TBT通報を60日以内に行わないと輸入差し止めリスクが発生します。
TBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade)は、1995年にWTO設立協定の一部として発効した国際条約です。正式名称は「貿易の技術的障害に関する協定」といいます。
参考)貿易の技術的障害に関する協定 - Wikipedia
この協定は、各国が定める工業製品や農産品の規格・基準認証制度が国際貿易に不必要な障害をもたらさないようにすることを目的としています。つまり規格が貿易の壁にならないようにするということですね。
参考)日本産業標準調査会:国際協議・協力-WTO/TBT
WTO加盟国すべてに適用される一括受託協定であり、批准の有無にかかわらず全加盟国が遵守する義務があります。1980年から2011年までに通報された件数は18,621件にも上り、そのうち日本からの通報は1,158件です。東京ドーム約370個分の書類量に相当する膨大な通報実績です。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/fukosei_boeki/pdf/2012_02_10.pdf
通関業務従事者にとって、このTBT協定は輸入申告時の規格適合性確認に直接関わる重要な規定となります。
外務省によるTBT協定の概要資料
TBT協定の正式な条文と主な権利・義務について詳しく解説されています。
TBT協定の対象は、工業品および農産品を含むすべての産品です。ただし例外があります。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000221825.pdf
SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)の対象となるものと、政府調達協定の対象となるものは除外されます。具体的には食品安全や動植物検疫に関する措置はSPS協定が優先適用されるということですね。
対象となる具体的項目は3つです。第一に「強制規格」、第二に「任意規格」、第三に「適合性評価手続」が含まれます。強制規格とは法令で遵守が義務付けられる規格、任意規格とは業界団体などが定める自主的な規格を指します。
製品の仕様や要件だけでなく、生産プロセスのマネジメントシステム、技術仕様なども対象になります。これは使う側にとって基準が明確になります。
通関業務では、輸入品がこれらの規格に適合しているかどうかの確認が求められるため、対象範囲を正確に理解しておく必要があります。
TBT協定では加盟国に対して複数の義務を課しています。最も基本的なのが内国民待遇と最恵国待遇の確保です。
輸入産品に対して国内産品や他国産品よりも不利な扱いをしてはならないという原則が第2.1条に規定されています。不公平な扱いは禁止ということです。
第2.2条では、正当な目的の達成のために必要以上に貿易制限的な措置をとらないことを求めています。正当な目的とは、国家安全保障、詐欺的行為の防止、人の健康・安全の保護などを指します。つまり過剰な規制はダメです。
参考)日本産業標準調査会:国際協議・協力-TBT協定について
第2.4条では、強制規格を制定する際には原則として国際規格を基礎として用いることを義務付けています。国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)などが定めた規格を採用するのが基本です。
通報義務も重要な要素です。強制規格案が国際規格に適合していない場合で、他の加盟国の貿易に著しい影響を及ぼす可能性があるときは、WTO事務局を通じて事前通報が必要です。この通報を怠ると後述するリスクが生じます。
TBT通報制度は、協定の透明性を確保するための中核的な仕組みです。加盟国が新たな強制規格や適合性評価手続を導入・変更する際、他の加盟国に事前に知らせる手続を指します。
通報後、他の加盟国からの意見を受け付ける期間が設けられます。この期間は原則として60日間、可能な場合は90日間が推奨されています。60日が基本だけ覚えておけばOKです。
参考)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F1285649amp;contentNo=23
1980年から2003年までの通報件数は9,924件で、そのうち日本からの通報は891件でした。通関業務従事者にとっては、自国の通報だけでなく他国からの通報内容も把握する必要があります。
通報内容はWTOのウェブサイトで公開されており、各国がどのような規格変更を予定しているかを確認できます。輸出入を扱う企業にとって、この情報は事前の対応準備に不可欠です。
通報を怠った場合、他国から異議申し立てを受けるリスクがあります。最悪の場合、該当する規格に基づく輸入差し止めが違法と判断され、賠償責任が生じる可能性もあります。
日本産業標準調査会(JISC)のWTO/TBT協定ページ
TBT協定の運用状況や通報制度の詳細について最新情報が掲載されています。
TBT協定第2.1条の違反は、審査された3つの主要事件すべてで認定されています。差別的取り扱いは厳しく判断されるということですね。
参考)https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/141128_pr62_03.pdf
第2.2条の「正当な目的」と「より貿易制限的でない措置」についても、複数の紛争事例で違反認定がなされています。米国の原産国表示事件や丁子タバコ事件などが代表的な例です。
通関業務従事者への実務的影響としては、輸入申告時に規格適合性を証明する書類の提出が求められるケースが増えています。相手国がTBT協定に基づく通報を適切に行っているか確認する必要も生じます。
違反が疑われる規格に基づいて輸入を拒否された場合、WTOへの提訴という選択肢があります。ただし紛争解決には時間とコストがかかるため、事前の情報収集と予防的対応が重要です。
通関業務では、各国の規格変更情報を定期的にチェックし、取り扱い品目に影響がないか確認する習慣をつけるとよいでしょう。TBT通報のデータベースを活用することで、リスクを事前に把握できます。