JALの燃油サーチャージを発券当日に慌てて確認すると、往復で最大8,000円損することがあります。
燃油サーチャージとは、航空会社が航空運賃とは別に乗客から徴収する「燃料費の変動分」です。正式名称はJALでは「燃油特別付加運賃」といい、国土交通省への申請が必要な法定の料金となっています。
本来、燃料費は航空運賃の中にあらかじめ組み込まれている費用でした。しかし原油価格が航空会社の想定を大幅に超えて高騰したため、想定外の燃料費上昇分を運賃とは別立てで徴収する仕組みとして導入されたのが始まりです。2000年代前半の原油高騰局面で世界的に広まりました。
JALの燃油サーチャージの金額は、以下の計算式で算出されます。
「シンガポールケロシン」とは、アジアの石油取引の中心地であるシンガポール市場で取引されるジェット燃料の指標価格です。つまり、ドル建ての燃料価格と、ドル円の為替レートの両方がサーチャージを動かす要因になります。つまり原油だけでなく、円安が進むだけでもサーチャージは上がります。
ゾーンは基準価格が6,000円未満の場合は「適用なし(=0円)」となり、6,000円ごとにゾーンAからゾーンOまで段階が上がっていく仕組みです。現在(2026年2月〜5月発券分)はゾーンHに該当し、欧米線片道で29,000円となっています。
JAL公式:国際線「燃油特別付加運賃」条件表(最新の適用額と路線別料金を確認できます)
JAL燃油サーチャージのゾーンは、2019年以降で大きく変動してきました。重要な推移の節目を押さえておくと、今後の予測を立てるうえで非常に役立ちます。
| 発券期間 | ゾーン | 欧米線片道目安 |
|---|---|---|
| 2019年10月〜2020年5月 | ゾーンC | 約13,400円 |
| 2020年6月〜2021年5月 | 適用なし | 0円(廃止)🎉 |
| 2021年6月〜2021年9月 | ゾーンB | 約8,900円 |
| 2022年6月〜2022年7月 | ゾーンI | 約33,000円 |
| 2022年8月〜2022年9月 | ゾーンL | 約41,000円 |
| 2022年10月〜2022年11月 | ゾーンO(上限突破) | 約57,200円 🔥 |
| 2023年12月〜2024年1月 | ゾーンL | 約47,000円 |
| 2024年12月〜2025年1月 | ゾーンG | 約25,000円 |
| 2025年4月〜5月 | ゾーンI | 約33,000円 |
| 2025年8月〜9月 | ゾーンF | 約21,000円 |
| 2025年10月〜2026年1月 | ゾーンG | 約25,000円 |
| 2026年2月〜5月 | ゾーンH | 約29,000円 |
特筆すべき出来事が2020年6月から約1年間、燃油サーチャージが完全に0円となった時期です。コロナ禍で航空需要が激減し、原油価格が暴落した結果、ゾーンの基準価格が6,000円を下回ったためです。当時JALやANAの国際線特典航空券を保有していた人は、燃料費ゼロで旅行に行けるという非常に稀なチャンスがありました。
その後、2022年にはロシアのウクライナ侵攻が引き金となり原油価格が急騰。さらに航空燃料であるケロシンの価格が原油価格以上に上昇するという異常な現象も起き、2022年10〜11月はゾーンの上限(ゾーンO)を突破し、欧米線は片道57,200円という過去最高水準に達しました。欧米往復なら1人で114,400円、4人家族なら約46万円がサーチャージだけでかかった計算です。
高い時と安い時では、欧米線の片道だけで約36,000円もの差があります。
JALプレスリリース:2026年4〜5月発券分の燃油特別付加運賃の改定申請(公式一次情報)
「原油価格は下がっているのに、なぜサーチャージはなかなか下がらないのか?」という疑問を持っている人は多いです。じつはその疑問、鋭いところを突いています。
原因は2つあります。1つ目は「円安」です。ケロシンはドル建てで取引されるため、1ドル=110円の時代と1ドル=156円の時代では、ドル価格が同じでも円換算後の数字は約42%も異なります。2026年2月時点の為替平均は1ドル156.27円でした。2023年春頃の約107円と比べると、為替だけでサーチャージ基準価格は約46%押し上げられていることになります。
2つ目は「ケロシンと原油の乖離」です。本来ケロシン価格は原油価格より1バレルあたり約15ドル高いのが相場でした。ところが2022年以降、原油価格とケロシン価格の乖離が大きくなる局面が繰り返し発生しています。これはウクライナ情勢による供給不安や、精製設備の稼働状況によるもので、原油が落ち着いてもサーチャージが下がりにくい構造になっています。
厳しいところですね。
2026年2月時点の計算を具体的に見ると、ケロシン84.26ドル×156.27円=13,166円が基準価格となり、この数字がゾーンH(13,000〜14,000円未満)に当てはまります。1,000円単位でゾーンが変わるため、基準価格が13,999円から14,000円に上がるだけで次のゾーンに入り、欧米線であれば片道4,000円の差が生じます。
なお、2026年4〜5月発券分の燃油サーチャージはゾーンHで据え置きが確定しています。2025年12月〜2026年1月の2ヶ月平均をもとに計算された結果、前回と同じゾーンに収まったためです。6月以降については2026年2〜3月のデータをもとに4月に公表される予定で、現時点の原油価格動向からは同額かやや上昇の可能性が指摘されています。
燃油サーチャージ推移まとめ(計算方法と直近の推移がわかりやすく整理されています)
関税や輸入コストに関心がある人なら、「課税タイミングはいつか」という点を重視するはずです。燃油サーチャージにも、まったく同じ発想が必要です。重要な原則が1つあります。
燃油サーチャージは「搭乗日」ではなく「発券日(購入日)」で金額が決まります。
例えば2026年4月に欧州旅行で搭乗する予定があっても、航空券を3月中に発券すれば、3月時点のゾーンHが適用されます。一方で5月に発券すれば、5月時点のゾーンが適用されます。搭乗日が同じでも、発券日によって支払うサーチャージ額が変わるわけです。
これが原則です。
逆に言えば、次回改定でサーチャージが上がることが公表された後でも、改定前の発券期間中であれば安い方のサーチャージで航空券を確定できます。たとえば2026年2月から1ランク上昇することが決まった後でも、1月末までに発券すればゾーンGの低い金額が適用されました。欧米線往復で8,000円、4人家族なら32,000円の節約になります。
また、逆に次の改定でサーチャージが下がることが見込まれる場合は、あえて発券を待つ選択肢も生まれます。発券日さえ適切な期間に入れば、実際の搭乗が先の話でも安い方が適用されます。
なお、航空券を発券した後にサーチャージが改定されても、追加徴収・返金は原則発生しません。これが大切なポイントです。「買った後に価格が下がっても差額は戻らない」という点は、発券後に変更が生じない有償航空券においては特に注意が必要です。
JAL・ANA燃油サーチャージ推移一覧と改定スケジュール(発券タイミングの確認に役立ちます)
燃油サーチャージの節約という観点で最も効果的な手段が、マイルを活用した特典航空券の利用です。ただし、特典航空券であれば自動的にサーチャージが無料になるわけではありません。JALマイルを使ってJAL便の特典航空券を発券した場合、有償航空券と同じサーチャージがかかります。
結論から言えば方法は3つあります。
① JALマイルを使い、サーチャージ不要な提携会社の特典航空券を発券する
JALマイルを使っていても、対象となる提携航空会社の便で発券すればサーチャージがかからないケースがあります。代表的な例として以下の航空会社が挙げられます。
例えばJALマイルでエールフランスを予約してパリに飛ぶ場合、燃油サーチャージは不要です。欧米往復の現行サーチャージが片道29,000円(往復58,000円)であることを考えると、これは非常に大きな節約になります。これは使えそうです。
② サーチャージが安い発券時期を狙って特典航空券を確保する
サーチャージの改定スケジュールは毎年同じ周期で発表されます。次回改定の額が先に公表されるため、現行より下がることが確実な場合は発券を少し待つだけで数千円の節約になります。
③ サーチャージが高い時期に発券した特典航空券はキャンセル&再発券で取り戻す
JALの国際線特典航空券はキャンセル手数料が1人3,100円です。サーチャージが3,100円以上下がっていれば、キャンセルして取り直した方が得になる場合があります。例えば2022年のゾーンO(欧米線片道57,200円)のときに発券していた特典航空券が、後でゾーンGに下がれば差額は片道32,200円。往復だと64,400円の差になり、3,100円のキャンセル料を払っても十分な節約効果があります。
ただし、取り直しには空席確保が必要です。必ず空席状況を確認してからキャンセルするようにしてください。
JAL燃油サーチャージの小技・推移まとめ(キャンセル再発券の具体的な手順が解説されています)
関税や輸入コストに関心がある人ほど、燃油サーチャージのコスト構造は既視感を持って理解できるはずです。どちらも「商品・サービスの本体価格とは別に、外部要因によって変動する上乗せコスト」という共通点があります。
関税は輸入品のカテゴリーや原産国によって税率が異なり、為替レートと連動して実質コストが変わります。燃油サーチャージも路線(距離)によってゾーンが異なり、ドル円レートと連動して金額が変わります。構造がほぼ同じです。
関税計画において重要なのは「いつ通関させるか」というタイミング管理ですが、燃油サーチャージでも「いつ発券するか」というタイミング管理が同様に重要になります。両方とも「同じ物・同じ旅行なのにタイミング次第でコストが数万円変わる」という性質を持っています。
ここが原則です。
さらに両者は「予測」という点でも共通します。関税においては次の関税改正や為替動向をウォッチして調達タイミングを最適化するのと同様に、燃油サーチャージでは次回改定の公表後に発券タイミングを最適化することが節約の鍵になります。
関税に詳しいビジネスパーソンや個人投資家がJALの燃油サーチャージを軽視するのはもったいないところです。以下の習慣を身に着けるとコスト管理の質が上がります。
特典航空券はお得な手段である一方、「マイルを使えばサーチャージも無料」という思い込みは間違いです。発券する航空会社の指定を間違えるだけで、数万円のサーチャージが余計にかかります。マイルを10万マイル以上貯めて特典航空券を発券しようとする人ほど、この落とし穴にはまりやすい構造があります。
JAL燃油サーチャージ最新動向と今後の見通し(2026年2月現在の分析と今後の予測)