抗菌薬適正使用支援チーム施設基準の要件と届出

抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の施設基準とは何か、構成員の要件・専任・専従の違い、届出手続き、令和6年度改定のポイントまで詳しく解説。あなたの施設は要件を本当に満たせていますか?

抗菌薬適正使用支援チームの施設基準を正しく理解する

Access抗菌薬の使用比率が60%未満だと、チームを組んでいても加算が取れません。 doctor-vision(https://www.doctor-vision.com/dv-plus/column/trend/kokinyaku-healthcarefee.php)


🔍 この記事の3つのポイント
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ASTの施設基準・構成員要件

医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師に求められる経験年数と専任・専従の区別を解説します。

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算定できる加算と点数

抗菌薬適正使用支援加算(100点)や抗菌薬適正使用体制加算(5点)など、関連する診療報酬の仕組みを整理します。

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届出・J-SIPHEへの対応

施設基準の届出に必要なサーベイランス参加・証明書取得の流れをステップで確認できます。


抗菌薬適正使用支援チーム(AST)とは何か:基本的な役割と設立の背景

薬剤耐性(AMR)は世界規模の問題です。抗菌薬の不適切な使用や長期投与が薬剤耐性菌を生み出し、蔓延させる原因となります。 そこで生まれたのが抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)であり、抗菌薬の使用を適切に管理・支援するための実働部隊として院内に組織されます。 hospital.city.chiba(https://hospital.city.chiba.jp/aoba/department/activity/ast/)


AMR対策アクションプランを受け、2018年の診療報酬改定でASTに関連する「抗菌薬適正使用支援加算」が新設されました。 それ以降、施設基準を満たしてチームを運営することが、診療報酬の算定に直結するようになっています。 hica(https://hica.jp/ASP/AST20180207.pdf)


参考:日本化学療法学会による実践ガイダンス(ASTの具体的活動内容)
抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス|日本化学療法学会


抗菌薬適正使用支援チームの施設基準:構成員の要件(専任・専従の違いに注意)

ASTを組織するにあたり、施設基準で定められた構成員を揃えることが第一条件です。以下の4職種が必要とされており、そのうちいずれか1人は「専従」でなければなりません。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000583841.pdf)


職種 必要な経験・条件 専任 or 専従
医師 感染症の診療について3年以上の経験 専任(常勤)
看護師 5年以上感染管理に従事した経験+感染管理に係る適切な研修の修了 専任
薬剤師 3年以上の病院勤務経験+感染症診療に関わる経験 専任
臨床検査技師 3年以上の病院勤務経験+微生物検査に関わる経験 専任

saitama-pho(https://www.saitama-pho.jp/documents/2082/gyoumu13.pdf)


「専任」と「専従」は混同されがちです。専任はAST業務に主として従事するが他業務も兼ねられる。専従はAST業務のみに従事する、という違いです。 専従が1名でも必要という点が、小規模施設にとって大きなハードルになっています。 stu-ge.nichiiko.co(https://stu-ge.nichiiko.co.jp/mpi_documents/1102)


たとえば感染管理認定看護師(ICN)が1名しかいない場合、その人をASTの専従に充てると、他の感染制御業務への従事が制限されます。これは意外と現場の運用に影響します。 厳しいところですね。 hospital.city.chiba(https://hospital.city.chiba.jp/aoba/department/activity/ast/)


参考:ASTの施設基準通知の詳細(厚生労働省)
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)の施設基準まとめ|埼玉県保健医療部


抗菌薬適正使用支援加算(100点)の算定要件と施設基準の全体像

抗菌薬適正使用支援加算は、入院初日に100点を算定できる加算です。 算定するためには、ASTを組織していること自体だけでなく、感染防止対策加算1(現:感染対策向上加算1)に係る届出を行っている医療機関であることが前提条件となります。 watakyu(https://www.watakyu.jp/wp-content/uploads/2020/02/20200215_1.pdf)


感染対策向上加算1の施設基準を満たすことが「大前提」ということですね。


感染対策向上加算1の主な条件は以下のとおりです。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks8-29_2/)


- 専任の院内感染管理者(医師または看護師)が配置されていること
- 抗菌薬を適正に使用するために必要な支援体制が整備されていること
- 感染制御チームによる定期的なラウンドが実施されていること


つまり感染対策向上加算1の基盤があって初めて、その上にASTの加算が成立します。 ASTだけを独立して整備しても算定できないため、組み立ての順番が重要です。これは使えそうです。 yakuyomi(https://yakuyomi.jp/career_skillup/skillup/02_171/)


「感染対策向上加算1」を届け出ていない中小病院がASTを整備しようとする場合、加算1の届出から始める必要があり、人員・設備の両面で段階的な準備が求められます。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks8-29_2/)


参考:感染対策向上加算の施設基準(令和6年改定版)
感染対策向上加算の施設基準等 – 令和6年度診療報酬改定|knowlety


抗菌薬適正使用体制加算(5点)の施設基準:Access抗菌薬60%ルールとJ-SIPHE参加

2024年(令和6年)の診療報酬改定で新設されたのが「抗菌薬適正使用体制加算(5点)」です。 入院の感染対策向上加算に対する加算として設定されており、外来でも初診料・再診料に上乗せできる形で導入されました。 doctor-vision(https://www.doctor-vision.com/dv-plus/column/trend/kokinyaku-healthcarefee.php)


5点という点数は小さく見えますが、算定対象が抗菌薬の使用症例に限られないため、積み重なると相当な収益になる可能性があります。 意外ですね。 doctor-vision(https://www.doctor-vision.com/dv-plus/column/trend/kokinyaku-healthcarefee.php)


この加算の最重要要件が「Access抗菌薬の使用比率60%以上」です。 WHOが分類する抗菌薬のAWaRe(Access・Watch・Reserve)に基づいており、より薬剤耐性を生みにくいAccess抗菌薬を優先使用していることが問われます。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks3-3_6/)


具体的な確認・届出の流れは以下の3ステップです。


1. J-SIPHEまたは診療所版J-SIPHEに参加し、処方データを登録する knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks3-3_6/)
2. 四半期ごとにデータを提出し、Access抗菌薬の割合と全参加施設内のパーセンタイル順位を確認する knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks3-3_6/)
3. 要件を満たしていれば証明書を取得し、地方厚生局に届出する kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/r6-1-006.pdf)


重要な注意点があります。提出データの対象期間中に抗菌薬の処方件数が30件以上ある場合のみ集計対象となります。 処方件数が少ない施設は集計除外になるリスクがあります。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks3-3_6/)


また、60%未満でも「J-SIPHEに参加する診療所全体の上位30%以内」であれば要件を満たせます。 60%という数字だけを追うのではなく、相対順位の確認も大切です。 doctor-vision(https://www.doctor-vision.com/dv-plus/column/trend/kokinyaku-healthcarefee.php)


参考:抗菌薬適正使用体制加算の算定要件・届出様式(地方厚生局)
抗菌薬適正使用体制加算の施設基準に係る届出|四国厚生支局


ASTが見落としがちな「継続届出義務」:施設基準は届出後も維持が必要

施設基準の届出を行ったら終わり、と思っている医療機関は少なくありません。それは間違いです。


届出後もJ-SIPHEまたは診療所版J-SIPHEに少なくとも6ヵ月に1回はデータを提出し続け、直近に提出したデータで施設基準の適合性を確認する義務があります。 満たしていなかった場合には「変更の届出」を行わなければなりません。 knowlety(https://knowlety.jp/ika/r6-ks3-3_6/)


つまり「届出 → 算定開始」ではなく、「届出 → 継続モニタリング → 適合確認 → 算定継続」というサイクルが必要です。これが原則です。


定期的なデータ提出を怠ると、知らないうちに施設基準を満たしていない状態で算定を続けてしまうリスクがあります。これは診療報酬の不正請求に直結する法的リスクです。 お金と法的リスクの両面で注意が必要なポイントです。 kouseikyoku.mhlw.go(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/r6-1-006.pdf)


現場での運用としては、J-SIPHEのデータ提出担当者を薬剤部や感染管理室に明確に決め、提出期限をリマインドする仕組みを作ることが有効です。提出漏れを防ぐためには、施設内のルール化が最優先になります。


また、令和8年の疑義解釈によれば、病棟ごとに施設基準を満たしていれば届出が可能な加算もあり、段階的な整備が認められているケースもあります。 施設全体での対応が難しい場合は、一部病棟からのスタートも選択肢になります。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/kankeitsuuchi/kankeitsuuchi_r08.files/gigi_r080323_1.pdf)


参考:令和8年度改定に関わる疑義解釈(事務連絡)
令和8年度診療報酬改定 疑義解釈その1|社会保険旬報社


独自視点:ASTは「感染症専門医不在施設」でも成立するか?現実的な代替運用

「感染症専門医がいないとASTは組めない」と思い込んでいる医療従事者は多いです。ただしこれは厳密には誤りです。


施設基準が求めているのは「感染症の診療について3年以上の経験を有する専任の常勤医師」であり、感染症専門医の資格は必須要件に含まれていません。 資格の有無ではなく、経験年数が問われているということですね。 saitama-pho(https://www.saitama-pho.jp/documents/2082/gyoumu13.pdf)


一方で現実問題として、感染症専門医がいない病院でASTを動かすと、実務の質担保が難しくなります。 特に複雑な感染症症例への介入や抗菌薬選択の根拠づけでは、専門的知識の差が出やすいです。 chemotherapy.or(https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06802/068020204.pdf)


このギャップを埋めるひとつの選択肢が「地域連携」です。感染対策向上加算1の届出施設(通常は大病院)と連携協定を結び、少なくとも年1回以上の合同カンファレンスや、専門家によるラウンドを受ける体制を整えることで、施設の実力を補完できます。 地域でカバーするという発想です。 watakyu(https://www.watakyu.jp/wp-content/uploads/2020/02/20200215_1.pdf)


日本感染症学会の「抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス」では、規模に応じたプログラムの段階的実装を推奨しており、小規模施設向けの現実的な運用例も示されています。 まず「できる範囲から始める」という姿勢が重要です。 kansensho.or(https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/1708_ASP_guidance.pdf)


参考:小規模施設を含むASP実装の実践ガイダンス
抗菌薬適正使用支援プログラム実践のためのガイダンス|日本感染症学会