韓国の関税法では、小口貨物に対する関税免除制度が設けられています。この制度は個人使用目的の輸入品や少額物品を対象としており、貿易実務者にとって重要な知識となります。
韓国での少額物品の免税基準は以下の通りです:
注意点として、合算金額が通関基準額を超え、1,000米ドル以下の場合は簡易申告制度が適用されます。この制度では、通常の輸入申告に比べて手続きが簡素化されますが、関税は課されることになります。
国際郵便やEMSで配送される個人使用の物品についても、同様の免税制度が適用されるため、個人間の小規模な貿易や贈答品の送付において活用できます。
韓国を訪問する旅行者や一時滞在者にとって、携行品に関する関税免除制度は重要な知識です。韓国関税法第96条および同法施行規則第26条に基づき、以下の物品については関税が免除されます。
旅行者の携行品または別送品の免税条件:
特に注目すべきは引越し物品に関する規定です:
ただし、自動車、船舶、航空機および1個あたりの課税価格が500万ウォン以上の宝石等は免税対象から除外されます。
国際貨物船または貨物機の乗組員についても、航行日数や滞在期間などを考慮した基準により、税関長が妥当と認める物品は免税対象となります(ただし自動車、船舶、航空機および1個当たりの課税価格が50万ウォン以上の宝石等を除く)。
2022年2月1日より韓国でも発効した地域包括的経済連携(RCEP)協定は、日韓間の貿易に大きな変化をもたらしています。この協定により、日本と韓国の間で初めての自由貿易協定が成立し、両国間の関税が段階的に撤廃されることになりました。
RCEP協定による関税撤廃の概要:
主な関税撤廃品目には以下のようなものがあります:
【食品・飲料】
【化学製品】
【繊維製品】
【機械・金属製品】
【自動車関連】
関税撤廃のスケジュールは段階的に進められ、韓国の場合、1年目は2022年2月1日から2022年12月31日、以降は暦年ごとに区切られています。最終的には2041年12月31日(20年目)までに合意された全ての関税撤廃が完了する予定です。
重要なポイントとして、関税を削減するためには産品の「特定原産地証明書」が必要となります。この証明書の取得手続きを適切に行わなければ、関税削減のメリットを享受できないため注意が必要です。
韓国の関税率は国際的に見ても特徴的な水準にあります。世界銀行のデータによると、韓国の平均関税率は8.6%で、これはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最も高い水準となっています。OECD加盟国の平均関税率が約1.9%であることを考えると、韓国の関税率がいかに高いかがわかります。
韓国の関税率の特徴:
特に注目すべき品目別の関税率例:
この高い関税率は農業団体など生産者の政治的影響力が強いことが背景にあります。経済的合理性よりも政治的論理が優先される場合が多く、例えば緑茶のライバルはコーヒーであるにもかかわらず、紅茶に高い関税を課す一方でコーヒーには低い関税を設定するといった矛盾も見られます。
ただし、韓国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国からの輸入品に対しては大幅に低い関税率が適用されます。例えば、米国からの輸入品に対する平均関税率は0.79%と非常に低くなっています。
韓国の税収における関税の割合は、1980年代の10%から2024年には2%にまで低下しており、税収確保という観点からの関税の役割は縮小しています。
韓国との貿易において関税免除制度を最大限に活用するためには、戦略的なアプローチと実務上の注意点を押さえることが重要です。ここでは、ビジネスパーソンのための実践的なアドバイスをご紹介します。
小口貨物の戦略的活用
韓国への輸出において、150米ドル(米国からは200米ドル)以下の小口貨物は関税免除の対象となります。この制度を活用するための戦略として:
RCEP協定の活用ポイント
RCEP協定による関税撤廃・削減のメリットを享受するためには:
実務上の注意点
ビジネスモデル別の戦略
韓国の関税制度は複雑で変更も多いため、専門家のアドバイスを受けながら、最新情報に基づいた戦略的なアプローチを取ることが成功の鍵となります。
韓国の関税政策は国際情勢の変化に応じて常に変動しています。特に米国のトランプ前大統領が掲げた「関税爆弾」政策と、2025年に予想される再選後の政策動向は、韓国と取引のある企業にとって重要な注目点です。
トランプ関税政策と韓国の対応
2025年3月現在、韓国政府は米国に対して「相互関税」と鉄鋼・アルミニウム関税の適用除外を要請しています。2025年2月に韓国政府代表団がワシントンを訪問し、以下の主張を行いました:
韓国産業通商資源省は「政府は今後も米国の貿易と通商措置について高官級協議を続け、産業界との緊密な意思疎通を通じて韓国企業への打撃を最小限に抑えるよう対応する」と表明しています。
金融機関スタンダード・チャータードのエコノミストは、韓国が2023年に米国の雇用に2万人以上貢献し、他のどの国よりも多かったと指摘。「米国の経済目標を支えるという大きな役割を考えれば、韓国と日本は関税免除を求める上で強い立場にある」との見方を示しています。
韓国の関税政策の矛盾と課題
韓国は「自由貿易のアイコン」を自認する一方で、OECD加盟国中最も高い関税率を維持しているという矛盾を抱えています。特に以下の点が国際的な批判の対象となっています:
これらの矛盾点は、トランプ大統領が掲げる「相互主義」原則に基づく関税政策の格好のターゲットとなる可能性があります。トランプ大統領は関税だけでなく、付加税や補助金、検疫など非関税障壁も考慮して追加関税を課す方針を示しており、韓国にとって厳しい状況が予想されます。
日本企業への影響と対策
米韓間の関税問題は、韓国と取引のある日本企業にも間接的な影響を及ぼす可能性があります:
日本企業としては、以下の対策を検討することが重要です:
韓国の関税政策と米韓関税交渉の行方は、2025年以降の東アジア貿易環境に大きな影響を与える可能性があります。最新動向を常に把握し、柔軟な対応策を準備しておくことが重要です。
以上、韓国の関税免除制度と最新動