ETA取得済みでも、パスポートを更新した瞬間に無効になり再申請費用が発生します。
イギリスのETA(Electronic Travel Authorisation=電子渡航認証)は、2025年1月8日から日本を含む約49か国のビザ免除国の渡航者に対して義務化された、事前の渡航許可制度です。これはアメリカのESTAやオーストラリアのETAと類似した仕組みで、パスポートにデジタルでリンクされる形で運用されます。
EU離脱(ブレグジット)後の国境管理強化の一環として英国内務省(Home Office)が推進してきた施策であり、従来は一般旅券で自由に入国できていた日本人渡航者も、この時点からオンライン申請が必須となりました。制度自体は中東の一部国籍者に対してすでに先行適用されており、日本人を含む非欧州圏への拡大が2025年1月に実施されたものです。
通関業従事者にとって重要なのは、この制度が「渡航者本人が申請するもの」でありながら、業務上で関わる荷主・出張者・商用渡航者の多くが対象になる点です。つまり、対象者への案内漏れは現場での搭乗拒否や通関遅延に直結します。制度を正確に把握しておくことが原則です。
以下の表で制度の骨格を確認しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務化開始日 | 2025年1月8日 |
| 対象国籍 | 日本を含む約49か国(ビザ免除国) |
| 申請料(2026年2月25日~) | 20ポンド(約4,000円) |
| 有効期間 | 2年間(パスポート有効期間まで) |
| 審査期間 | 通常3営業日以内 |
| 公式申請URL | https://www.gov.uk/eta |
申請はパスポート本体・メールアドレス・クレジットカードまたはデビットカード(Apple Pay / Google Payも可)があれば完結します。在英国日本大使館も公式にアナウンスを出しており、最新情報の一次確認先として活用できます。
参考:ETA申請に関する在英国日本国大使館の公式案内(パスポートの種類を問わず義務対象であることなど詳細が掲載されています)
ETA(電子渡航認証)|在英国日本国大使館
「公用旅券や外交旅券なら不要だろう」という思い込みは危険です。実は、日本国籍者であれば旅券の種類(外交・公用・一般)を問わず、原則としてETAの取得が義務付けられています。これが意外に見落とされやすいポイントです。
ただし、入国管理の対象外となる一部の例外があり、以下の方はETAの申請が不要です。
逆に言えば、これらに該当しない限りは公用旅券であっても申請が必要ということです。通関業務において公用旅券所持者を案内する場面があれば、必ずこの確認を行ってください。
また、乗り継ぎ(トランジット)については重要なルール変更があります。制度開始当初の2025年1月8日時点では、イギリス国内で入国審査を通過しない場合もETAが必要とされていました。しかし2025年1月17日に英国政府は、英国国境管理を通過しない(英国への入国を伴わない)航空便での乗り継ぎ乗客については、一時的にETAを免除する措置を講じました。
乗り継ぎの扱いは変動していたということです。
現時点での整理としては、「入国審査を通過しない純粋なトランジット」はETA不要、「入国審査を通過する乗り継ぎ」はETA必要、という判断基準が基本です。ただしこのルールは今後変更される可能性があるため、渡航直前に外務省海外安全情報や英国政府の公式サイトで必ず最新状況を確認してください。
参考:JETROによるETA義務化の概要案内(企業の出張担当者向けに制度の背景と影響を整理しています)
2025年1月以降、日本国籍者は英国への渡航時に電子認証が必要に|JETRO
公式申請サイトと代行業者は、見た目がほとんど変わりません。これが通関業者として顧客への案内で最も注意が必要な点です。
ETAの申請方法は2種類あります。英国政府公式ETA申請サイト(https://www.gov.uk/eta)からのウェブ申請と、スマートフォン専用アプリ「UK ETA」(iOS・Android対応)からの申請です。どちらも英語での入力が必要となり、申請フォームに自動翻訳機能が起動している場合はOFFにしてから進める必要があります。
申請の流れは以下の通りです。
申請料は2026年2月25日以降で20ポンド(約4,000円)です。申請は渡航者1名ずつ個別に行う必要があります。代理申請自体は可能ですが、その場合でも本人のパスポートと顔写真が必要です。
ここで特に注意したいのが、代行・偽サイトの問題です。検索エンジンで「イギリス ETA 申請」と検索すると、公式サイトよりも上位に代行業者のサイトが表示されることがあります。これらのサイトは申請の代行自体は行うものの、公式の20ポンドに対して数千円から数万円の手数料を上乗せして請求するケースが相次いでいます。
国民生活センターにもこれらの代行サイトに関する相談が多数寄せられており、問題視されています。
参考:電子渡航認証申請代行サイトに関するトラブルについて(申請後のキャンセル不可・高額手数料の事例が記載されています)
公式サイトで申請したつもりが申請代行業者だった!|東京都消費生活センター(PDF)
公式サイトのURLは必ず「gov.uk」ドメインであることを確認してください。これが一番シンプルで確実な見分け方です。
2年間有効と聞いて「しばらく安心」と思うのは早計です。有効期間中でも、パスポートを更新・再取得した時点で旧パスポートに紐づいたETAは即座に無効になります。
ETAはパスポートの個人情報とデジタルリンクする形で管理されています。そのため、パスポート番号が変わる・有効期限が変わる等のあらゆる更新行為が「新たなパスポート取得」として扱われ、再申請が必要になります。
たとえば、渡航予定の3か月前にパスポートを10年旅券から10年旅券へ更新した場合、以前取得したETAは使えなくなります。新しいパスポートで改めて20ポンドを支払って申請する必要があります。これは損です。
出張管理部門や通関業者の立場からすると、出張者のパスポート有効期限と最終更新日の管理が重要になります。ETAの有効期限だけでなく、紐づいているパスポートが現在も有効かどうかの確認を渡航前チェックリストに加えることを強くおすすめします。
もう一点、パスポートの有効期限が2年を切っている状態でETAを申請した場合、ETAの有効期限はパスポートの有効期限に合わせて短縮されます。たとえばパスポートの残存期間が1年なら、ETAの有効期限も1年です。ETAの有効期間を最大限活用するためには、パスポートの残存有効期間が2年以上あるうちに申請するのが条件です。
よくある見落とし事例を整理しておきます。
| 状況 | ETAの扱い |
|---|---|
| ETA有効期間内に渡航(パスポート変更なし) | ✅ そのまま使用可能(入国回数制限なし) |
| ETA有効期間内にパスポートを更新 | ❌ 旧ETAは無効。新パスポートで再申請必要 |
| パスポート残存1年でETA申請 | ⚠️ ETAの有効期限もパスポート期限の1年まで |
| ETA取得後に別の旅券種別(公用等)へ変更 | ❌ 新旅券での再申請が必要 |
ETAを取得したらメールに届く承認通知(16桁の参照番号)は帰国まで保存しておくのが安全です。入国時はパスポートとシステム上のリンクで確認されますが、システム障害等の際に提示を求められる可能性があります。
参考:外務省の海外安全情報(ETAのパスポート有効期限との関係について公式に記載されています)
査証・出入国審査等(英国)|外務省海外安全ホームページ
「ETAはプライベート旅行の話」と思って業務フローに組み込んでいないと、顧客の出張便を止めるインシデントになります。
通関業従事者がETAに関与する実務上の場面は、主に次の3つです。第一に、イギリス向け輸出貨物に関連する商用目的の出張者への情報提供。第二に、貿易関係者・輸入者が英国現地でのミーティングや展示会に参加する際の渡航準備サポート。第三に、自社のスタッフやパートナー企業の担当者が英国視察・商談に行く際の社内コンプライアンス対応です。
実務で押さえておくべきチェックポイントをまとめます。
通関書類の管理と同様に、渡航者情報の管理にもETA申請状況を組み込んだチェックシートを作成しておくと、渡航直前の確認漏れを防げます。これは使えそうです。
英国政府はETAの厳格化を2026年2月25日から実施しており、現在は航空会社がETA未取得者を搭乗させないよう義務付けられています。以前のように「現地で何とかなる」という状況ではなくなりました。搭乗拒否が発生した場合、航空券の払い戻しも基本的に認められないため、金銭的な損失も伴います。
さらに、ETA申請料は今後も値上がりが予定されています。英国内務省のウェブサイトには「将来的に£20に引き上げる意向がある」という旨が記載されており(なお2026年2月時点ですでに20ポンドへの引き上げが実施済み)、さらなる値上げの可能性も否定できません。複数回渡航する出張者がいる場合でも、ETA自体は1回の申請で2年間有効(入国回数無制限)なので、有効なパスポートを更新しないうちに申請しておくことがコスト面でも合理的です。
英国政府の公式ETAに関する情報は、以下の外務省の案内が一次確認先として信頼性が高いです。
参考:外務省の英国向けETA案内ページ(ETAの義務化・費用・免除対象などを包括的に解説しています)
ETAの厳格化(英国時間2025年2月25日から)|外務省海外安全ホームページ