force majeure とは|通関業務の不可抗力条項と契約実務

通関業務に不可欠な不可抗力条項(force majeure)の意味と定義、具体的な事由、契約書への規定方法と通知義務について解説します。貿易契約や輸送遅延時に責任を免れるための重要な条項を理解していますか?

force majeure とは 不可抗力条項の定義

口頭で「不可抗力です」と主張しても通関遅延の免責は認められません。


参考)不可抗力条項はどのように規定すればよいですか。


📋 この記事のポイント
⚖️
force majeureの基本

不可抗力条項は契約書に明記しないと効力を発揮せず、通関業務の遅延や履行不能時の免責が得られません

📝
通知義務と証明責任

不可抗力発生時には相手方への速やかな通知と合理的期間内の証明提出が必須で、怠ると免責されません

🌍
通関業務への影響

自然災害や政府規制、パンデミックなど予測不可能な事由により輸入通関が遅延した場合の対応策を規定します

force majeure の法的意味と通関業務での重要性


force majeure(フォース・マジュール)とは、フランス語で「不可抗力」を意味する契約上の条項です。通関業務では、地震や洪水などの天災、戦争、政府の輸出入規制、パンデミックなど、当事者の合理的な制御を超えた事象により契約義務の履行ができなくなった場合に、責任を免除する規定として機能します。


参考)https://www.cambridge.org/core/services/aop-cambridge-core/content/view/D077D1C25F4929339391696D3764E1DA/S0261387524000333a.pdf/div-class-title-force-majeure-in-the-supreme-court-span-class-italic-mur-shipping-bv-v-rti-ltd-span-2024-uksc-18-div.pdf


つまり不可抗力条項は防衛手段です。


この条項が契約書に記載されていないと、たとえ予測不可能な事態が発生しても債務不履行責任を問われる可能性があります。通関業務従事者にとって、港湾ストライキによるコンテナ滞留や、突然の法改正による通関手続きの遅延など、自らの努力では回避できない事象が頻繁に発生します。こうした状況で損害賠償請求を回避するため、force majeure条項の適切な規定が不可欠です。


参考)不可抗力条項とは?法律の意味や契約書の例文を紹介


force majeure の契約書における定義方法

契約書にforce majeure条項を規定する際は、まず「当事者の合理的な制御を超えた事由」という包括的な定義を記載します。その上で、具体的な不可抗力事由を列挙する方法が一般的です。


参考)英文契約の一般条項~Force Majeure(不可抗力条項…


列挙すべき事由は次の通りです。


  • 天災地変:地震、津波、洪水、台風、暴風雨など
  • 社会的事変:戦争(宣戦布告の有無を問わない)、テロ、内乱、暴動、革命
  • 争議行為:ストライキ、ロックアウト、港湾労働争議
  • 政府の措置:法令の制定・改廃、輸出入禁止措置、新たな関税の適用、検疫措置
  • 感染症:パンデミック、疫病の流行
  • その他:火災、爆発、サイバー攻撃、経済制裁など

    参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/90a65bd5adc50395/20220017.pdf


通関業務の契約では、「政府機関の行為若しくは命令」「検疫による遅延」「税関検査の長期化」など、業務特有の事由を明示的に追加すると効果的です。

また、条文末尾に「その他当事者の合理的支配を超えた偶発的事象を含むがこれらに限られない」という包括条項を加えることで、列挙されていない予期せぬ事象にも対応できます。


参考)英文契約書の不可抗力の条項Force Majeureをプロが…


force majeure と通常の債務不履行の違い

force majeureと通常の債務不履行の最大の違いは、「予見可能性」と「回避可能性」です。債務不履行は債務者の過失や能力不足により発生しますが、force majeureは当事者がどれほど注意を払っても予見・回避できない外的要因による履行不能を指します。


参考)不可抗力 - Wikipedia


これが根本的な境界線です。


通関業務の例で言えば、書類の記載ミスによる通関遅延は債務者の過失であり、force majeureには該当しません。しかし、突然の政府による輸入禁止措置や、大地震による港湾機能の停止は、事前予測が不可能で回避手段もないため、force majeureとして認められます。


参考)契約書の不可抗力条項とは?自然災害・感染症リスクをわかりやす…


さらに、force majeure条項には「履行義務の免除または一時停止」という効果があります。通常の債務不履行では損害賠償責任が発生しますが、force majeureが認められれば、不可抗力が継続している期間中、当事者は契約上の義務から解放されます。ただし、金銭支払い債務は一般的にforce majeureの適用対象外とされる点に注意が必要です。


参考)【英文契約書の例文と解説】不可抗力、権利不放棄、見出し - …


force majeure 条項の適用要件と立証責任

force majeure条項を適用するには、3つの要件を満たす必要があります。第一に「予見不可能性」、つまり契約締結時点で当事者が合理的に予測できなかった事象であることです。第二に「回避不可能性」、すなわち当事者が合理的な努力を尽くしても回避できなかった事象であることが求められます。第三に「因果関係」、つまり不可抗力事由と債務不履行の間に直接的な因果関係が存在することが必要です。


参考)https://journal.unpar.ac.id/index.php/veritas/article/download/1420/1366


立証責任は債務者側にあります。


参考)未及时通知不可抗力能否免责

通関業務で実際にforce majeureを主張する場合、単に「地震があった」と述べるだけでは不十分です。具体的には、①不可抗力事由の発生日時と内容、②それが契約履行に与えた具体的影響、③履行不能または遅延の程度、④影響を軽減するために講じた措置、といった事項を証明する必要があります。


参考)Force Majeure(不可抗力条項)の解説と例文


例えば、港湾ストライキによりコンテナが滞留した場合、ストライキの発生を示す公的資料、自社の出荷予定日と実際の遅延日数、代替輸送手段の検討記録などを提出することが求められます。証明が不十分だと、相手方がforce majeureを認めず、あくまで契約の履行や損害賠償を要求するケースもあります。


参考)航路変更でコスト増大!不可抗力条項をめぐる国際輸送トラブル


force majeure 条項に含めるべき通知義務の内容

force majeure条項には、不可抗力事由が発生した際の通知義務を明記する必要があります。通知を怠ると、相手方が損失拡大の対策を取れず、債務者が追加損害について責任を問われる可能性があるためです。


通知は発生後すぐに行うべきです。


契約書には「不可抗力事由の発生を知った時点から○日以内に相手方に書面で通知しなければならない」という具体的な期限を設定します。通関業務の契約では、30日以内という期限設定が一般的ですが、業務の性質に応じて「直ちに」「合理的な期間内に」といった表現も使われます。


参考)【例文つき】不可抗力条項とは|該当事由や注意点|企業法務コラ…


通知内容には以下の事項を含めるべきです。


  • 不可抗力事由の具体的内容と発生日時
  • 契約履行への影響範囲と程度
  • 履行再開の見込み時期
  • 影響を軽減するために講じた措置

さらに、不可抗力が継続する場合は、中間報告を定期的に提出する義務を規定することも有効です。そして、不可抗力事由が終了した後、一定期間内(例えば終了後14日以内)に最終報告と関連資料を提出する旨を明記しておくと、紛争を予防できます。


通知を怠った場合の法的効果についても契約書に明記すると、当事者間の認識が統一されます。例えば「通知義務違反により相手方が被った拡大損害については、債務者が責任を負う」といった条項を追加すれば、通知の重要性が強調されます。

force majeure による契約解除権の規定

force majeure条項には、不可抗力が一定期間継続した場合の契約解除権を規定することが重要です。不可抗力事由が長期化すれば、当事者は契約関係の継続が困難になり、別の取引先を探す必要が生じるためです。


一般的には30日から90日の継続期間が設定されます。


契約書の記載例としては「不可抗力事由が60日以上継続した場合、相手方は書面による通知により本契約を直ちに解除できる」といった条項が考えられます。通関業務の性質上、貨物の納期が重要な場合は、より短い期間(例えば30日)を設定することも検討すべきです。


また、解除権の行使方法も明確にする必要があります。「書面による通知」を必須とするか、電子メールでも認めるかなど、具体的な手続きを規定します。さらに、契約解除時の精算方法、既に履行された部分の代金支払い、返還義務の有無なども併せて定めておくと、紛争を回避できます。


加えて、不可抗力が解消された場合の契約再開条件を規定することも有効です。例えば「不可抗力事由が解消した場合、当事者は速やかに履行を再開し、履行期限を延長する」といった条項を設けることで、契約関係の継続可能性を残せます。


force majeure と金銭債務の関係

force majeure条項の重要な特徴として、金銭支払い債務は通常、適用対象外とされる点があります。これは、金銭債務は代替性があり、不可抗力によっても履行不能にならないという法的考え方に基づいています。


金銭債務は原則として免責されません。


通関業務の契約書では「本条の規定は、金銭支払い債務には適用されない」という除外条項を明記することが一般的です。これにより、たとえ地震や戦争が発生しても、買主は代金支払い義務を免れません。


ただし、近年は原材料費の高騰や為替相場の急激な変動など、経済的な不可抗力も議論されています。例えば、燃料費が契約締結時から50%以上上昇した場合、輸送費用の追加負担を誰が負うのかという問題です。こうした事態に備え、「原材料価格が○%以上変動した場合は価格改定を協議する」といったハードシップ条項を別途設けることが推奨されます。


参考)301 Moved Permanently


また、force majeureにより契約が解除された場合、既払い金の返還義務についても規定する必要があります。例えば「不可抗力による解除の場合、既に履行された部分に対応する代金は返還しない」といった条項を設けることで、精算方法を明確化できます。

force majeure 条項の国際貿易における実務例

国際貿易の実務では、force majeure条項がしばしば重要な役割を果たします。2021年のスエズ運河封鎖事故では、コンテナ船エバーギブンの座礁により400隻以上の船舶が影響を受け、世界的なサプライチェーンが混乱しました。この際、多くの船会社がforce majeure条項を根拠に、納期遅延の免責を主張しました。


参考)Covid-19 Pandemic as Force Maj…


実際のトラブル例を見てみましょう。


ある日本の輸入業者が、東南アジアからの貨物輸送をスエズ運河経由で契約していました。しかし運河封鎖により、船会社は喜望峰経由に航路を変更し、燃料サーチャージが大幅に増加しました。船会社はforce majeureを理由に追加費用を荷主に請求しましたが、契約書には「燃料サーチャージは事前の通告なく変動する」との記載があり、荷主は異議を申し立てられませんでした。

別の事例では、北米の主要港で労働者のストライキが発生し、コンテナが長期間滞留しました。船会社はforce majeure条項を理由に、港湾での保管料やコンテナ管理費を荷主に請求しましたが、荷主は「適切なリカバリー策が取られていない」として支払いを拒否し、法的紛争に発展しました。

これらの事例から、force majeure条項を規定する際は、①不可抗力事由の具体的範囲、②追加費用の負担者、③代替手段を講じる努力義務、④通知と証明の手続き、といった点を詳細に定めることが重要だと分かります。


参考)【それって不可抗力では?】部品不足や輸送費高騰に起因する納品…


force majeure 条項とCOVID-19パンデミックへの対応

COVID-19パンデミックは、force majeure条項の解釈と適用に関する重要な議論を引き起こしました。多くの企業が、ロックダウンや国境封鎖により契約義務を履行できなくなり、force majeure条項を援用しました。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7798591/


パンデミックは不可抗力に該当するか?
契約書にCOVID-19や「感染症」「疫病」が明示的にforce majeure事由として列挙されていれば、適用は比較的容易です。しかし、具体的な記載がない場合、「天災地変」や「政府の命令」といった包括的な文言でカバーできるかが争点となります。


参考)[무역실무] 불가항력 조항 (Force Majeure)…


実務上、COVID-19自体よりも、政府による工場閉鎖命令や輸出入規制が直接的な履行障害となるケースが多く見られました。例えば、政府の命令により工場を閉鎖せざるを得ず納品できなくなった場合、これは「政府の措置」というforce majeure事由に該当すると判断されやすいです。


参考)https://mahesainstitute.web.id/ojs2/index.php/jehss/article/download/807/pdf


また、COVID-19の影響が「絶対的不可抗力」か「相対的不可抗力」かという区別も重要です。絶対的不可抗力とは履行が完全に不可能になった状態、相対的不可抗力とは一時的な履行困難を指します。COVID-19の場合、多くは相対的不可抗力と見なされ、債務者は状況改善後に履行を再開する義務を負います。


参考)Redirecting...

通関業務では、検疫強化による通関遅延や、航空便の大幅減少による輸送手段の制約などが発生しました。こうした事態に備え、契約書には「感染症の流行により政府が実施する検疫措置、輸送制限、営業停止命令」などを明示的にforce majeure事由として追加することが推奨されます。


force majeure 条項作成時の注意点とチェックリスト

force majeure条項を作成する際、通関業務従事者が特に注意すべき点があります。


まず、条項の適用範囲を明確にすることです。


全ての契約義務に適用するのか、特定の義務(例えば納期)のみに限定するのかを明記します。


条項の抜け穴を作らないことが肝心です。


次に、不可抗力事由の列挙は「限定列挙」ではなく「例示列挙」とすることが重要です。「これらに限られない」「これらを含むがこれに限定されない」といった包括条項を必ず追加し、予期せぬ事態にも対応できるようにします。


以下のチェックリストを活用してください。


【force majeure条項作成チェックリスト】
✅ 不可抗力の定義が明確か(「当事者の合理的な制御を超えた事由」など)
✅ 具体的な不可抗力事由が列挙されているか(天災、戦争、政府措置、感染症など)
✅ 包括条項が含まれているか(「これらに限られない」など)
✅ 通関業務特有の事由が追加されているか(検疫措置、税関検査の長期化など)
✅ 金銭債務の除外が明記されているか
✅ 通知義務の期限が具体的に定められているか(例:発生から30日以内)
✅ 通知内容の要件が明確か(事由の内容、影響範囲、再開見込みなど)
✅ 証明提出の期限が設定されているか(例:合理的期間内)
✅ 影響軽減の努力義務が規定されているか
✅ 不可抗力が継続した場合の契約解除権が明記されているか(例:60日以上継続した場合)
✅ 解除手続きが具体的か(書面通知の要否など)
✅ 既履行部分の精算方法が定められているか
これらの点を確認し、自社の業務実態に合わせて条項をカスタマイズすることで、予期せぬリスクから身を守れます。


参考)契約書における「不可抗力条項」の見直しによりトラブルを回避・…


また、国際取引の場合は、ICCが策定した「ICC Force Majeure Clause 2020」を参考にすることも有効です。この条項は、天災、戦争、行政措置、感染症に加え、サイバー攻撃や経済制裁など現代的リスクも網羅しており、国際標準として広く認識されています。




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