コンクリートの強度試験で「平均値が基準を超えていれば合格」と判断すると、実は不合格品を見逃したまま通関書類を処理してしまうリスクがあります。
コンクリートの強度試験と聞くと、多くの方が「圧縮強度を測るもの」という印象を持っているかもしれません。しかし実際には、試験の種類はひとつではなく、目的や使用条件によって複数の方法が使い分けられています。
代表的な試験を整理すると以下のとおりです。
| 試験の種類 | JIS規格 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 圧縮強度試験 | JIS A 1108 | 構造設計上の基本強度確認 |
| 曲げ強度試験 | JIS A 1106 | 舗装コンクリートの品質管理 |
| 割裂引張強度試験 | JIS A 1113 | 引張強度の間接測定 |
| 非破壊試験(反発硬度法) | 参考:JIS A 1155 | 既設構造物の強度推定 |
これが試験の全体像です。
なかでも最もよく使われるのが圧縮強度試験(JIS A 1108)です。コンクリートは構造設計上、圧縮応力のみを受け持つという前提で設計されることが多いため、圧縮方向の強さを確認することが品質管理の核心になっています。
曲げ強度試験は、道路舗装や空港のコンクリート床版など、荷重が面に均等にかかる用途で行われます。割裂引張強度試験は、直接引張試験が難しいコンクリートの引張強度を間接的に求めるための方法で、円柱の供試体を横に置いて上下から圧縮荷重を加えて測定します。意外ですね。
輸入コンクリート製品(HSコード 6810 セメント製品・コンクリート製品)の品質証明書が添付されている場合、どの試験規格を使った結果が記載されているかを確認することが、書類の信頼性を判断するうえでの第一歩です。各試験のJIS番号が記載されているかを見るだけで、書類の基本的な確認ができます。
日本のJISに相当する海外規格としては、ASTM C39(米国)、EN 12390(欧州)などがあり、国際取引では対応規格が何かを押さえておくと実務的に役立ちます。
建材試験センター|コンクリートの試験種類と試験方法の一覧(JIS規格対応)
試験の種類を押さえたら、次は「供試体(テストピース)がどのように作られ、管理されるか」を理解しておく必要があります。これが書類確認の精度に直結するからです。
供試体の作製は JIS A 1132「コンクリートの強度試験用供試体の作り方」によって厳密に規定されています。代表的な供試体の形状はΦ100mm×高さ200mmの円柱形で、成形時の突き固めの回数、養生開始のタイミング、保管方法まで細かく定められています。1回の試験で採取する供試体の本数は原則として3本です。
養生の方法は3種類あります。
養生方法で試験の意味が変わります。
特に重要なのは「標準養生28日の試験結果」と「現場養生の試験結果」を混同しないことです。標準養生は設計基準強度(Fc)を公的に保証するための試験として位置づけられています。現場養生の試験成績書しか添付されていない書類では、設計基準強度を正式に証明する根拠として扱えないケースがあるため、書類審査の際には養生方法の記載を必ず確認する必要があります。
輸入コンクリート製品の試験成績書において、養生方法が「現場封かん養生」のみの場合は要注意です。これが原則です。
コンクリートの圧縮強度|養生方法・判定基準・1週強度などを詳しく解説(practical-concrete.com)
コンクリートの強度試験で最も見落とされやすいのが、合否判定が「2段階条件」になっているという点です。これを知らないまま書類を処理すると、実際には不合格のコンクリートを合格と誤認してしまうリスクがあります。
JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」に基づく判定基準は以下のとおりです。
この2条件を同時に満たすことが必要です。
たとえば呼び強度24N/mm²のコンクリートであれば、1回ごとの試験結果は最低でも24×0.85=20.4N/mm²以上でなければなりません。さらに3回分の平均が24N/mm²以上であることも必須です。仮に3回の平均が25N/mm²であっても、そのうち1回が20.0N/mm²だった場合は不合格になります。「平均で合格しているからOK」とはならない点に注意が必要です。
ここで少し視点を変えて整理すると、設計基準強度・呼び強度・基準強度という3つの用語の関係も重要です。
| 用語 | 意味 | 例(N/mm²) |
|---|---|---|
| 設計基準強度(Fc) | 構造計算で使う強度の下限値 | 24 |
| 呼び強度 | 生コン工場への発注強度(JIS A 5308基準) | 27(冬は+3~6N/mm²加算) |
| 合格下限値(85%ルール) | 1回の試験結果の最低ライン | 27×0.85=22.95 |
呼び強度は設計基準強度より高くなるのが原則です。これは、冬季に気温が下がるとコンクリートの水和反応が遅くなり、強度発現が遅れるため、温度補正として3〜6N/mm²程度を加算して発注する実務が一般的だからです。
試験成績書を確認する際は、まず「呼び強度の数値」と「3回分それぞれの試験値」を照らし合わせることが基本です。個別の試験値が書かれていない成績書は、判定の根拠として不十分と見ることができます。
日本産業標準調査会(JISC)|JIS A 5308などのJIS規格番号から規定内容を確認できる
試験結果が判定基準を満たさなかった場合、どのような手順で対処されるのかを知っておくと、書類審査において「不合格の記録がある成績書」に遭遇したときに冷静に判断できます。
まず確認されるのは、試験体の採取・養生・試験の各手順に問題がなかったかどうかです。供試体の成形不良(突き固め不足)や、養生中の温度管理ミス、載荷速度の誤りなどが原因であれば、試験そのものが無効となり、再試験が行われる場合があります。
ただし、構造物自体の強度に疑義が生じた場合はフローが変わります。
この場合、コア抜き試験(JIS A 1107)が実施されます。これはコアドリルで実際の構造物からコア供試体を採取し、圧縮強度試験を行う方法です。コア試験の費用は1本あたり1,320〜7,440円程度ですが(建材試験センターの公表料金より)、採取箇所の選定・補修・試験報告書の作成まで含めると、現場によっては数十万円規模の費用がかかることもあります。
コア試験でも不合格になると深刻です。
最悪の場合、部分的な打ち直し工事や補強工事が発生し、費用は数百万円規模になることもあります。工期の延長も避けられないため、引渡しスケジュールが大幅にずれるリスクもあります。
書類に「不合格」の記録が含まれている場合でも、単純に問題視するより「その後の対応記録(再試験・コア試験・補強措置の記録)が一式揃っているかどうか」を確認することが重要です。書類の完結性を見る目を持つことが、適切な判断につながります。
こうした強度試験の流れや書類確認の実務については、日本コンクリート工学会の技術資料が参照先として信頼性が高く、専門的な情報が整理されています。
公益社団法人 日本コンクリート工学会|コンクリート試験・品質管理に関する技術情報
輸入コンクリート製品(HSコード 6810)の通関業務では、品質に関わる証明書類が添付されるケースがあります。そのなかでも強度試験に関する書類は、記載内容を正確に読み解くことが重要です。現場では書類を受け取る機会はあっても、記載内容の妥当性まで確認できている方は多くありません。
最低限チェックすべき5つのポイントを整理します。
なかでも第三者性の確認は盲点になりやすいです。
輸入品の場合、製造国の試験機関が発行した成績書であっても、その機関が国際的に認定を受けているかどうかを確認することが重要です。国際試験所認定協力機構(ILAC)に加盟している認定機関(日本ではJABなど)が発行する認定証明書が添付されていれば、試験結果の信頼性を客観的に担保するひとつの根拠になります。
証明書類の確認は1回の作業で完結させることが理想です。書類受領のタイミングで上記の5点を確認し、不足があれば輸入者・輸出者側に追加提出を求めるフローを事前に決めておくと、後工程での差し戻しリスクを下げることができます。
試験機関の認定状況はJABのウェブサイトから検索できます。輸入品に添付されている試験成績書の発行機関名で検索してみることも、書類確認の精度向上に役立ちます。
公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)|JIS認定試験機関・国際認定機関の検索が可能