リチウムイオン電池の航空輸送と2026年規制の要点

2026年からリチウムイオン電池の航空輸送規制が大きく強化されました。IATA DGR第67版で充電率30%以下が必須化、新UNコードも追加。通関業従事者が見落としがちなポイントとは?

リチウムイオン電池の航空輸送と2026年規制の要点

充電済みのバッテリーをそのまま申告書に記載しても、2026年からは荷受け拒否される可能性があります。


📋 この記事の3ポイント
SoC30%以下が必須化

2025年までは「推奨」だった充電率30%以下の制限が、2026年1月1日からIATA DGR第67版により「必須要件」に格上げされました。

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新UNコードUN3563・3564が追加

貨物輸送ユニット組み込みのリチウム金属電池(UN3563)とナトリウムイオン電池(UN3564)が危険物リストに新規追加され、申告書の品目名も変更が必要です。

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電動乗り物の充電率規制も強化

100Whを超えるバッテリー搭載の電動乗り物(EV・電動バイク等)も、SoC30%以下または表示容量25%以下が2026年から必須要件となりました。


リチウムイオン電池の航空輸送規制が2026年に変わった背景



リチウムイオン電池による航空機内での発煙・発火事故は、世界規模で増加傾向にあります。国際民間航空機関(ICAO)と国際航空運送協会(IATA)は、この状況を受けて段階的に規制を強化してきました。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


2026年1月1日、IATAは航空危険物規則書(DGR)の第67版を発効させました。これが今回の規制強化の根拠となる文書です。 通関業従事者にとって見逃せないのは、前年版(第66版)で「推奨要件」とされていた複数の規定が、今版から「必須要件」に格上げされた点です。つまり、2025年までは「できればこうしてほしい」だったルールが、2026年からは「必ずこうしなければならない」に変わりました。 jacis.or(https://jacis.or.jp/image/revision/kaitei_2026.pdf)


推奨から必須への変更は、違反した場合のペナルティが現実化することを意味します。荷主への説明責任を果たすためにも、通関業者フォワーダーはこの変更を正確に把握しておく必要があります。


JALカーゴ:2026年1月からの危険物取り扱い変更点(包装基準966・952の解説あり)


リチウムイオン電池の充電率(SoC)30%規制が必須化された具体的な影響

今回の改定で最も通関実務に影響する変更が、充電率(State of Charge: SoC)の必須化です。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


対象は「包装基準966のSection I・Section II(2.7Whを超えるもの)」に該当するリチウムイオン電池で、輸送に供する際にはSoCを定格容量の30%以下に維持することが必須となりました。 スマートフォン1台のバッテリー容量が約10〜15Wh程度であることを考えると、2.7Whという閾値は非常に低い値であり、日常的に取り扱う機器組み込み電池のほぼすべてが対象となります。 videoservice(https://www.videoservice.tv/information/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E8%B2%A8%E7%89%A9%E8%BC%B8%E9%80%81%EF%BC%88%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E9%9B%BB%E6%B1%A0%E3%81%AE%E5%8F%96%E6%89%B1%E3%81%84%EF%BC%89%E3%81%AB)


これが満たせない場合はどうなるでしょうか? SoCが30%を超える場合は、発地国と運航者が属する国の双方から書面による認可(approval)を取得した場合のみ輸送が認められます。 事前承認なしでの輸送は受託不可となるため、申告書に「SoC 30%以下を確認済み」の記載を実質的に求められるケースが増えています。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


つまり、充電率の確認と書面化が実務上の必須プロセスになったということです。


荷主から受け取った電池製品の充電率を確認する手段としては、製品の仕様書や荷主からのSoC証明書(Shipper's Declaration)を活用することが一般的です。IATA DGR準拠のShipper's Declaration for Dangerous Goodsのフォーム記載要領を荷主に周知しておくと、後工程がスムーズになります。


JACIS(日本航空危険物情報センター):IATA DGR第67版(2026年)主要な改定点まとめ(PDF)


リチウムイオン電池の申告書記載と新UNコードへの対応

2026年版DGRでは、危険物リストに新たなUNナンバーが追加されました。 通関実務に直結する変更です。 jacis.or(https://jacis.or.jp/image/revision/kaitei_2026.pdf)


新たに追加された主なUNコードは以下のとおりです。


  • 🔋 UN3563:貨物輸送ユニットに組み込まれたリチウム金属電池
  • 🔋 UN3564:貨物輸送ユニットに組み込まれたナトリウムイオン電池
  • 🚗 UN3166(追記):ハイブリッド車(可燃性ガス駆動・可燃性液体駆動)の品目名が追加


これらは2025年版の危険物リストには存在しなかった品目です。特にUN3563は、コンテナや輸送ユニットに組み込まれた状態でリチウム金属電池が出荷されるケース——例えば大型蓄電システムや産業用電源ユニット——に適用されます。 旧来はUN3090(リチウム金属電池)で申告していた案件でも、形態によってはUN3563が適切な場合があります。 jacis.or(https://jacis.or.jp/image/revision/kaitei_2026.pdf)


申告書の品目名が変わると、ラベリングやマーキングの要件も連動して変わります。 電池マークと第9分類危険性ラベルは同一面に施す新規定(7.1.5.5.4)も追加されたため、包装外装の設計にも注意が必要です。 jacis.or(https://jacis.or.jp/image/revision/kaitei_2026.pdf)


危険物申告書(Shipper's Declaration for Dangerous Goods)を作成する際は、最新のIATA DGR第67版または航空会社が発行した2026年対応の危険物取り扱いガイドを参照することが基本です。


リチウムイオン電池の航空輸送で通関担当が見落としやすい例外規定

「電池容量が小さければ規制は緩い」と考えている通関担当者は少なくありません。ところが、2026年改定ではその前提が一部崩れています。意外なポイントを整理します。


まず、ワット時定格値2.7Wh以下の小容量電池についてはSoC30%以下は引き続き「推奨要件」のまま変更ありません。 小型ボタン電池や一部のIoTデバイス内蔵電池が該当します。これは逆に「小容量なら2025年からルール変更なし」とも言え、混乱しやすい部分です。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


一方で見落としがちなのが、電動乗り物(EV・電動キックボード等)の規定です。 UN3556(リチウムイオン電池駆動の乗り物)として申告する場合、100Whを超えるバッテリー搭載モデルはSoC30%以下または表示容量25%以下が必須となりました。テスラのような大型EVのバッテリー容量は数十kWhに達するため、充電率25%でも数kWh以上残っていることになります。充電率を落としてから輸送するオペレーションが不可欠です。厳しいところですね。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


また、フランス発着貨物については政府例外規定FRG-07が変更され、危険物申告書を必要としない貨物であっても、包装物の表面に緊急時対応情報(緊急連絡先電話番号)の記載が求められるようになりました。 フランス経由の乗り継ぎ便を利用する案件では、この点も確認が必要です。 jal.co(https://www.jal.co.jp/jp/ja/jalcargo/news/20251229-01/)


例外と制限の両方を把握してこそ、正確な申告ができます。


NCA(日本貨物航空):IATA DGR第67版(2026年)主な変更点まとめ(PDF)


リチウムイオン電池の航空輸送で通関業者が今すぐやるべき実務チェックリスト

規制の内容を知っていても、実務に落とし込めていなければ意味がありません。2026年改定を受けた対応をまとめます。


  • 荷主へのSoC証明要求の徹底:2.7Whを超えるリチウムイオン電池を含む全案件で、荷主にSoCが30%以下であることの証明書類を求める
  • 危険物申告書の品目名確認:UN3563・UN3564の新品目に該当しないか、貨物内容の詳細を荷主に確認する
  • 電動乗り物案件の充電率確認:UN3556・UN3557・UN3558案件では100Wh超のバッテリー搭載有無を必ず確認する
  • ラベリング・マーキングの再確認:電池マークと第9分類危険性ラベルが同一面に貼付されているか確認する
  • フランス発着案件の緊急連絡先記載:危険物申告書不要案件でも包装面に緊急時対応情報を記載する
  • 航空会社への事前確認:SoC30%超の場合は発地国・運航者属する国の双方の書面による認可取得が必要なため、早期に航空会社へ相談する


2026年からは「知らなかった」が通じなくなります。荷主向けのインフォメーションを自社フォーマットで整備しておくと、問い合わせ対応の工数を大幅に削減できます。これは使えそうです。


特に海外荷主との取引が多いフォワーダーは、英語版のSoC確認フォーマットをIATA DGR第67版の記載に基づいて作成しておくことを推奨します。IATA公式サイトでは危険物輸送に関するトレーニングコース(IATA DGR Training)も提供されており、社内担当者のスキルアップにも活用できます。


IATA公式:航空危険物規則書第67版(2026年1月1日発効)への訂正(日本語版PDF)


| 区分 | Known Consignor(認知荷送人) | Regulated Agent(規制代理人) |
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| 主な対象 | メーカー・輸出業者・倉庫業者 | フォワーダー・通関業者・空港GHA |
| 役割 | 自社貨物をセキュアと申告する | 第三者の貨物を受け取り検査・申告する |
| 根拠 | 工場・倉庫でのセキュリティ管理 | 受入検査・X線/ETD検査等のスクリーニング |
| メリット | 自社貨物の再検査免除 | 他社からの貨物を一括受け入れ可能 |
| デメリット | 認定維持のための継続監査が必要 | 未認定荷送人からの貨物は全件検査が必要 |






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