源泉徴収計算給与の基本と通関業務の注意点

通関業務従事者の給与計算における源泉徴収の正しい方法を解説します。甲欄・乙欄の使い分けや計算ミスによる不納付加算税のリスクを知っていますか?

源泉徴収計算給与の仕組みと実務

給与の甲欄適用でも乙欄より税額が高くなる場合があります

この記事のポイント
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源泉徴収の基本構造

給与から社会保険料を控除した金額をもとに、税額表を使って所得税を計算する仕組みです

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甲欄と乙欄の違い

扶養控除申告書の提出有無で適用区分が変わり、源泉徴収税額に3倍以上の差が生じます

⚠️
計算ミスのペナルティ

過少納付には不納付加算税10%と延滞税が課され、支給不足は労基法違反になります

源泉徴収計算給与の基本的な流れ


給与の源泉徴収とは、会社が従業員に給料を支払うときに、所得税及び復興特別所得税を天引きして税務署に納める制度です。毎月の給与だけでなく、賞与や退職金も対象になります。
参考)源泉徴収をわかりやすく解説|計算方法や納付方法など仕組みを解…


計算の流れは3段階です。


  • 総支給額の確認:基本給・残業代・各種手当を合計する

  • 社会保険料の控除:健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を差し引く

  • 税額表の適用:控除後の金額と扶養親族数から源泉徴収税額を決定する​

社会保険料控除後の金額が88,000円未満の場合、源泉徴収は不要です。これは月額表の最低課税ラインに基づいています。通関業務従事者の場合、残業の多い月とそうでない月で、この基準を超えるか否かが変わることがあります。
参考)【法人側】源泉徴収が不要な支払いとは?具体例や注意したいケー…

給与計算ソフトを使わない場合、Excelシートで自動計算する方法もあります。料率の自動判定機能があるシートなら、支給月に応じて社会保険料率や源泉徴収税額を自動で変更できるため便利です。
参考)エクセルで給料支払時の源泉所得税額を計算する


源泉徴収税額表の月額表と日額表の使い分け

税額表には「月額表」と「日額表」の2種類があり、給与の支払い方法によって使い分けます。
参考)No.2511 税額表の種類と使い方|国税庁


月額表を使うのは次のケースです。

一方、日額表を使うのは以下の場合です。


  • 働いたその日ごとに支払う日雇い労働

  • 一週間ごとに支払う給与

  • 日割り計算で支払う給与​

つまり、時給計算でも10日ごとに支払うなら月額表です。通関業務の繁忙期に臨時で雇用する短期スタッフでも、支払いが月2回なら月額表を使います。日額表は本当に日払い・週払いのときだけです。
参考)源泉徴収税額表の適用区分


国税庁の公式サイトから税額表のPDF版をダウンロードでき、Excel版に加工して計算を自動化することも可能です。扶養親族の数と社会保険料控除後の給与額をクロスさせた金額が源泉徴収税額になります。YouTube​​

源泉徴収計算における甲欄と乙欄の違い

税額表には「甲欄」と「乙欄」があり、適用される欄によって税額が大きく変わります。
参考)税区分表、ほんとうに理解していますか? 甲欄、乙欄、丙欄の違…


甲欄が適用されるのは、「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出した従業員です。扶養家族の人数に応じた控除を受けられるため、税額は比較的低くなります。この申告書は1か所にしか提出できません。
参考)源泉徴収票の乙欄とは?甲欄との違いと適切な対応方法を解説


乙欄が適用されるのは以下のケースです。

同じ月給20万円でも、扶養家族2人の甲欄なら源泉徴収額は約2,500円ですが、乙欄だと約8,000円になります。約3倍の差です。賞与も同様で、10万円の賞与に対して甲欄は約4,200円、乙欄は約20,420円が源泉徴収されます。​
通関業務の現場では、繁忙期に他社との兼務者を雇うケースがあります。その場合、本業が別にあるなら乙欄適用になり、手取りが想定より少なくなることを説明しておく必要があります。乙欄適用者は年末調整の対象外なので、本人が確定申告をしなければなりません。​

源泉徴収計算のミスによる罰則とリスク

源泉徴収の計算ミスや納付漏れには、法的なペナルティが伴います。
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過少納付の場合、不納付加算税が課されます。原則として納めるべき源泉所得税の10%ですが、自主的に納付した場合は5%に軽減されます。さらに納付期限を過ぎると延滞税も発生し、2か月以内は年7.3%または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い方、2か月超は年14.6%または延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い方が適用されます。
参考)納付漏れでも慌てない!不納付加算税の計算ルールと実務上のポイ…


不納付加算税が5,000円未満の場合や、一定の要件を満たせば免除されることもあります。ただし、税務調査で指摘される前に気づいたら、すぐに差額を追加納付するのが基本です。
参考)間違って源泉所得税を納め過ぎたとき・過少納付だったとき

支給額が不足した場合は、さらに深刻です。故意でなくても労働基準法違反を問われるリスクがあります。過払いは法律違反になりませんが、未払いは違法です。
参考)給与計算でミスが発覚したら?対処法とリスク、防止策を解説 -…

通関業務では輸出入の繁閑に応じて残業代が変動し、社会保険料控除後の金額が月ごとに大きく変わります。このため、前月と同じ税額を適用してしまうミスが起こりやすい環境です。給与明細を発行する前に、必ず税額表との照合を行う習慣をつけましょう。

源泉徴収計算における賞与の特殊ルール

賞与の源泉徴収は、給与とは異なる計算方法を使います。原則として「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いますが、特定の条件下では月額表を使う例外があります。
参考)賞与(ボーナス)から引かれる源泉所得税の計算方法をわかりやす…

賞与が前月の給与の10倍を超える場合、または前月に給与の支払いがなかった場合は、月額表を使った複雑な計算が必要です。この場合の手順は次の通りです。​


  • 賞与から社会保険料を差し引いた金額を6または12で除する

  • その金額と前月の給与(社会保険料控除後)を合算する

  • 合算額を月額表に当てはめて税額を求める

  • 前月の給与の源泉所得税を差し引き、6または12を掛ける​

6を使うか12を使うかは、賞与の支給回数によります。年2回なら6、年1回なら12です。
通関業者によっては、年度末の業績に応じて不定期に賞与を出すケースがあります。前月の給与がゼロの新入社員に賞与を出す場合も、この特殊ルールが適用されます。計算を誤ると、源泉徴収額が大きく外れる可能性があります。
年間給与等の総額が2,000万円を超える従業員は、年末調整の対象外です。この判定には賞与も含まれるので、高額所得者の場合は本人に確定申告を促す必要があります。​

源泉徴収計算ツールと自動化の活用

手作業での計算ミスを防ぐには、Excelやクラウドツールの活用が有効です。
参考)給与・賞与自動計算エクセル


国税庁が提供する「年末調整計算シート」は、Excelブック形式で無料ダウンロードできます。ただし、これは年末調整用なので、毎月の給与計算には別のシートが必要です。
参考)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/nencho_keisan/index.htm

民間で公開されているExcelシートには、次のような機能があります。

これらのシートは、料率テーブルを自力で更新できる設計になっており、法改正にも対応しやすいのが特徴です。30人まで計算可能な無料版もあります。
通関業務の現場では、港湾荷役の繁忙期に残業が集中し、標準報酬月額の随時改定が必要になることがあります。自動判定機能があるシートなら、3か月の平均給与を入力するだけで、改定の要否を確認できます。
クラウド給与計算ソフトを導入すれば、法改正への対応や電子申告の連携も自動化されます。ただし、小規模事業所でスポット的に検証したいだけなら、Excelシートの方が小回りがききます。​

源泉徴収計算における非課税と例外ルール

すべての給与支給が源泉徴収の対象になるわけではありません。
参考)源泉徴収の対象とならない給与とは?対象になるものや注意点も徹…

通勤手当は、一定額までは非課税です。この非課税部分は、総支給額から除外して計算します。一方、交通費を現金で渡す場合でも、実態が報酬なら源泉徴収の対象です。名目だけでなく実態を見極める必要があります。​
報酬に含まれる消費税についても注意が必要です。「報酬10万円、消費税1万円」と明確に分かれていれば、課税対象は10万円のみです。しかし「税込11万円」と内税表記なら、全額が源泉徴収の対象になります。​
通関業務では、外交員として外部の通関士に報酬を支払うケースがあります。外交員報酬の源泉徴収税額は、給与とは計算式が異なります。
参考)外交員報酬の税法上の扱いは?源泉徴収の方法について解説

外交員報酬の源泉徴収税額=(外交員報酬の月額−12万円)×10.21%​
月額20万円の外交員報酬なら、源泉徴収税額は約8,168円です。一方、同額の給与(社会保険料控除後20万円、扶養0人)なら約4,770円になります。外交員報酬の方が控除額が大きい分、税額も高めです。​
外交員報酬は「事業所得」、給与は「給与所得」に区分され、納付期限も異なります。外交員報酬は支払月の翌月10日が納付期限で、給与の納期特例(半年に1回まとめて納付)は適用されません。この違いを混同すると、納付漏れのリスクが高まります。​
通関業務の現場では、貨物の検査立会いや書類作成を外部の専門家に委託することがあります。その際、給与か報酬かの判断を誤ると、源泉徴収税額も納付期限も変わってしまいます。契約形態を明確にし、正しい区分で処理しましょう。




源泉徴収と給与計算の実務 改訂新版