に沿って、自社の製造工程を文書化していきます。HACCPチームの編成から始まり、製品説明書の作成、製造工程一覧図の作成、危害要因分析(手順6/原則1)、重要管理点の決定(手順7/原則2)、管理基準の設定(手順8/原則3)と進み、モニタリング方法・改善措置・検証方法・記録保存方法を定めて完成です。この段階だけでおおむね2〜4か月かかります。


次にシステムの運用と記録の蓄積です。作成したHACCPプランをもとに実際の製造現場で運用を開始し、日々の監視記録・温度記録・検証記録を積み重ねます。認証審査では「実際に動いていること」を記録で証明しなければならないため、最低でも3〜6か月分の運用実績が必要です。記録が不足していると審査が通らず、スケジュールが大幅に遅延するケースも少なくありません。


最後が第三者認証機関による審査です。書類審査(第1審査)と現場審査(第2審査)の2段階で実施されます。不適合が見つかると改善を求められ、再審査になることもあります。審査に合格すると登録証(または適合証明書)が発行されます。


  • 📌 現状分析・HACCPチーム編成:2〜4週間
  • 📌 HACCPプラン作成(7原則12手順):4〜8週間
  • 📌 運用開始・記録の蓄積:3〜6か月
  • 📌 認証機関による書類審査・現場審査:1〜2か月
  • 📌 認証取得・登録証発行:合格後に発行
  • 📌 維持審査:年1回(FSSC22000の場合、無通告審査あり)


通関業の現場でよく見落とされるのが、「取引先が求める期限の解釈」です。ISOの場合、一次審査→二次審査→登録という流れになるため、取引先から「〇月までに取得」と言われた場合、それが「審査受審日」なのか「登録証の発行日」なのかによって数か月のズレが生じます。荷主企業への確認を怠ると、せっかくの審査合格が商談に間に合わないという事態になりかねません。


補助金の活用も検討に値します。農林水産省が実施する「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(HACCPハード事業)」では、輸出向けHACCP認定・認証取得のための施設・機器整備に対して250万円〜5億円の補助金が設けられています。令和7年度補正予算でも追加募集が行われており、荷主企業に情報共有するだけでも通関業者としての付加価値になります。


参考リンク(農林水産省による輸出向けHACCP等対応施設整備事業の詳細・最新募集状況):

食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業 - 農林水産省


haccp認証の種類:輸出目的なら規格の選択が命取りになる

HACCP認証と一口に言っても、実は複数の規格が存在します。どれを選ぶかで費用も期間も輸出での有効性もまるで変わります。ここが最重要です。


国内に存在するHACCP認証は大きく4つに分類されます。①厚生労働省による「総合衛生管理製造過程(マル総)」は2020年6月に廃止済み、②地方自治体による「地域HACCP」も廃止が進行中であるため、新規で取得を目指す選択肢は事実上、③業界団体認証と④民間審査機関認証の2系統になります。


業界団体認証は、所属する業界団体(例:大日本水産会、日本冷凍食品協会など)が独自基準で審査するもので、費用は比較的安価(15万円〜)です。ただし取得できるのは自分が属する業界のみで、別業界の認証は受けられません。


民間審査機関による認証が現在最も主流で、農林水産省の調査によると取得率14.4%と、業界団体HACCP(4.0%)・地域HACCP(6.8%)を上回っています。代表的なものが以下です。


規格 難易度 費用目安 輸出対応 特徴
JFS-B 108万円〜 ❌ 国内のみ 日本食品衛生法に基づくJapanスタンダード。国内取引の証明向け
JFS-C 150〜400万円 ✅ GFSI承認 日本語で取得可能なGFSI規格。アジア向け輸出に適切
ISO22000 120万円〜 ✅ 国際規格 食品安全マネジメントシステムの国際規格
FSSC22000 最高 132〜500万円 ✅ GFSI承認 欧米大手が要求する最高水準の国際認証。無通告審査あり


ここで通関業従事者が荷主企業に必ず伝えるべきポイントがあります。JFS-Bは国際規格ではありません。ISOコムの調査では「海外取引を考えている、既に海外との取引がある場合には、FSSC22000かJFS-C規格の取得が大凡の判断」とされており、JFS-Bを輸出目的で取得した場合、海外バイヤーに「取引条件を満たしていない」と判断されるリスクが非常に高いのです。


費用と時間をかけて取得した認証が輸出の現場で無効と判断される——この落とし穴を未然に防ぐのが、通関業務に精通した専門家の重要な役割のひとつです。


参考リンク(HACCP認証と取得にかかる期間・費用について詳しく解説):

HACCP認証の取得にかかる期間・費用 - ISOコム


輸出先国別のhaccp認証要件:通関業者が把握すべき早見表

食品を輸出する通関業従事者にとって最も実務に直結するのが、輸出先国ごとの認証要件の違いです。国と品目によって求められる認証・施設登録・手続きは完全に異なります。「HACCP認証を持っていれば世界中どこでも輸出できる」は誤りです。


まず米国向け食品輸出で押さえるべき点があります。米国のFSMA(食品安全強化法)は「認証制度」ではなく「法律」であるため、「FSMA認証を取得する」という表現自体が誤りです。FDA施設登録(2年ごとの更新が必要)と食品安全計画(Preventive Controls)の策定・運用が法的義務であり、これに加えてFSSC22000などのGFSI承認規格を取得しておくと商談で有利になります。


EU向けで特に注意が必要なのは水産物輸出です。「EU-HACCP」と呼ばれる水産物・水産加工品の施設認定は、水産庁・厚生労働省が所管するもので、EU水産衛生基準への適合が審査されます。一方、菓子・調味料・飲料など水産以外の品目をEUに輸出する場合、このEU-HACCPは対象外であり、添加物・残留農薬・微生物基準への個別対応が別途必要です。「EU向け輸出=EU-HACCPを取ればいい」という思い込みが、実務上の大きな誤りになるケースがあります。


中国向けでは、2022年施行の規則により、肉類・水産物・乳製品などの高リスク食品は日本の厚生労働省を通じてGACC(海関総署)への施設登録が必要です。それ以外の一般食品も中国のCIFERシステムを通じた施設登録が義務付けられており、通関手続きの前に施設登録が完了しているかの確認が必須です。


  • 🇺🇸 米国:FDA施設登録(2年更新)+FSMA対応必須。FSSC22000等GFSI規格で商談有利
  • 🇪🇺 EU(水産物):EU-HACCP認定(水産庁・厚労省経由)が必須
  • 🇪🇺 EU(水産以外):一般HACCP運用+添加物・残留農薬等のEU規則個別対応
  • 🇨🇳 中国:GACC施設登録必須。高リスク品目は厚労省経由申請
  • 🇭🇰🇹🇼 香港・台湾:ISO22000またはHACCP認証が有効
  • 🇮🇩🇲🇾🇸🇦 インドネシア・マレーシア・中東:ハラール認証が必須または強く推奨


輸出先が複数国にまたがる場合、どの認証を基軸にするかが設備投資の内容にも直結します。欧米向けならFSSC22000、アジア圏中心でコストを抑えたいならJFS-C、イスラム圏が含まれるならハラール認証の追加取得が必要になります。通関業者として荷主企業の輸出計画の初期段階からこの視点を共有できると、後工程でのトラブルを大幅に減らすことができます。


参考リンク(輸出先国別の認証要件と認証選びのフローチャートを詳しく解説):

HACCPハード事業・輸出先国別の認証要件を徹底解説 - food-hojo.jp


通関業従事者が荷主企業に提案できるhaccp認証取得のサポート視点

HACCP認証の取得は食品メーカー側の仕事であり、通関業者が関与する領域ではないと思っていませんか。これは実は誤解です。


認証と通関手続きは密接に連動しています。例えば台湾向け輸出では、水産加工品・食肉加工品・乳製品はHACCP準拠の衛生管理を実施していることが施設要件として求められます。認証の有無が通関前の書類審査に直接影響するケースがあるのです。また米国向けでは衛生証明書の発行申請に際し、輸出食品の製造施設が一定の衛生基準を満たしていることが前提となります。


通関業従事者が荷主企業に提供できる付加価値として、具体的に次のような視点が挙げられます。


まず輸出先国の認証要件の事前確認です。輸出する品目と仕向け地が決まった段階で、どの認証が必要か、施設登録はどこに行うかを早期に整理し共有することで、荷主企業の準備期間を確保できます。施設登録の完了まで数週間〜数か月かかるケースもあるため、余裕を持った情報提供が輸出スケジュールの遅延防止につながります。


次に認証書類の通関活用の知識です。HACCP認証書や衛生証明書は、通関時の書類として活用される場面があります。どの証明書がどの輸出先で求められるかを体系的に把握しておくと、書類不備による通関遅延を未然に防げます。衛生証明書の申請は輸出予定日の少なくとも1週間前(都道府県によって異なる)が必要で、申請手数料は1件700円程度かかるケースもあります。


さらに補助金情報の共有です。農林水産省の「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(HACCPハード事業)」は、補助額が250万円〜5億円、補助率は最大2分の1という規模の支援制度です。このような情報を荷主企業に先回りして提供できる通関業者は、単なる手続き代行者ではなく、輸出パートナーとしての信頼を得られます。


最後に認証規格の選択支援です。荷主企業が「とりあえず有名な認証を取ればいい」という判断で JFS-Bを選び、輸出先に通用しないというケースは実際に起きています。輸出目的ならFSSC22000またはJFS-Cが最低ラインであるという知識を共有するだけで、荷主企業の数百万円規模の時間・コストの損失を防ぐことができます。これこそが通関業者としての専門的な付加価値です。


参考リンク(食品輸出に必要なHACCPや施設登録、通関士の役割を網羅的に解説):

食品輸出に資格は必要?HACCPや施設登録、通関士を解説 - Export OS