韓国の関税免除と小口貨物の通関制度

韓国への輸出入における関税免除の仕組みと最新動向を解説。RCEP協定による関税撤廃や小口貨物の免税制度など、実務に役立つ情報を網羅しています。あなたのビジネスに関わる韓国との貿易で、どのように関税免除を活用できるでしょうか?

韓国の関税免除と通関制度について

韓国の関税免除制度の概要
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少額物品の免税

総課税価格が150米ドル以下の物品は関税と付加価値税が免除されます

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旅行者の免税枠

旅行者1名あたり800米ドル以下の携行品は免税対象となります

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RCEP協定の影響

日韓間で品目ベース約80%以上の関税が段階的に撤廃されます

韓国の小口貨物における関税免除の基準と条件

韓国の関税法では、小口貨物に対する関税免除制度が設けられています。この制度は個人使用目的の輸入品や少額物品を対象としており、貿易実務者にとって重要な知識となります。

 

韓国での少額物品の免税基準は以下の通りです:

  • 総課税価格が150米ドル以下の物品:韓国内居住者が自己使用のために受け取る場合、関税と付加価値税が免除されます
  • 米国からの輸入の場合:免税基準額は200米ドルとなっています
  • 合算課税の場合:合計物品価格が150米ドル未満の場合にのみ免税対象となります

注意点として、合算金額が通関基準額を超え、1,000米ドル以下の場合は簡易申告制度が適用されます。この制度では、通常の輸入申告に比べて手続きが簡素化されますが、関税は課されることになります。

 

国際郵便やEMSで配送される個人使用の物品についても、同様の免税制度が適用されるため、個人間の小規模な貿易や贈答品の送付において活用できます。

 

韓国への旅行者が利用できる関税免除制度と携行品の規定

韓国を訪問する旅行者や一時滞在者にとって、携行品に関する関税免除制度は重要な知識です。韓国関税法第96条および同法施行規則第26条に基づき、以下の物品については関税が免除されます。

 

旅行者の携行品または別送品の免税条件:

  • 旅行者1名あたり800米ドル以下の物品は免税対象
  • 通常必要と認められる身辺用品および身辺装飾品
  • 非居住者である旅行者の職業上必要と認められる職業用具
  • 税関長が搬出確認した物品で、再搬入される物品

特に注目すべきは引越し物品に関する規定です:

  • 韓国国民が1年以上(家族同伴の場合は6ヶ月)外国に住居を移転した後に韓国に入国する際の引越し物品
  • 外国人または在外永住権者として韓国に住居を設定し、1年(家族同伴の場合は6ヶ月)以上居住予定の人が持ち込む引越し物品

ただし、自動車、船舶、航空機および1個あたりの課税価格が500万ウォン以上の宝石等は免税対象から除外されます。

 

国際貨物船または貨物機の乗組員についても、航行日数や滞在期間などを考慮した基準により、税関長が妥当と認める物品は免税対象となります(ただし自動車、船舶、航空機および1個当たりの課税価格が50万ウォン以上の宝石等を除く)。

 

RCEP協定による韓国と日本間の関税免除品目と段階的撤廃スケジュール

2022年2月1日より韓国でも発効した地域包括的経済連携(RCEP)協定は、日韓間の貿易に大きな変化をもたらしています。この協定により、日本と韓国の間で初めての自由貿易協定が成立し、両国間の関税が段階的に撤廃されることになりました。

 

RCEP協定による関税撤廃の概要:

  • 韓国が日本からの輸入品にかける関税の撤廃率:品目ベースで83%
  • 日本が韓国からの輸入品にかける関税の撤廃率:品目ベースで81%
  • 韓国の対日無税品目の割合:19%から92%へ上昇

主な関税撤廃品目には以下のようなものがあります:
【食品・飲料】

  • 清酒、焼酎、ビール、ウイスキーおよびボトルワイン
  • キャンディー、板チョコレート等の菓子

【化学製品】

  • 酢酸セルロース(液晶ディスプレイ用保護フィルムの原料)
  • ブタンガス、エチレン、プロピレン
  • 絵の具、酵素、磨き料

【繊維製品】

  • 亜麻織物、綿織物のほとんど
  • 縫糸(人造繊維)
  • 合成繊維(長繊維)の織物のほとんど

【機械・金属製品】

  • アイロンがけ用機械、皿洗機
  • スチールたわし、鉄器の一部(南部鉄器等)
  • 鉄鋼製調理用加熱器具のほとんど

【自動車関連】

  • 自動車部品(カムシャフト、エアバッグ、電子系部品)
  • クラッチ、駆動軸、シートベルト
  • 自動二輪車、トレーラー、三輪自転車

関税撤廃のスケジュールは段階的に進められ、韓国の場合、1年目は2022年2月1日から2022年12月31日、以降は暦年ごとに区切られています。最終的には2041年12月31日(20年目)までに合意された全ての関税撤廃が完了する予定です。

 

重要なポイントとして、関税を削減するためには産品の「特定原産地証明書」が必要となります。この証明書の取得手続きを適切に行わなければ、関税削減のメリットを享受できないため注意が必要です。

 

韓国の関税率の特徴と国際比較における位置づけ

韓国の関税率は国際的に見ても特徴的な水準にあります。世界銀行のデータによると、韓国の平均関税率は8.6%で、これはOECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最も高い水準となっています。OECD加盟国の平均関税率が約1.9%であることを考えると、韓国の関税率がいかに高いかがわかります。

 

韓国の関税率の特徴:

  • OECD加盟国中で最も高い平均関税率(8.6%)
  • 世界190カ国中でも上位30%に入る高さ
  • 一部の発展途上国と同レベルの関税率

特に注目すべき品目別の関税率例:

  • 紅茶:40%(韓国の緑茶産業保護が目的)
  • 原油:基本税率3%(OECD加盟非産油国では唯一課税)
  • コーヒー:0-2%(比較的低率)

この高い関税率は農業団体など生産者の政治的影響力が強いことが背景にあります。経済的合理性よりも政治的論理が優先される場合が多く、例えば緑茶のライバルはコーヒーであるにもかかわらず、紅茶に高い関税を課す一方でコーヒーには低い関税を設定するといった矛盾も見られます。

 

ただし、韓国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国からの輸入品に対しては大幅に低い関税率が適用されます。例えば、米国からの輸入品に対する平均関税率は0.79%と非常に低くなっています。

 

韓国の税収における関税の割合は、1980年代の10%から2024年には2%にまで低下しており、税収確保という観点からの関税の役割は縮小しています。

 

韓国の関税免除を活用したビジネス戦略と実務上の注意点

韓国との貿易において関税免除制度を最大限に活用するためには、戦略的なアプローチと実務上の注意点を押さえることが重要です。ここでは、ビジネスパーソンのための実践的なアドバイスをご紹介します。

 

小口貨物の戦略的活用
韓国への輸出において、150米ドル(米国からは200米ドル)以下の小口貨物は関税免除の対象となります。この制度を活用するための戦略として:

  • サンプル出荷の際に金額を調整して免税枠内に収める
  • 高額商品の場合、分割して小口で発送することで関税負担を軽減(ただし税関当局の判断で合算される可能性あり)
  • 商品見本や広告用品として認められるよう適切な申告を行う

RCEP協定の活用ポイント
RCEP協定による関税撤廃・削減のメリットを享受するためには:

  • 特定原産地証明書の取得手続きを確実に行う
  • 段階的関税撤廃スケジュールを確認し、最適なタイミングで輸出入を計画
  • 関税撤廃対象品目リストを定期的にチェックし、ビジネス戦略に反映

実務上の注意点

  • 特定原産地証明書の取得には、原産地規則の理解と適切な書類準備が必要
  • 韓国の関税制度は頻繁に変更されるため、最新情報の定期的な確認が重要
  • 通関手続きの遅延リスクを考慮した余裕あるスケジュール設定
  • 韓国特有の非関税障壁(検疫、規格認証など)への対応準備

ビジネスモデル別の戦略

  1. EC事業者向け:
    • 小口貨物免税制度を活用した直接販売モデルの構築
    • 韓国内の物流パートナーとの連携による効率的な配送体制の確立
  2. 製造業向け:
    • RCEP協定による関税撤廃品目を考慮した部品調達・製品輸出戦略
    • 韓国企業との戦略的提携による現地生産体制の検討
  3. 商社・卸売業向け:
    • 関税免除対象品目に特化した商品ラインナップの構築
    • 韓国市場向け商品の価格競争力強化のための関税コスト削減

韓国の関税制度は複雑で変更も多いため、専門家のアドバイスを受けながら、最新情報に基づいた戦略的なアプローチを取ることが成功の鍵となります。

 

韓国の関税政策の最新動向とトランプ関税への対応

韓国の関税政策は国際情勢の変化に応じて常に変動しています。特に米国のトランプ前大統領が掲げた「関税爆弾」政策と、2025年に予想される再選後の政策動向は、韓国と取引のある企業にとって重要な注目点です。

 

トランプ関税政策と韓国の対応
2025年3月現在、韓国政府は米国に対して「相互関税」と鉄鋼・アルミニウム関税の適用除外を要請しています。2025年2月に韓国政府代表団がワシントンを訪問し、以下の主張を行いました:

  • 韓国と米国の間の関税は自由貿易協定(FTA)の下で既にほぼ全て撤廃されている
  • 韓国企業による対米投資の重要性をアピール
  • トランプ政権とのハイレベル協議開催を提案

韓国産業通商資源省は「政府は今後も米国の貿易と通商措置について高官級協議を続け、産業界との緊密な意思疎通を通じて韓国企業への打撃を最小限に抑えるよう対応する」と表明しています。

 

金融機関スタンダード・チャータードのエコノミストは、韓国が2023年に米国の雇用に2万人以上貢献し、他のどの国よりも多かったと指摘。「米国の経済目標を支えるという大きな役割を考えれば、韓国と日本は関税免除を求める上で強い立場にある」との見方を示しています。

 

韓国の関税政策の矛盾と課題
韓国は「自由貿易のアイコン」を自認する一方で、OECD加盟国中最も高い関税率を維持しているという矛盾を抱えています。特に以下の点が国際的な批判の対象となっています:

  • 紅茶に40%という高関税を課す一方、コーヒーには0-2%の低関税
  • 原油に3%の関税を課す(OECD加盟非産油国では唯一)
  • 農業団体など生産者の政治的影響力による経済合理性に反する関税設定

これらの矛盾点は、トランプ大統領が掲げる「相互主義」原則に基づく関税政策の格好のターゲットとなる可能性があります。トランプ大統領は関税だけでなく、付加税や補助金、検疫など非関税障壁も考慮して追加関税を課す方針を示しており、韓国にとって厳しい状況が予想されます。

 

日本企業への影響と対策
米韓間の関税問題は、韓国と取引のある日本企業にも間接的な影響を及ぼす可能性があります:

  • 米国の対韓関税引き上げにより韓国経済が停滞した場合、日本からの輸出も影響を受ける
  • 韓国企業の対米輸出減少を補うための対日輸出拡大の可能性
  • サプライチェーンの再編による日本企業への発注増加の可能性

日本企業としては、以下の対策を検討することが重要です:

  1. 米韓関税交渉の動向を注視し、ビジネス戦略に反映させる
  2. RCEP協定による関税免除メリットを最大限に活用する
  3. 韓国市場向け戦略の多様化(現地生産、第三国経由輸出など)
  4. 韓国企業との戦略的提携によるリスク分散

韓国の関税政策と米韓関税交渉の行方は、2025年以降の東アジア貿易環境に大きな影響を与える可能性があります。最新動向を常に把握し、柔軟な対応策を準備しておくことが重要です。

 

以上、韓国の関税免除制度と最新動