中継輸送を使えば使うほど、荷主が払う運賃は上がる場合があります。
中継輸送(ちゅうけいゆそう)とは、1人のドライバーが始点から終点まで担当する従来型の長距離輸送ではなく、運行途中の「中継地点」でドライバーや車両を交代させる輸送形態です。国土交通省は「長距離・長時間に及ぶ運行等において、運行途中の中継地等において他の運転者と乗務を交替する輸送形態」と正式に定義しています。
関税に関わる輸入貨物でも、港から内陸倉庫や工場への国内陸送ルートにこの仕組みが絡んでくることが多くなりました。つまり、中継輸送の仕組みを知ることは、国内物流コストを通じて輸入コスト全体にも影響するのです。
国土交通省が推奨している中継輸送の方式は、大きく4種類あります。
| 方式 | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| ドライバー交替方式 | 同じ車両に別のドライバーが乗り換える | 最もシンプル。単車でも実施可能 |
| 貨物積替え方式 | 中継地点で別の車両に荷物を載せ替える | TCと同じ仕組み。積替え時間が長い |
| トレーラー・トラクター方式 | ヘッド(トラクター)だけを交換する | 牽引免許が必要。交換作業は短時間 |
| スワップボディコンテナ方式 | コンテナ(ボディ)だけ別のシャーシに載せ替える | 荷役不要で効率的。規格統一が課題 |
中継輸送は方式によって必要な資格・設備が異なります。このなかで国土交通省の手引きにおいて「事業者から最も実施希望の声が多かった」とされているのはドライバー交替方式です。単車で実施でき、初期投資も少なく始めやすい点が評価されています。
一方、貨物積替え方式は昔から行われているTC(トランスファーセンター)と仕組みが近いため「検討が容易」とも言われていますが、パレタイズ化の対応や荷役設備の確保など、荷主側の協力が必要になる場面があります。
つまり荷主にとって中継輸送は「運送会社だけの問題」ではありません。
参考:国土交通省「中継輸送に関するQ&A」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03relay/index.html
中継輸送において、多くの荷主や物流担当者が見落としがちなのが「点呼」の扱いです。点呼とは、ドライバーが乗務を開始・終了する際に運行管理者が酒気帯び・疲労・健康状態などを確認する法的義務のことです。
国土交通省のQ&Aによると、原則として「車両が配置されている営業所の運行管理者」が点呼を担当することになっています。ドライバーが車両を乗り換えるたびに配置営業所が変わる場合は、それぞれの営業所から乗務終了・開始の点呼を別々に取る必要があります。複雑に聞こえますね。
ただし、重要な例外があります。
双方がいわゆる「Gマーク営業所」(全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定した安全性優良事業所)の場合、同一事業者内であれば「運転者の兼務」が不要になります。この場合、運転者が所属する営業所の運行管理者がそのまま点呼を実施できるため、管理の手間が大幅に減ります。Gマーク取得はコスト削減の鍵です。
また、異なる事業者間での中継輸送についても、国土交通省の通達(平成9年7月1日付)によって法的に実施可能とされています。この場合は以下の対応が必須です。
- 運行区間・ドライバー交代場所・使用車両・損害賠償の責任関係などを盛り込んだ「協定書」の事前締結
- 相互使用する事業用自動車の助手席前面に「事業者名・運行区間を記載した表板」の掲示
協定書なしで異業者間の中継輸送を行うと通達違反になります。荷主にとっても、取引先の運送会社がこのルールを守っているか確認しておくことが、荷物の安全管理の観点から重要です。
さらに、フェリーやRORO船を使った中継輸送も認められていますが、車両のみを乗せる場合は「第2種利用運送事業の許可」が別途必要になります。法的手続きが必要です。
参考:国土交通省「中継輸送の実施に当たって(実施の手引き)」
https://www.mlit.go.jp/common/001178753.pdf
2026年2月17日、国土交通省は長距離トラックの中継輸送を支援するための「物流効率化法(物効法)の改正案」を特別国会に提出する方針を固めました。これは、2024年4月から施行されたドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)への対応策として、国が本格的に動き出した大きな転換点です。
この法改正で新設される仕組みが「貨物自動車中継輸送実施計画」の認定制度です。倉庫業者・物流不動産デベロッパー・荷主などが地方自治体と協定を結んで計画を策定し、国交大臣の認定を受けると、以下の支援が受けられます。
| 支援の種類 | 内容 |
|---|---|
| 課税特例(物流施設税制) | 建物の固定資産税・都市計画税の課税基準を5年間2分の1に軽減。償却資産は課税基準を5年間4分の3に軽減 |
| 資金支援 | 鉄道・運輸機構による施設整備・中継輸送実施への出資・貸付 |
| 経費補助 | 計画策定費用・初年度の運行経費を補助 |
| 手続き一括化 | 貨物自動車運送事業法、自動車ターミナル法、倉庫業法などの行政手続きを一括処理 |
| 都市計画配慮 | 開発許可・建設許可などについての配慮 |
目標は2030年度(令和12年度)までに全国20の中継輸送拠点を整備することです。関東〜関西間など往復長距離ルートが主な対象で、高速道路のインターチェンジに近接した立地が求められています。これは使えそうです。
認定を受ける施設には「多くの事業者が利用できる時間貸しのスペース」「ダブル連結トラックや自動運転トラックへの対応スペース」「十分なドライバー休憩施設」が必要とされています。一方で、マテハン機器などの自動化・機械化設備は認定要件には含まれない点も押さえておきましょう。
国交省は2030年までに、中継輸送の普及でドライバーの平均労働時間を「全産業平均まで引き下げる」という明確な数値目標を掲げています。現状、トラックドライバーの労働時間は全産業より約2割長く、年間賃金は約1割低いという実態があります(厚生労働省・令和5年調査)。
参考:国交省 中継輸送の普及へ物効法を改正(カーゴニュースオンライン)
https://cargo-news.online/news/detail.php?id=9635
- 🔍 導入予定の中継輸送方式が「貨物積替え方式」か「ドライバー交替方式」か(積替えのほうが作業時間・リスクが大きい)
- 🔍 使用する運送会社が「Gマーク営業所」の認定を受けているか(管理コスト削減に直結)
- 🔍 2026年の物効法改正認定拠点を活用した補助対象ルートかどうか
特に輸入事業者は、国内陸送コストが上がると、関税・消費税を含む輸入総コストが想定外に膨らむ恐れがあります。コストを抑えるなら今が動き時です。
国交省の調査(令和5年)によると、トラックドライバーの有効求人倍率は2.0倍に達しており、全職業平均を大幅に上回っています。この人手不足は構造的な問題であり、今後も運賃の上昇圧力は続く見込みです。
参考:中継輸送とは?メリット・デメリットと導入ポイント(b2b-logi.com)
https://b2b-logi.com/3582/
多くのメディアや解説記事では触れられていない独自視点として、今回の中継輸送拠点整備の「本当の狙い」があります。それは、単なるドライバー不足対策を超えた「自動運転トラックの受け皿づくり」です。
国交省が認定条件に「ダブル連結トラックや自動運転トラックの荷積み・荷降ろしスペース」を明示していることがその証拠です。つまり今整備される中継拠点は、2030年代以降に自動運転トラックが幹線輸送に投入された際の「母艦(ハブ)」として機能することが想定されています。
現時点ではドライバーが乗り換える場所として機能する拠点が、将来は「自動運転トラックと有人トラックの引き継ぎポイント」へと進化する構図です。自動化の準備が始まっています。
この視点は輸入事業者にとっても重要です。自動運転の幹線輸送が実現すれば、長距離の国内陸送コストが大幅に下がる可能性があります。関東〜関西間の幹線が自動化されれば、港湾から内陸拠点への輸送コストが数年後に劇的に変わる可能性があるのです。
一方で短期的な課題もあります。
- 現状、中継輸送を実施している事業者は大手が中心で、中小運送会社の参入は限定的です。
- 初期の協定書締結や運行管理体制の構築にはコストと時間がかかります。
- 2030年度の「全国20拠点」という目標は、整備が遅れた場合に中継輸送の恩恵を受けられる地域が偏る可能性があります。
つまり今の段階では「大手荷主・大手運送事業者が先行して恩恵を受ける構造」になっている点は見ておく必要があります。中小企業の輸入事業者が物効法改正の恩恵を受けるには、自社の取引先運送会社が認定拠点ネットワークに参加しているかどうかを確認することが第一歩です。
参考:「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省)
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/