2025年4月2日、トランプ米大統領が発表した「相互関税」政策は市場に大きな衝撃を与えました。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課したうえで、各国の関税や非関税障壁等を考慮し、それぞれの国や地域に相互関税を上乗せするという内容です。特に日本に対しては24%という、EUの20%を上回る高い税率が設定されました。
この発表を受けて、4月3日の東京株式市場では日経平均株価が一時、前日比1,623円安となる34,102円まで急落。特に輸出依存度の高い企業の株価が大きく下落しました。
株価下落率が特に大きかった銘柄
野村證券のエクイティストラテジストによれば、25%の関税によって全産業の経常利益が7.7%押し下げられると試算されています。特に輸出依存度の高い企業ほど、業績への影響が大きくなると予想されます。
相互関税のショックの中でも、逆に株価が上昇した銘柄も存在します。4月初旬の相場では約50銘柄が上昇を記録し、このうち7銘柄は2桁の株価上昇率となりました。
上昇した銘柄の特徴としては、業績が海外動向に左右されにくい内需関連株が目立ちます。例えば。
特に注目すべきは、パルグループホールディングスのような内需小売系企業です。同社は生活雑貨「3COINS」を成長の軸とする企業で、国内市場に特化していることから関税の影響をほとんど受けません。
また、情報・通信セクターの企業も相対的に影響が小さいとされています。国内のサービス提供が中心で、物理的な製品輸出に依存していない企業は、関税の影響を受けにくい傾向があります。
物理的な製品輸出ではなく、デジタルコンテンツやIP(知的財産)を提供する企業は、関税の影響を受けにくいという特徴があります。これらの企業は「モノの輸出ではない」ため、関税をかけられるリスクが低いのです。
特に注目される銘柄
特筆すべきは、コーエーテクモホールディングスのような企業です。「信長の野望」「三國志」などの歴史シミュレーションゲームや人気アクションゲームを展開し、海外売上高比率が45.3%と高いにもかかわらず、デジタルコンテンツという特性から関税の影響を受けにくいとされています。実際に同社は今期、北米の売上が54.2%増と大幅に伸びています。
参考:ダイヤモンド・ザイによるトランプ関税リスクが少ない注目銘柄の分析
トランプ大統領の関税政策が長期化した場合、株式市場にはさらなる影響が予想されます。特に懸念されるのは、各国による報復関税の連鎖です。EUや中国はすでに米国からの輸入品に対する報復関税を課す方針を示しており、貿易戦争が深刻化する懸念が高まっています。
長期的な影響
野村證券市場戦略リサーチ部長の池田雄之輔氏によれば、夏場までの日本株環境は悪化が懸念されるとのことです。ただし、現在の株価下落は関税の影響をある程度織り込んだ水準とも言えます。TOPIXは自動車関税発表前の2800前後から4月3日時点で2560前後へと8~9%下落しており、これは25%関税による経常利益7.7%押し下げ効果とほぼ一致しています。
相互関税の影響を踏まえた投資戦略を再構築する際のポイントは以下の通りです。
具体的な投資アプローチとしては、以下のような銘柄選定基準が考えられます。
相互関税の導入は多くの企業にとって逆風となりますが、一方で新たな投資機会も生まれています。特に注目すべき成長分野
また、意外な視点としては、米国内での生産拠点を持つ日本企業にも注目する価値があります。「相互関税」により、米国で生産する物品の輸入品に対する価格競争力は上昇するため、すでに米国内に生産拠点を持つ企業は相対的に有利になる可能性があります。
さらに、関税政策の長期化を見据えた場合、サプライチェーンの再構築を支援するコンサルティング企業やロジスティクス企業にも新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
投資家としては、短期的な市場の混乱に惑わされず、こうした構造変化がもたらす中長期的な投資機会を冷静に見極めることが重要です。相互関税という新たな経済環境下でも、適切な銘柄選定と分散投資によって、リスクを抑えながらリターンを追求することが可能です。