電話リレーサービスに登録した人の電話番号に間違えてかけると、その通話料はあなたの負担になります。
電話リレーサービスとは、聴覚や発話に困難がある人(以下「きこえない人」)と、きこえる人との電話を、通訳オペレータがリアルタイムにつなぐ公共インフラです。具体的には、きこえない人が手話や文字でオペレータに用件を伝え、そのオペレータが音声に通訳して相手方(きこえる人・企業・行政機関等)へ届けるという流れになっています。
この制度は「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(令和2年法律第53号)」に基づき、2021年7月1日から公共インフラとして正式にスタートしました。提供機関は、総務大臣が全国で1者指定した「一般財団法人日本財団電話リレーサービス」です。つまり国家が認めたサービスということですね。
関税や輸入に関わるビジネスをしている人にとっても、電話リレーサービスはひとごとではありません。取引先や雇用している社員の中に聴覚障害のある方がいる場合、あるいは業者から電話がかかってくる際に「こちらは電話リレーサービスです」というアナウンスで始まる着信を受けることがあります。これが迷惑電話ではないことを知っておくだけで、大切なビジネスの機会を逃さずに済みます。
サービス開始から5年近くが経った現在(2026年2月末時点)、登録者数は電話リレーサービスで約1万9,000名、関連サービスの「ヨメテル」で約3,782名に達しています。しかし、認知度は依然として低いのが現状です。
参考リンク(制度の詳細・総務省公式):電話リレーサービスの法律・制度根拠・交付金の仕組みが解説されています。
電話リレーサービスからの着信は、通常の電話と全く同じように固定電話や携帯電話に届きます。電話を受けると、まず通訳オペレータから「こちらは電話リレーサービスです。耳の聞こえない方などからのお電話を通訳しております」というアナウンスが流れます。これが迷惑電話ではないというサインです。
その後の通話の流れは下記の通りです。
重要なのは、受ける側には費用が発生しないという点です。通話料を負担するのは電話をかけた側のみ。これは原則です。
ただし、通訳オペレータを介するため、通常の電話より若干のタイムラグが生じることがあります。間を置いて相手が反応するのはオペレータが通訳している時間であり、回線が不安定なわけではありません。ビジネスの電話でも、この特性を知っておけばスムーズに対応できます。
輸入・関税ビジネスでは港湾業者、通関業者、配送会社など、さまざまな関係者と電話でやり取りすることが多いです。その中に聴覚障害のある担当者がいるケースも今後増えていきます。対応方法を知っておくことが大切です。
参考リンク(受け方の詳細が政府広報で解説されています)。
電話リレーサービスには、利用者(きこえない人)向けの通話料と、全携帯・固定電話利用者が毎月支払っている「電話リレーサービス料」という2種類の費用が存在します。これは知らないと損する情報です。
◆ きこえない人(発信者)の通話料
| プラン | 月額料 | 固定電話・特定IP電話着 | 携帯電話着 |
|--------|--------|----------------------|----------|
| 月額なしプラン | 無料 | 16.5円/分 | 44円/分 |
| 月額ありプラン | 178.2円/月 | 5.5円/分 | 33円/分 |
緊急通報(110・119・118)への通話は、どちらのプランでも無料です。
◆ すべての電話利用者が負担する「電話リレーサービス料」
実は、電話を持っている全員が毎月わずかな費用を負担しています。2025年度(2025年4月〜2026年3月)の番号単価は1電話番号あたり月額1.1円(税込)です。ドコモ・au・ソフトバンク・楽天など、契約している会社を問わず全員に請求されています。
月1.1円というのは、缶コーヒー1本(約130円)の1%にも満たない金額ですね。多くの人が毎月の明細書でこの項目を見落としているのが実情ですが、これは法律に基づく正当な料金で、拒否することはできません。輸入・貿易ビジネスで複数の電話回線を持っている事業者は、その回線数分だけ負担が生じます。
参考リンク(ドコモの電話リレーサービス料について)。
NTTドコモ:電話リレーサービスの制度
電話リレーサービスの特に重要な機能のひとつが、緊急通報への対応です。意外ですね。
きこえない人が事故や急病に直面したとき、従来は音声での通報が難しく、ファクスやNET119などの代替手段に頼るしかありませんでした。しかし現在は、電話リレーサービスのアプリを使って110(警察)・119(消防・救急)・118(海上保安庁)へリアルタイムに通報できるようになっています。
利用方法は以下の通りです。
「よかったこと調査」(令和6年)によれば、電話リレーサービス利用者のうち約10%が緊急通報の場面でサービスを使ってよかったと回答しています。全登録者の10%ということは、1,900人前後が緊急時にこのサービスに命綱を求めたことになります。これは使えそうです。
輸入ビジネスの現場でも、港湾・倉庫・工場などで聴覚障害のある作業者が働くケースはあります。そういった現場での万一に備え、法人登録を含めてサービスを整備しておくことが、今後の障害者雇用促進の観点からも重要になってきます。
参考リンク(緊急通報の仕組みについて)。
電話リレーサービス公式:制度・サービス概要
電話リレーサービスが公共インフラとして始まったのは2021年7月のことです。しかしながら、2024年12月に実施された最新の認知度調査では、全体の認知度は依然として約2割にとどまっていることが明らかになっています(東京新聞2026年2月22日報道)。
これはビジネス上、特に関税・輸入業務に関わる人にとって見過ごせない数字です。取引先から電話リレーサービスの着信が入ったとき、それを迷惑電話と判断して切ってしまうリスクが現実に存在しています。厳しいところですね。
総務省の検討会報告書(2026年1月)でも「地方では認知度が低い」「迷惑電話と間違われて切られることがある」という利用者の声が多数集まっています。こうした誤認による「通話切断」は、聴覚障害のある利用者にとって大きなストレスとなり、せっかくの公共インフラが機能しないという問題につながっています。
さらに、電話リレーサービスの通訳オペレータはあくまで「通訳者」であり、代わりに交渉を進めたり、内容を書き換えたりする権限は持っていません。受け手側が通訳の仕組みを知らないまま「変な電話」と判断してしまうと、本来成立するはずのビジネスの機会が失われる可能性もあります。
認知度向上のためには、企業や事業者側がこのサービスの存在を知り、社員教育に組み込むことが有効です。たとえば、通関業者や物流会社が「電話リレーサービスからの着信への対応マニュアル」を整備しておくだけで、取引先との無用なトラブルを避けられます。まずはこの記事の内容をメモしておくだけでも十分な第一歩です。
参考リンク(認知度調査の詳細と課題について)。
電話リレーサービス公式:令和6年度認知度調査の結果
電話リレーサービスには、個人登録のほかに「法人登録」という制度があります。これが、関税・輸入ビジネスを営む企業にとって特に注目すべき点です。
法人登録を行うと、その職場に勤める聴覚障害のある社員が、業務上の電話を自分で発着信できるようになります。「よかったこと調査(令和6年)」では、業務改善を実感する人が8割超という結果が出ています。具体的には「代理電話を頼まなくてよくなった」「相手の状況や雰囲気を把握しながら会話できるようになり、仕事のスピードが格段に速くなった」(民間企業社員の声)などが挙がっています。
また、障害者雇用促進法では、企業に対して一定割合以上の障害者雇用が義務付けられており、法定雇用率は段階的に引き上げられています。電話リレーサービスの法人登録は、こうした雇用環境の整備と直接リンクします。つまり法人登録が条件です。
輸入・通関・物流の現場では、電話でのリアルタイムのやり取りが欠かせません。聴覚障害のある優秀な人材をスムーズに活躍させるためにも、電話リレーサービスの法人登録は検討に値します。障害者雇用率達成という義務的な側面だけでなく、職場の多様性を高めるという意味でも積極的に活用したい制度です。
参考リンク(法人登録のメリット・利用者の声)。