溶連菌を早期に治療しても糸球体腎炎は予防できません
急性糸球体腎炎の原因菌として最も多いのは、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)です。この菌が原因の感染後糸球体腎炎は全体の80~90%を占め、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)と呼ばれています。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/3050/)
溶連菌にはさまざまな株が存在し、すべての株が腎炎を引き起こすわけではありません。腎炎惹起株として知られているのは、M type 1、4、6、12、18、25、49、55、57、60などの特定の型です。特にM type 12型は代表的な腎炎惹起株として知られています。 www2.kuh.kumamoto-u.ac(https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/sannaika/jinqa14a.html)
これらの株に感染した場合でも、急性糸球体腎炎を発症する確率は10~15%程度にとどまります。つまり感染者の大多数は腎炎を発症しないということですね。 tsudashonika(https://tsudashonika.com/disease-cat/post-streptococcal-acute-glomerulonephritis/)
溶連菌以外の原因菌としては、黄色ブドウ球菌、肺炎双球菌などの細菌があります。ウイルスではムンプスウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなども糸球体腎炎の原因となりえます。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/mli4gtilppi)
寄生虫感染でもマラリア原虫や住血吸虫による糸球体腎炎が報告されており、原因病原体は極めて多岐にわたります。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/05-%E8%85%8E%E8%87%93%E3%81%A8%E5%B0%BF%E8%B7%AF%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%B3%B8%E7%90%83%E4%BD%93%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B3%B8%E7%90%83%E4%BD%93%E8%85%8E%E7%82%8E)
糸球体腎炎の発症には、免疫複合体が中心的な役割を果たします。溶連菌感染が起こると、生体は防御反応として溶連菌成分に対する抗体を産生します。 medical.itp.ne(https://medical.itp.ne.jp/byouki/190101000/)
この抗体と溶連菌成分が結合して形成された抗原抗体複合物が、血流に乗って腎臓の糸球体へ運ばれます。糸球体は血液をろ過する網目構造を持っており、この複合物が網目に引っかかることで炎症反応が引き起こされるのです。 medical.itp.ne(https://medical.itp.ne.jp/byouki/190101000/)
結果として血尿、タンパク尿、浮腫、高血圧という急性糸球体腎炎の典型的な三主徴が出現します。炎症による糸球体のろ過機能低下で体内に水分とナトリウムが貯留し、むくみや高血圧を引き起こすわけです。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/sh.0000000629)
溶連菌感染から急性糸球体腎炎発症までには、一定の潜伏期間が存在します。咽頭炎や扁桃炎などの上気道感染後では、1~2週間後に腎炎症状が出現することが多いです。 fukuoka-med.jrc.or(https://www.fukuoka-med.jrc.or.jp/dept/internal/pediatrics/AGN)
一方、皮膚感染(伝染性膿痂疹、いわゆる「とびひ」)の場合は、3~4週間後の発症が典型的とされています。潜伏期間が皮膚感染でやや長いのが特徴です。 hiroshima-hondori-clinic(https://hiroshima-hondori-clinic.jp/m-7311/)
先行感染の症状が治まった後に腎炎が発症するため、患者自身が感染症との関連に気づかないケースもあります。のどの痛みや発熱が改善して安心していた2~3週間後に、突然尿が赤くなったり体がむくんだりして発見されることが少なくありません。 itabashi.med.nihon-u.ac(https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/search/term/195)
医療従事者としては、血尿や浮腫を訴える患者に対して、2~4週間前の感染症の有無を必ず問診することが診断の鍵となります。学校検診の尿検査で無症状のまま発見されるケースもあるため、定期検診の重要性を患者教育に含めるべきです。 medical.itp.ne(https://medical.itp.ne.jp/byouki/010734000/)
溶連菌感染症の治療には抗菌薬が用いられますが、その主な目的はリウマチ熱の予防です。驚くべきことに、抗菌薬を早期に投与しても急性糸球体腎炎の発症を予防することはできません。 tsudashonika(https://tsudashonika.com/disease-cat/post-streptococcal-acute-glomerulonephritis/)
これは溶連菌感染後の腎炎が、菌の直接的な腎臓への侵入ではなく、免疫複合体による遅延型の免疫反応で起こるためです。抗菌薬で菌を排除しても、すでに形成された免疫複合体や活性化された免疫反応を止めることはできないのです。 medical.itp.ne(https://medical.itp.ne.jp/byouki/190101000/)
つまり溶連菌咽頭炎を適切に治療しても、一定の確率で糸球体腎炎は発症してしまうということですね。この事実は医療従事者が患者や保護者に説明する際の重要なポイントとなります。
ただし抗菌薬治療には意義があります。溶連菌の除菌により他者への感染拡大を防ぎ、リウマチ熱という別の重篤な合併症を予防できるからです。腎炎予防はできなくても、全体的な感染症管理としては必須の対応です。 tsudashonika(https://tsudashonika.com/disease-cat/post-streptococcal-acute-glomerulonephritis/)
近年報告が増えているのが、成人における皮膚感染後の糸球体腎炎です。小児では咽頭炎後が主流なのに対し、成人では皮膚の感染巣をきっかけとする症例が目立つようになっています。 ubie(https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/mli4gtilppi)
この背景には、成人の糖尿病患者や免疫抑制状態の患者における皮膚感染のリスク増加があると考えられます。足の白癬や褥瘡からの二次感染など、慢性的な皮膚病変が存在する成人では、溶連菌やブドウ球菌による皮膚感染が持続しやすいのです。
また感染性心内膜炎に伴う糸球体腎炎も成人例で重要です。心臓弁に細菌が付着して持続的に菌血症を起こす状態では、免疫複合体が継続的に形成され、腎障害が進行します。 msdmanuals(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/multimedia/table/%E7%B3%B8%E7%90%83%E4%BD%93%E8%85%8E%E7%82%8E%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0)
成人の糸球体腎炎では、小児と比べて慢性化や腎機能低下のリスクが高い傾向があります。そのため成人患者では、より慎重な経過観察と、必要に応じた腎生検による確定診断が求められます。 hosp.hyo-med.ac(https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/182)
看護roo!の糸球体腎炎解説ページでは、原因菌や病態メカニズムについて図解付きで詳しく説明されており、患者教育資料としても活用できます。
慶應義塾大学病院KOMPASの糸球体腎炎ページには、検査方法や治療法の詳細、腎生検の実際について医療従事者向けの情報が網羅されています。