区分所有相続税評価額計算方法と令和6年改正後の注意点

区分所有建物の相続税評価は令和6年の税制改正で大きく変更されました。区分所有補正率の導入により評価額が最大2倍になるケースもあります。通関業務に携わる方が不動産相続で損をしないために、評価方法や小規模宅地特例の適用条件を正しく理解していますか?

区分所有相続税評価と令和6年改正の影響

二世帯住宅を区分登記すると小規模宅地特例が使えません。

この記事のポイント
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区分所有補正率の導入

令和6年1月1日以降の相続から新たな評価方法が適用され、従来の1.2倍~2.0倍に評価額が上昇するケースが発生

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区分登記と特例適用

区分所有登記された二世帯住宅は小規模宅地特例が使えず、相続税が数千万円増えるリスクあり

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評価水準による補正

評価水準が0.6未満の場合は評価額が引き上げられ、1.0超の場合は引き下げられる3段階の補正方式

区分所有建物の相続税評価額の基本的な計算方法


区分所有建物の相続税評価額は、建物部分と敷地部分を分けて計算します。建物部分は固定資産税評価額をそのまま使用し、敷地部分は路線価または倍率方式で算出した土地全体の評価額に、登記簿に記載された敷地権割合を乗じて計算します。
参考)マンションの相続税はいくら?相続税評価額の計算方法と相続手続…


令和6年1月1日以降の相続では、これらの評価額に「区分所有補正率」を乗じる新方式が導入されました。つまり従来の評価方式だけでは完結しません。
参考)タワーマンションの相続税評価が令和6年度税制改正で激変した理…


計算式は「建物の固定資産税評価額×区分所有補正率」と「敷地利用権の評価額×区分所有補正率」を合計する形です。この補正率により実勢価格との乖離が是正されます。
参考)令和6年1月1日からのマンションの相続税評価 【税務レポート…


区分所有補正率の仕組みと評価水準による3段階の判定

区分所有補正率は評価水準によって3つのパターンに分類されます。評価水準とは、区分所有マンション一室の理論的な市場価格と現行評価額との乖離の割合を示す指標です。
参考)【令和6年改正】分譲マンションの相続税評価方法が変更されまし…


評価水準が0.6未満の場合、区分所有補正率は「評価乖離率×0.6」となり評価額が引き上げられます。評価額が市場価格より大幅に安い状態を是正するためです。
評価水準が0.6以上1.0以下なら補正なしです。評価水準が1.0を超える場合は評価乖離率をそのまま使い、評価額を引き下げます。
具体例として、評価水準が0.6未満の築浅マンションでは、区分所有補正率が2.2506となり元の評価額の2倍以上になるケースもあります。この制度は都心の高層マンションなど実勢価格と評価額の乖離が大きい物件を是正する目的で導入されました。

区分所有登記と小規模宅地特例の関係性

区分所有登記がされている二世帯住宅は、小規模宅地等の特例を使えません。例えば1階部分は父名義、2階部分は長男名義のように区分所有登記されていると、物理的に一戸建ての建物でも同居扱いにならないためです。
参考)自宅が区分所有の場合【実践!相続税対策】第516号


同じ二世帯住宅でも共有登記なら特例を使えます。共有登記は一つの所有権を複数人が共有で持つ形式で、区分所有登記とは別物です。
参考)小規模宅地特例が使えない二世帯住宅と対策方法【知らなきゃ大損…

特例を使えないと土地の評価額が80%減額されず、相続税が何千万円も増えてしまいます。登記の仕方一つで相続税負担が大きく変わるということですね。
参考)2世帯住宅たる実家の区分所有建物化と小規模宅地の特例不適用の…


二世帯住宅で小規模宅地等の特例を適用するための詳細な要件はこちら
既に区分所有登記をしている場合、相続発生前に登記を抹消し通常の一戸建て登記または共有登記に変更すれば、将来の相続で特例を受けられます。事前の対策が重要です。​

賃貸用区分所有建物の相続税評価の特徴

賃貸マンション一室を区分所有している場合、借地権割合や借家権割合を考慮して評価額を計算します。自用の場合と比べて評価減が発生するためです。
参考)家屋の一部賃貸の場合の相続税評価|相続大辞典|【相続税】専門…


賃貸部分を設けることで節税が可能になります。家屋の一部を賃貸している場合、賃貸部分と住居部分を分けて計算し、賃貸部分には控除が適用されるからです。​
ただし令和6年改正後は賃貸用でも区分所有補正率が適用されるため、従来より評価額が上がるケースが多くなります。物件ごとのスペック(築年数・階数・敷地割合など)で評価額が異なるため、事前のシミュレーションが必須です。​

区分所有マンション相続時の実務上の注意点

相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、小規模宅地等の特例は使えません。マンションに限らず宅地に特例を使うには、申告期限までに遺産分割を終えていることが条件だからです。
参考)マンション相続でも安心!小規模宅地等の特例のポイントを解説 …

区分所有建物が建っている敷地全体の面積に路線価を掛けた評価額に、土地の共有持分を掛け合わせて土地部分の評価額を算出します。共有持分は対象不動産の登記簿に「敷地権の割合」として記載されています。
参考)3-3.「区分所有建物」の評価

令和6年改正後も区分所有マンションは実勢価格と比較すれば相続税評価上で有利です。従来の評価額の1.2倍~2.0倍程度に上がりましたが、それでも実勢価格の6割程度に収まるケースが多いためです。
参考)マンションの相続税評価の改正、令和6年(2024年)1月~

通関業務従事者が知っておくべき区分所有相続の独自視点

通関業務に携わる方は輸入不動産の取り扱いに関わる可能性があります。海外から輸入された建材で建築された区分所有建物でも、国内の不動産として通常の相続税評価が適用されます。
また、相続財産について遺産分割が確定していない場合、その相続財産は各共同相続人の共有に属し、相続財産から生ずる所得は各共同相続人にその相続分に応じて帰属します。区分所有建物の賃貸収入も同様の扱いです。
参考)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1376_qa.htm

換価分割をするときは一度相続登記をしたうえで売却手続きを行います。区分所有建物を現物で分割できない場合、換金して相続人間で分け合う換価分割が選択肢になります。
参考)【相続した不動産を売却】手続きや特別控除・相続税も解説|相続…

フルローンで区分所有物件を購入すると、現金(負債)と不動産の評価額の差で課税遺産総額を圧縮できるケースもありますが、令和6年改正後は評価額が上昇するため効果は限定的です。リスクとリターンを慎重に見極める必要がありますね。
参考)相続税対策の不動産購入に潜む時価と評価の乖離による落とし穴

国税庁による居住用区分所有財産の評価に関する公式情報




マンガはじめて建物区分所有法 (0からわかる法律入門シリーズ)