2025年4月から第二種特定化学物質が35年ぶりに追加されています。
特定化学物質という用語は、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)と特化則(特定化学物質障害予防規則)で異なる意味を持ちます。通関業務では主に化審法上の分類が重要です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/about/substance_list.html
化審法における特定化学物質は、第一種と第二種に分類されます。第一種特定化学物質は、難分解性、高蓄積性、長期毒性または高次捕食動物への毒性を持つ物質です。第二種特定化学物質は、難分解性と高蓄積性があり、人または高次捕食動物への長期毒性の疑いがある物質を指します。
参考)化審法 第2種特定化学物質リスト
2025年4月1日には、35年ぶりに第二種特定化学物質が追加されました。ポリ(オキシエチレン)=アルキルフェニルエーテル(アルキル基の炭素数が9のもの)が新たに指定され、現在第二種特定化学物質は24物質となっています。この追加を見逃すと通関書類に不備が生じますね。
化審法の第一種特定化学物質は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やDDT、アルドリンなど残留性有機汚染物質(POPs)を中心に指定されています。これらの物質を含む製品は、原則として輸入が禁止されます。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/03_import/13_kagaku/kagakuhin.html
第二種特定化学物質の最新一覧には、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素といった有機塩素系溶剤が含まれます。また、各種トリフェニルスズ化合物やトリブチルスズ化合物など、有機スズ系化合物が多数指定されています。これらの指定日は1989年から1990年代初頭に集中しており、長期間改正がなかった点が特徴です。
最新の物質リストは、経済産業省のウェブサイトや独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の化審法データベース(J-CHECK)で確認できます。通関前には必ずこれらの公式情報源で最新情報を照合する必要があります。情報更新のタイミングを逃すと違反になります。
経済産業省の化審法対象物質等一覧では、第一種・第二種特定化学物質のPDFリストが入手可能です。
化審法第24条により、第一種特定化学物質を使用した製品の輸入は原則として承認されません。この規制は、ストックホルム条約の附属書AまたはBに掲げる化学物質が使用されている製品に限定されます。違反して輸入した場合、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科される可能性があります。
第二種特定化学物質の場合、製造・輸入には数量の届出が必要です。また、新規化学物質を輸入する際は、事前に厚生労働大臣への届出が義務付けられています。届出なしで輸入すると行政処分の対象となり、業務停止命令が出る場合もあります。法的リスクが原則です。
通関時には、輸入しようとする化学物質が既存化学物質名簿に記載されているか確認する必要があります。名簿に記載がない場合は新規化学物質として扱われ、事前の届出と審査が必須となります。この確認作業を怠ると通関が止まります。
通関業務従事者が見落としやすいのは、化審法と特化則の適用範囲の違いです。化審法は化学物質の製造・輸入段階での環境リスク管理を目的とし、特化則は労働現場での健康障害予防を目的としています。
参考)特定化学物質
例えば、「第一種特定化学物質」という用語は両方の法律に存在しますが、指定される物質は異なります。化審法の第一種特定化学物質はPCBなどの環境残留性物質であるのに対し、特化則の第一種特定化学物質はジクロルベンジジンやベンゾトリクロリドなど発がん性の高い労働衛生上の有害物質です。同じ用語でも指す内容が違うということですね。
参考)【化学物質管理】化学物質の分類、違いについて - 尾北環境分…
通関書類作成時には、輸入する化学物質がどちらの法律の対象になるかを明確に区別する必要があります。化審法上の特定化学物質であれば輸入規制や事前届出の確認が必要で、特化則上の特定化学物質であれば輸入後の作業環境管理が焦点となります。混同すると書類不備の原因になります。
2025年4月の改正で追加されたポリ(オキシエチレン)=アルキルフェニルエーテルは、通称NPE(ノニルフェノールエトキシレート)と呼ばれる界面活性剤です。35年ぶりの追加という点から、化審法の規制対象物質の見直しが今後も継続される可能性があります。
化審法では、優先評価化学物質や監視化学物質といった分類も存在します。これらは特定化学物質ではありませんが、将来的に特定化学物質へ指定される可能性がある物質群です。通関業務では、現在の規制対象だけでなく、将来的なリスクを持つ物質にも注意を払う必要があります。動向把握が基本です。
特に監視化学物質は、第二種特定化学物質に該当する可能性があると判断された物質であり、製造・輸入実績の監視対象となります。輸入時にはこれらの物質についても数量報告が求められる場合があるため、最新の指定状況を定期的にチェックする体制が重要です。
NITE-CHRIPの化審法データベースでは、最新の特定化学物質リストがCAS番号付きで検索できます。