関税と延滞税の仕組みと計算方法
関税の延滞税とは
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期限内未納付のペナルティ
法定納期限までに関税を納付しなかった場合に課される附帯税です
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延滞利息の性質
納付遅延に対する延滞利息に相当するもので、自動的に課されます
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税率の二段階構造
納期限の翌日から2ヶ月以内とそれ以降で税率が異なります
関税の延滞税とは何か
延滞税とは、輸入者が法定納期限までに関税を納付しなかった場合に課される附帯税です。簡単に言えば、期限内に納付できなかったことに対する「ごめんなさい税」のようなものです。法定納期限の翌日から関税を納付する日までの日数に応じて計算され、関税と一緒に納付する必要があります。
延滞税は特別な手続きを必要とせず、納付すべき税額が確定すると自動的に課されます。これは申告納税方式でも賦課課税方式でもない独自の仕組みとなっています。
関税法における期限には「法定納期限」と「納期限」の2種類があります。
区分 |
意味 |
法定納期限 |
法律で定められた本来の納付期限(通常は輸入許可の日)。延滞税計算の起算日となります。 |
納期限 |
納付すべき税額が確定した分を実際に納付すべき期限。 |
納期限までに納付しなければ、税関から督促状が発送され、それでも納付されない場合は滞納処分へと強制徴収手続きが進められます。
関税の延滞税の計算方法と税率
延滞税を計算する際には、課税期間と延滞税の割合(税率)を確認する必要があります。延滞税率は期間によって2段階に分かれています。
- 法定納期限の翌日から納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで
- 令和2年の場合:年2.6%(本則7.3%と特例2.6%のうち低い方)
- 納期限の翌日から2ヶ月を経過する日の翌日から納付日まで
- 令和2年の場合:年8.9%(本則14.6%と特例8.9%のうち低い方)
延滞税の計算式は以下の通りです:
text延滞税の額 = 納付すべき本税の額 × 期間(日数) × 延滞税の割合 × 1/365
なお、延滞税の計算には以下の端数処理ルールがあります:
- 納付すべき関税額が1万円未満の場合は、延滞税は課されません
- 納付すべき関税額に1万円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てて計算します
- 計算した延滞税が1,000円未満の場合は、延滞税を納付する必要はありません
- 計算した延滞税に100円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます
関税の延滞税が発生するケース
延滞税が課される主なケースは以下の通りです:
- 申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しない場合
- 輸入許可時に納付すべき関税を期限内に納付しなかった場合
- 期限後申告または修正申告を提出した場合
- 申告漏れや誤りに気づいて自主的に修正申告をした場合
- 例:輸入時に申告した価格が実際の取引価格より低かったことが後で判明し、修正申告をした場合
- 税関の事後調査により更正または決定の処分を受けた場合
- 税関の事後調査で申告漏れや誤りが指摘され、更正通知書が発行された場合
- この場合、不足分の関税・消費税に加え、延滞税と過少申告加算税(通常10%)も課されます
具体例として、596,300円の関税未納分がある場合の延滞税計算を見てみましょう:
日付 |
内容 |
令和1年5月7日 |
輸入(納税申告の日) |
令和1年5月8日 |
輸入許可日(法定納期限) |
令和1年6月11日 |
修正申告日 |
令和1年7月10日 |
修正申告にかかる追加税額支払日 |
このケースでは、法定納期限(5月8日)の翌日から納付日(7月10日)までの日数に応じて延滞税が計算されます。
関税の延滞税の免除条件と申請方法
延滞税は一定の条件下で免除される場合があります。関税法第12条第6項によれば、以下の場合に延滞税が免除されます:
- やむを得ない理由による税額の誤り
- 納税者である輸入者に「責めに帰すべき理由がない」場合
- 例:税関の誤った事前教示を信用した場合
- 例:税関で税額に係るものを誤って変更させられた場合
- 例:輸入者が納税申告時に知ることができなかった事情により誤った申告をしたが、後に自ら修正申告を行った場合
- 災害による期限の延長
- 災害により関税を納付すべき期限を延長した場合、延長した期間に対応する部分の延滞税が免除されます
- その他の免除事由
延滞税の免除を受けるためには、原則として「延滞税免除申請書」を税関に提出する必要があります。ただし、更正・決定・賦課決定通知書の表面に延滞税免除の旨の記載がある場合は、申請書の提出は不要です。
免除される延滞税の期間は、法定納期限の翌日から修正申告をした日または更正通知書・賦課決定通知書が発せられた日までの日数に対応する部分です。ただし、免除期間は最大で7日間が上限とされています。
関税の延滞税と国際貿易実務の関連性
国際貿易に携わる事業者にとって、関税の延滞税は単なるペナルティではなく、貿易コストの一部として認識すべき重要な要素です。特に以下の点に注意が必要です:
- 事後調査のリスク管理
- 税関の事後調査は通常5年を周期として行われます
- コロナ禍で2年間ほど事後調査が停滞していたため、再開後は調査対象期間が長くなり、申告漏れのリスクが高まっています
- 前回の税関調査から5年以上経過している輸入者は、調査対象期間が最大になっているため注意が必要です
- 消費税率変更の影響
- 2019年10月以降の輸入に係る消費税は8%から10%に引き上げられました
- 税率変更前後の取引が混在する場合、申告誤りのリスクが高まります
- 為替変動リスク
- 国際取引では為替レートの変動により、実際の取引価格と申告価格に差異が生じることがあります
- 特に長期契約や後払い条件の取引では注意が必要です
- 自主的な修正申告のメリット
- 税関の事後調査で指摘される前に自主的に修正申告を行うことで、過少申告加算税が課されないケースがあります
- 調査があったことにより更正があるべきことを予知してなされた修正申告の場合は、このメリットはありません
国際貿易実務担当者は、正確な関税申告を行うための社内体制の整備と、定期的な自主点検の実施が重要です。また、税関の事前教示制度を活用して、申告価格や品目分類について事前に確認することも延滞税リスクの軽減につながります。
関税の延滞税における軽減措置と特例
延滞税には、経済情勢や納税者の状況に応じた軽減措置や特例が設けられています。これらを理解することで、不要な延滞税の負担を避けることができます。
- 特例基準割合に基づく税率
- 低金利が続く経済環境を背景に、本則の年率(7.3%、14.6%)が現実に即していないことから、特例の税率(2.6%、8.9%)が設けられています
- この特例税率は「特例基準割合」に基づいて毎年見直されます
- 実際の延滞税計算では、本則と特例のうち低い方の税率が適用されます
- 延滞税の軽減措置
- 法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告がされた場合、または更正に係る更正通知書が発せられた日までの日数に応じた軽減措置があります
- 修正申告の場合:「法定納期限から1年間分」の延滞税のみが課されます
- 更正通知書の場合:「法定納期限から1年間分」と「更正通知書が発せられた後」の延滞税が課されます
- ただし、調査があったことにより更正があるべきことを予知してなされた修正申告(重加算税が課される場合など)は、この軽減措置の対象外です
- 端数処理による実質的軽減
- 納付すべき関税額が1万円未満の場合は延滞税が課されないため、少額の関税については延滞税のリスクがありません
- 関税額に1万円未満の端数がある場合はその端数を切り捨てるため、実質的な延滞税負担が軽減されます
- 計算した延滞税が1,000円未満の場合は徴収されないため、短期間の延滞や少額の関税については実質的に延滞税が免除されることがあります
- 延滞税の免除上限
- やむを得ない理由による延滞税の免除は、最大で7日間が上限とされています
- この上限を超える延滞期間については、免除の対象とならないため注意が必要です
これらの軽減措置や特例を理解し活用することで、万が一関税の納付が遅れた場合でも、延滞税の負担を最小限に抑えることができます。ただし、基本的には法定納期限内に正確な申告と納付を行うことが最も重要です。
輸入業務に携わる担当者は、これらの制度を理解するとともに、社内の経理部門や税務担当者と連携して、適切な納税管理体制を構築することが求められます。また、税関の事前教示制度や専門家のアドバイスを積極的に活用することも、延滞税リスクの軽減に効果的です。
税関による事前教示制度の詳細と申請方法について