EORI番号を「会社に1つあれば全拠点で使い回せる」と思っているなら、それで通関が止まって損失が出ているかもしれません。
EORI番号とは「Economic Operators Registration and Identification」の略で、EU域内で貿易・通関手続きを行う事業者に付与される識別番号です。つまり事業者ごとの「EU通関ID」です。
2009年7月1日からEU全加盟国で義務化され、この番号なしではEU域内での輸出入申告が受理されません。番号の構造は「国コード(2文字)+数字または英数字(最大15桁)」で構成されています。たとえばドイツの事業者なら「DE123456789」のような形式です。
通関業に携わる方がよく混同するのが、VAT番号とEORI番号の違いです。VAT番号は付加価値税の課税管理番号、EORI番号は通関・物流の事業者識別番号であり、用途がまったく異なります。両方必要なケースがほとんどです。
国によってはVAT番号をベースにEORI番号を自動発行する仕組みもありますが、必ずしも同一番号ではない点に注意が必要です。別物だと覚えておけばOKです。
EORI番号の有効性確認は、欧州委員会が提供する公式ツール「EORI Validation」で行えます。URLは以下のとおりです。
欧州委員会 EORI番号バリデーションツール(公式)
使い方はシンプルです。
このツールは無料で使えます。登録なしでアクセス可能なため、取引先の番号確認にも使えます。
注意点が1つあります。このバリデーションツールは「番号が有効か否か」しか返しません。事業者名や住所などの詳細情報は表示されないため、詳細確認が必要な場合は各国税関当局への問い合わせが必要です。これは意外ですね。
英国(GB)のEORI番号はBrexit後に独自管理となったため、EU公式ツールでは検索できません。英国向けには英国歳入関税庁(HMRC)の専用サイトを使う必要があります。
日本企業がEU向けに直接輸出・輸入を行う場合、EU加盟国いずれかの税関当局にEORI番号の申請が必要です。申請先は「最初に貿易申告を行う国」が原則です。
申請の流れは以下のとおりです。
審査自体は早ければ当日発行のケースもありますが、書類不備があると2〜3週間かかることもあります。出荷スケジュールに余裕を持って申請するのが基本です。
よくあるミスが、支社・物流倉庫ごとに別途申請が必要なケースを見落とすことです。EU内に複数の拠点を持つ企業の場合、拠点ごとに申請が必要になる国もあります。「本社のEORIで全拠点OK」と思い込むと通関で止まるリスクがあります。
また、代理申請(通関業者・フォワーダーが申請代行)も可能ですが、番号自体は必ず依頼元の法人名義で発行されます。通関業者名義では取得できない点も覚えておけばOKです。
現場でよく見られる失敗が、EORI番号の先頭の国コードを省略して入力するミスです。「DE」「FR」「NL」などの国コードは省略不可で、省略するとバリデーションツールがエラーを返します。これが意外と多いです。
次によくあるのが、EORI番号の有効期限切れの見落としです。EORI番号には明示的な有効期限はありませんが、事業者が廃業・合併した場合や当局が職権で失効させるケースがあります。久しぶりに取引再開する相手先のEORIは必ず事前に再確認することを習慣にしてください。
輸入申告のINVOICEにEORI番号を誤記した場合、EU税関で申告が却下されることがあります。訂正申告の手続きには数日かかることもあり、その間に倉庫滞留費用(デマレージ)が発生します。1日あたりの倉庫料は品目・数量次第ですが、コンテナ1本あたり数万円規模になることも珍しくありません。痛いですね。
対処法としては、輸出書類作成前にバリデーションツールで番号確認を「チェックリストの1項目」として業務フローに組み込むことが有効です。確認する手間は30秒ほどです。
複数の取引先のEORI番号を管理する通関業者・フォワーダーにとって、番号の一元管理は業務効率に直結します。これは見落とされがちなポイントです。
まず基本的な管理方法として、取引先ごとにEORI番号・確認日・担当者名をスプレッドシートで管理する方法があります。確認日を記録しておくことで、「いつバリデーションしたか」が一目でわかり、定期更新のタイミングも管理しやすくなります。
また、通関システム(NACCSや各社ERPシステム)によっては、EORI番号のバリデーションAPIとの連携機能を持つものもあります。大量の申告処理を扱う事業者であれば、APIを活用した自動チェックフローの構築を検討する価値があります。
EORI番号の管理ルールを社内標準化しておくことも重要です。担当者が変わっても同じ水準でチェックできる体制が、通関トラブルのリスクを最小化します。結論は「仕組みで管理する」です。
英国向け取引が多い事業者には、EU-EORIとGB-EORIの両方を取引先マスタに登録しておくことをおすすめします。Brexit後は同一取引先でも別番号になっているケースが多く、混同による誤記申告を防ぐうえで有効です。
日本税関:通関業制度の概要ページ(国内通関制度との比較参考に)