3C認証ありのモバイルバッテリーでも、認証が取り消されていると中国国内で出荷できません。
中国3C認証は、正式名称を「中国強制製品認証(China Compulsory Certification、以下CCC認証)」といい、中国政府が法律に基づいて強制的に実施する製品の安全認証制度です。日本のPSEマークに相当するものと考えると分かりやすく、対象製品はこのマークがなければ中国国内で出荷・販売・輸入・商業利用の一切ができません。
モバイルバッテリーがCCC認証の対象品目に追加されたのは2023年のことです。中国国家市場監督管理総局(SAMR)が第10号公告を公布し、リチウム電池・電池セル・パワーバンク(18kg以下)・通信端末向け充電器を対象品目に追加しました。認証受付は2023年8月1日に開始され、2024年8月1日以降は未取得品の出荷・販売・輸入・事業使用が全面禁止となりました。
つまり現在は、モバイルバッテリーを中国国内で合法的に流通させるための「入場券」が3C認証です。これが条件です。
背景には深刻な安全問題があります。中国民航科学技術研究院の統計では、2025年上半期だけで乗客持ち込みのモバイルバッテリーが機内で発火・発煙した事故が15件発生し、前年同期比でほぼ2倍に増加しました。また、国家市場監督管理総局のサンプリングデータによると、2020年から2023年の間に充電式モバイルバッテリーの故障率は19.8%から44.4%に急上昇しています。約半数近くが不良品という状況が、規制強化の大きな原因となっています。
法的根拠は「中華人民共和国認証認可条例」および「強制製品認証管理規定」です。認証を取得した製品には「CCC(☆マークが3つ並んだロゴ)」を表示する義務があり、このマークが製品本体と外箱の両方に明確に印刷されていることが求められます。マークが不鮮明な場合も違反扱いとなる点は、通関の現場で見落とされがちです。意外ですね。
ジェトロ:中国の強制製品認証制度(CCC認証)について(2025年8月更新)
通関業従事者の方が日常の申告業務でモバイルバッテリーを扱うとき、「3C認証マークがある=問題なし」と判断するのは危険です。確認すべきポイントは大きく3つあります。
① 認証の有効性(現在も生きているか)
3C認証の証書には有効期限が5年間と定められており、期間満了前でも認証が取り消しまたは一時停止されるケースがあります。2025年に入ってからは、Anker(安克創新科技)・Xiaomi(小米)・UGREEN・BASEUS・Romoss(羅馬仕科技)など日本でも流通している有名ブランドの一部型番の認証が取り消されています。理由は「国家法規違反や重大な製品欠陥があったこと」「工場監査で重大な不備が判明したこと」などです。
認証の有効性は、国家市場監督管理総局の「全国認証認可情報公共サービスプラットフォーム(http://cx.cnca.cn)」でリアルタイムに照会が可能です。認証番号を入力するだけで確認できます。認証書類に記載の番号と照合するのが原則です。
② マークの鮮明さ(印刷状態の確認)
中国民航局の規定では「3Cマークが不明瞭」なモバイルバッテリーも持ち込み禁止の対象です。これは空港の話ですが、流通規制でも同様の運用がされます。ラベルが剥がれかけていたり、印刷が薄かったりする製品は、たとえ認証が生きていても現場での確認時に問題になります。製品本体とパッケージの両方で確認することが望まれます。
③ リコール対象の型番に該当しないか
2025年6月16日にはRomossが3型番(PAC20-272・PAC20-392・PLT20A-152)をリコール、同6月21日にはAnkerが7型番(A1642/A1647/A1652/A1680/A1681/A1689/A1257)をリコールしています。リコール情報は国家市場監督管理総局「欠陥製品回収技術センター(www.samrdprc.org.cn)」の「消費品リコール(召回)」項目で確認できます。
リコール対象の型番を含む貨物を通関させた場合、荷主側に返品・廃棄・追加対応の負担が生じます。事前に型番リストを照合する習慣をつけておくと、後からのトラブルを避けられます。これは使えそうです。
ジェトロ:中国民航局、3Cマークのないモバイルバッテリーの国内線への持ち込み禁止(2025年7月)
3C認証は義務化されていますが、「強制製品認証管理規定」第41条・第42条には免除規定が存在します。これを知らずに全件3C対応必須と判断してしまうと、依頼主に余計な手間をかけさせる場合があります。
第41条では、入国者が個人使用のために携帯して海外から持ち込む物品はCCC認証が不要と定めています。つまりビジネス渡航者が自分で使うために持参するモバイルバッテリーは、個人使用の範囲である限り認証不要です。
第42条に該当する場合は「強制製品認証免除証明」の申請ができます。免除対象となる主なケースは次の通りです。
免除証明の申請は、生産者・輸入業者・販売業者またはその代理人のいずれかが、所在地の出入国検査検疫機関に対して行います。免除証明があれば通関は可能ですが、その製品を中国国内で販売することはできません。商業流通と展示・試験利用の区分を荷主が明確にしているかどうか、申告の段階で確認する必要があります。
B2Bでの社内配布も「商用販売」に該当し得る点は特に注意が必要です。中国国内の合弁会社や取引先に福利厚生品・備品としてモバイルバッテリーを送る場合でも、それが「商用」とみなされれば3C未取得のままでは配布できません。これが条件です。感覚的には物品の提供でも、法制度上の判断は別です。
なお、現場でよくある誤解として「PSE認証があれば中国でも通用する」という思い込みがあります。PSEは日本国内の安全認証であり、中国のCCC認証とは別制度です。日本でPSE認証を取得していても、中国での流通には別途3C認証が必要です。二つは全く別の手続きです。
ジェトロ:CCC認証の免除規定・申請手続きの詳細(強制製品認証管理規定 第41・42条)
これは通関業者よりも輸入者側の問題ですが、通関を担当する立場からも押さえておきたい知識です。
日本のPL法(製造物責任法)では、製品の輸入者も「製造業者等」に含まれます。具体的には「業として当該製造物を輸入した者」はメーカーと同じ法的立場に置かれます(第2条3項1号)。無過失責任が適用されるため、欠陥の存在と損害・因果関係が立証されれば、輸入者は落ち度がなくても賠償責任を負います。
3C認証が取り消されたモバイルバッテリーは、中国国内では合法的に出荷・販売・輸入ができません。しかしグレーなルートで越境ECや非正規の輸入経路を通じて日本に持ち込まれるケースがあります。「知らずに」仕入れた場合でも、日本の輸入事業者のPL責任は免除されません。3C認証の有効性を事前に確認することは、依頼主のリスク管理の観点からも意味のある行動です。
2026年4月からは、日本国内でモバイルバッテリーが「指定再資源化製品」に加わり、メーカー・輸入販売事業者に回収とリサイクルを義務付ける制度が導入される方針も示されています。大型のリチウムイオン電池を含む製品では、廃棄コストが製品原価を上回るケースもあるといわれており、流通後のコスト構造が変わりつつあります。通関書類を通じて貨物の仕様を把握している通関業従事者が、輸入者にこうしたリスクを一言伝えられると、より高い付加価値になります。厳しいところですね。
2026年3月1日から、中国3C認証制度に大きな変化が起きています。国家市場監督管理総局が発表した「強制性製品認証マークの試験的改革」により、モバイルバッテリー・電動自転車・ガス燃焼器具の3カテゴリを対象に、CCCマークの右側に「追跡用QRコード」の表示が義務付けられました。
移行スケジュールは次の通りです。
| 時期 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 2023年8月〜 | 3C認証の受付開始 | モバイルバッテリー |
| 2024年8月1日〜 | 3C未取得品の出荷・販売・輸入を全面禁止 | モバイルバッテリー |
| 2026年3月1日〜 | 新規取得品はQRコード付きマークが必須(出荷・輸入時) | 試験運用対象3品目 |
| 2027年3月1日〜 | 既存の認証取得済み製品も含め全製品QRコード必須 | モバイルバッテリーを含む全認証品 |
このQRコードをスキャンすると、認証証明書番号・製造事業者名・製品型式・認証状況・発行機関などをリアルタイムで確認できるようになります。CCCマークとQRコードは分離して表示することができず、どちらか一方が欠けていても違反です。
通関実務の観点では、2027年3月以降に輸入されるモバイルバッテリーにはQRコードが必ず付いているはずです。コードなしの製品は、その時点で中国国内での流通が認められない製品ということになります。貨物検査の際にQRコードの存在確認が通常の確認フローに加わる可能性が高く、今のうちから手順を整理しておく価値があります。
さらに2025年末には、工業・情報化部(MIIT)が「史上最も厳しい」と称されるモバイルバッテリー安全標準「モバイル電源安全技術規範」の意見募集を行っており、2027年前後の施行が見込まれています。本体・電池セル・回路基板の3分野で数十項目にわたる厳格化が計画されており、過充電・針刺し・圧迫・熱乱用などの試験項目も追加されます。将来的な3C認証の基準そのものが変わるため、仕入側の荷主に対して「現行の認証書があっても、更新が必要になる時期が来る」と案内できると丁寧です。
科学技術振興機構(JST):「史上最も厳しい」モバイルバッテリー標準案の詳細(2025年12月)
中国製モバイルバッテリー3C認証・追跡用QRコード義務化の詳細(2026年3月)