VIX指数が20未満でも貿易取引のリスクは急増する可能性があります。
VIX指数は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出する指標で、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティ(値動きの度合い)を基に計算されます。正式名称はVolatility Index(ボラティリティ・インデックス)で、市場参加者が今後1ヶ月で株価がどの程度変動すると予想しているかを示します。
参考)恐怖指数|証券用語解説集|野村證券
数値が高いほど投資家の先行き不透明感が強いとされ、「恐怖指数」という別名で呼ばれています。通常は10から20の間で推移することが多いですが、相場の先行きに大きな不安が生じた時にはこの数値が大きく上昇します。
参考)【Vol.215】株式市場の急変時に注目される「VIX指数」…
計算方法は複雑で、S&P500のオプションから計算対象を選び、それぞれのウェイト(比重)を決定してから数式を適用します。つまり市場の期待値が基本です。
参考)恐怖指数(VIX指数)とは|目安・活用方法を解説
VIX指数は株価と逆の動きをする傾向があり、株価が下落する局面では急上昇し、株価が上昇する局面では低下します。これは投資家心理の変化を如実に反映しているためです。
参考)恐怖指数(VIX指数)とは?数値からわかることや市場における…
過去の事例を見ると、2001年の米国同時多発テロ発生時にVIX指数は43を記録し、2008年の金融危機では80.16という異常な高水準に達しました。2020年のコロナショックでも急騰しました。
参考)ティッカートーク|VIX指数とは?「恐怖指数」と呼ばれる所以…
この逆相関性は通関業務従事者にとっても重要な意味を持ちます。株価下落局面では為替が円高に振れやすく、輸入コストや輸出採算に直接影響するからです。VIX指数が30を超えると市場はパニック状態です。
参考)VIX指数(恐怖指数)とは?見方や目安 投資方法までわかりや…
VIX指数の具体的な数値によって、市場の心理状態を以下のように判断できます。
参考)VIX指数とは?投資家が知るべき市場の恐怖指数
通常時は10から20の範囲に収まることが多いため、20を超えると強い警戒感を示すサインとされています。通関業務では、VIX指数が20を超えた時点で為替リスクヘッジの検討を始めるタイミングといえます。
数値の急上昇は一時的で、やがて平常時の水準に戻る「平均回帰性」という特徴があります。これを理解しておくことが重要です。
VIX指数の上昇は、通関業務従事者にとって複数のリスク要因となります。市場の不安定化に伴い、為替レートが大きく変動するため、輸入申告価格の算定や決済レートの予測が困難になります。
参考)『VIX指数』が示す米中貿易摩擦への不安度
特にドル建て取引では、VIX指数が30を超える局面で円高方向に急激に振れるケースが多く、輸入者の円換算コストが想定外に上昇するリスクがあります。東京ドーム約5個分の広さに相当する大規模倉庫に保管された在庫の評価額も、為替変動で数千万円単位で変わる可能性があります。
また、グローバルサプライチェーンの混乱も懸念されます。リスクオフの動きが強まると、輸送費や保険料が上昇し、通関手続きのコスト構造全体に影響します。
参考)https://www.mdpi.com/1911-8074/15/3/126/pdf
貿易取引では、VIX指数が急騰した際に為替予約や金融商品によるヘッジ戦略を検討することが有効です。この局面では円高リスクに備え、為替予約を活用すれば為替差損を回避できます。ただしタイミングが重要です。
参考)VIX(恐怖指数)とは?投資家心理がわかる指標の見方と分析法…
日本市場には「日経平均VI」という独自の恐怖指数があり、日経平均株価のオプション価格を基に日本経済新聞社が算出しています。これとVIX指数を比較することで、リスクの源泉がどこにあるのかを推測できます。
参考)日経VIの推移とチャート(日経平均株価とVIX指数と比較)
両方の指数が同時に急騰している場合は、米国発の世界的なリスクが市場を揺るがしている可能性が高いです。一方、VIX指数は低いのに日経平均VIだけが急騰している場合は、日本国内に固有の問題が発生している可能性が高くなります。
通関業務では、この比較分析により輸出入のどちらにリスクが偏っているかを判断できます。米国市場の混乱なら輸出取引への影響が大きく、日本市場固有の問題なら輸入取引での円安リスクが高まります。これが判断基準です。
日経平均VIの過去最高値は2008年10月31日の91.45で、通常は25を割ると日経平均株価は押しが効きやすく、15以下になると急落の可能性が高まる傾向があります。
VIX指数が30を超える局面では、逆張り投資が有効とされています。市場がパニック状態のときに段階的に買いを入れることで、その後の市場回復局面で大きなリターンを得られる可能性があります。
参考)VIX指数と順張り投資、逆張り投資の関係
2020年3月23日近辺でS&P500のETFを買った場合、6ヶ月で約40%、1年後には約70%のリターンが得られた実績があります。2022年のデータでは、VIX30超で買い、VIX20未満で売る戦略は年間25.6%のリターンを記録しました。
ただし逆張りはタイミングが難しいため、リスク管理の徹底が必要です。VIXが30を超えたら資金の3分の1ずつ段階的に買い増す戦略を使えば、底値を見極めるリスクを軽減できます。これは基本戦略です。
通関業務従事者が為替リスクを管理する際も、VIX指数30超の局面で円高ポジションを段階的に構築し、市場安定後に解消する手法が考えられます。