ロボティック・プロセス・オートメーション通関業務効率化と導入事例

通関業務従事者にとってロボティック・プロセス・オートメーションは業務効率化の切り札となる技術です。しかし導入時にはブラックボックス化やコスト赤字といったリスクも。具体的な削減時間や成功事例から、あなたの現場でも活用できるヒントは見つかるでしょうか?

ロボティック・プロセス・オートメーション通関業務自動化

RPA導入しても3割の企業が費用対効果で赤字になっています。

通関業務のRPA活用ポイント
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年間2万5000時間の削減実績

通関申告業務の自動化により従業員12.5人月分のリソースに相当する時間を削減可能

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定型業務から非定型業務まで段階的に対応

Class1からClass3まで3段階の自動化レベルで業務の複雑さに応じた導入が可能

⚠️
ブラックボックス化と情報漏洩のリスク管理

担当者の異動や退職時にメンテナンスができなくなるリスクと機密情報の取り扱いに注意が必要

ロボティック・プロセス・オートメーション通関業務での基本概念

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とは、人間が繰り返し行う単純でルーティンな作業の業務プロセスを自動化する技術またはソフトウェアのことです。通関業務は複雑な書類作成、多様なレギュレーションの遵守、さまざまなシステム間でのデータの入力と転送など、多くの繰り返し可能で時間がかかるプロセスが特徴です。
参考)RPAとは?意味やメリット・デメリット、仕組み、活用事例、導…


RPAは指示を与えると自動的に業務を続けるため、24時間休みなく作業を継続できます。通関業務において、毎日同じデータを複数システムに登録するために幾つものシステムを立ち上げ、それぞれにIDとパスワードを入力し、データファイルをアップロードする作業は、まさにRPAが得意とする領域です。これは基本です。
参考)RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

具体的には、通関依頼書のPDFをAI-OCRで読み取り、データのチェック・修正・CSV作成を行い、そのCSVをRPAが社内システムに自動入力するといった一連の業務を自動化できます。従来は人の手で数時間かかっていた作業が、数分で完了するようになります。結論は効率化です。
参考)RPA導入・活用事例10選!受注や仕入業務、経理業務、FAX…

ロボティック・プロセス・オートメーション導入で削減できる時間と費用

通関業務にRPAを導入した大東港運では、年間2万5000時間を削減しました。つまり従業員12.5人月分のリソースに相当します。
参考)大東港運、通関申告業務などをRPAで自動化、年間2万5000…

2年間で計120以上の自動化ワークフローを開発した結果、従業員数400人規模の企業としては突出した成果となっています。1日10分の作業を自動化できた場合でも、月20営業日で月3時間以上、年間で約40時間以上の工数削減になります。小さな業務の積み重ねが大きな効果を生み出すわけですね。
参考)【RPA業務一覧付き】その業務、何分短縮できる?自動化で見え…


ただし注意が必要な点もあります。ある企業ではRPAを導入して業務時間を月10時間削減できたものの、ロボットの開発・保守に月数十万円の外注コストが発生し、結果的に赤字運用となってしまいました。月に1〜2回しか発生しない業務や処理時間が短い業務をRPA化した結果、削減できた人件費よりもRPAのライセンス費用や保守費用の方が高くつくケースがあります。
参考)RPA導入の失敗原因と対策|よくある失敗事例から学ぶ成功のポ…


費用対効果を正確に試算するには、人件費削減額とライセンス費用・開発費用・保守費用を比較する必要があります。人件費として月10時間×時給3000円=3万円の削減ができても、RPA年間ライセンス料が100万円なら月換算で約8万円となり、赤字化します。導入前の試算が重要です。
参考)RPA導入「失敗」の落とし穴はどこ?原因と成功への秘訣を事例…

このコスト倒れを回避するために、まずは年間で頻繁に発生する定型業務から自動化対象を選定し、ROI(投資対効果)を現実的に見積もることが不可欠です。具体的には、月20回以上発生し、1回あたり30分以上かかる作業を優先的にRPA化することで、確実な効果を得られます。​

ロボティック・プロセス・オートメーションの3つのクラスと段階的導入

RPAには自動化の成熟度に応じて3段階のクラスがあります。これは業務の複雑さや技術レベルの違いを示します。
参考)RPAのクラスとは?Class1・2・3の違い、導入成功事例…

Class1(RPA) は定型業務の自動化を実施する段階です。ルールに沿った繰り返し作業を自動化し、情報取得や入力作業、検証作業などが対象となります。通関業務では、通関申告書の自動作成や書類のシステム登録が該当します。これが原則です。
参考)RPAとは


Class2(EPA:Enhanced Process Automation) はClass1の定型業務から発展したもので、非定型業務の一部も自動化が可能になります。RPAにAI技術を組み合わせることで、より柔軟な業務処理を実現します。画像認識やテキスト解析を使って、手書き書類や様式が異なる書類にも対応できるようになります。
参考)RPA(ロボティックプロセスオートメーション)とは?RPAで…


Class3(CA:Cognitive Automation) はさらに高度なレベルとなり、AIや機械学習などの技術を組み合わせて複雑な業務や意思決定をも自動化します。RPAツールが人間の作業内容をモニタリングした中から自動化できる既存の作業や今後増えそうな作業を洗い出してデジタルレイバーの開発を提案する、あるいは率先して自動生成するようになると考えられています。
参考)RPAとは


通関業務では、まずClass1で書類作成や入力作業を自動化し、次にClass2で例外的な案件の処理補助を行い、最終的にClass3で関税計算の最適化提案まで任せるといった段階的な導入が効果的です。初期導入時は定型業務に絞ることで、リスクを抑えつつ確実な効果を得られます。
参考)RPAで変革!貿易業界のデジタル未来を探る

ロボティック・プロセス・オートメーション導入時のブラックボックス化リスク

RPAを導入する際の重大なデメリットとして、業務がブラックボックス化する可能性があります。どういうことでしょうか?​
RPAは指示を与えると自動的に業務を続けるため、担当者が異動や退職した場合、引き継ぎを怠ると作業手順やルールなどがブラックボックス化します。当初は意味のあったそのプロセスが、単に実行ボタンを押すだけの業務になってしまい、何らかの変更が必要になった際にだれもその意味が分からないという状態になります。厳しいところですね。
参考)本当にデメリットはないの?RPA導入を失敗しないために


特定の担当者だけがRPAの仕組みを把握していると、担当者が異動・退職した際にメンテナンスができなくなるリスクがあります。これを防ぐには、シナリオのドキュメント化と複数人での保守・運用共有体制の整備が重要です。
参考)医療業界のRPAツール自動化業務6選|病院での事例から学ぶ!…

ブラックボックス化を防ぐ具体的な対策として、以下の3点が有効です。まず、RPAのシナリオ(自動化手順)を誰でも理解できる形で文書化すること。次に、定期的に複数の担当者がシナリオをレビューし、内容を共有すること。最後に、業務フローとRPAの処理内容を図解して可視化することです。
これらの対策を実施することで、担当者が変わってもスムーズに業務を継続でき、必要に応じてシナリオの修正や改善ができる体制を維持できます。社内のナレッジベースやWikiツールを活用して、RPAのドキュメントを一元管理する方法も効果的です。

ロボティック・プロセス・オートメーション導入時のセキュリティリスクと対策

RPA導入のもう一つの重要なデメリットに、情報漏えいのリスクがあります。意外ですね。​
RPAがネットワークに接続されている場合、不正アクセスやロボットの乗っ取りによる情報漏えいの可能性が考えられます。自動化する業務によっては、RPAは個人情報や機密データ、ログイン用のIDやパスワードなどの重要情報を扱います。シナリオや運用の不備により誤作動が発生した場合には、これらの重要な情報が意図せず漏洩する恐れがあります。
参考)RPAのリスクとは?正しく行わないと発生するリスクや発生理由…


通関業務では輸出入企業の機密情報や取引データを扱うため、特にセキュリティ対策が重要になります。このリスクを軽減するためには、アクセス権限の設定やIDやパスワードの暗号化などの対策が必要です。データログの監視も併せて行うと効果的です。​
具体的なセキュリティ対策として、まず最小権限の原則を適用し、RPAには必要最低限のアクセス権限のみを付与します。次に、機密情報を扱うRPAシナリオには二要素認証を導入し、不正アクセスを防ぎます。さらに、RPAの実行ログを自動収集し、異常な動作がないか定期的にモニタリングする仕組みを整えます。
これらの対策により、情報漏えいのリスクを大幅に低減できます。セキュリティ対策ツールとしては、統合ログ管理ツールやSIEM(Security Information and Event Management)ソリューションを活用することで、RPAの動作を包括的に監視できます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のセキュリティセンターでは、業務システムのセキュリティ対策に関する最新情報とガイドラインが提供されています。RPAのセキュリティポリシー策定時の参考資料として有用です。

ロボティック・プロセス・オートメーションの誤作動リスクと保守体制

RPAは与えられた指示を休みなくこなすことができますが、設定時は正しかった指示が、あるときに間違った動作となってしまうことがあります。その原因の最大のものが「既存システムの変更」です。​
社内システムやWebサイトの画面デザイン、ボタンの位置・名称が更新されただけで、RPAが操作対象を認識できずに停止してしまうといった事例があります。業務手順の指示が不正確であったとしても、RPA自体はそれに気づかず、システム上エラーが起きなければそれを実行し続けます。痛いですね。
この誤作動リスクを回避するには、定期的な動作確認とメンテナンス体制の構築が不可欠です。具体的には、月次でRPAの動作をチェックし、システム変更時には事前にRPAシナリオへの影響を確認する運用ルールを設定します。また、エラー発生時には自動的に担当者にアラート通知が届く仕組みを組み込むことで、問題の早期発見と対応が可能になります。
保守体制としては、システム変更の予定を事前に共有する社内フローを確立し、IT部門とRPA担当部門が連携する体制を整えます。変更管理台帳を作成し、どのシステムの変更がどのRPAシナリオに影響するかを一覧化しておくと、スムーズな対応ができます。
RPAの動作監視ツールやダッシュボードを導入すれば、リアルタイムでRPAの稼働状況を確認でき、異常が発生した際にも迅速に対応できます。これにより、誤作動による業務停止時間を最小限に抑えられます。