SRCC条項とは 通関業務と保険 適用範囲 注意点

SRCC条項は貿易保険で戦争やストライキに関わる損害を補償する特約条件です。通関業務従事者が知っておくべき適用範囲、自動付帯との違い、実務での注意点を解説。保険期間の意外な制限をご存知ですか?

SRCC条項とは 通関業務と保険の基本

SRCC条項は単独では機能しない特約です。


この記事の3つのポイント
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SRCC条項の正体

ストライキ・暴動・騒乱による貨物損害をカバーする特約条件で、基本約款に追加で付帯する

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保険期間の制限

海上(航空)輸送中のみが対象で、陸上輸送中や倉庫保管中の損害は補償されない

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通関業務での確認事項

ICC条項とセットでの付保状況、保険期間の開始・終了時期、戦争危険との違いを理解する

SRCC条項の定義と基本概念

SRCC条項(S.R.C.C. Risks)は、Strike(ストライキ)、Riot(暴動)、Civil Commotion(騒乱)の頭文字を取った貨物海上保険の特約条件です。この条項は、労働者によるストライキ、職場閉鎖、労働争議、騒擾、暴動といった社会的混乱に起因する貨物の損害を補償します。


国際輸送中の貨物は、通常の海上危険だけでなく、輸送先や経由地における社会情勢の影響を受けるリスクがあります。港湾労働者のストライキで荷役作業が停止し、貨物が損傷するケースも実際に発生しています。つまりSRCC条項は、こうした人為的な社会不安による損害をカバーするための仕組みということですね。


通関業務従事者は、輸入貨物の保険証券を確認する際、この条項の付帯状況を把握する必要があります。なぜなら、保険が付いていない状態で損害が発生すると、荷受人が全額を負担することになるからです。特に政情が不安定な国からの輸入や、労働争議が頻発する港湾を経由する貨物では、SRCC条項の有無が重大な意味を持ちます。


SRCC条項と戦争危険の違い

SRCC条項は戦争危険とは別の特約条件として扱われます。戦争危険(War Risks)は、戦争、内乱、革命、謀反、反乱、これらから生じる国内闘争、加えて捕獲・拿捕、遺棄された機雷・魚雷による損害を補償します。一方、SRCC条項は労働争議や暴動といった、より小規模な社会的混乱をカバーする内容です。


参考)保険条件|外航貨物海上保険|法人のお客さま|三井住友海上


両者の違いは補償の対象となる「事象の規模と性質」にあります。戦争危険は国家レベルの武力衝突を想定しているのに対し、SRCC条項は民間レベルの騒乱を対象としています。どういうことでしょうか?
例えば、港湾労働者が賃上げを求めて荷役作業を拒否し、貨物が雨ざらしで損傷した場合はSRCC条項の適用対象です。しかし、反政府武装勢力が港を占拠して貨物を略奪した場合は戦争危険の対象となります。この区別を理解していないと、保険金請求時に適切な条項を選択できません。


実務では、「War & S.R.C.C.」というセット表記で両方の条項を同時に付帯するケースが一般的です。通関業務で保険証券を確認する際は、この表記があるか必ずチェックする必要があります。


参考)https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/kamotsu/gaiko/pdf/kikan_2202.pdf


SRCC条項の適用範囲と保険期間

SRCC条項の保険期間は、原則として海上(航空)輸送中のみに限定されます。具体的には、貨物が本船(航空機)に積み込まれた時から開始し、最終荷卸港(地)において本船(航空機)から荷卸しされた時、または本船(航空機)が最終荷卸港(地)に到着後15日を経過した時のいずれか早い方で終了します。


参考)https://www.k-cosmos.co.jp/cp-bin/wordpress/wp-content/uploads/2023/12/0754145d9360406d3a6cc2232960fa08.pdf

これは多くの通関業務従事者が誤解しやすい点です。ICC(A)条件などの基本約款は、通常、工場や倉庫から最終目的地までの「ウェアハウス・トゥ・ウェアハウス」で補償されます。しかし、SRCC条項は海上(航空)輸送区間に限定されるため、陸上輸送中や保管倉庫でのストライキ損害は対象外となります。


参考)グローバルビジネスの基礎知識②~協会貨物約款(ICC)とは


例えば、CFR条件で輸入した貨物が、日本国内の倉庫で保管中に労働争議で損傷しても、SRCC条項では補償されません。保険期間は本船からの荷卸し完了時(または到着後15日経過時)で終了しているからです。このような場合、別途国内保険の手配が必要になります。


保険始期については、FOBまたはCFR条件での輸入の場合、貨物が外航本船に積み込まれた時点から開始します。これは「FOB Attachment Clause」により、インコタームズ上のリスク移転時期と保険始期を一致させる仕組みです。


通関業務におけるSRCC条項の確認ポイント

通関業務従事者がSRCC条項で確認すべき最重要事項は、保険証券上の記載内容と貿易条件の整合性です。特にFOB、CFR条件での輸入では、輸入者側が保険を手配するため、SRCC条項の付帯状況を事前に確認しなければなりません。

保険証券には「ICC(A) + War & S.R.C.C.」のような記載があるか確認します。この表記がなく、ICC(A)単独の記載しかない場合、ストライキ・暴動による損害は補償されません。それで大丈夫でしょうか?​
政情が不安定な国や、港湾労働者の権利意識が高い地域からの輸入では、SRCC条項の付帯は必須です。過去には、中南米やアフリカの一部港湾で、長期ストライキにより貨物が数週間も本船に留め置かれ、冷凍コンテナの電源が切られて内容物が全損したケースもあります。この場合、SRCC条項がなければ輸入者が数百万円の損失を負担することになります。


保険金額の設定も重要な確認事項です。通常、CIF価額の110%で付保するのが一般的ですが、輸入税額が高額な貨物では、別途「輸入税保険(Duty Insurance)」の検討も必要です。SRCC条項による損害で貨物が全損した場合、既に支払った輸入税が無駄になるリスクがあるためです。


厳しいところですね。


SRCC条項が機能しないケース

SRCC条項は特約条件であるため、基本約款(ICC条項)とセットで付帯しなければ機能しません。これは「単独では保険として成立しない」という意味です。つまり、SRCC条項だけを付けて基本約款を付けないという契約形態は存在しません。


参考)https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/risk/property/ocean/sche/

もう一つの重要な制限は、経済制裁対象国との取引では保険自体が引き受けられない点です。日本、米国等が経済制裁対象として指定した国、個人、企業との輸出入貨物(三国間を含む)は、SRCC条項に限らず、貨物海上保険全体が適用除外となります。

また、SRCC条項には免責事項があります。例えば、化学兵器・生物兵器・生化学兵器および電磁兵器と呼称されるような物質・生物・機器等を原因とする損害は補償されません。テロ行為であるか否かを問わず、こうした特殊な兵器による損害は別の特約が必要です。


参考)https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/risk/property/ocean/pop1/

実務で注意すべきは、「ストライキが予見できた場合」の取り扱いです。保険契約前に既にストライキの発生が公表されている場合、その特定のストライキによる損害は補償対象外となる可能性があります。これは保険の基本原則である「偶然性」に反するためです。このため、船積み前に港湾の労働情勢を確認し、ストライキの予告がある場合は保険会社に事前通知する必要があります。


損害保険ジャパン 外航貨物海上保険
保険条件の詳細と補償内容について、保険会社の公式サイトで最新情報を確認できます。


JETRO 輸入者側で貨物の保険を手配する際の留意点
輸入貨物の保険手配における実務上の注意点が、貿易実務の観点からまとめられています。