関税の影響を大きく受ける株式銘柄と相互関税の動向

トランプ大統領による相互関税政策の発表を受け、日本株市場は大きく揺れています。輸出企業を中心に影響を受ける銘柄と、逆に恩恵を受ける内需関連銘柄とは?あなたの投資戦略はどう変わりますか?

関税の影響を大きく受ける株式銘柄と対策

トランプ相互関税の概要
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基本税率10%

全ての輸入品に一律10%の基本関税を課す政策

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日本への税率24%

EUの20%を上回る高い税率が設定され、市場に衝撃

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株価への影響

発表後、日経平均は一時1,623円安と急落

関税の影響で株価が急落した輸出関連銘柄の動向

2025年4月2日、トランプ米大統領が発表した「相互関税」政策は市場に大きな衝撃を与えました。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課したうえで、各国の関税や非関税障壁等を考慮し、それぞれの国や地域に相互関税を上乗せするという内容です。特に日本に対しては24%という、EUの20%を上回る高い税率が設定されました。

 

この発表を受けて、4月3日の東京株式市場では日経平均株価が一時、前日比1,623円安となる34,102円まで急落。特に輸出依存度の高い企業の株価が大きく下落しました。

 

株価下落率が特に大きかった銘柄

  • 半導体関連企業:キオクシアホールディングスは36.4%の下落を記録
  • 自動車関連企業:自動車は別途25%の関税が課されることもあり、大手自動車メーカーの株価も軒並み下落
  • スポーツ用品メーカー:アディダス(ドイツ)などは生産拠点がベトナム(46%)やカンボジア(49%)にあることから、12%の下落

野村證券のエクイティストラテジストによれば、25%の関税によって全産業の経常利益が7.7%押し下げられると試算されています。特に輸出依存度の高い企業ほど、業績への影響が大きくなると予想されます。

 

関税の影響を受けにくい内需関連株式銘柄の特徴

相互関税のショックの中でも、逆に株価が上昇した銘柄も存在します。4月初旬の相場では約50銘柄が上昇を記録し、このうち7銘柄は2桁の株価上昇率となりました。

 

上昇した銘柄の特徴としては、業績が海外動向に左右されにくい内需関連株が目立ちます。例えば。

  • インターネット関連:GMOインターネットは44.7%の上昇率を記録
  • 小売業:国内消費者向けビジネスを展開する企業
  • サービス業:国内市場を中心に展開する企業

特に注目すべきは、パルグループホールディングスのような内需小売系企業です。同社は生活雑貨「3COINS」を成長の軸とする企業で、国内市場に特化していることから関税の影響をほとんど受けません。

 

また、情報・通信セクターの企業も相対的に影響が小さいとされています。国内のサービス提供が中心で、物理的な製品輸出に依存していない企業は、関税の影響を受けにくい傾向があります。

 

関税の影響を回避できるコンテンツ・IP関連銘柄の投資機会

物理的な製品輸出ではなく、デジタルコンテンツやIP(知的財産)を提供する企業は、関税の影響を受けにくいという特徴があります。これらの企業は「モノの輸出ではない」ため、関税をかけられるリスクが低いのです。

 

特に注目される銘柄

  1. オンラインゲーム関連企業
    • 任天堂(7974)
    • ソニーグループ(6758)
    • コーエーテクモホールディングス(3635)
    • バンダイナムコホールディングス(7832)
    • カプコン(9697)
    • コナミグループ(9766)
  2. コンテンツ(IP)関連企業
    • KADOKAWA(9468)
    • サンリオ(8136)
    • 東映アニメーション(4816)
    • 東宝(9602)

特筆すべきは、コーエーテクモホールディングスのような企業です。「信長の野望」「三國志」などの歴史シミュレーションゲームや人気アクションゲームを展開し、海外売上高比率が45.3%と高いにもかかわらず、デジタルコンテンツという特性から関税の影響を受けにくいとされています。実際に同社は今期、北米の売上が54.2%増と大幅に伸びています。

 

参考:ダイヤモンド・ザイによるトランプ関税リスクが少ない注目銘柄の分析

関税政策が長期化した場合の株式市場への影響予測

トランプ大統領の関税政策が長期化した場合、株式市場にはさらなる影響が予想されます。特に懸念されるのは、各国による報復関税の連鎖です。EUや中国はすでに米国からの輸入品に対する報復関税を課す方針を示しており、貿易戦争が深刻化する懸念が高まっています。

 

長期的な影響

  • グローバルサプライチェーンの再編:企業は関税を回避するために生産拠点の見直しを迫られる可能性
  • インフレ圧力の高まり:輸入品価格の上昇による物価上昇
  • 世界経済の成長鈍化:貿易摩擦による経済活動の停滞

野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔氏によれば、夏場までの日本株環境は悪化が懸念されるとのことです。ただし、現在の株価下落は関税の影響をある程度織り込んだ水準とも言えます。TOPIXは自動車関税発表前の2800前後から4月3日時点で2560前後へと8~9%下落しており、これは25%関税による経常利益7.7%押し下げ効果とほぼ一致しています。

 

関税の影響を考慮した投資戦略の再構築ポイント

相互関税の影響を踏まえた投資戦略を再構築する際のポイントは以下の通りです。

  1. セクター分散の見直し
    • 輸出依存度の高いセクターへの過度な集中を避ける
    • 内需関連、デジタルコンテンツ、IP関連企業へのシフトを検討
  2. 個別銘柄の事業構造分析
    • 売上高の地域別構成比を確認
    • 生産拠点の地理的分散状況をチェック
    • デジタル化・サービス化の進展度合いを評価
  3. 長期的視点での投資判断
    • 短期的な株価変動に惑わされず、企業の本質的価値に注目
    • 関税政策の変更可能性も考慮した柔軟な姿勢
  4. 為替リスクへの対応
    • 関税政策は為替相場にも影響するため、為替変動リスクも考慮
    • 円高・円安どちらのシナリオにも対応できるポートフォリオ構築

具体的な投資アプローチとしては、以下のような銘柄選定基準が考えられます。

  • 国内市場シェアが高く、海外依存度が低い企業
  • デジタルコンテンツやIP関連のビジネスモデルを持つ企業
  • 関税の影響を価格転嫁できる強いブランド力を持つ企業
  • 地政学リスクに強い分散された事業ポートフォリオを持つ企業

参考:野村證券による相互関税の日本株への影響分析

関税政策下での新たな投資機会と注目すべき成長分野

相互関税の導入は多くの企業にとって逆風となりますが、一方で新たな投資機会も生まれています。特に注目すべき成長分野

  1. 国内インフラ関連企業
    • 五洋建設や三菱重工業など、国内インフラ整備に関わる企業
    • 国内需要に支えられ、関税の影響を受けにくい
  2. エンターテインメント・コンテンツ企業
    • サンリオ(上昇率24.0%)やコナミグループ(上昇率18.8%)など
    • デジタルコンテンツやIPライセンスビジネスは関税の影響を受けにくい
  3. 国内IT・通信サービス
    • SCSK(上昇率10.8%)やテレビ朝日ホールディングス(上昇率10.6%)
    • 国内向けサービスが中心で、海外依存度が低い
  4. 地方創生・地域経済関連銘柄
    • 地方銀行や地域密着型小売業
    • 国内経済の活性化政策の恩恵を受ける可能性

また、意外な視点としては、米国内での生産拠点を持つ日本企業にも注目する価値があります。「相互関税」により、米国で生産する物品の輸入品に対する価格競争力は上昇するため、すでに米国内に生産拠点を持つ企業は相対的に有利になる可能性があります。

 

さらに、関税政策の長期化を見据えた場合、サプライチェーンの再構築を支援するコンサルティング企業やロジスティクス企業にも新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

 

投資家としては、短期的な市場の混乱に惑わされず、こうした構造変化がもたらす中長期的な投資機会を冷静に見極めることが重要です。相互関税という新たな経済環境下でも、適切な銘柄選定と分散投資によって、リスクを抑えながらリターンを追求することが可能です。

 

参考:SBI証券による「トランプ関税」に強い主力銘柄分析