被補助人は通関業の許可を受けられますが、被保佐人は受けられません。
被保佐人と被補助人は、どちらも成年後見制度における法定後見の類型ですが、本人の判断能力の程度によって明確に区別されます。
被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が「著しく不十分」な状態にある人で、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者を指します。日常的な買い物程度は単独でできるものの、重要な財産行為については援助が必要な状態です。つまり「著しく不十分」が基準です。
参考)【民法攻略】第4回 成年被後見人・被保佐人・被補助人
一方、被補助人は判断能力が「不十分」な状態にある人で、補助開始の審判を受けた者です。被保佐人よりも精神上の障害が軽く、複雑な一部の法律行為を除けば自分で問題なく意思決定できる程度の能力を保持しています。
参考)【宅建民法を攻略】認知症になった場合に備えて~被保佐人・被補…
両者の違いは、日常生活を送る上での支障の大きさにあります。被保佐人は日常生活に一定の支障がある一方、被補助人は日常生活にはほぼ支障がない状態です。
参考)保佐人とは?補助人・成年後見人との違いやできることを解説
被保佐人が法律行為をするには、民法第13条第1項に定められた10項目すべてについて保佐人の同意が必要です。
参考)民法 第13条【保佐人の同意を要する行為等】
具体的には、元本の領収・利用、借財・保証、不動産など重要財産の権利得喪、訴訟行為、贈与・和解、相続の承認・放棄、遺産分割などが含まれます。これらの行為を保佐人の同意なしに行った場合、保佐人はその法律行為を取り消すことができます。
例えば被保佐人が1000万円の不動産売買契約を保佐人の同意なしで結んだ場合、保佐人はこの契約を取り消せるのです。どういうことでしょうか?
保佐人は「同意権」と「取消権」を必ず持ち、代理権は家庭裁判所への申立てにより付与されます。同意権とは、被保佐人が契約などをする際に「それをしてもいいですよ」と承認する権利で、取消権はその同意なしに行われた行為を無効にする権利です。
参考)成年後見人や保佐人・補助人の違いとは?それぞれが持つ権限まと…
重要財産に関する行為すべてに同意が必要という点で、被保佐人は相当な制約を受けることになります。これは被保佐人の財産を守るための仕組みです。
被補助人の場合、補助人の同意が必要な行為は民法第13条第1項の10項目のうち、申立ての範囲内で家庭裁判所が審判により定めた「一部」に限定されます。
つまり被補助人は、本人の希望に基づいてサポートを受ける仕組みになっているのです。例えば不動産取引のみに補助人の同意を必要とし、それ以外の行為は単独で行えるという設定が可能です。
補助人の同意権と代理権は、いずれも家庭裁判所への申立てにより付与されます。被保佐人と違い、必ず同意権が付与されるわけではありません。意外ですね。
補助人に財産管理の代理権が付与された場合、補助人は被補助人の財産を正確に把握し、預貯金や保険証書を保管・管理する役割を果たします。しかし日常的な買い物や生活費の支出など、被補助人が自分で判断できる範囲の行為については補助人の関与は不要です。
この柔軟性が被補助人制度の最大の特徴で、本人の自己決定権を最大限尊重しながら必要な部分だけサポートする設計になっています。
通関業務に従事するには通関業法の規定を理解する必要がありますが、成年後見制度との関係で重要な変更がありました。
参考)『成年後見制度に係る通関業法上の欠格条項の見直し』 : 貿易…
2019年の法改正以前は、通関業法において「成年被後見人又は被保佐人」であることが通関業許可の欠格事由として一律に規定されていました。つまり被保佐人は通関業の許可を受けることができなかったのです。
参考)大阪税関・神戸税関管轄エリアでの通関業許可 - 荷主x物流法…
しかし「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により、この規定が見直されました。形式的に「成年被後見人又は被保佐人」という基準で一律に欠格とするのではなく、「業務を適正に遂行する能力を有しない者」という実質的な基準に改められたのです。
つまり能力で判断されます。
現在では、被保佐人や被補助人であっても、通関業務を適正に遂行する能力があると認められれば、通関業の許可を受けることが可能になりました。これは成年被後見人等の人権を尊重し、不当な制限を撤廃する目的で行われた改正です。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/001002636.pdf
通関業務従事者としては、取引相手や関係者が被保佐人・被補助人である場合、その法的能力の範囲を正確に把握し、必要に応じて保佐人・補助人の同意を確認する必要があります。
通関業務では輸出入申告や関税納付の代行など、依頼者の財産に関わる重要な法律行為を扱います。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/9105_jr.htm
被保佐人が依頼者の場合、不動産など重要財産の権利得喪、借財・保証、訴訟行為などは民法第13条第1項の対象となるため、保佐人の同意が必要です。輸入貨物が高額な場合や、関税・消費税の納付額が大きい取引では、保佐人の同意書を事前に取得することが実務上のリスク回避につながります。
どうなるんでしょう?
同意なしで契約を結んだ場合、保佐人が後から取り消す可能性があり、通関業者側も契約の有効性について責任を問われる恐れがあります。これは痛いですね。
被補助人の場合は、家庭裁判所が定めた特定の行為についてのみ補助人の同意が必要です。そのため、被補助人本人または補助人から、どの行為に同意が必要かを確認する必要があります。補助開始の審判書や登記事項証明書で、同意権・代理権の範囲を確認できます。
通関業者として依頼を受ける際は、相手方の法的能力を慎重に確認し、必要な同意権者を明確にすることが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。判断能力に不安がある依頼者と接する場合、成年後見制度の利用状況を丁寧にヒアリングすることが基本です。
法務省の成年後見制度ポータルサイトでは、制度の詳細や登記事項証明書の取得方法などが解説されています。実務上の疑問点がある場合の参考情報源として活用できます。
厚生労働省 成年後見制度 法定後見制度とは
成年後見制度における権利制限の見直しは、障害者権利条約の批准を契機に進められました。
従来、通関業法をはじめ税理士法、行政書士法など多くの法律で、成年被後見人や被保佐人が一律に欠格事由として規定されていました。しかしこれは、その者が実際に業務遂行能力を有するかを個別に判断せず、形式的な基準のみで排除する仕組みでした。
2019年の法改正により、約180本の法律で成年被後見人等の欠格条項が見直され、通関業法も対象となりました。欠格事由は廃止されました。
改正後の通関業法では、単に被保佐人や被補助人であることをもって欠格とするのではなく、「心身の故障により通関業務を適正に遂行することができない者」という実質的な基準で判断されます。これにより、判断能力に一定の制約があっても、実際に業務遂行能力がある人は通関業に従事できる道が開かれたのです。
今後は、成年被後見人等の社会参加をさらに促進する方向で、各種制度の見直しが進むと予想されます。通関業務従事者としても、成年後見制度への理解を深め、多様な依頼者に対応できる柔軟性が求められるでしょう。
成年後見制度に関する最新情報や相談窓口については、各地域の成年後見センターや家庭裁判所のウェブサイトで確認できます。実務で疑問が生じた場合は、専門家への相談も検討してください。
裁判所ウェブサイト 成年後見制度について