フェアトレード認証の基準と通関業者が知るべき実務

フェアトレード認証の基準は「倫理的な話」と思っていませんか?実は通関書類のトレーサビリティ要件や産品別ルールが業務に直結します。通関業従事者が押さえるべきポイントとは?

フェアトレード認証の基準を通関業者が押さえるべき理由

フェアトレード認証ラベルが貼られた製品でも、書類が不備だと輸入後にライセンス取消になるケースがあります。


この記事の3つのポイント
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書類トレーサビリティは全産品に必須

カカオ・砂糖などは物理的なトレーサビリティが免除される一方、船荷証券・インボイスへの「フェアトレード」記載はすべての認証事業者に義務付けられています。

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ラベルがあっても登録がなければ違反

海外認証ラベルが貼付されていても、日本国内での流通前にフェアトレード・ラベル・ジャパンへの登録が必要です。未登録での流通はライセンス違反となります。

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複合製品は原料20%以上のルールあり

チョコレートなど複数原料を含む製品が認証ラベルを名乗るには、フェアトレード認証原料が全原料の20%以上であることが条件です。


フェアトレード認証とは何か・基準の全体像

フェアトレード認証は、開発途上国の農家や労働者が安定した収入と労働環境を得られるよう、取引条件を公正に保つための国際的な仕組みです。国際フェアトレード基準(Fairtrade Standard)は、フェアトレード・インターナショナルが設定しており、経済・社会・環境の3つの柱で構成されています。


通関業務との関係で言えば、この基準は「生産者基準」「トレーダー基準」「産品基準」の3層構造になっています。生産者基準は途上国の農家や労働者向けですが、トレーダー基準は輸入業者・卸売業者・製造業者などサプライチェーン上のすべての事業者に適用されます。つまり日本に輸入される認証品を扱う企業は、トレーダー基準を守らなければなりません。


日本のフェアトレード認証市場は2024年に約215億円(前年比+2.2%)に達し、10年前の約2倍に成長しています。コーヒーが市場全体の78.2%を占め、カカオ製品が12.2%と続きます。これは通関業者にとって、フェアトレード認証付き貨物に接する機会が着実に増えていることを意味します。


市場の拡大が続く中、基準への理解は単なる教養ではありません。実務上の書類確認や依頼主への助言において、具体的な知識が必要な場面が増えています。


認証の監査・審査を行う独立機関はFLOCERTといい、ISO 17065の認定機関として定期的な実地監査と書類審査を行っています。FLOCERTはドイツ・ボンに本部を置く独立認証機関で、農場・工場・事務所への現地調査のほか、スタッフへの非公開インタビューも実施します。基準に違反した場合、認証の一時停止や取消につながるため、サプライチェーン上のすべての事業者にとって無視できないルールです。


参考:フェアトレード・インターナショナルによる国際フェアトレード基準の解説(日本語)
国際フェアトレード基準 | Fairtrade.net(日本語)


フェアトレード認証の基準における産品別ルールと通関業者が見落としやすい点

フェアトレード基準には「すべての産品に同じルールが適用される」という思い込みが広まっています。実際には産品ごとに異なるトレーサビリティの要求水準が設定されており、ここを誤解すると書類チェックの精度が落ちます。


トレーサビリティには3つのレベルがあります。①書類上のトレーサビリティ(全認証事業者に必須)、②物理的トレーサビリティ(原則必須だが、カカオ・砂糖・茶・フルーツジュースは免除可)、③マスバランス(カカオ・砂糖・茶・フルーツジュース・FSIコットンに適用)です。


つまり原則です。


物理的トレーサビリティとは、サプライチェーン全体を通じて認証原料と非認証原料を物理的に完全に分離して管理することを意味します。例えばフェアトレード認証コーヒーは、非認証コーヒーと同じ倉庫・輸送コンテナに混載してはいけません。これは通関時の荷姿や梱包単位にも影響します。


一方でカカオや砂糖はどうなりますか?これらはマスバランス方式が認められています。マスバランスとは、工場が調達したフェアトレード認証原料の量と、フェアトレードとして出荷する製品の量をバランスさせる考え方で、物理的な分離は不要です。たとえばある工場がフェアトレード認証カカオを50トン調達した場合、フェアトレードチョコレートを最大50トン分まで製造・出荷できます。


ただし書類上のトレーサビリティは免除ではありません。インボイス・船荷証券などすべての書類に「フェアトレード」の表記と、取引相手のFLO-IDを記載する義務があります。これは全産品・全認証事業者に適用されます。通関業者として書類を確認する際、この記載の有無はチェックポイントの一つになります。


書類上の記載が必要な情報の例を整理すると、以下の通りです。








書類種別 必要な記載
インボイス 「フェアトレード」表記、FLO-ID、取引量・日付
船荷証券(B/L) 「フェアトレード」として識別できる表記
納品書・契約書 フェアトレード価格・プレミアム金額の明示


これらが揃っていない場合、依頼主(輸入者)が認証機関FLOCERTの審査で指摘を受け、認証取消になる可能性があります。厳しいところですね。通関業者として依頼主のコンプライアンスリスクを事前に把握しておくことが、信頼関係の構築につながります。


参考:フェアトレード・インターナショナル公式「トレーダー基準解説書(日本語PDF)」
トレーダー基準 解説書(日本語版)| Fairtrade.net


フェアトレード認証の基準における複合製品の20%ルールと実務上の確認ポイント

フェアトレード認証ラベルが貼られた加工食品を輸入するとき、「認証ラベルがあれば問題ない」という判断は危険です。複合製品(複数原料を含む加工品)には独自の要件があります。


複合製品のルールはシンプルです。フェアトレード認証原料が全原料の重量(または体積)の20%以上含まれていないと、認証ラベルを貼付できません。たとえばチョコレートバーであれば、カカオと砂糖が主要原料ですが、フェアトレード認証を受けていない乳化剤や牛乳も含まれます。こうした場合、認証原料が全体の20%以上あれば認証ラベルは有効です。


ただし注意点があります。水や乳製品が製品重量の50%以上を占める場合は、これらを計算から除外して割合を算出できます。これは使えそうです。たとえばミルクティー飲料のように乳製品が大半を占める場合、実質的に認証原料の比率が上がり、ラベル貼付の要件を満たしやすくなります。


また、フェアトレード認証として入手可能な原料があるにもかかわらず、あえて非認証原料を使うことは原則認められていません。調達困難など例外的な事情がある場合は、フェアトレード・インターナショナルの例外委員会に申請して承認を得る必要があります。例外が認められた場合でも20%ルール自体は維持されます。


複合製品の確認を行う際には、製品の成分表示と認証書類を照合する作業が発生することがあります。通関業者として求められるのは書類の完備確認であり、輸入者が事前に認証機関や依頼主と書類を整備しているかを確認する実務が重要です。


フェアトレード認証の基準と「海外認証済みラベル品」輸入時の登録手続き

ヨーロッパやアメリカで認証を受けたフェアトレード製品を日本に輸入する場合、通関手続きとは別に、フェアトレード・ラベル・ジャパンへの登録が必要です。これが条件です。


海外認証製品のラベルには「国際フェアトレード認証ラベル(Fairtrade Mark)」または「国際フェアトレード認証原料調達ラベル(FSI Mark)」が貼付されています。ラベルが貼付されている事実だけでは、日本国内での流通適格を意味しません。なぜなら、ラベルが貼付されていても有効な認証・ライセンスが維持されていない製品が存在するためです。


流通前登録の具体的な流れは次の通りです。



  1. 輸入製品のラベルを確認(Fairtrade Mark または FSI Mark の有無)

  2. フェアトレード・ラベル・ジャパンの「海外認証製品取扱組織登録フォーム」に記入・提出(無料)

  3. 登録後、パッケージの日本語表記を確認する

  4. プロモーション資材にラベルを使用する場合は別途「ラベル使用許可申請」が必要


登録は無料です。この登録を怠ったまま国内流通させた場合、ライセンス違反となるリスクがあります。通関業者にとっては直接の義務ではありませんが、輸入者がこの手続きを完了しているかを事前に確認しておくことで、後のトラブルを防ぐ助言ができます。


また、日本語表記についても注意が必要です。パッケージ裏面のフェアトレード説明文(Fairtrade Claims)は、可能な限り日本語で表示することが求められています。日本語表記を行わない場合は、元言語の説明文がシールなどで覆い隠されていない状態を維持しなければなりません。これは日本の食品表示法と組み合わせて確認すべき実務ポイントです。


なお、国際フェアトレード認証ラベルはFairtrade Internationalの国際登録商標であり、日本国内でのライセンス使用許可を出す権限を持つ唯一の機関はフェアトレード・ラベル・ジャパンです。無断使用は商標侵害になる可能性があります。


参考:フェアトレード・ラベル・ジャパン公式「海外で認証されたフェアトレード製品を輸入する方へ」
海外認証製品の輸入登録について | Fairtrade.net(日本語)


フェアトレード認証の基準を巡る独自視点:「認証ラベルの種類違い」で通関書類の確認範囲が変わる理由

多くの通関業従事者が見落としがちなのは、フェアトレード認証にはラベルの種類が複数あり、それぞれで書類確認の視点が変わるという事実です。意外ですね。


主要な認証ラベルは3種類あります。



  • 🟡 国際フェアトレード認証ラベル(Fairtrade Mark):製品に含まれるすべての対象原料がフェアトレード認証を受けており、かつ物理的トレーサビリティが確保されている製品に使用できる最高水準のラベル

  • 🔵 矢印付き国際フェアトレード認証ラベル(Fairtrade Mark with arrow):マスバランス方式で調達した1種類の原料からなる製品、またはカカオ・砂糖などマスバランス産品に適用されるラベル

  • 🟢 国際フェアトレード認証原料調達ラベル(FSI Mark):一部の原料のみがフェアトレード認証を受けている複合製品に使用されるラベル(コットンなど)


通関書類を確認する際、Fairtrade MarkとFSI Markでは書類上の確認内容が異なります。FSI Markが貼付された製品の場合、認証対象の原料がどれかを特定し、その原料に紐づくFLO-IDが書類に記載されているかを確認する必要があります。全原料が対象ではないため、どの部分が認証されているのかが書類上で明確でないとトレーサビリティが崩れます。


「ラベルがついているから大丈夫」では不十分ということですね。特に複合製品・加工食品の輸入案件では、依頼主(輸入者)がどのラベルを取得しているのか、そのラベルに対応した書類セットが揃っているのかを確認するアプローチが求められます。


また、フェアトレード認証が取消になった事業者から購入した場合、認証取消日以降にフェアトレードとして販売・輸入することはできません。認証取消の情報はFLOCERTの公開情報でも確認できますが、輸入前に依頼主を通じて現時点の認証ステータスを確認しておくことがリスク回避の基本になります。


2024年のフェアトレード日本市場215億円を支えているのは、こうしたサプライチェーン上の書類管理の積み重ねです。通関業者として正確な知識を持つことは、依頼主への付加価値提供にもつながります。


参考:フェアトレード・ラベル・ジャパン「認証ラベルについて」(日本語)
認証ラベルについて | Fairtrade.net(日本語)