iata危険物規則書でリチウム電池を正しく航空輸送する方法

IATA危険物規則書(DGR)に基づくリチウム電池の航空輸送ルールを徹底解説。UN番号の見分け方・梱包基準・SOC30%制限・危険物申告書まで、輸送トラブルを防ぐための知識を網羅。あなたは正しく対応できていますか?

iata危険物規則書とリチウム電池の輸送ルールを完全解説

リチウム電池単体を100%充電で貨物機に積んでも問題ないと思っていたら、2026年から輸送禁止になります。


📦 この記事で分かること
IATA危険物規則書(DGR)の基本

毎年改訂されるDGRがリチウム電池輸送のルール源。2026年版(第67版)での変更点も含めて解説します。

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UN番号・梱包基準・SOC制限の実務

UN3480/UN3481の違い、PI965〜PI967の梱包区分、充電率30%制限まで、現場で使える知識を整理します。

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危険物申告書と書類準備のポイント

申告書が不要なケース・必要なケースの判断基準と、書類不備で貨物拒否を食らわないための確認手順を解説します。


iata危険物規則書(DGR)とは何か:リチウム電池輸送の根拠ルール

IATA(国際航空運送協会)が毎年発行する「航空危険物規則書(DGR:Dangerous Goods Regulations)」は、リチウム電池を含む危険物を安全に航空輸送するための実務基準書です。


この規則書は、国連の「危険物輸送勧告」とICAO(国際民間航空機関)が定める「技術指針(Technical Instructions)」を土台に作られており、世界中の航空会社が運用する事実上の国際標準です。重要なのは、DGRは毎年1月1日に新版が発効するという点です。


2026年1月1日からは第67版が適用されています。改訂のたびに規制が厳格化される傾向があり、一度覚えた知識が翌年から無効になることも珍しくありません。


リチウム電池が「危険物(Dangerous Goods)」として扱われる理由は、発火・爆発リスクにあります。電池内部の電解液は可燃性を持ち、過充電・損傷・高温環境下で「熱暴走」と呼ばれる制御不能な発熱反応を引き起こします。一度熱暴走が始まると、通常の消火剤では鎮火が難しく、再出火する可能性も高い。


航空機は上空で密閉された環境に置かれるため、地上と比べて消火活動が著しく制限されます。これが航空輸送でリチウム電池に特に厳しい規制が課される理由です。


DGRの対象は荷送人(荷主)・フォワーダー・航空会社・地上ハンドリング業者と広範囲に及びます。関税業務に携わる場合でも、輸出入書類作成や申告の場面でリチウム電池製品が含まれる貨物を扱う機会は多く、ルールの全体像を把握しておくことは実務上の必須事項です。


JALCARGOによるリチウム電池の航空輸送ルール解説:旅客機と貨物専用機の違い、包装基準、積み重ね要件まで詳しく説明されています。


iata危険物規則書のリチウム電池分類:UN番号とWhの見方

DGRでリチウム電池を輸送する際、最初に確認すべきなのはUN番号(国連番号)です。これは危険物を国際的に識別するための4桁の番号で、このUN番号によって梱包基準や必要書類が変わります。


リチウムイオン電池(充電式・二次電池)に関係する主なUN番号は次の2つです。


UN番号 対象 具体例
UN3480 リチウムイオン電池単体 モバイルバッテリー、交換用バッテリーパック
UN3481 機器に内蔵・装着または同梱 スマホ・ノートPC内蔵電池、機器と同梱された予備電池


※なお、充電不可の使い捨て「リチウム金属電池」はUN3090・UN3091となります。本記事ではリチウムイオン電池を中心に説明します。


次に、ワット時定格量(Wh)を確認します。これはリチウム電池の容量を示す指標で、式は「Wh=定格容量(mAh)×公称電圧(V)÷1,000」です。たとえば5,900mAhで7.2Vのバッテリーパックなら42.48Whとなります。はがきサイズの薄いバッテリーパックでも、ノートPC用なら40〜100Wh程度の容量を持つものが多いです。


Whが輸送規制に直結する理由は、容量が大きいほど熱暴走時のエネルギー放出量が大きくなるからです。


分類 セル(単電池) バッテリー(組電池)
比較的少量規制(Section II適用可) 20Wh以下 100Wh以下
完全危険物扱い(Section I以上) 20Wh超 100Wh超


100Whを超えるバッテリーは、原則として旅客機への搭載が禁止です。貨物専用機(フレイター)でしか運べません。これが基本です。


さらに重要な点として、リチウムイオン電池単体(UN3480)は旅客機の貨物室での輸送が2015年以降、原則禁止されています。手荷物の機内持ち込みとは別の話なので混同しないよう注意が必要です。


東京都中小企業振興公社による輸出実務解説:UN番号・Whによる分類から、航空・海上それぞれの梱包基準・提出書類まで丁寧に整理されています。


iata危険物規則書の梱包基準(PI)と充電率30%制限の実務

UN番号とWhの区分が決まったら、次は梱包基準(Packing Instruction=PI)に従って実際の梱包を準備します。PI番号によって容器の種類・貼付ラベルの種類・1梱包あたりの重量制限が異なります。


実務でよく登場するPIをまとめると次のとおりです。


  • PI965(UN3480:リチウムイオン電池単体):貨物専用機でのみ輸送可。Section IAは100Wh超でUN規格容器必須、1梱包35kgまで。Section IBは100Wh以下でUN規格容器は不要、1梱包10kgまで。どちらもCAO(Cargo Aircraft Only)ラベルが必要。
  • PI966(UN3481:機器と同梱されたリチウムイオン電池):Section Iは旅客機5kg/貨物機35kg。Section IIは少量輸送向けで旅客機・貨物機ともに5kgまで、UN規格容器は不要。
  • PI967(UN3481:機器に内蔵・装着されたリチウムイオン電池):機器組み込み品に適用。Section IIは100Wh以下で旅客機・貨物機ともに5kgまで。


「UN規格容器」とは、国連が定めた性能基準を満たした危険物専用容器のことで、外箱に「UN」マークが刻印されています。これが必要なケースでは、一般的な段ボール箱では受理されません。厳しいですね。


2026年から新たに義務化されたのが「充電率30%制限(SoC制限)」です。SoCとはState of Chargeの略で、満充電を100%としたときの充電状態を示す値です。PI965 Section IA・IB(UN3480)およびPI966 Section I(UN3481機器同梱)において、電池の充電率を定格容量の30%以下にして輸送することが必須となりました。


つまり、電池を70%以上使い切った状態でないと貨物機に積めないということです。これは、万一熱暴走が起きても放出されるエネルギーを最小限に抑えるための措置です。


この30%制限は2025年から「推奨」として先行導入されていましたが、2026年1月1日以降はPI952・PI965・PI966において「義務」となりました。PI967(機器に内蔵・装着されている場合)については引き続き推奨にとどまる部分もありますが、航空会社独自の規定でより厳しく設定されているケースがあります。


30%という数字をイメージしにくい場合は「スマホを充電残量30%以下の状態にしてから梱包する」と考えると分かりやすいです。


SoC制限に対応するためには、出荷前に電池を放電させる工程を製造・梱包フローに組み込む必要があります。これを見落として出荷しようとすると、航空会社の受付でその場で引き取り拒否になります。注意が必要です。


MS&ADコンパスによるリチウムイオン電池の国際規制動向解説:IATA DGRの改定履歴と充電率制限の背景・海上輸送規制との比較まで詳しくまとめられています。


iata危険物規則書で必要な危険物申告書(DGD)とラベル表示の落とし穴

梱包が完成したら、ラベル表示と書類準備のステップに進みます。ここでのミスが貨物拒否や輸送遅延に直結するため、特に慎重な確認が求められます。


リチウム電池の航空輸送で使用される主なラベルは以下のとおりです。


  • 🔖 第9分類危険物ラベル(Class 9 Lithium Battery Label):白黒の縦縞模様が特徴。危険物として輸送されるリチウム電池のすべての包装物に必要。
  • 🔖 CAOラベル(Cargo Aircraft Only):オレンジ色の背景に「CARGO AIRCRAFT ONLY」の文字。旅客機搭載禁止の貨物に貼付。
  • 🔖 リチウム電池マーク:UN番号・緊急連絡先電話番号を記載する比較的新しい形式のマーク。Section IIの輸送でも必要になるケースが多い。


2026年の第67版改定では、ラベルの配置ルールも変更されました。包装物の寸法が十分であれば、電池マークと第9分類ラベル以外の危険物ラベルは同一の面に貼付しなければならないという規定が追加されています。


書類面では、「危険物申告書(DGD:Shipper's Declaration for Dangerous Goods)」の要否がポイントです。


  • 📄 Section IIに該当する少量輸送の場合:独立した危険物申告書は不要。航空貨物運送状(AWB)への記載でOK。
  • 📄 Section I・IA・IBに該当する場合:独立した危険物申告書が必須。荷送人が内容を宣言・署名する形式。


申告書が不要なケースでも油断は禁物です。Section IIでも航空会社独自の様式への記載や、SDS(安全データシート)・UN38.3試験サマリーの提出を求められるケースが多いです。


UN38.3試験とは、リチウム電池が国連試験基準をクリアしていることを証明するもので、振動・衝撃・温度変化などの過酷な試験に合格した電池だけが輸送可能となります。電池メーカーが作成する文書を取得して手元に保管しておく必要があります。


書類や記載内容に些細な不備があっても、航空会社の受付で貨物が拒否される可能性があります。2026年版DGRでは、些細な不一致に関する判断基準の記載が改訂されており、航空会社ごとの対応に幅があることも念頭に置いておくと安心です。


航空危険物安全輸送協会(JACIS)によるDGR第67版(2026年)主要改定点まとめ:梱包基準・ラベル規定・手荷物ルールの変更点が簡潔に整理されています。


iata危険物規則書の2026年版(第67版):改定で変わった重要ポイント

2026年1月1日に発効したDGR第67版では、リチウム電池に関する複数の実務的な変更が行われました。関税・輸送実務に関わる方が押さえておくべきポイントを整理します。


① SoC制限の経過措置終了


PI952・PI965・PI966 Section Iにおいて、電池の充電率と表示電池容量に関する経過措置規定(2025年12月31日まで)が終了しました。2026年以降は充電率30%以下が完全に義務化されています。これが原則です。


② モバイルバッテリーの受託手荷物禁止が明確化


従来から原則禁止だったモバイルバッテリー(Power Bank)の受託手荷物への持ち込みが、第67版で明文化されました。加えて、客室内での予備電池・モバイルバッテリーの取り扱いについて、新たな推奨規定が追加されています。具体的には「機内電源で充電しない」「地上移動・離着陸時に他のデバイスへの充電に使用しない」「頭上の収納棚に入れない」などです。


③ ハイブリッド車両の品目名追加


危険物リストに「Vehicle, flammable gas powered hybrid」「Vehicle, flammable liquid powered hybrid」という新しい品目名(いずれもUN3166)が追加されました。EV・ハイブリッド車両の輸送を扱う場合にも影響します。これは使えそうです。


④ 積み重ね要件(2025年導入分の継続)


2025年1月から導入された「積み重ね要件」は第67版でも継続されています。リチウム電池が入った包装物は、同一物を高さ3m(東階建てマンションの1階分強の高さ)まで積み上げ、24時間経過後も損傷がない状態を保てる容器構造が条件です。


⑤ 2027年版に向けた予告改定


第67版には、2027年1月1日から発効予定の変更内容も付録Hで事前告知されています。ナトリウムイオン電池(UN3551)への規制拡大、輸血用血液への例外規定追加、データロガーへの例外拡大などが含まれています。最新情報の確認が条件です。


この規則書は毎年1月1日に改訂版が発効するため、昨年の知識がそのまま使えるとは限りません。輸出入業者やフォワーダーは最低でも年1回、改定内容をJACIS(航空危険物安全輸送協会)やANA Cargo・JALCARGOのニュースリリースなどで確認する習慣をつけることが実務上の必須対応です。


ANA CargoによるDGR第67版改定に伴う案内:PI952・PI966の充電率規定変更点と受託条件が具体的に記載されています。


iata危険物規則書の盲点:関税担当者が見落としやすい実務上の注意点

関税実務の現場で特に注意が求められるのが、DGRの知識が「フォワーダー任せ」になりやすいという点です。しかし、荷送人(輸出者)自身にもDGRに基づく責任が明示されており、書類の虚偽申告や規則違反は輸送禁止・貨物没収・罰則リスクに直結します。


書類確認で特に見落としやすいポイントを以下に整理します。


  • ⚠️ SDS(安全データシート)の鮮度:電池仕様変更時は更新が必要。古いSDSをそのまま使い回すと規定違反になる場合がある。
  • ⚠️ UN38.3試験サマリーの確認:電池モデルごとに取得が必要。「電池ならどれも同じ」という考え方は通用しない。
  • ⚠️ Section IIとSection Iの混同:Wh数が100Wh以下でも、1梱包あたりの重量や数量制限を超えるとSection IIは適用できず、Section Iの完全危険物手続きが必要になる。
  • ⚠️ 航空会社独自の例外規定:DGRはあくまでも最低基準。運航会社がより厳しい例外規定を設けている場合があり、利用航空会社の規定を必ず個別に確認する必要がある。
  • ⚠️ SoC制限の確認書類:充電率30%以下であることを証明する手段を荷送人側で用意しておくことが望ましい。電池メーカーへの確認や測定記録の保管が実務上有効。


特に輸入側の関税担当者として注意が必要なのは、輸入貨物の中にリチウム電池製品が含まれている場合、通関後に問題が発覚するケースがある点です。たとえば、電池が梱包基準を満たしていない状態で輸入されてきたり、危険物申告が適切に行われていなかったりすると、国内保管・再輸送の際にトラブルが生じます。


輸入時の確認事項として、インボイスや梱包明細書にリチウム電池関連の記載(UN番号・Wh数・適用PI番号など)があるかを事前にチェックする習慣が、リスク回避につながります。これだけ覚えておけばOKです。


フォワーダー選定の観点でも、IATA CEIV Lithium Batteries認証の取得有無は一つの判断基準になります。これはIATAが策定したリチウム電池航空輸送の国際統一品質基準で、約300のチェック項目を満たした事業者だけが取得できる認証です。JALは2025年2月に取得しており、この認証を持つ事業者はリチウム電池輸送の専門性が客観的に担保されています。


LOGIXによるリチウムイオン電池の海上輸送条件解説:IMDG Code(Special Provision 188)に基づく緩和規定の要件や、航空輸送との規制比較が実務的にまとめられています。