化審番号のない化学物質を輸入すると通関が止まります。
化審法は、化学物質による人体や環境への悪影響を防止するため、1973年に制定された法律です。2024年には2回の重要な改正が行われました。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/index.html
7月の改正では、ストックホルム条約で廃絶対象と決定された「ペルフルオロアルカン酸(PFOA)の異性体」と「ペルフルオロオクタン酸関連物質」が第一種特定化学物質に追加指定されました。これらの物質は難分解性、高蓄積性、長期毒性を持つため、製造・輸入が原則禁止となります。施行は2024年9月10日と2025年1月10日に段階的に実施されました。
参考)https://www.meti.go.jp/press/2024/07/20240705001/20240705001.html
12月の改正では「UV-328」「メトキシクロル」「デクロランプラス」の3物質が新たに第一種特定化学物質に指定されました。これらは2025年2月18日と6月18日に段階的に施行される予定です。
参考)「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改…
国際的な化学物質管理の潮流を受け、日本も規制を強化しています。
参考)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法…
化審法の対象は「化学物質」全般ですが、具体的な定義を理解することが重要です。元素または化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物が対象となります。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/qa/answer.html
ただし自然界で化学反応が起こる場合は対象外です。製造工程で意図せず生成した副生成物も化審法の対象となりますが、含有量によっては手続きが免除される場合があります。
混合物を輸入する場合、構成するすべての成分について化審番号の確認が必要です。これは見落としやすい点です。化審番号が見つからない成分がある場合、経済産業省の相談窓口への相談が必須となります。
新規化学物質として届出が必要になる可能性が高いからです。
化審法の詳細な対象範囲と手続きについては経済産業省の公式サイト
通関業務では、化学物質を含む貨物について化審番号(別名:MITI NO.)の提示が必須です。この番号は、輸入が可能な化学物質であることを税関に示す証明となります。
確認手順は次のとおりです。まず輸入貨物が化審法の対象かどうかを判断します。対象となる場合、製品安全データシート(SDS)や成分表から各化学物質の化審番号を特定します。
混合物の場合、構成するすべての成分の化審番号が必要です。化審番号が見つからない成分がある場合、新規化学物質の可能性があります。この場合、通関前に経済産業省への届出が必要となり、手続きには時間がかかります。
未確認のまま通関手続きを進めると、税関で貨物が保留されるリスクがあります。保留期間中の倉庫料金や納期遅延など、金銭的・時間的損失が発生します。
事前確認が基本です。
化学物質の輸入通関手続の詳細は経済産業省の輸入通関ガイド
第一種特定化学物質に指定されると、その物質を使用した製品の輸入も禁止されます。2024年の改正では、新たに複数の製品が輸入禁止対象となりました。
PFOA関連物質の規制により、撥水性能または撥油性能を与えるための処理をした生地が輸入禁止製品に指定されました。アウトドア製品や作業服など、幅広い繊維製品が影響を受ける可能性があります。2025年1月10日から施行されています。
デクロランプラスを使用した製品も規制対象です。ただし一部の用途については例外的に使用が認められる場合があります。消火器、消火器用消火薬剤、泡消火薬剤については、当分の間、取り扱い時に国が定める技術上の基準に従えば使用可能です。
つまり全面禁止ではありません。
輸入しようとする製品に規制物質が使用されていないか、メーカーへの確認が不可欠です。製品カタログや仕様書だけでは判断できない場合が多いため、成分証明書の取得をおすすめします。
化審法に違反した場合、法的責任を問われる可能性があります。第一種特定化学物質を無許可で輸入した場合、製造・輸入の許可制度違反となり、罰則の対象です。
通関業務従事者の視点では、化審番号未確認の化学物質を含む貨物の通関申告により、税関での審査が長期化します。最悪の場合、輸入が認められず貨物の返送や廃棄が必要となり、荷主に多大な損害を与えます。倉庫保管料も日々発生します。
事前確認の重要性が理解できますね。
荷主から化審番号の情報提供がない場合の対応として、まず製品の成分情報(SDSや成分表)の提出を依頼します。次に経済産業省が提供する化審法データベースで各成分の化審番号を検索します。それでも不明な場合は、経済産業省の化学物質管理課に相談することを荷主に推奨します。
新規化学物質の届出には数週間から数ヶ月かかる場合があるため、輸入スケジュールに余裕を持つことが必要です。
化審法の最新情報と届出状況は製品評価技術基盤機構(NITE)のサイト
化審法は継続的に見直しが行われており、今後も規制対象物質の追加が予想されます。2025年10月からは施行規則の大幅改正が段階的に実施される予定です。
参考)【ニュース】日本の化審法(CSCL)施行規則が大幅改正・20…
通関業務従事者として押さえるべきポイントは、定期的な情報更新です。経済産業省、厚生労働省、環境省の3省庁が共管する化審法は、改正情報がこれらの省庁から発表されます。各省庁のメールマガジンやウェブサイトを定期的にチェックする習慣が重要です。
荷主企業への情報提供も通関業者の付加価値となります。化審法改正の動向を早期にキャッチし、輸入予定の製品が将来的に規制対象となる可能性を事前に警告できれば、荷主の信頼を得られます。
厳しいところですね。
社内での知識共有体制の構築も有効です。化審法に関する研修や勉強会を定期的に実施し、担当者間で情報を共有します。疑問点が生じた場合の相談ルートを明確にしておくことで、判断ミスを防げます。
化審法以外にも、輸入時に確認すべき化学物質関連法規は複数あります。毒物及び劇物取締法、消防法、労働安全衛生法なども関連します。これらの法令との関係性を理解しておくと、より包括的なリスク管理が可能です。