中国関税率表は国際統一商品分類(HS:Harmonized System)に基づいて作成されています。HSコードは世界共通の6桁コードと、各国が独自に設定する追加の桁数で構成されています。中国の場合、8桁または10桁のコードを使用しており、これによって輸入品を詳細に分類し、適切な税率を適用しています。
HSコードの構造は以下のようになっています:
例えば、「8415.10.10」というコードがあった場合、「84」は機械類、「15」はエアコン等の空調機器、「10」は窓型・壁型のエアコン、そして最後の「10」は中国独自の細分類を表しています。
中国関税率表は全体で21部97類に分類されており、各類ごとに詳細な品目と税率が記載されています。通関業務に携わる方は、この分類体系を理解することが業務効率化の第一歩となります。
中国の輸入関税は5つの区分に分類されており、輸入する商品や輸出国によって適用される税率が異なります。
これらの税率は商品によって大きく異なり、0%から数百%まで幅広く設定されています。特に高級品や中国国内産業を保護したい品目については高い税率が設定される傾向にあります。
中国の関税率を正確に把握するためには、信頼性の高い情報源からの最新データを参照することが重要です。中国税関総署のウェブサイトでは公式の関税率検索ツールが提供されており、HSコードや品目名から関税率を検索することができます。
中国税関総署の関税率検索ツール:
中国税関総署 関税率検索ページ
このツールを使用する際の注意点:
また、日本の貿易関連機関も中国の関税率情報を提供しています。
ジェトロ(日本貿易振興機構)中国関税情報ページ
民間のサービスでは、より使いやすいインターフェースで関税率を検索できるツールもありますが、最新性や正確性については公式サイトで確認することをお勧めします。
中国の関税計算方法は主に3種類あり、輸入する商品によって適用される計算方法が異なります。
従価税は商品の価格に対して一定の割合で課税される方式です。例えば、CIF価格(商品価格+保険料+運賃)が10,000元で税率が10%の場合、関税額は1,000元となります。
計算式:関税額 = CIF価格 × 税率
従量税は商品の数量や重量に基づいて課税される方式です。例えば、1キログラムあたり5元という形で設定されます。
計算式:関税額 = 商品の数量(または重量)× 単位あたりの税額
複合税は従価税と従量税を組み合わせた方式で、両方の計算結果を合算するか、いずれか高い方を適用します。
計算式:関税額 = 従価税部分 + 従量税部分 または いずれか高い方
実際の関税計算では、これらの基本的な計算方法に加えて、付加価値税(増値税)や消費税などの追加税も考慮する必要があります。中国の場合、多くの輸入品に対して13%の付加価値税が課されるほか、酒類やタバコ、高級化粧品などには消費税も課されます。
関税計算の具体例:
計算手順:
このように、実際の納税額は単純な関税率だけでなく、複数の税金が組み合わさって計算されるため、正確な事前見積もりが重要になります。
中国の関税政策は国際情勢や国内経済政策に応じて頻繁に変更されます。近年の主な動向と日中貿易への影響について理解しておくことは、通関業務従事者にとって重要です。
最近の主な関税政策変更
2023年以降、中国は一部の商品に対する暫定輸入関税率を調整し、特に先端技術関連の部品や環境保護に関連する設備については関税率を引き下げる傾向にあります。これは中国の産業高度化政策「中国製造2025」や炭素中立目標に沿った動きです。
具体的には、半導体製造装置、医療機器部品、新エネルギー車関連部品などの関税率が引き下げられています。一方で、中国国内産業の保護が必要な分野では高い関税率が維持されており、特に農産品や一部の消費財については引き続き高い関税障壁が存在します。
米中貿易摩擦の影響
2018年から始まった米中貿易摩擦は、両国間の関税率に大きな影響を与えました。中国は米国からの輸入品に対して報復関税を課し、一部の品目では通常の最恵国税率に加えて追加関税が適用されています。この状況は日本企業にも間接的な影響を与えており、サプライチェーンの再構築や迂回輸出などの対応が見られます。
RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の影響
2022年1月に発効したRCEPは、日本と中国を含むアジア太平洋地域15カ国による自由貿易協定です。RCEPの下では、締約国間で段階的に関税が引き下げられ、最終的には約90%の品目で関税が撤廃される予定です。日本企業にとっては、原産地規則を満たすことで中国向け輸出の際に協定税率を適用できるメリットがあります。
今後の展望
中国は引き続き国内産業の高度化と国際競争力強化を目指しており、それに沿った関税政策の調整が予想されます。特に以下の点に注目が必要です:
通関業務従事者は、中国税関総署や商務部のウェブサイト、ジェトロなどの情報を定期的にチェックし、最新の関税動向を把握することが重要です。
中国との貿易において関税率表を効果的に活用するためには、いくつかの実践的なヒントと注意点を押さえておくことが重要です。ここでは、通関業務従事者が日常業務で直面する可能性のある課題と対策について解説します。
正確なHSコード分類の重要性
商品の正確なHSコード分類は、適切な関税率の適用において最も重要な要素です。同じような商品でも、わずかな違いで異なるHSコードに分類され、結果として大きく税率が変わることがあります。
例えば、「プラスチック製の玩具」と「プラスチック製の装飾品」では、HSコードが異なり適用される税率も異なります。不明確な場合は、以下の方法で確認することをお勧めします:
特恵関税の適用条件と原産地証明
特恵関税(協定税率や特恵税率)を適用するためには、該当する原産地規則を満たし、適切な原産地証明書を提出する必要があります。RCEPなどの自由貿易協定に基づく特恵税率を利用する場合、以下の点に注意が必要です:
関税評価の適正化
中国税関は輸入品の申告価格について厳格な審査を行っています。特に以下のような場合、申告価格が疑問視され、追加の関税や罰金が課される可能性があります:
適正な関税評価のためには、取引価格を裏付ける契約書、インボイス、支払い証明などの書類を整備し、必要に応じて中国税関に提出できるようにしておくことが重要です。
非関税障壁への対応
中国への輸出においては、関税以外にも様々な非関税障壁が存在します。主なものには以下があります:
これらの非関税障壁は、関税率と同様に重要な貿易障壁となるため、事前に十分な情報収集と対策が必要です。
最新情報の定期的な確認
中国の関税政策は頻繁に変更されるため、定期的に最新情報を確認することが重要です。特に年末から年始にかけては、翌年の暫定税率や輸出入政策が発表されることが多いため、注意が必要です。
また、特定の商品に対する反ダンピング税や相殺関税などの特別措置も随時発表されるため、中国商務部や税関総署のウェブサイトを定期的にチェックすることをお勧めします。
中国商務部:貿易救済措置(反ダンピング・相殺関税)情報
以上の点に注意しながら中国関税率表を活用することで、予期せぬ追加コストや通関遅延を避け、スムーズな貿易取引を実現することができます。通関業務従事者は、これらの知識を日々の業務に活かし、クライアントに付加価値の高いサービスを提供することが求められています。