業務監査 内部監査 違いと通関業務従事者が知るべき基本

業務監査と内部監査の違いを通関業務従事者向けに詳しく解説します。それぞれの目的や範囲、実施主体の違いを理解し、通関業務における内部監査の重要性を把握できていますか?

業務監査と内部監査の違い

保税業務に携わる通関担当者自身が内部監査人になっていると不適当です。

📋 この記事の3つのポイント
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業務監査は内部監査の一部

業務監査は会計以外の業務活動を対象とし、内部監査の取り組みの一つとして位置づけられます

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実施主体と独立性の違い

内部監査は独立した監査部門が実施し、業務監査は業務部門や外部が担当する場合もあります

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通関業務では年1回の内部監査が必須

認定通関業者やAEO事業者は法令遵守体制の維持のため、原則として毎年内部監査を実施し税関に報告する義務があります

業務監査と内部監査は企業の健全な運営を支える重要な機能ですが、その違いを正確に理解している通関業務従事者は意外と少ないのが現状です。通関業務における内部監査は、保税地域の自主管理制度を維持するために不可欠な要素となっています。
参考)業務監査と内部監査の違いについて。簡単に図解付きで徹底解説。


両者の最大の違いは、監査の対象範囲と実施主体にあります。業務監査は内部監査の一部として位置づけられ、会計業務以外の業務活動や組織・制度・業務手順などを対象とします。一方、内部監査は組織全体のガバナンス、リスク管理、内部統制を包括的に評価する活動です。
参考)業務監査とは?目的・監査範囲・会計監査との違い・チェックリス…


業務監査の定義と通関業務における位置づけ


業務監査とは、企業等組織の会計業務以外の業務活動、すなわち組織や制度、業務手順などに対する監査を指します。通関業務においては、保税地域における貨物管理の適正性や、通関業法に基づく手続きの遵守状況が主な評価対象となります。
具体的には、業務手順の整備状況や運用状況が適切かを評価し、業務の有効性や効率性を改善することを目的としています。例えば、保税地域での外国貨物の搬出入管理、在庫管理、記帳管理などが業務監査の対象です。
通関業者は、通関業務管理規定に基づき、通関業務が適正・迅速に行われているかを確認するため、内部監査人による内部監査を定期的に実施する必要があります。つまり業務監査です。​
この監査は単なる形式的なチェックではなく、実際の業務の実態を確認し、改善点を見つけることが重要です。現場における実在庫の確認や、NACCS業務の習熟度確認など、具体的な検証作業が求められます。​

内部監査の定義と独立性の重要性

内部監査とは、企業内部の独立した組織が、財務会計や業務の仕組みなどについて調査・評価し、報告と改善策の提案を行う活動です。通関業務においては、組織体の効果的な目標達成に向けた取組みとして、合法性と効率性の観点から貨物管理状況を公正かつ客観的な立場で検討・評価します。
内部監査の最も重要な要素は「独立性」です。内部監査人は他からの制約を受けることなく自由に、かつ、公正不偏な態度で客観的に遂行する必要があります。このため、保税業務に携わっている者が内部監査人となることは不適当とされています。​
税関の基本通達34の2-9(7)では、評価・監査制度の整備が明確に規定されています。社内管理規定の諸手続が厳格に遵守され、かつ実施されていることを確認するため、内部監査人による定期的評価・監査制度を制定し、社内貨物規定の実行性の評価改善のための勧告を行う体制を整備することが求められます。​
原則として毎年実施が必要です。当該評価・監査の都度、その結果を税関に提出する義務があります。​

監査対象と範囲における具体的な違い

業務監査と内部監査では、監査対象と範囲に明確な違いがあります。業務監査は特定の業務プロセスや部門を対象とし、業務手順の整備状況や運用状況を評価します。​
通関業務における業務監査では、以下のような項目が主な対象となります。​


  • 搬出入管理:搬入関係書類と貨物との対査確認が確実に行われているか

  • 在庫管理:NACCS在庫照会による在庫と現物在庫が一致しているか

  • 蔵置管理:保税地域のエリアを担当者が認識し、外貨と内貨が区分蔵置されているか

  • 記帳管理:関税法施行令第29条の2に規定された記帳項目が記載されているか

一方、内部監査は組織全体のガバナンス、リスク管理、内部統制を包括的に対象とします。リスク評価、内部統制の有効性、経営目標達成の支援など、より広範な領域をカバーします。​
保税地域の自主管理制度においては、倉主が自ら定めたルールに沿った搬出入、取扱い等の貨物管理を適正に行い、それらの事実を迅速かつ的確に記帳することが求められます。税関は事後に倉主が記帳した内容を点検し、貨物管理状況の的確性を確認します。​

実施主体と実施頻度の違い

業務監査と内部監査では、実施主体と実施頻度にも違いがあります。業務監査は業務部門や外部コンサルタントが担当する場合もあり、必要に応じて実施されます。​
内部監査は独立した内部監査部門が担当し、定期的に年次計画に基づいて実施されます。通関業務においては、内部監査人は総括責任者、実務責任者、または総括責任者が通関業務に精通した従業者の中から指名した者とされています。
重要なのは、関税法上は役職等の限定規定がないことです。会社法等で言う監査役、会計監査人等である必要はありませんが、被許可者の従業員が就くことが前提となっています。​
内部監査人には以下の要件が求められます。​
📌 社内規定等により権限付与されていること
📌 業務に精通し、職責を果たすために十分な知識、技能及び能力を有すること
📌 監査を受ける保税蔵置場の保税業務担当者でないこと
通関業務では原則として毎年内部監査を実施し、当該評価・監査の都度、その結果を税関に提出することが義務付けられています。監査を毎年実施していなかったり、監査結果を税関に提出していなかった場合、税関の業務検査で指摘を受けることになります。​

通関業務従事者が陥りやすい監査の落とし穴

通関業務における内部監査で、実際によく見られる問題事例があります。これらを事前に把握しておくことで、適切な内部監査体制を構築できます。​
最も多い問題は、保税業務に携わっている者が内部監査人となっているケースです。内部監査は他からの制約を受けることなく自由に、かつ、公正不偏な態度で客観的に遂行する必要があるため、保税業務従事者は不適当とされています。​
その他の典型的な問題として、以下が挙げられます。​
⚠️ 従業員への研修・教育が実施されていない(保税担当者の業務引継ぎが十分でないことを含む)
⚠️ 内部監査において改善要請事項があったにもかかわらず、改善・見直しがなされていない
⚠️ 内部監査チェックリストが業務実態に対応していないものを使用している
特に注意すべきは、実際に行っていない業務にも「○」が記載されているケースです。形式的な監査ではなく、必ず実態を確認し、内容のある監査を行うことが求められます。​
搬出入管理における具体的なリスクとして、通関担当者が保税地域のエリアを知らずに、保税地域外に外国貨物を移動させたケースが過去に発生しています。このような事態を防ぐため、担当者が保税地域のエリアを認識しているか、保税地域のエリアが明確にわかる措置(表示、線引き等)がとられているかを確認する必要があります。
参考)https://www.kanzei.or.jp/osaka/osaka_files/pdfs/20180222-1%20.pdf


また、盗難は亡失に該当し、関税を納付する義務が発生するため、危険品・貴重品の保管状況が万全であるかも重要な確認項目です。さし札の内容が十分かどうかの確認も、基本通達34の2-6に基づいて行う必要があります。
税関のAEO制度における内部監査チェックリストの例は、認定通関業者が法令遵守体制の運営及び外国貨物の管理等に関する税関手続等が法令遵守規則及び手順書等に基づき適切に行われているか否かについて、自ら確認するための参考資料として活用できます。​
内部監査で非違があった事実が発覚した場合、自ら税関にその事実を申し出ることで、税関が保税業務検査等で非違があった事実を発見した場合と比べて、処分の基準となる「処分点数」が軽くなる(合計点数から1/2の減算)場合があります。早期の発見により改善策が講じやすくなるほか、改善策を速やかに実行することで、処分の基準となる「処分点数」がさらに軽くなる(合計点数から10点の減算)場合もあります。​




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