EUのnotified bodyに認定されていない機関が発行した試験報告書は、CEマーキングの根拠として使えず、EU向け輸出品が通関で差し止められるリスクがあります。
notified bodyとは、EU(欧州連合)の各加盟国政府が欧州委員会に「通知(notify)」した適合性評価機関のことです。日本語では「被通知機関」や「認証機関」と訳されることもあります。
EU指令や規則(レギュレーション)に基づき、特定のカテゴリの製品については製造業者による自己宣言だけでは不十分とされています。そのような製品は、公的に認定されたnotified bodyによる第三者評価を受けて初めてCEマーキングを貼付し、EU市場に流通させることができます。つまり公的認定が前提です。
通関業務の現場では、「CEマーキングがあれば問題ない」という認識で書類確認を済ませてしまうケースがあります。しかし実態は、製品のリスクカテゴリによってnotified body関与の要否が変わります。機関のIDナンバーや評価範囲まで確認する習慣が、トラブル回避につながります。
notified bodyはEU官報に掲載されるNANDO(New Approach Notified and Designated Organisations)と呼ばれる公式データベースで管理されています。2024年時点で約2,000機関以上が登録されており、機関ごとに認定された指令・規則の範囲が細かく設定されています。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| notified body | EU加盟国が欧州委員会に通知した適合性評価機関 |
| NANDO | EUが管理するnotified body公式データベース |
| CEマーキング | 製品がEU要求事項に適合していることを示すマーク |
| 適合性評価 | 製品がEU指令・規則の要求事項を満たすかを評価するプロセス |
| DoC(適合宣言書) | 製造業者が発行する適合性の宣言文書 |
notified bodyの番号(4桁の数字)はCEマーキングの隣に表示されることがあります。この番号の有無は「第三者評価が必要な製品かどうか」を示す重要なサインです。番号が必要なのに記載がない場合、書類不備として通関でトラブルになります。
これが基本です。
notified bodyの関与が必要となるEU指令・規則は非常に多岐にわたります。通関業務に直結するものとして、以下の指令・規則が挙げられます。
注意が必要なのは、同じ製品でも指令ごとにリスクカテゴリが設定されており、カテゴリによってnotified bodyの関与度合いが異なる点です。例えば医療機器では、クラスI(最低リスク)なら自己宣言のみ可能ですが、クラスIIa以上では必ずnotified bodyによる評価が求められます。
厳しいところですね。
通関業従事者として重要なのは、輸入品の製品カテゴリと適用指令を事前に確認し、notified bodyのIDナンバーが必要な製品かどうかを判断することです。もしDoCにnotified body番号がなく、かつ必要な製品だった場合、EU域内での流通停止・差し戻しのリスクが生じます。
実務上のヒントとして、製品カテゴリの判別に迷ったときはEUの公式ガイダンス文書(Blue Guide)を参照する方法があります。Blue Guideは欧州委員会が発行しており、適合性評価モジュールの説明が体系的にまとめられています。
欧州委員会「Blue Guide」(EU市場における製品の適合性評価に関する包括的ガイダンス)
notified bodyには欧州委員会から付与された4桁の識別番号があります。この番号は次のような場面で登場します。
番号が必要です。
NANDOデータベースはEU公式のnotified body検索システムです。無料で利用でき、機関名・番号・国・対応指令などで検索が可能です。通関書類を確認する際、DoCに記載されたnotified bodyの番号とNANDOの登録情報を照合することで、機関の正当性と認定範囲を確認できます。
欧州委員会「NANDO」(notified body公式データベース:機関の検索・確認に活用)
具体的な確認ステップは次のとおりです。
よくある落とし穴は、過去に有効だったnotified bodyが認定を失効または停止しているケースです。NANDOでは「Withdrawn」や「Suspended」のステータスが表示されることがあります。書類作成時点では有効でも、輸入通関時点で失効している場合があるため、書類の日付と照合することが重要です。これは見落としがちです。
また、notified bodyの認定範囲は非常に細かく設定されています。例えば機械指令に対応していても、特定の附属書(Annex)のモジュールしか担当していない場合があります。機関番号が一致していても「そのモジュールに対応しているか」まで確認することが、書類不備を防ぐポイントです。
CEマーキングは製品がEU要求事項を満たすことを示すマークですが、単独で意味をなすわけではありません。CEマーキングとセットで機能する書類が「DoC(Declaration of Conformity:適合宣言書)」です。
DoCはEU指令・規則ごとに記載要件が定められており、notified bodyの関与が必要な製品の場合は、機関名・所在地・番号・実施した評価モジュールを明記する義務があります。つまりDoCが証明書の核心です。
通関業従事者として確認すべきDoCの主な記載項目を整理します。
notified bodyへの言及がDoCに必要なのに記載がない場合、書類不備として扱われます。EU税関当局や市場監視当局は、特定リスクカテゴリの製品に対しこの確認を徹底しています。
一方で、すべての製品にnotified bodyの記載が必要かというと、そうではありません。低リスクカテゴリで自己宣言が認められている製品は、DoCにnotified bodyの記載がなくても適法です。製品カテゴリの正確な把握が、書類確認精度を上げる鍵です。
実務では、DoCの様式や言語にも注意が必要です。EUではDoCを輸入先加盟国の言語(または英語)で提供することが求められる場合があります。日本語のみのDoCは受理されないことがあるため、英語版または対象国言語版の存在を確認しましょう。
JETRO「EUの規制・認証情報」(CEマーキング・適合宣言書の実務情報が集約されており、通関業従事者の参考資料として活用できます)
notified bodyに関して、検索上位の記事ではあまり触れられていない重要な実務リスクがあります。それは「認定の停止・縮小・失効」と「認定範囲外の証明書の流通」です。
意外ですね。
欧州委員会は加盟国の監督機関を通じて、notified bodyのパフォーマンスを定期的に審査しています。基準を満たさないと判断された機関は、認定が縮小・停止・取り消されることがあります。過去にも複数のnotified bodyが認定停止となり、それらの機関が発行した証明書を用いた製品の流通が問題になった事例があります。
実務上の問題は2点あります。
1つ目は、製造業者がすでに取得した証明書を使い続けるケースです。認定停止後も一定の移行期間が設けられる場合がありますが、期間終了後も古い証明書を使用して輸出を試みる事例があります。通関書類上は一見問題なく見えても、証明書の有効性が失われているリスクがあります。NANDOで確認する習慣が重要です。
2つ目は、認定範囲外の製品への証明書発行です。notified bodyの認定はあくまで特定の指令・モジュールの範囲内に限られますが、範囲外で評価・証明書を発行するケースが国際的に報告されています。特にアジアから欧州向けに輸出される製品で、認定範囲が不一致のまま証明書が発行される例があります。
| リスクの種類 | 発生しやすい場面 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| notified body認定停止 | 書類は正常に見えるが機関がNANDOから削除されている | NANDOのステータス確認・証明書発行日と照合 |
| 認定範囲外の証明書 | 機関番号は正しいが対象指令・モジュールが一致しない | NANDOで認定指令・モジュールを照合 |
| 移行期間後の旧証明書使用 | 指令改正後も旧指令ベースの証明書を提出 | 証明書の根拠指令と現行指令の一致を確認 |
これらのリスクを回避するためには、通関書類受領時にNANDOでの照合を標準手順として組み込むことが現実的です。1件の確認作業に要する時間は慣れれば数分程度です。その数分が、差し戻しや追加検査のリスクを大幅に減らします。これは使えそうです。
また、輸出入先の規制動向を継続的にウォッチするために、JETROやEU公式のプレスリリースをRSSで定期購読する方法も有効です。特にMDR(医療機器規則)やCPR(建設資材規則)の分野では、notified bodyの認定件数が不足していることが業界課題として認識されており、証明書取得の遅延や代替機関探しが実務上の問題になっています。
経済産業省「EU規制対応に関する参考資料」(EU輸出規制・適合性評価の実務動向について、日本語で確認できる資料)
適合性評価手続きに不安がある場合、日本国内でもEU指令に対応した試験・認証サービスを提供している機関(例:テュフ ラインランド ジャパン、SGSジャパン、インターテックなど)があります。これらの機関の一部はEUのnotified bodyとして登録されており、日本語でのサポートを受けながら手続きを進めることが可能です。確認してみる価値はあります。