中国関税率表と輸入関税の基礎知識

中国との貿易に欠かせない関税率表の読み方や活用法について解説します。HSコードの仕組みから実際の税率検索方法まで、通関業務に役立つ情報が満載です。あなたのビジネスに関税の壁はありませんか?

中国関税率表と輸入手続きの基本

中国関税率表の基本情報
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HSコード体系

国際統一商品分類に基づく6桁コードと中国独自の細分類

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5種類の税率区分

最恵国税率、暫定税率、協定税率、特恵税率、普通税率

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オンライン検索ツール

中国税関総署HPで最新の関税率情報を確認可能

中国関税率表のHSコード体系と構造

中国関税率表は国際統一商品分類(HS:Harmonized System)に基づいて作成されています。HSコードは世界共通の6桁コードと、各国が独自に設定する追加の桁数で構成されています。中国の場合、8桁または10桁のコードを使用しており、これによって輸入品を詳細に分類し、適切な税率を適用しています。

 

HSコードの構造は以下のようになっています:

  • 最初の2桁:類(Chapter)
  • 次の2桁:項(Heading)
  • 次の2桁:号(Subheading)
  • 残りの桁:国別細分(National subdivision)

例えば、「8415.10.10」というコードがあった場合、「84」は機械類、「15」はエアコン等の空調機器、「10」は窓型・壁型のエアコン、そして最後の「10」は中国独自の細分類を表しています。

 

中国関税率表は全体で21部97類に分類されており、各類ごとに詳細な品目と税率が記載されています。通関業務に携わる方は、この分類体系を理解することが業務効率化の第一歩となります。

 

中国輸入関税の5つの税率区分と適用条件

中国の輸入関税は5つの区分に分類されており、輸入する商品や輸出国によって適用される税率が異なります。

 

  1. 最恵国税率(MFN税率):WTO加盟国や中国と二国間貿易協定を結んでいる国からの輸入品に適用される基本的な税率です。日本からの輸入品のほとんどはこの税率が適用されます。

     

  2. 暫定税率:最恵国税率よりも低い税率を一定期間適用するもので、中国政府が特定の商品の輸入を促進したい場合に設定されます。毎年見直しが行われるため、最新情報の確認が重要です。

     

  3. 協定税率:中国が自由貿易協定(FTA)を締結している国からの輸入品に適用される特別税率です。ASEAN諸国、韓国、オーストラリアなどとのFTAに基づく税率が該当します。

     

  4. 特恵税率:中国が発展途上国に対して一方的に与える特恵関税で、最も低い税率となっています。特定の後発開発途上国からの一部商品には、ゼロ関税が適用されることもあります。

     

  5. 普通税率:上記のいずれの税率も適用されない国からの輸入品に課される最も高い税率です。WTO非加盟国で、中国と特別な貿易協定も結んでいない国が対象となります。

     

これらの税率は商品によって大きく異なり、0%から数百%まで幅広く設定されています。特に高級品や中国国内産業を保護したい品目については高い税率が設定される傾向にあります。

 

中国関税率表の検索方法とオンラインツールの活用

中国の関税率を正確に把握するためには、信頼性の高い情報源からの最新データを参照することが重要です。中国税関総署のウェブサイトでは公式の関税率検索ツールが提供されており、HSコードや品目名から関税率を検索することができます。

 

中国税関総署の関税率検索ツール:
中国税関総署 関税率検索ページ
このツールを使用する際の注意点:

  • 検索画面は中国語(簡体字)表記のため、中国語の知識が必要です
  • HSコードがわかっている場合は、コード番号で検索するのが最も確実です
  • 品目名で検索する場合は、中国語の正式名称を使用する必要があります
  • 検索結果には最恵国税率、協定税率、特恵税率などが表示されます

また、日本の貿易関連機関も中国の関税率情報を提供しています。

 

ジェトロ(日本貿易振興機構)中国関税情報ページ
民間のサービスでは、より使いやすいインターフェースで関税率を検索できるツールもありますが、最新性や正確性については公式サイトで確認することをお勧めします。

 

中国関税計算の実務と従価税・従量税の違い

中国の関税計算方法は主に3種類あり、輸入する商品によって適用される計算方法が異なります。

 

  1. 従価税(Ad Valorem Duty)

    従価税は商品の価格に対して一定の割合で課税される方式です。例えば、CIF価格(商品価格+保険料+運賃)が10,000元で税率が10%の場合、関税額は1,000元となります。

     

    計算式:関税額 = CIF価格 × 税率

  2. 従量税(Specific Duty)

    従量税は商品の数量や重量に基づいて課税される方式です。例えば、1キログラムあたり5元という形で設定されます。

     

    計算式:関税額 = 商品の数量(または重量)× 単位あたりの税額

  3. 複合税(Compound Duty)

    複合税は従価税と従量税を組み合わせた方式で、両方の計算結果を合算するか、いずれか高い方を適用します。

     

    計算式:関税額 = 従価税部分 + 従量税部分 または いずれか高い方

実際の関税計算では、これらの基本的な計算方法に加えて、付加価値税(増値税)や消費税などの追加税も考慮する必要があります。中国の場合、多くの輸入品に対して13%の付加価値税が課されるほか、酒類やタバコ、高級化粧品などには消費税も課されます。

 

関税計算の具体例:

  • 商品:高級腕時計
  • CIF価格:20,000元
  • 関税率:20%(従価税)
  • 付加価値税:13%
  • 消費税:20%

計算手順:

  1. 関税額 = 20,000元 × 20% = 4,000元
  2. 消費税課税価格 = (20,000元 + 4,000元) ÷ (1 - 20%) = 30,000元
  3. 消費税額 = 30,000元 × 20% = 6,000元
  4. 付加価値税課税価格 = 20,000元 + 4,000元 + 6,000元 = 30,000元
  5. 付加価値税額 = 30,000元 × 13% = 3,900元
  6. 総納税額 = 4,000元 + 6,000元 + 3,900元 = 13,900元

このように、実際の納税額は単純な関税率だけでなく、複数の税金が組み合わさって計算されるため、正確な事前見積もりが重要になります。

 

中国関税率表の最新動向と日中貿易への影響

中国の関税政策は国際情勢や国内経済政策に応じて頻繁に変更されます。近年の主な動向と日中貿易への影響について理解しておくことは、通関業務従事者にとって重要です。

 

最近の主な関税政策変更
2023年以降、中国は一部の商品に対する暫定輸入関税率を調整し、特に先端技術関連の部品や環境保護に関連する設備については関税率を引き下げる傾向にあります。これは中国の産業高度化政策「中国製造2025」や炭素中立目標に沿った動きです。

 

具体的には、半導体製造装置、医療機器部品、新エネルギー車関連部品などの関税率が引き下げられています。一方で、中国国内産業の保護が必要な分野では高い関税率が維持されており、特に農産品や一部の消費財については引き続き高い関税障壁が存在します。

 

米中貿易摩擦の影響
2018年から始まった米中貿易摩擦は、両国間の関税率に大きな影響を与えました。中国は米国からの輸入品に対して報復関税を課し、一部の品目では通常の最恵国税率に加えて追加関税が適用されています。この状況は日本企業にも間接的な影響を与えており、サプライチェーンの再構築や迂回輸出などの対応が見られます。

 

RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の影響
2022年1月に発効したRCEPは、日本と中国を含むアジア太平洋地域15カ国による自由貿易協定です。RCEPの下では、締約国間で段階的に関税が引き下げられ、最終的には約90%の品目で関税が撤廃される予定です。日本企業にとっては、原産地規則を満たすことで中国向け輸出の際に協定税率を適用できるメリットがあります。

 

今後の展望
中国は引き続き国内産業の高度化と国際競争力強化を目指しており、それに沿った関税政策の調整が予想されます。特に以下の点に注目が必要です:

  • ハイテク産業や環境関連分野での関税引き下げ
  • 電子商取引(越境EC)に関する関税政策の変更
  • 自由貿易試験区における特別関税政策
  • 中国の「双循環」戦略に基づく輸入促進品目の関税優遇

通関業務従事者は、中国税関総署や商務部のウェブサイト、ジェトロなどの情報を定期的にチェックし、最新の関税動向を把握することが重要です。

 

ジェトロ:RCEP発効による日中間の関税削減スケジュール

中国関税率表活用のための実践的なヒントと注意点

中国との貿易において関税率表を効果的に活用するためには、いくつかの実践的なヒントと注意点を押さえておくことが重要です。ここでは、通関業務従事者が日常業務で直面する可能性のある課題と対策について解説します。

 

正確なHSコード分類の重要性
商品の正確なHSコード分類は、適切な関税率の適用において最も重要な要素です。同じような商品でも、わずかな違いで異なるHSコードに分類され、結果として大きく税率が変わることがあります。

 

例えば、「プラスチック製の玩具」と「プラスチック製の装飾品」では、HSコードが異なり適用される税率も異なります。不明確な場合は、以下の方法で確認することをお勧めします:

  • 中国税関への事前教示制度(Advance Ruling)の利用
  • 専門の通関業者やコンサルタントへの相談
  • 過去の類似商品の輸入実績の参照

特恵関税の適用条件と原産地証明
特恵関税(協定税率や特恵税率)を適用するためには、該当する原産地規則を満たし、適切な原産地証明書を提出する必要があります。RCEPなどの自由貿易協定に基づく特恵税率を利用する場合、以下の点に注意が必要です:

  • 協定ごとに異なる原産地規則の確認
  • 原産地証明書の正確な作成と提出
  • 直接輸送要件などの付随条件の遵守

関税評価の適正化
中国税関は輸入品の申告価格について厳格な審査を行っています。特に以下のような場合、申告価格が疑問視され、追加の関税や罰金が課される可能性があります:

  • 市場価格より明らかに低い申告価格
  • 関連会社間取引における移転価格
  • ロイヤリティやライセンス料の申告漏れ

適正な関税評価のためには、取引価格を裏付ける契約書、インボイス、支払い証明などの書類を整備し、必要に応じて中国税関に提出できるようにしておくことが重要です。

 

非関税障壁への対応
中国への輸出においては、関税以外にも様々な非関税障壁が存在します。主なものには以下があります:

  • 輸入許可制度(特定商品の輸入には許可が必要)
  • 検疫・検査要件(特に食品、化粧品、医療機器など)
  • 中国強制規格(CCC認証)
  • ラベリング要件

これらの非関税障壁は、関税率と同様に重要な貿易障壁となるため、事前に十分な情報収集と対策が必要です。

 

最新情報の定期的な確認
中国の関税政策は頻繁に変更されるため、定期的に最新情報を確認することが重要です。特に年末から年始にかけては、翌年の暫定税率や輸出入政策が発表されることが多いため、注意が必要です。

 

また、特定の商品に対する反ダンピング税や相殺関税などの特別措置も随時発表されるため、中国商務部や税関総署のウェブサイトを定期的にチェックすることをお勧めします。

 

中国商務部:貿易救済措置(反ダンピング・相殺関税)情報
以上の点に注意しながら中国関税率表を活用することで、予期せぬ追加コストや通関遅延を避け、スムーズな貿易取引を実現することができます。通関業務従事者は、これらの知識を日々の業務に活かし、クライアントに付加価値の高いサービスを提供することが求められています。