通関士試験合格率の推移と難易度・対策の全知識

通関士試験の合格率は例年10〜20%台で推移し、年度によって大きく変動します。その背景にある難易度の仕組みや科目免除制度の活用法まで、受験を検討している方が知っておくべき情報をまとめました。合格率の"本当の読み方"、あなたは知っていますか?

通関士試験合格率の推移と難易度・合格を左右する全知識

合格率24%の年でも、全科目受験者だけに絞ると実は13〜14%しか受かっていません。


この記事でわかること
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合格率の推移と"真の難易度"

第1回〜最新回までの合格率推移と、公表数値に隠された科目免除の影響を解説します。

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合格率が上下する3つの理由

3科目同時クリア制・選択肢の多さ・法改正対応が合格率を左右する仕組みをわかりやすく説明します。

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合格基準点と科目免除制度の活用

合格基準点の引き下げ実績、科目免除の条件と合格率への影響を具体的な数字で紹介します。


通関士試験合格率の推移|第1回から最新回まで歴史で読む

通関士試験は昭和42年(1967年)に創設された国家試験です。第1回から第9回あたり(1960〜70年代)にかけては、受験者の70%前後が合格するという非常に開かれた試験でした。これは当時の通関業界における人材需要の高さと、試験制度が整備途上だったことを反映しています。受験者数も3,000人前後と現在より少なく、合格者の絶対数を確保する必要があったことも影響しています。


時代が変わり、昭和60年代(1980年代後半)以降は受験者数が増加し、合格率は徐々に低下していきます。平成元年(1989年)には合格率が69.0%と依然高い水準でしたが、受験者数は4,436名まで増えていました。


大きな転換点は平成18年(2006年)の出題形式の大幅変更です。それ以前は平均10〜25%程度の合格率で推移していましたが、形式変更後は原則10%前後へと難化しました。いまや「通関士試験は難関試験」という認識が定着しています。


近年(2017〜2025年度)の推移は以下のとおりです。


年度 受験者数 合格者数 合格率
2025年度(令和7年度) 6,322名 954名 15.1%
2024年度(令和6年度) 6,135名 759名 12.4%
2023年度(令和5年度) 6,332名 1,534名 24.2%
2022年度(令和4年度) 6,336名 1,212名 19.1%
2021年度(令和3年度) 6,961名 1,097名 15.8%
2020年度(令和2年度) 6,745名 1,140名 16.9%
2019年度(令和元年度) 6,388名 878名 13.7%
2018年度(平成30年度) 6,218名 905名 14.6%
2017年度(平成29年度) 6,535名 1,392名 21.3%
2016年度(平成28年度) 6,997名 688名 9.8%


注目すべきは年度間の振れ幅の大きさです。2016年度(9.8%)と2023年度(24.2%)では合格率が2.5倍近く異なります。これは試験が「相対評価」ではなく「絶対評価(各科目60%以上取得)」を採用しているためで、その年の問題難易度が合格率をダイレクトに動かします。つまり「運の要素が大きい試験」とも言えますし、逆に言えば「難化年を避ける・易化年を狙う」という受験戦略も、ある程度は成り立ちます。


難化と易化が交互に来る傾向(2016年難化→2017年易化、2023年易化→2024年難化)は注目に値します。2024年に12.4%まで急落した後、2025年は15.1%へ回復しています。これが偶然の一致でないとすれば、今後も相応の回復を期待できる流れかもしれません。


参考:通関士試験の過去データおよび最新結果(税関 Japan Customs 公式)
税関 Japan Customs「通関士試験」公式ページ


通関士試験合格率を左右する3つの難易度要因

合格率が10〜24%という幅広いレンジで推移する背景には、試験固有の構造的な難しさがあります。3つの要因に整理して説明します。


① 3科目すべてで60%以上を取る必要がある


通関士試験は「通関業法(45点満点)」「関税法等(60点満点)」「通関実務(45点満点)」の3科目構成です。1科目でも合格基準点を下回ると、他の2科目が満点でも不合格になります。科目ごとの独立した合格ラインが設定されている点が、この試験の合格率を大きく抑える最大の要因です。苦手科目を得意科目でカバーできないということですね。


② 選択肢が圧倒的に多い


一般的な4択問題に慣れた受験生にとって、通関士試験の出題形式は想像以上の負荷があります。択一式問題では15個の選択肢の中から1つを選ぶ問題が存在し、知識が曖昧なままでは正解を選べません。5択の複数選択形式もあり、部分的な理解では得点に結びつかない設計になっています。これは使えそうです。


③ 法改正への継続対応が必要


通関士試験は毎年10月初旬に実施されますが、その年度に施行された法改正が出題範囲に含まれます。2025年6月1日からは「懲役刑・禁錮刑」が廃止されて「拘禁刑」へ統合されたため、通関業法上の欠格事由の文言が書き換わりました。古い参考書や無料サイトをそのまま使うと、この用語変更だけで失点するリスクがあります。法改正に対応した最新教材の利用が原則です。


受験を控えているなら、毎年7〜8月頃に最新年度版教材が出そろう時期に、法改正の反映状況を確認することをおすすめします。


通関士試験合格率の"本当の数字"|科目免除制度が与える影響

ここが非常に重要なポイントです。


発表される合格率には「科目免除者」の合否も含まれています。科目免除とは、通関業者や官庁で通関関連業務に一定期間従事した実務経験者が、試験科目の一部を免除される制度のことです。


- 実務経験5年以上:「通関実務」1科目が免除(2科目受験)
- 実務経験15年以上:「通関実務」と「関税法等」の2科目が免除(1科目受験)


この2科目免除者(1科目だけ受ければよいベテラン層)の合格率は、年度によって約60〜75%と非常に高い数字を記録しています。全科目受験者の合格率と比べると、実に約4〜5倍です。


受験者全体の合格率との内訳を比較すると以下のようになります。


年度 全体合格率 全科目受験者 2科目受験者 1科目受験者
2025年度 15.1% 13.9% 10.3% 67.2%
2024年度 12.4% 11.2% 10.4% 61.3%
2023年度 24.2% 23.0% 22.0% 70.8%
2022年度 19.1% 17.7% 17.2% 65.6%


つまり、「2023年度の合格率は24.2%」という情報だけを見て「ほぼ4人に1人は受かる試験」と判断するのは危険です。初学者が含まれる全科目受験者の合格率は23.0%であり、これでも決して低くはありませんが、2024年度に限れば全科目受験者の合格率は11.2%まで落ちています。


つまり「発表された合格率を鵜呑みにしてはいけない」ということが条件です。


一方、科目免除制度は要件さえ満たせば大きなアドバンテージです。通関業者や税関関連業務に携わっている人は、自分が免除対象になるかどうかを試験前に必ず確認しましょう。免除申請は受験申し込みと同時に行う必要があり、期限を過ぎると免除を受けられません。


科目免除の要件確認は、税関の公式サイトで行うのが確実です。


税関「通関士試験科目の一部免除」(カスタムスアンサー)


通関士試験合格率と合格基準点の引き下げ|実は「救済措置」がある

合格率の推移を見るうえで、もう一つ見落とされがちな事実があります。それは合格基準点が引き下げられた年度が実際に存在するという点です。


通常、各科目の合格基準点は「満点の60%以上」と定められています。しかし、その年度の問題が特別に難しかった場合、基準点が引き下げられることがあります。これは一種の救済措置で、税関が毎年試験終了後に発表する「合格基準」の中で明示されます。


過去の実例を挙げると、2018年度(平成30年度)実施の試験では「通関実務」の合格基準点が通常の60%(27点)から50%(22点)へ引き下げられました。2024年度には「関税法等」の合格基準が60%(36点)から55%(33点)へ引き下げられています。


これが示すのは、問題難易度に応じて合格のハードルが調整されるという事実です。ただし、この引き下げが毎年行われるわけではなく、あくまで「例外的な対応」です。厳しいですね。60%という基準をまず目標にするのが原則です。


受験生にとっての実践的な意味は「一度の不合格で諦める必要はない」ということでもあります。難化した年度に惜しくも合格基準に届かなかった場合、翌年度に合格率が回復するケースが多いことは、過去の推移データが証明しています。


参考:アガルート「通関士試験の合格率の推移・合格基準の引き下げ解説」
アガルート|通関士試験の合格率の推移と合格点解説


通関士試験合格率から逆算する現実的な勉強時間と戦略

合格率10〜24%という数字を前にして、「どれほど勉強すれば受かるのか」は多くの受験生の切実な疑問です。複数の学習機関のデータや合格者の体験談をもとに整理すると、合格に必要な勉強時間の目安は以下のようになります。


- 貿易・法律の知識がほぼゼロの初学者:400〜600時間
- 貿易実務や物流経験がある人:300〜400時間
- 通関業務に実際に従事している人:200〜350時間


1日2時間の学習ペースで400時間を確保するには、約7ヶ月かかる計算です。毎日コンスタントに続けるのが前提なので、学習開始は試験の半年以上前、つまり試験が10月上旬であれば3月〜4月には始めるのが理想的です。


合格者の学習スタイルを見ると「300〜400時間未満」のゾーンが最多という調査データがあります(アガルート調べ)。これが「最低ラインではなく中央値」として捉えるのが現実的で、350時間以上を確保することを目標にするのが基本です。


一方、独学者は予備校・通信講座利用者に比べて約1.5倍の時間が必要とされる点も覚えておきましょう。独学は費用を抑えられますが、時間という別のコストがかかります。「通関実務」科目は特に独学で攻略しにくいとされており、申告書の作成問題など実践的な演習が合否を左右します。


学習計画を立てる際は、まず「通関業法→関税法等→通関実務」の順で基礎を固め、最後の2〜3ヶ月を過去問演習と法改正の確認に充てる流れが一般的です。通関士試験の過去問は税関公式サイトで無料公開されており、試験問題の傾向把握に役立ちます。


参考:資格の学校TACによる試験ガイド(合格基準・科目内容を網羅)
TAC通関士講座|通関士試験の難易度・合格率・試験内容ガイド