GFPに登録しても、すぐに輸出できるとは限りません。
GFP(Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers Project)は、農林水産省が2018年8月に立ち上げた農林水産物・食品の輸出支援プロジェクトです。正式名称が長いため、現場では「GFP」と呼ばれることがほとんどです。
このプロジェクトの核となるのが「GFPコミュニティサイト」で、事業者同士のマッチングや輸出情報の提供、専門家による無料の輸出診断などが行われています。2025年2月時点で農林水産物・食品事業者5,629名、流通・物流事業者4,555名、合計10,184名が登録しています。東京ドームを約10,000人収容するとすると、ちょうどドームを満員にするほどの規模感です。
通関業従事者にとって見落としがちなのが、GFP登録の対象範囲です。多くの人が「GFPは農家や食品メーカーのためのもの」と思い込んでいますが、実際には流通事業者・物流事業者としてカテゴリが分かれており、通関業者・フォワーダーも登録対象に含まれています。これが重要なポイントです。
登録は3ステップで完了します。
- GFP公式ウェブサイト(https://www.gfp1.maff.go.jp/)にアクセスする
- 会員登録ページから会社名・住所・連絡先・取扱品目などを入力する
- メールで届く認証リンクをクリックして登録完了
つまり、登録のハードルは極めて低いということです。料金もかかりません。「登録に審査がある」と思っている通関業者も多いですが、GFP宣言と登録規約に同意できれば、基本的に誰でも登録できます。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/gfptop.html
GFP登録後に受けられるサービスは、生産者・食品事業者向けと、流通・物流事業者向けで若干異なります。通関業従事者が所属する「流通・物流事業者」カテゴリで受けられる主なサービスをまとめると以下の通りです。
- GFPコミュニティサイトで事業者同士が直接マッチングできる
- GFPビジネスパートナーの紹介等による支援が受けられる
- メンバー同士の交流イベントに参加できる
- 規制情報等の輸出に関連する情報を受け取れる
- セミナー等を通じてGFP登録者の優良事例を共有できる
- 過去のセミナー動画のアーカイブをいつでも視聴できる
これらはすべて無料です。
通関業務に特に関連が深いのが「規制情報等の輸出に関連する情報提供」です。輸出先国の食品安全規制・植物検疫・動物検疫・残留農薬基準などは頻繁に改定されます。これを見落とすと、貨物が現地で差し戻されるリスクがあります。厳しいですね。GFP登録をしていれば、農林水産省から関連情報がメールで届くため、変更にいち早く対応できます。
マッチング機能も活用価値があります。輸出に取り組もうとしている生産者・食品事業者側から「通関業者を探している」という需要が発生します。GFPコミュニティサイトに自社情報を登録しておくことで、荷主候補との接点が生まれるという副次的なメリットがあります。これは使えそうです。
GFP輸出塾・セミナーは、通関業者が輸出支援のプロとして顧客対応力を高める場としても機能します。現地バイヤーのニーズ、輸出先国の規制動向、HACCP等の認証取得の流れなど、荷主に対してアドバイスできる知識が蓄積されていきます。
GFP登録だけでも多くのサービスが得られますが、さらに一歩進んだ支援があります。それが「輸出促進法に基づく輸出事業計画の認定」です。
農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(令和元年法律第57号)に基づいて輸出事業計画の認定を受けた事業者は、農林水産省の関連補助事業において「優先採択」を受けられます。補助金が激戦になっても、認定事業者は優遇されるということです。
令和8年度時点で優先採択の対象となる事業には以下のものがあります。
- グローバル産地づくり推進事業(大規模輸出産地モデル形成等支援事業)
- 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
- サプライチェーン連結強化プロジェクト
- 農林水産物・食品輸出関連信用保証支援事業
これらの補助事業を活用したい荷主を支援する立場にある通関業者にとっても、制度の流れを理解しておくことは重要です。荷主が「HACCP対応施設の補助金を申請したい」と相談してきたとき、「GFPへの登録と輸出事業計画の認定が条件になる場合がある」とアドバイスできれば、信頼度が格段に上がります。
GFP登録が優先採択の「入口」になる構造があるということですね。単なる名簿登録ではなく、補助金獲得のインフラとして機能しているわけです。
輸出事業計画は事業によって提出時期等が異なるため、具体的な手続きは農林水産省 輸出・国際局輸出支援課輸出産地形成室(ダイヤルイン:03-6738-7897)へ問い合わせることが必要です。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/gfpglobal.html
GFP登録後にすぐ活用できるサービスのひとつが「輸出診断」です。農林水産省・ジェトロ・輸出専門家が企業を訪問し、輸出可能性を無料で診断してくれます。訪問診断が対象となるのは主に生産者・食品事業者ですが、通関業者にとっては「荷主候補を輸出診断に誘導する」という使い方ができます。
輸出診断の主な確認内容は次の通りです。
- 製品特性と輸出ポテンシャルの評価
- 輸出先国の食品安全規制への適合状況
- 生産体制・品質管理状況の確認
- 輸出ロードマップの策定
この診断の中で「輸出先国の食品安全規制への適合状況」が確認される点は、通関業従事者として注目すべきポイントです。たとえばEUへの輸出を目指す食品事業者には、FSSC22000やISO22000といった食品安全認証の取得が有利に働きます。また米国向けには、FDAへの施設登録と事前通知(Prior Notice)が必要になります。これらの情報をGFPのセミナーや情報配信で事前にキャッチしておけば、通関手続きの段取りを早い段階から組み立てられます。
輸出先国の規制情報を見落とすことが、現場でのトラブルの原因になります。輸出時に現地通関で引っかかるケースの多くは、「日本側の準備不足」から生まれます。GFP登録を通じて規制情報を継続的に取得する習慣をつけることが、リスク回避の基本です。規制情報は無料で届く、という点が原則です。
GFPのセミナーはオンデマンド動画でも視聴可能です。令和7年6月から「GFP輸出支援サービスラボ」がオンデマンド形式で配信開始されており、通関手続きやフォワーディングから三国間貿易まで、複雑な国際輸送を扱うサービスの紹介も含まれています。移動時間や業務の隙間にキャッチアップできる環境は、現場従事者にとって使い勝手が高いです。
https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/s_keisei/250707.html
農林水産省が公表しているGFP優良事例集には、GFP参画によって輸出額が伸びた具体的な数字が掲載されています。たとえば鹿児島県のヘンタ製茶有限会社では、GFP参画後に輸出額が2018年の2,800万円から2021年には8,900万円へ318%増加しました。宮崎県の株式会社ネイバーフッドでは、2020年の約900万円から2022年には約2,150万円と239%増加しています。
これらの数字は「GFP登録=輸出が伸びる」という単純な話ではなく、規制対応・認証取得・マッチング活用・産地形成といった地道な取り組みの積み重ねが結果につながったものです。
通関業従事者として着目すべきポイントがあります。それは「荷主の輸出準備段階から関与する機会」です。多くの中小事業者は「輸出手続きに詳しい専門家が近くにいない」という課題を抱えています。GFPのコミュニティサイトを通じて荷主候補と接触できる通関業者は、単なる手続き代行業者ではなく、「輸出をゼロから相談できるパートナー」として差別化ができます。
輸出先国の規制対応についても、通関業者が持つ知見は大きな価値を持ちます。たとえば輸出先国によって製造場所の施設登録が必要なケースがあり、現地輸入業者・現地通関業者との事前連携が欠かせません。日本側の通関業者がこのプロセスを熟知していると、荷主の心強い存在になります。
また、GFPのビジネスパートナー制度を通じて、支援サービス提供者として自社を登録する道も存在します。物流・通関サービスを提供できる企業としてGFP内でのプレゼンスを高めることで、新規の荷主獲得につながる可能性があります。新規顧客開拓のチャネルとして、GFPを捉え直すことが重要です。
GFP優良事例集2025(農林水産省公式)には輸出に成功した事業者の具体的な取り組みが記載されており、荷主へのヒアリングや提案資料作成の参考として活用できます。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/gfp/attach/pdf/gfptop-99.pdf