RoHS対応とは何か、通関業者が知るべき規制の全体像

RoHS対応とは何か、通関業務に直結する基礎知識から実務の落とし穴まで徹底解説。EU・中国・各国の規制の違い、CEマーキングとの関係、違反時のリスクとは?

RoHS対応とは何か、通関業者が押さえるべき規制の全体像

CEマーキングがあっても、DoC(適合宣言書)が10年保管されていなければ輸入者があなた自身の責任を問われます。


この記事の3ポイントまとめ
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RoHS対応とは「10物質の含有制限」

鉛・水銀・カドミウムなど10物質が対象。カドミウムのみ0.01wt%、それ以外は0.1wt%以下が原則。EU向け電気・電子機器すべてが適用対象になります。

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EU・中国・韓国など世界中に同等規制が存在

RoHSはEU発祥ですが、中国版RoHS・K-RoHSなど各国版が存在し、仕向国ごとに書類・表示要件が異なります。通関時の確認ポイントが国によって変わります。

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違反時は製品回収+5,000ポンド以上の罰金

EU Safety Gateに登録されると市場から排除され、2022年調査では調査製品の約49%がRoHS違反。通関業者として書類の不備を見抜く目が必要です。


RoHS対応とは何か、基礎となる定義と制定の背景

RoHSは「Restriction of Hazardous Substances」の頭文字をとった略語で、日本語では「有害物質使用制限指令」と呼ばれます。正式には2011年6月8日付けの欧州議会・理事会指令2011/65/EU(通称「RoHS2」)が現行の基準です。


この指令が生まれた背景には、EU域内で廃電気・電子機器(e-waste)の約90%が適切な処理を経ずに埋立・焼却されていた実態があります。鉛や水銀が地下水に浸出し、人の健康や生態系に深刻な影響を与えていました。


つまり「RoHS対応」とは、EU市場に上市する電気・電子機器から10種類の特定有害物質を規定濃度以下に抑えることです。


規制の目的は大きく3つに整理できます。


- 🔵 有害物質の使用制限による人の健康保護(製造・使用・廃棄の各段階でのリスク低減)
- 🟢 廃電気・電子機器からの環境負荷低減(焼却・埋立時の重金属・難燃剤の流出防止)
- 🟡 EU域内での製品流通の統一化(各国バラバラだった基準を一本化して貿易障壁を撤廃)


通関業務の観点からは、この「EU域内での統一化」という目的が最も重要です。RoHSに適合しないとCEマーキングが貼付できず、EU域内に物品を持ち込めないからです。


現行のRoHS2は2003年制定の旧指令(2002/95/EC)を大幅改正したもので、2019年7月22日以降はカテゴリー11(その他の電気電子機器)が追加され、事実上あらゆる電気・電子機器が網羅されています。規制物質も当初の6物質から現在は10物質に拡大されており、改正の度に対象が広がっている点が特徴です。


JETROが公表しているRoHS指令の公式解説は、通関実務での一次情報として最も信頼性が高く、実務での確認に適しています。


JETRO「RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU」 ── RoHS指令の正式定義・対象製品・適用除外を網羅した公式解説ページ


RoHS対応で規制される10物質と閾値の一覧

RoHSの核心は「何を、どれだけ含んでいてはいけないか」という物質管理にあります。規制対象は以下の10物質です。閾値は「均質材料(homogeneous material)あたりの質量分率」で定められており、製品全体の平均値ではない点が重要な落とし穴になります。


| 物質名 | 略号 | 最大許容濃度 | 主な使用用途 |
|--------|------|-------------|-------------|
| 鉛 | Pb | 0.1wt% | はんだ、銅合金、蓄電池 |
| 水銀 | Hg | 0.1wt% | 蛍光ランプ、スイッチ |
| カドミウム | Cd | 0.01wt% | Ni-Cd電池、顔料、メッキ |
| 六価クロム | Cr⁶⁺ | 0.1wt% | 防錆処理(クロメート) |
| ポリ臭化ビフェニル | PBB | 0.1wt% | 難燃剤(樹脂・筐体) |
| ポリ臭化ジフェニルエーテル | PBDE | 0.1wt% | 難燃剤(プリント基板) |
| フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | DEHP | 0.1wt% | 可塑剤(PVC製品) |
| フタル酸ブチルベンジル | BBP | 0.1wt% | 可塑剤(PVC、建材) |
| フタル酸ジブチル | DBP | 0.1wt% | 可塑剤(ラッカー、接着剤) |
| フタル酸ジイソブチル | DIBP | 0.1wt% | 可塑剤(塗料、合成レザー) |


下4物質(フタル酸エステル類)は2019年7月22日に追加されたもので、「RoHS6物質」しか知らない方は要注意です。


通関実務での重要ポイントが2点あります。


ポイント1:「均質材料」単位の判断


0.1wt%という閾値は、機械的に分離できる最小単位(例:はんだ、コーティング膜、樹脂パーツ)ごとに適用されます。たとえばプリント基板全体では問題ない数値でも、はんだ部分だけを取り出したら鉛が閾値を超える場合、それはRoHS違反となります。


つまり部品単体の分析が基本です。


ポイント2:カドミウムだけが0.01wt%


他の9物質が0.1wt%(1,000ppm)なのに対し、カドミウムのみ0.01wt%(100ppm)と10倍厳しい基準が課されています。顔料・メッキ・Ni-Cd電池に使われることが多く、通関書類の数値確認では見落としやすい箇所です。


EU Safety GateのRoHS違反事例(2022年調査)では、329製品を調査したところ164製品(約49%)で違反が確認されています。その内訳は鉛が160件と圧倒的多数を占め、DEHP(42件)、カドミウム(34件)と続きます。これほど違反率が高い規制は珍しく、通関業者として書類確認の精度が問われます。


違反率の高さは意外ですね。


欧州化学品庁(ECHA)のSafety Gateでは、RoHS違反を含む危険製品の通報事例が随時公開されており、どの製品・物質で問題が起きやすいかを確認するのに役立ちます。


月刊化学物質管理「RoHS指令の最近の違反状況」 ── Safety Gate・REF-10報告書に基づくRoHS違反の最新動向と件数の解説


RoHS対応が通関業者に求める書類と適用範囲の確認手順

RoHS対応を正しく理解するうえで、通関業者が特に注意すべきなのが「EU向けの輸入者は製造者と同等の責任を負う」という点です。EU域外(日本を含む)の企業がEU市場に製品を投入する場合、その輸入者(importer)はRoHS指令の義務主体として扱われます。


これが条件です。


具体的に輸入者が準備・確認すべき書類は3点です。


- 📄 適合宣言書(DoC:Declaration of Conformity) ── 製品がRoHS指令に適合していることを宣言する文書。上市後10年間の保管義務あり。


- 📄 技術文書(Technical Documentation) ── 含有物質の試験データ、部品表(BOM)、サプライヤー宣誓書などを含む証跡一式。こちらも10年保管が義務。


- 🏷️ CEマーキング ── DoCと技術文書の整備が前提。製品本体または包装に貼付。


通関段階ではこれらが整備されているかを確認するプロセスが必要です。なお、CEマーキングが製品に付いていたとしても、DoCや技術文書が欠如していれば適合要件を満たしているとは言えません。物品が現物でEU税関を通過できたとしても、市場監視で後から発覚するリスクが残ります。


適用範囲の確認は以下のフローで行います。


1. 定格電圧を確認(交流1,000V以下、直流1,500V以下 → 適用対象)
2. 11カテゴリーへの該当分類(大型家電・IT機器・医療機器・玩具など)
3. 適用除外項目の照合(大型定置産業用工具・大型据付固定装置など)
4. グレーゾーンはJETROのガイドラインや第三者機関で確認


医療機器(カテゴリー8)と監視・制御機器(カテゴリー9)は、他のカテゴリーより遅れて2014年7月22日から適用が開始された経緯があります。これらは「RoHS適用外と思っていた」という誤解が起きやすいカテゴリーなので要注意です。


また、ケーブル・交換用スペアパーツについても「250V未満の電源接続ケーブルおよび交換部品」がRoHSの対象になる点は、見落とされやすい実務上の盲点です。単体で輸入するケーブルでも、用途によっては対象になり得ます。


RoHS対応と中国版・各国RoHSの違い、通関時の仕向国別チェックポイント

「RoHS対応していればどの国にも輸出できる」は誤解です。EUのRoHSはあくまでEU向けの規制であり、中国・韓国・米国など仕向国ごとに別途対応が必要になります。


以下に主要な仕向国・地域別の要点を整理します。


| 地域 | 規制名 | 主な特徴 | 通関時の注意点 |
|------|--------|---------|----------------|
| EU27カ国 | RoHS2(2011/65/EU) | CEマーキング+DoC+技術文書、10年保管 | 書類の言語・内容の整合確認 |
| 中国 | 中国版RoHS(管理弁法) | 製品ラベルへの有害物質含有量・環境保護使用期限の表示義務 | 税関で表示なし → 即摘発対象 |
| 韓国 | K-RoHS | EU10物質と同様の制限 | 輸出先当局の最新要件を確認 |
| トルコ・EAEU | TR037/2016・EAC規制 | EU準拠+現地認証機関登録、EACマーク | ロシア語等の技術文書が必要 |
| 米国(カリフォルニア) | Proposition 65・州別RoHS | 900以上の物質が対象、警告表示義務 | 販売州によって要件が変わる |


特に中国版RoHSは、EU版とは構造が大きく異なります。中国に輸入する電気・電子製品には、グリーンマーク(有害物質が基準以下)またはオレンジマーク(基準超過・環境保護使用期限の数字入り)の表示が義務付けられています。このマークがない製品は、中国税関での摘発対象となります。


中国版RoHSは2026年1月1日より、フタル酸エステル類4物質(DEHP・DBP・BBP・DIBP)が新たに使用制限物質に追加されました(GB/T 26572第1号改正)。EU版RoHSと同様の10物質体制になったことで、「旧来の6物質だけ管理していた」企業は対応が必要です。


これは痛いですね。


また、中国版RoHSでは、日本の親会社が中国の子会社に製品を「転売」する形態でも適用対象となります。「輸出用製品は適用外」という規定はありますが、中国国内市場で販売する場合は適用されるため、仕向けが変わる可能性がある案件では事前確認が不可欠です。


JETROの解説は日本語で中国版RoHSの義務主体・表示方法・罰則を詳しく解説しており、対中通関の際の実務確認に適しています。


JETRO「中国版RoHSに関する留意点」 ── 生産者・輸入者・販売者それぞれの義務と表示方法、罰則について解説


RoHS対応の「適用除外」と通関業者が見落としやすい例外ルール

RoHS対応には「例外ルール(適用除外)」が存在します。規制対象物質であっても、技術的・科学的に代替が不可能な用途については、附属書IIIまたはIVへの収載により期限付きで使用が認められます。これが通関業者にとって判断が難しい部分です。


適用除外の主な例を以下に示します。


| 除外対象 | 附属書番号 | 条件・上限 | 現行期限の目安 |
|----------|-----------|-----------|---------------|
| 高温はんだ(鉛≧85wt%) | 7(a) | 融点183℃超のはんだ中の鉛 | 無期限(代替技術確認まで) |
| 鉛ガラス・鉛セラミック | 7(c)-I | ガラス/セラミック部材に含まれる鉛 | 無期限(技術的代替が見つかるまで) |
| 銅合金(真鍮)中の鉛 | 6(c) | 4wt%以下の鉛 | 2026年12月31日まで延長済み |


特に注目すべきが「真鍮(銅合金)中の鉛4wt%以下の適用除外」です。2025年1月のEU官報で2026年12月31日まで再延長が認められましたが、この期限が過ぎると適用除外が失効します。真鍮部品を扱う輸入案件では、この期限を常に確認する必要があります。


適用除外は万能ではありません。


除外番号ごとに用途・濃度・期限が異なり、「どの除外番号が、いつまで有効か」を技術文書に明記しておかないと、後から問題になることがあります。通関書類としてDoCを受け取る際は、除外番号が明記されているかをチェックする習慣が重要です。


また、医療機器・監視制御機器は附属書IV(別枠)での適用除外が規定されており、最大7年間の猶予が設定される場合があります。一般カテゴリー(附属書III)の最大5年と異なる点も見落とされがちです。


適用除外の最新一覧と延長審査の状況は、欧州化学品庁(ECHA)が管理する公式ページで随時更新されています。


オーミヤ「RoHS指令とは【2025年最新版】」 ── 真鍮・鋼材・アルミなど金属材料の適用除外と延長経緯を具体的に解説


RoHS対応違反のリスクと通関業者が今すぐ実践できる確認プロセス

RoHS違反が発覚した場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。


代表的なリスクは以下の3段階で発生します。


🚨 第1段階:市場監視による指摘・通告
EU Safety Gateに通知されると、違反情報がEU全加盟国に共有されます。2024年のSafety Gate通知件数は4,137件と2023年の3,412件から増加、2022年比では倍増しています。市場監視の強化は明らかな傾向です。


🚨 第2段階:製品の市場回収(リコール)義務
RAPEX(EU緊急警告システム)で通知されると、EU市場に流通している製品を自費で回収しなければなりません。実際に2015年、スロベニアからの報告で中国製プリント基板のはんだに鉛が測定値で80%含有していたことが発覚し、企業がEU市場から排除された事例があります。


🚨 第3段階:罰金と輸出禁止
RoHS違反に対する罰則は各加盟国が国内法で定めますが、代表的な事例として5,000ポンド以上の罰金(英国の例)が知られています。さらに、場合によっては製品の輸出が以降拒否される措置が課され、長期的なビジネス機会の喪失につながります。


通関業者が今すぐ実践できる確認プロセスは4ステップです。


- ✅ ステップ1:インボイス・パッキングリストでHSコードを確認し、電気・電子機器に該当するか判断する
- ✅ ステップ2:CEマーキングの有無と、DoCが添付されているか(または要求できるか)を確認する
- ✅ ステップ3:DoCに適合根拠(適用除外番号、試験機関名、バージョン日付)が明記されているか確認する
- ✅ ステップ4:仕向国が中国・韓国・トルコ等の場合は、EUとは別途の各国版RoHS要件を確認する


この確認プロセスは最低限のラインです。


DoCの不備は荷主に代替書類の提出を求めることが現実的な対応策です。特に中国・ASEAN等の新興国からの輸入品では、DoCが発行されているように見えて内容が不十分なケースが少なくありません。書類の「存在」だけでなく「中身」を確認する目が求められます。


RoHS含む環境規制の最新情報を網羅した実務解説が、UEL株式会社のブログに詳しくまとめられています。


UEL株式会社「RoHS(ローズ)指令とは?基礎から実務までわかりやすく徹底解説」 ── 適用除外の期限管理・グローバル各国規制・REACH・WEEEとの違いを網羅した詳細解説