遺伝子組み換え作物デメリット通関業務従事者が知るべき輸入検査リスク

遺伝子組み換え作物の輸入には通関時の特別な検査義務があり、違反すると業務に重大な影響が出ます。通関業務従事者が押さえるべきデメリットと検査体制の実態とは?

遺伝子組み換え作物デメリット

カルタヘナ法違反の遺伝子組み換え種子を通関させると、あなたの会社に営業停止処分が出ます。

この記事の3ポイント
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通関時の検査義務

遺伝子組み換え作物には植物防疫法とカルタヘナ法の二重検査が必須で、未承認品の輸入は法律違反になる

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環境リスクと交雑問題

除草剤耐性遺伝子が雑草に移ると管理コストが増大し、在来作物との交雑で生物多様性が損なわれる可能性がある

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表示義務と書類管理

大豆、トウモロコシなど7品目は厳格な表示義務があり、分別生産流通管理の証明書類が不備だと通関できない

遺伝子組み換え作物の通関時に求められる検査体制


遺伝子組み換え作物を輸入する際、通関業務従事者は二つの法律に基づく検査手続きを理解する必要があります。植物防疫法による検疫検査と、カルタヘナ法に基づく遺伝子組み換え生物の検査です。
参考)https://www.callus.lif.kyoto-u.ac.jp/kenkyu/GMseedimport.pdf


植物防疫所では、輸入時にLMO(Living Modified Organism)を対象とした検査を実施しています。検査では種子等のサンプリング、DNAの抽出、遺伝子診断法を用いた組換え遺伝子の検出を行います。この検査は農林水産省消費・安全局長通知に基づいて実施されており、検査に不合格となった場合は輸入が認められません。
参考)(関連情報)カルタヘナ法に基づく栽培用種子等の輸入時の検査に…

つまり二重チェックが原則です。
通関代理店担当者は植物防疫官の立ち会いのもとで梱包を開封し、検査を受ける必要があります。税関検査の前に行われるこの手続きを省略すると、法律違反となるリスクがあります。特に栽培用種子の輸入では、事前に農林水産大臣の許可を得て、申請内容の審査と保管管理場所の実地調査を受けなければなりません。​
日本で輸入が承認されている遺伝子組み換え作物は、トウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタ、テンサイ、ジャガイモ、パパイヤの7品目です。これら以外の作物や、承認されていない組み換え系統の輸入は認められていません。
参考)よくある質問|日本で流通している遺伝子組み換え食品にはどのよ…

検査不備は会社の信用問題に直結します。

遺伝子組み換え作物の環境への影響と交雑リスク

遺伝子組み換え作物のデメリットとして、環境への影響が挙げられます。最も懸念されているのが、除草剤耐性遺伝子を持つ作物の花粉が雑草に移る可能性です。
参考)「遺伝子組み換え」の安全性とは? なぜ賛否両論を巻き起こして…


アメリカでは実際に、除草剤に耐性を持った雑草が発生した事例が報告されています。除草剤に耐性をもった遺伝子組み換え作物と周辺の雑草が交配することで、除草剤に強い雑草ができてしまいました。その結果、除草剤の使用量が以前より増加し、複数の除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を作らざるを得なくなりました。
参考)遺伝子組み換え作物の安全性はどうなの?環境と健康への影響につ…

これは農業コストの増大を意味します。
日本の研究でも、組み換え大豆と近縁野生種のツルマメとの自然交雑が調査されています。開花期を人為的に重複させ、両者を近くで栽培したところ、自然雑種が生じる可能性は1000分の1程度でした。ただし、管理された一般の大豆栽培では交雑頻度はさらに低くなると考察されています。
参考)新着情報|日本雑草学会 シンポジウム「遺伝子組み換え植物の生…

農林水産省は遺伝子流入の可能性は極めて低いと発表していますが、実験方法に問題があると指摘する研究者もいます。環境への長期的影響については、まだ完全には解明されていない部分があるのが現状です。​
在来作物が栽培困難になる懸念もあります。遺伝子組み換え作物を在来の作物と同じ農地で栽培すると、病気や害虫、除草剤に耐性をもった遺伝子組み換え作物の方が繁殖しやすくなるためです。​

遺伝子組み換え作物の健康リスクに関する研究データ

遺伝子組み換え作物の安全性については、賛否両論があります。統計的・疫学的に安全性が完全に確立されていないという指摘があり、特に海外での健康被害を論じる声が高まっています。
参考)「遺伝子組換え技術」は誰がため?食品表示の裏側とメリット・デ…

ロシアのイリーナ・エルマコヴァ博士が行った実験では、遺伝子組み換え大豆を食べさせ続けたラットは、非遺伝子組み換え大豆を食べさせ続けたラットに比べて、新生児の発育が悪く死亡率が高まると発表されています。長期間食べ続けると子や孫の代まで影響する可能性が示唆されています。​
世代を超える影響は重大です。
カナダで行われた調査では、93%の妊婦と80%の胎児の血液から、遺伝子組み換えトウモロコシに含まれるBt毒素(害虫を殺す成分)が発見されました。飼料を米国に依存している日本でも、同じ結果が出る可能性が高いと考えられています。
参考)No.214 遺伝子組み換えがもたらす危険 « …

一方で、厚生労働省によれば、これまで20年以上遺伝子組み換え作物は食品や飼料として利用されており、健康に悪影響を与えたと確認された事例は1例もないとされています。厳しい安全性審査を経た製品のみが流通しており、その安全性は世界中の専門家により担保されているという立場です。
参考)遺伝子組み換え作物の健康への影響と安全性|バイテク情報普及会

アルゼンチンでは、遺伝子組み換え大豆に空中噴霧するラウンドアップという農薬によって、住民のガンや白血病、出生異常など多くの健康被害が発生しているという報告もあります。これは作物そのものではなく、農薬による影響ですが、遺伝子組み換え農業のシステム全体として考えるべき問題です。​

遺伝子組み換え作物の表示義務と通関書類の管理

通関業務従事者にとって重要なのが、遺伝子組み換え食品の表示制度です。食品表示基準により、義務表示と任意表示の二つのルールが定められています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/0103/dl/tp0329-2.pdf


表示義務の対象となるのは、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜の7種類の農産物と、これを原材料とし加工工程後も組み換えられたDNAまたはこれによって生じたたん白質が検出できる加工食品です。​
7品目だけ覚えておけばOKです。
加工品の原材料として表示義務となるのは、原材料の重量に占める割合の高い上位3位までのもので、かつ原材料と添加物の重量に占める割合が5%以上のものです。醤油や植物油といったDNAが検出できない食品については表示義務はありません。
参考)どう変わる? 「遺伝子組換え表示制度」改正で変わる食品選びの…

2023年4月1日から施行された改正制度では、任意表示に関するルールが変更されました。適切に分別生産流通管理された旨の表示が可能になり、消費者の誤認防止や選択の機会の拡大につながるとされています。
参考)【2023年4月1日施行】遺伝子組換え表示制度の改正内容や対…

輸入時には、分別生産流通管理(IP管理)の証明書類が必要です。この書類が不備だと通関時に問題が発生し、貨物の引き取りが遅れる可能性があります。通関代理店は、荷主に対して適切な書類準備を事前に確認する必要があります。
米国からの輸入トウモロコシは日本の輸入量の約75%を占め、米国における遺伝子組換えトウモロコシの栽培率は88%です。ダイズについても、日本の輸入量の約65%が米国からで、米国における遺伝子組換えダイズの栽培率は93%に及びます。
参考)https://syouei-farm.net/anzen/200602/

つまり米国産は高確率で組み換え品です。

遺伝子組み換え作物のアレルギーリスク評価

遺伝子組み換え作物で新たに懸念されるのがアレルギーリスクです。遺伝子の導入によって新たに作られたタンパク質がアレルギーの原因とならないかについて、国際基準に則って詳しく調べられています。
参考)よくある質問|「承認されている遺伝子組み換え作物も、アレルギ…


安全性評価では以下の項目が調査されます:​


  • 組み込む遺伝子の供与体のアレルギー誘発性に関する知見

  • 新たなタンパク質のアレルギー誘発性に関する知見

  • 新たなタンパク質の物理学的処理(人工胃液、人工腸液、加熱など)に対する感受性

  • 新たなタンパク質と既知のアレルゲンとの構造的な相同性

議論になるのは最後の項目です。
タンパク質は20種類のアミノ酸がつながってできており、アレルゲンとなるアミノ酸配列と似ているものはアレルギー反応を引き起こす可能性が高いと考えられています。2002年にオランダの研究者クレターが、条件を変えて比較したところ、より多くのアレルゲンとの一致がみられたと発表しました。​
これまでに商品化された遺伝子組み換え食品の中で、新たに作られたタンパク質が原因でアレルギーが引き起こされたという事例はありません。しかし、その可能性は極めて低いものの、ゼロではないという認識が重要です。​
通関業務で食品を扱う際には、アレルゲン情報の確認も必要になります。特に加工食品の場合、原材料にアレルギー物質が含まれていないか、適切な表示がされているかを確認する必要があります。
表示不備は輸入者に罰則が科されます。

遺伝子組み換え作物輸入における通関業務の実務対応

通関業務従事者が遺伝子組み換え作物を扱う際の実務対応について解説します。まず重要なのが、事前の書類確認です。
輸入禁止品に該当しない植物を輸入する場合、事前に輸出国において植物検疫機関の検査を受け、当該機関が発行する植物検疫証明書(Phytosanitary certificate)を取得し、植物に添付して輸入する必要があります。この証明書がない場合、通関手続きを進めることができません。​
証明書は絶対に必要です。
遺伝子組み換え植物の輸出入に関しては、植物防疫法への対応は主に輸入者側の手続きが中心となり、カルタヘナ法への対応は輸出者側に情報提供等の義務があります。したがって、遺伝子組み換え植物の輸出入に際しては、事前に輸出側と輸入側で十分な情報交換を行う必要があります。​
宅配便で輸入する場合も注意が必要です。外国郵便物の通関手続きを行う郵便事業株式会社で事業所職員立ち会いの下、植物防疫官が輸入検査を行います。検査に合格した郵便物は外装に「植物検査合格証印」が押印されます。​
携帯品として輸入する場合でも、入国時の空港で税関検査の前に植物検疫カウンターで検査を受ける必要があります。これを知らずに持ち込もうとすると、没収される可能性があります。​
日本では、環境に対する安全性(生物多様性への影響)、食品としての安全性、飼料としての安全性について科学的な評価を行うことが法律で定められています。この審査をクリアした遺伝子組み換え作物だけが日本へ輸入され、国内での流通、利用、栽培などを許されます。
参考)(遺伝子組み換え作物)日本の規制|バイテク情報普及会

未承認品の輸入は重大な違反行為です。
通関業務従事者は、輸入される貨物が承認済みの遺伝子組み換え作物であるかを確認する責任があります。厚生労働省のウェブサイトでは、安全性審査を経た遺伝子組み換え食品及び食品添加物のリストが公開されているため、事前に確認することが可能です。
リスク回避には最新情報の確認が不可欠です。輸入申告前に、農林水産省や厚生労働省の公式サイトで最新の規制情報を確認し、必要な書類が全て揃っているかをチェックリストで管理する習慣をつけることをおすすめします。
農林水産省:カルタヘナ法に基づく栽培用種子等の輸入時の検査
こちらのページでは、カルタヘナ法に基づく検査の詳細な手順と必要書類について解説されています。通関業務で遺伝子組み換え作物を扱う際の必須情報源です。
厚生労働省:遺伝子組換え食品Q&A
遺伝子組み換え食品の安全性審査や表示制度について、よくある質問と回答がまとめられています。顧客からの問い合わせに対応する際の参考資料として活用できます。

項目 内容 確認ポイント
対象品目 大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタ、テンサイ、ジャガイモ、パパイヤの7品目​ 輸入する作物が対象品目に該当するか
検査機関 植物防疫所​ 通関前に植物防疫官の検査を受けたか
必要書類 植物検疫証明書(Phytosanitary certificate)​ 輸出国の植物検疫機関が発行した証明書があるか
表示義務 原材料の重量に占める割合の高い上位3位まで、かつ5%以上のもの​ 加工食品の場合、適切な表示がされているか
法的根拠 植物防疫法、カルタヘナ法、食品衛生法、食品表示基準 各法令の要件を満たしているか


📋 書類管理の不備は通関遅延の原因になります
🌾 未承認品の輸入は法律違反で罰則対象です
⚖️ 複数の法令が関わるため横断的な知識が必要です
🔍 最新の承認リストを常に確認する習慣をつけましょう
遺伝子組み換え作物の通関業務は、専門知識と細心の注意が求められる分野です。環境リスク、健康リスク、法的リスクの三つの側面から、適切な対応を心がけることが重要です。




遺伝子組み換え作物に未来はあるか