韓国の関税率表は、国定関税率と国際協力関税の2つの大きな体系から構成されています。国定関税率はさらに細分化され、基本税率、暫定税率、弾力関税率の3種類に分けられます。
基本税率は関税法に規定された標準的な税率で、暫定税率は一定期間のみ適用される税率です。一方、弾力関税率は特定の状況や目的に応じて適用される税率で、以下のような種類があります:
これらの弾力関税率は、国内産業保護や貿易不均衡の是正、季節的な需給調整など様々な政策目的のために設定されています。例えば、ダンピング防止関税は不当に安い価格で輸入される商品から国内産業を守るために課されます。
国際協力関税は、WTO発展途上国間の譲許関税、ESCAP発展途上国間の貿易協定による譲許関税、UN貿易開発会議発展途上国間の貿易協定による譲許関税などがあります。
韓国の関税率表では、課税方法として「従価税」「従量税」「混合税」の3種類が採用されています。
従価税は輸入品の価格に対して一定の割合で課税する方式です。例えば、10%の従価税が設定されている場合、100万ウォンの商品には10万ウォンの関税が課されます。価格が高い商品ほど税額も高くなるという特徴があります。
従量税は輸入品の数量(個数、重量、容量など)に応じて課税する方式です。例えば、1キログラムあたり1,000ウォンの従量税が設定されている場合、10キログラムの商品には10,000ウォンの関税が課されます。価格に関係なく、量に応じて税額が決まります。
混合税は従価税と従量税を組み合わせた課税方式で、「従価税または従量税のいずれか高い方」あるいは「従価税と従量税の合計」といった形で適用されます。
韓国では、輸入物品のCIF価格(Cost, Insurance and Freight:商品価格、保険料、運賃の合計)または数量を課税標準として定めています。CIF価格は関税評価協定(WTO協定の一部)に基づいて算定され、実際の取引価格を基本としつつ、特定の加算要素や控除要素を考慮して決定されます。
日本と韓国の間の貿易では、基本的にWTO譲許関税率が適用されてきました。WTO譲許関税率とは、WTO(世界貿易機関)の関税交渉によって合意された関税率の上限のことです。この上限を超えない範囲で、実際に適用する関税率(実行関税率)は国が自由に設定することができます。
しかし、2022年2月1日にRCEP(地域的な包括的経済連携協定)が日本と韓国の間で発効したことにより、状況が変わりました。RCEPは日本、中国、韓国、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランドの15か国が参加する大規模な自由貿易協定です。
RCEP発効により、日本から韓国への輸出において、WTO譲許関税率とRCEP協定税率のいずれかを選択できるようになりました。多くの品目でRCEP協定税率の方が低くなっているため、輸出者にとっては有利な選択肢が増えたことになります。
RCEP協定税率は品目によって即時撤廃されるものもあれば、段階的に引き下げられるものもあります。例えば、韓国の対日本関税率表では、自動車部品や電子機器などの工業製品を中心に、多くの品目で関税が段階的に撤廃される予定です。
韓国の関税率表を調べるには、主に以下の3つの方法があります:
1. World Tariffを利用する方法
World Tariffは、世界約175カ国の関税率を検索できるデータベースです。FedEx Trade Networks社とJETROとの契約により、日本の居住者は無料で利用できます。
このツールでは、輸出先別、品目別にMFN税率(WTO協定税率)やEPA税率などの特恵税率を調べることができます。また、輸入時にかかる付加価値税や売上税、酒税などの諸税も確認できるため、総合的なコスト計算が可能です。
利用方法:
2. RULES OF ORIGIN FACILITATORを利用する方法
RULES OF ORIGIN FACILITATORは、国際貿易センター(ITC)、世界税関機構(WCO)、世界貿易機関(WTO)が共同で開発した無料のオンラインツールです。
このツールの特徴は、関税率だけでなく原産地規則も同時に確認できる点にあります。RCEPなどの自由貿易協定を利用するためには原産地規則を満たす必要があるため、輸出者にとって非常に有用なツールです。
利用方法:
3. 韓国税関のウェブサイトを利用する方法
韓国税関(Korea Customs Service)の公式ウェブサイトでは、最新の関税率表を確認することができます。英語版も提供されているため、日本の輸出者も利用しやすくなっています。
このサイトでは、HSコードの検索機能や関税率の照会システムが提供されており、正確な情報を入手することができます。また、関税以外の輸入規制や手続きに関する情報も充実しています。
利用方法:
韓国税関の公式サイト(英語版)では最新の関税率表と検索システムが提供されています
韓国の関税率表を利用する際に注意すべき特殊な現象として「逆転税率」があります。これは、通常EPA税率(特恵税率)はMFN税率(一般税率)より低くなるはずですが、一部の品目においてEPA発効後にMFN税率がEPA税率より低くなる、または同じ税率になってしまう現象を指します。
逆転税率が発生する主な理由は、EPAでは品目によっては関税率が発効後すぐに撤廃されず、何年かかけて徐々に削減されるものがあるためです。このような品目は、税率が完全撤廃されるまでの途中段階で、相手国政府がMFN税率の引き下げを行うことによって、税率の逆転が生じる場合があります。
例えば、ある品目のMFN税率が当初5%で、EPA税率が段階的に引き下げられる予定だったとします。EPA発効時のEPA税率が4%だったとしても、その後相手国がMFN税率を1%に引き下げると、MFN税率の方がEPA税率より低くなります。
逆転税率が発生している場合の対応策としては、以下のようなものがあります:
実際の例として、2008年7月にあるEPAが発効し、2009年1月にMFN税率が5%から1%に引き下げられたケースでは、2009年1月から2011年1月まで逆転が生じ、2012年1月までMFN税率とEPA税率が同じ税率になっていました。このような期間中は、EPA特恵を利用するための手続きコストを考慮すると、MFN税率を適用する方が合理的です。
韓国と日本の貿易関係は、政治的な緊張関係にもかかわらず、経済的には緊密な関係を維持しています。両国はお互いが第3位の貿易相手国であり、特に工業製品や部品、原材料などの分野で活発な取引が行われています。
近年の日韓貿易における関税に関する最新動向としては、以下のようなものがあります:
1. RCEP協定の発効による関税削減
2022年2月に日本と韓国の間でRCEP協定が発効したことにより、多くの品目で関税の段階的削減・撤廃が始まりました。これにより、日韓間の貿易がさらに活性化することが期待されています。
特に、これまでFTA(自由貿易協定)が締結されていなかった日韓間において、RCEPは初めての特恵的な貿易枠組みとなりました。韓国の対日輸入品目の約46%について、段階的に関税が撤廃される予定です。
2. 輸出規制の緩和
2019年に日本が韓国向け半導体材料の輸出管理を強化し、韓国を輸出管理上の優遇国(ホワイト国)から除外した問題がありましたが、2023年に入り両国関係の改善に伴い、この措置が緩和されました。約4年ぶりに韓国がホワイト国に復帰したことで、輸出手続きが簡素化され、貿易の円滑化が進んでいます。
3. 電子商取引の拡大と関税対応
コロナ禍を契機に日韓間の電子商取引(EC)市場が拡大しており、個人輸入や小口貨物の取引が増加しています。韓国では一定金額以下の個人輸入品に対する簡易通関制度(Simplified Clearance for Small Value Imports)があり、150米ドル以下の物品については関税が免除されます。
4. 環境関連製品の関税削減の動き
気候変動対策の一環として、環境関連製品(再生可能エネルギー設備、省エネ製品など)の関税削減を進める国際的な動きがあります。韓国も環境関連製品の関税削減に積極的で、日本からの関連製品輸出にとってプラスの要因となっています。
5. デジタル貿易の枠組み整備
デジタルコンテンツやサービスの国境を越えた取引に関する新たな貿易ルールの整備が進んでいます。これらは直接的な関税ではなく、データの越境移転やソースコード開示要求の禁止などのルール作りが中心ですが、日韓のデジタル分野での協力拡大につながる可能性があります。
これらの動向は、韓国関税率表の利用方法や貿易戦略に影響を与える重要な要素となっています。特にRCEP協定の発効は、日韓間の貿易構造に大きな変化をもたらす可能性があり、関税率表の活用においても新たな視点が必要となっています。