FSCマークがついた木材なら、どこから買っても「本物」だと思っていませんか?実はCoC認証のない業者から買うと、同じFSCロゴ入り木材でも正式なFSC認証製品として認められず、企業のSDGs報告書に使えないケースがあります。
FSC(Forest Stewardship Council=森林管理協議会)は、1993年に設立された国際NPOであり、ドイツのボンに本部を置いています。「環境・社会・経済」の3つの観点に基づいた「10の原則と70の基準」に従い、適切に管理された森林かどうかを審査・認証する制度です。
FSC認証には大きく2種類あります。まず「FM認証(森林管理認証)」は、森林そのものが責任ある管理のもとで運営されているかを評価するものです。次に「CoC認証(加工・流通過程の認証)」は、その森林から産出された木材が、消費者の手に届くまでの加工・流通の各段階で正しく管理されているかを証明します。
この2つのセットが重要です。
例えるなら、FM認証は「良い農場で育てられた野菜」の証明、CoCはその野菜が「産地から店頭に届くまで偽装されていない」ことの証明です。どちらか一方が欠けると、スーパーで「認証農場産」とラベルを貼れないのと同じ原理です。
FSC認証を取得している林業者・製材業者・流通業者・メーカーまで、小売を除く全事業者がCoC認証を持っていなければ、最終製品にFSCマークを貼ることはできません。つまり、FSCロゴのある製品を購入する際は、その製品にライセンスコードが記載されているかを確認することで、正規ルートかどうかを判断できます。
FSCジャパンのウェブサイトでは、ライセンスコードを入力すると認証取得者名や取得日を照会できるツールが公開されています。購入前の確認に役立ちます。
FSCジャパン:認証取得者の検索ページ(CoC認証・FM認証の確認に利用可能)
https://info.fsc.org/certificate.php?lang=JPN
FSC製品のラベルには「FSC 100%」「FSCミックス」「FSCリサイクル」の3種類があります。それぞれ意味が異なるため、目的に合ったラベルを選ぶことが大切です。
FSC 100% は、原材料が全てFSC認証林から調達されていることを示します。最も厳格なラベルで「ゴールドスタンダード」と呼ばれることもあります。
FSCミックスは、FSC認証材・FSC管理木材・回収原材料の組み合わせを含む製品に使われます。市場に流通しているFSC認証材の多くはこのカテゴリに該当し、実用性が高いです。これは使えそうですね。
FSCリサイクルは、使用原材料のほぼ100%が回収原材料で構成されており、木材製品では70%以上がポストコンシューマー由来であることが条件です。
ここで注意が必要なのは、公共調達(グリーン購入法)の観点です。日本のグリーン購入法では、2023年12月の閣議決定によりFSC森林認証紙がグリーン購入法の適合商品として正式に認定されました。ただし、どのラベルでも無条件に通るわけではなく、用途ごとに要件が定められています。
企業のSDGs報告書や調達基準に「FSC認証材使用」を記載する場合、FSCミックスやリサイクルで要件を満たすケースも多い一方、「100%認証林由来材のみ」を条件とする案件ではFSC 100%が必要になります。調達前に仕様書を確認するのが原則です。
FSCラベルの種類と意味(FSCジャパン公式解説)
https://jp.fsc.org/jp-ja/FSC_trademarks
FSC認証木材を「正式なFSC製品」として購入するには、CoC認証を取得した業者から買う必要があります。この点を見落としがちです。
実際に日本国内でFSC認証木材を購入できるルートとしては、以下のような選択肢があります。
- CoC認証を取得した製材会社・流通業者(例:エーゼログループ、アサイウッドマテリア、株式会社太閤など)
- CoC認証を取得した木材商社からの直接購入・オンライン購入
- 森林組合や製材所が独自にCoC認証を取得しているケース
FSCジャパンが公開しているデータベースでは、日本国内のCoC認証取得事業者を検索できます。事業者名や都道府県で絞り込めるため、近隣の業者を探すときにも便利です。
また、個人が少量で購入する場合、CoC認証事業者が運営するECサイト(オンライン木材市場)を利用する方法もあります。例えば「アサイ合板市場」はオンライン購入にも対応しており、2019年にFSC-CoC認証を取得しています。
注意点として、FSC認証を取得した森林から伐り出した木材であっても、CoC認証のない中間業者を経由した場合は「FSC認証製品」として扱われなくなります。CoC認証が条件です。購入の際は、納品書や証明書にライセンスコードが記載されているかを確認しておきましょう。
FSC認証木材供給サービス(CoC認証取得・FSC認証材のオンライン供給事例)
https://a-zero.group/service/fsc/
関税に関心がある方にとって、木材の輸入コスト構造は意外な事実を含んでいます。
日本に輸入される丸太・製材品のほとんどは関税ゼロです。林野庁の資料によれば、丸太は無税、製材は無税〜6.0%、合板は6.0〜10.0%、集成材は3.9〜6.0%という構成で、既存のEPA・FTAによりほとんどの品目は実質的に無税か無税化済みとなっています。これは意外ですね。
しかし状況は変わりつつあります。2025年10月14日、米国のトランプ大統領が通商拡大法232条に基づく追加関税を発動しました。具体的には「木材・製材に10%」「ソファや椅子などの布張り木材製品に25%(2026年1月以降30%)」「キッチンキャビネット・洗面台・部品に25%(2026年1月以降50%)」という水準です。
日本や欧州連合(EU)向けには上限が設定されており、日本は一般関税率と232条関税率の合計が15%を超えないとの条件が設けられています。つまり日本企業が米国向けに木材製品を輸出する場合、関税コストの上昇幅はある程度抑えられていますが、影響がゼロではありません。
FSC認証木材の調達コストへの影響という観点では、米国向け輸出を手掛けている木材製品メーカーや、米国産木材を調達していた事業者は、仕入れコストや販売価格の見直しを迫られる場面もあります。輸入材を多用する住宅資材メーカーは、コスト増を避けるためにFSC認証済みの国産材・代替調達先への切り替えを検討する動きも出ています。
トランプ大統領による木材への232条追加関税の詳細(JETRO)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/10/d3a562822918b0b0.html
FSC認証木材を購入・取り扱う上で、今後の法規制をおさえておくことは欠かせません。
まず日本国内では「クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)」が2016年に制定され、2025年4月には改正版が施行されました。改正により、第1種事業者(素材生産販売事業者・木材輸入事業者など)には合法性の確認・記録・情報伝達が義務化されています。FSC認証材は、この合法性確認の手段として広く認められており、FSC-FM認証やCoC認証を保有する調達先であれば合法性確認を満たしたとみなせるケースが多いです。
一方、欧州では「EUDR(欧州森林破壊防止規則)」が大きな動きを見せています。EUDRは2023年に発効した規則で、EU市場で流通する木材・コーヒー・カカオなどの特定品目が森林破壊や違法伐採に関与していないことをデューデリジェンスで証明する義務を事業者に課します。当初の適用開始予定は何度か延期され、2025年12月の最新合意では適用開始がさらに2026年12月30日へ1年延期されました。
FSCはEUDRへの対応姿勢を明確にしており、FSC認証制度がEUDRの要件を補完する仕組みとして機能し得ると位置づけています。
つまりEU市場に木材製品を輸出しようとする日本企業にとって、FSC認証の取得や認証材の調達はEUDR対応の観点からも検討に値します。ただしFSC認証=EUDR要件を自動的に満たすわけではなく、別途デューデリジェンスが求められる点には注意が必要です。
改正クリーンウッド法の概要(林野庁・2025年4月施行)
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/summary/summary.html
EUDRとFSCの関係(FSCジャパン公式ページ)
https://jp.fsc.org/jp-ja/EUDR