関税と納税申告の方式と手続きを解説する輸入者向け通関ガイド

輸入貨物に課される関税の納税申告方式について詳しく解説します。申告納税方式と賦課課税方式の違いや、通関手続きの流れ、特例申告制度のメリットなど実務に役立つ情報を網羅。あなたの輸入ビジネスを円滑に進めるためのポイントとは?

関税と納税申告の基本知識と実務ポイント

関税納税申告の基本
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申告納税方式

輸入者自らが税額を計算して申告する方式

🏛️
賦課課税方式

税関長の処分により税額が確定する方式

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特例申告制度

輸入と納税を分離できる制度

関税の納税申告方式の種類と特徴

輸入貨物に対する関税の納税方式は大きく分けて2つあります。「申告納税方式」と「賦課課税方式」です。これらは関税額の確定方法が異なり、輸入者にとって重要な知識となります。

 

申告納税方式は、納付すべき税額が納税義務者(輸入者)自身の申告によって確定する方式です。この方式は昭和41年に導入され、急速に拡大する市場取引における通関の迅速化を目的としています。日々膨大化する輸入貨物に対して、すべての貨物について税関側で課税額を確定することが実質的に困難になったことが背景にあります。

 

一方、賦課課税方式は納付すべき税額が税関長の処分によって確定する方式です。この方式は主に旅行者の手荷物や一定金額以下の郵便物などに適用されます。

 

申告納税方式が適用される場合でも、以下の3つのケースでは税関長の処分によって納付税額が決定されます:

  • 納税義務者に申告義務があるにもかかわらず、申告がない場合
  • 税額の計算が法律に従っていなかった場合
  • 税額が、税関長の調査と異なる場合

これらの場合、税関長による「決定」または「更正」が行われ、納税額が確定します。

 

関税の納税申告書の作成と提出手続き

申告納税方式における納税申告は、「輸入(納税)申告書」に必要事項を記載し税関長に提出することで行います。この申告書には、貨物の品名、数量、課税標準、税額など詳細な情報を記入する必要があります。

 

申告書の作成にあたっては、以下の点に注意が必要です:

  1. 品目分類の正確な記載
    • 該当する実行関税率表の品目コード(9桁)を正確に入力
    • 誤った分類は税率の適用ミスにつながる可能性がある
  2. 課税価格の計算
    • 定率法第4条の2から第4条の6までの規定に基づく計算
    • 「輸入貨物の評価申告書」の適切な使用
  3. 原産地情報の記載
    • 特恵関税や経済連携協定(EPA)適用の場合は原産地証明書の情報

申告書の提出は個人でも可能ですが、通関業務の専門知識を要するため、多くの場合は通関業者に依頼することが一般的です。通関業者が輸入者の代理人として納税申告を行う場合、輸入者の名をもって行うことが必要です。

 

申告書提出後、税関での審査・検査が終了すると納付書が申告者に返却されます。この納付書を用いて銀行窓口や郵便局の貯金窓口で関税等を納付します。また、マルチペイメントネットワークやNACCSのリアルタイム口座振替方式(ダイレクト方式)を利用した納付も可能です。

 

関税の納税申告における特例申告制度のメリット

特例申告制度は、通常の申告納税方式とは異なり、輸入申告と納税申告を分離して行うことができる制度です。この制度を利用するためには、あらかじめ税関長の承認を受けた特例輸入者であるか、税関長の認定を受けた認定通関業者に委託する特例委託輸入者である必要があります。

 

特例申告制度の主なメリットは以下の通りです:

  1. 輸入手続きの迅速化
    • 輸入許可を先に受けることで、貨物の早期引取りが可能
    • 納税申告は輸入許可の日の属する月の翌月末日まで延長可能
  2. 資金繰りの改善
    • 納税のタイミングを遅らせることで、一時的な資金負担を軽減
    • 複数の輸入案件をまとめて納税処理することも可能
  3. 事務作業の効率化
    • 輸入申告と納税申告の分離により、書類作成の時間的余裕が生まれる
    • 複数の輸入案件の納税申告をまとめて行うことで事務作業を削減
  4. コンプライアンス向上
    • 特例輸入者になるためには税関によるコンプライアンスの審査が必要
    • 結果として企業全体のコンプライアンス体制が強化される

特例申告制度を利用する場合、輸入許可後に「特例申告書」を作成し、輸入許可の日の属する月の翌月末日までに輸入を許可した税関長に提出します。この制度は、継続的に輸入業務を行う企業にとって大きなメリットとなります。

 

関税の納税申告における修正申告と更正の請求

輸入者が申告納税方式で申告した後、申告内容に誤りがあることが判明した場合、修正申告や更正の請求を行う必要があります。

 

修正申告は、納税申告した税額が実際より少なかった場合(過少申告)に行います。輸入者は自主的に修正申告書を税関に提出し、不足分の税額を納付します。修正申告を自主的に行うことで、追徴課税における加算税が軽減されるケースもあります。

 

修正申告が必要となる主な事例:

  • 品目分類の誤りにより適用税率が低かった場合
  • 課税価格の計算に誤りがあった場合
  • 免税・減税の適用条件を満たしていなかった場合

一方、更正の請求は、納税申告した税額が実際より多かった場合(過大申告)に行います。輸入者は更正の請求書を税関に提出し、過大に納付した税額の還付を求めます。

 

更正の請求ができる期間は、原則として輸入許可の日の翌日から5年以内とされています。ただし、特例申告の場合は特例申告書の提出期限の翌日から5年以内となります。

 

また、税関長が職権で行う更正もあります。これは、税関長が輸入者の申告内容を調査した結果、申告税額に誤りがあると認めた場合に行われます。税関長による更正は、輸入許可の日の翌日から5年以内(脱税等の場合は7年以内)に行うことができます。

 

関税の納税申告と通関業者の役割と責任

輸入通関手続きにおいて、通関業者は重要な役割を担っています。関税法第7条の2では、通関業者が輸入者の代理人として納税申告を行う場合の取扱いについて規定されています。

 

通関業者の主な役割と責任は以下の通りです:

  1. 専門的知識に基づく正確な申告
    • 関税率表に基づく適切な品目分類
    • 課税価格の正確な計算
    • 各種減免税制度の適用判断
  2. 輸入者の代理人としての法的責任
    • 輸入者の名をもって納税申告を行う
    • 申告内容の正確性に対する責任
    • 税関とのコミュニケーション窓口
  3. 通関手続きの効率化
    • NACCSシステムを活用した電子申告
    • 事前教示制度の活用による通関リスクの低減
    • 特例申告制度等の活用提案
  4. コンプライアンス確保のサポート
    • 輸入者に対する法令遵守の助言
    • 適正な申告のための情報提供
    • 税関調査への対応支援

通関業者に依頼する場合のメリットとして、専門知識による正確な申告、通関手続きの迅速化、リスク管理の強化などが挙げられます。特に、品目分類や課税価格の計算など専門的な判断が必要な場面では、通関業者の知識と経験が大きな助けとなります。

 

一方で、通関業者に依頼する場合でも、最終的な納税義務者は輸入者自身であることを忘れてはなりません。通関業者の選定にあたっては、実績や専門性、コミュニケーション能力などを総合的に判断することが重要です。

 

税関による関税等の納付手続きの詳細解説
輸入者と通関業者の間で適切な情報共有と連携を図ることで、円滑な通関手続きと適正な納税申告が実現します。特に継続的な輸入取引を行う企業では、通関業者との良好な関係構築が業務効率化につながります。

 

関税の納税申告における電子申告システムの活用法

現代の通関業務において、電子申告システムの活用は欠かせません。特に輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS:Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)は、関税の納税申告を含む通関手続きを電子的に処理するための重要なインフラとなっています。

 

NACCSを活用した関税の納税申告には、以下のようなメリットがあります:

  1. 申告手続きの効率化
    • 24時間365日申告可能
    • ペーパーレス化による事務作業の削減
    • 申告から許可までの時間短縮
  2. 納税方法の多様化
    • リアルタイム口座振替方式(ダイレクト方式)による即時納付
    • マルチペイメントネットワークを利用した納付
    • 納期限延長制度との連携
  3. データ管理の効率化
    • 過去の申告データの活用
    • 統計データの自動生成
    • 社内システムとの連携可能性

NACCSを利用した納税申告の基本的な流れは以下の通りです:
① 輸入申告情報の入力

  • 品目コード、課税価格、原産地などの情報を入力
  • 適用税率や減免税制度の適用有無を選択

② システムによる自動計算

  • 入力情報に基づき関税額を自動計算
  • 内国消費税等も含めた納付税額の確定

③ 納税方法の選択

  • ダイレクト方式による即時納付
  • 納付書による金融機関での納付
  • 納期限延長制度の利用

④ 輸入許可

  • 納税確認後、システム上で輸入許可
  • 許可情報の電子的受領

NACCSを効果的に活用するためには、システムの操作方法だけでなく、品目分類や課税価格計算などの基本的な通関知識も必要です。また、システム障害時の対応策も事前に検討しておくことが重要です。

 

NACCSセンターによる通関業務マニュアル
電子申告システムの活用により、通関業務の効率化と正確性向上が期待できます。特に多数の輸入案件を扱う企業にとって、NACCSの活用は業務効率化の重要な要素となるでしょう。

 

以上、関税の納税申告に関する基本知識から実務のポイントまで解説しました。輸入者が適切に納税申告を行うためには、関税法の理解、正確な申告書の作成、適切な納税方法の選択が重要です。また、通関業者との連携や電子申告システムの活用により、より効率的な通関手続きが可能となります。輸入ビジネスを円滑に進めるためにも、関税の納税申告に関する知識を深め、適切な対応を心がけましょう。