UGT1A1*6/*28ホモ型でも通常量を投与すると重篤な好中球減少が約44%に出現します。
FOLFIRI療法は、3種類の薬剤を組み合わせた大腸がん(結腸・直腸がん)の標準的な化学療法レジメンです。 各薬剤の頭文字を組み合わせた名称で、FOL=フォリン酸(レボホリナート)、F=フルオロウラシル(5-FU)、IRI=イリノテカン(CPT-11)を意味します。 towayakuhin.co(https://www.towayakuhin.co.jp/oncology/regimen/folfilibev_basic.php)
投与スケジュールは14日(2週間)を1コースとする繰り返し投与です。 具体的な手順は以下の通りです。 oita.hosp.go(https://oita.hosp.go.jp/section/files/402_yakuzaibu/regimen/C_daicho/C_05_1.pdf)
| 投与薬剤 | 投与量(標準) | 投与方法 | 投与時間 |
|---|---|---|---|
| イリノテカン(CPT-11) | 150mg/m² | 点滴静注 | 90分(初回) |
| レボホリナート(l-LV) | 200mg/m² | 点滴静注 | 120分 |
| フルオロウラシル(急速) | 400mg/m² | 急速静注 | 全開(数分) |
| フルオロウラシル(持続) | 2400mg/m² | 持続静注 | 46時間 |
46時間持続静注が必要なことは現場での大きなポイントです。 持続静注のためポータブルポンプ(ディスポーザブルタイプ)が必要で、患者は通常、翌日以降に退院または外来で管理されます。これが外来化学療法として運用できる設計になっているということですね。 sasayama.hyo-med.ac(https://www.sasayama.hyo-med.ac.jp/service/support/chemist/pharmacy/regimen/pdf/colon/FOLFIRI+Bev.pdf)
初回のベバシズマブ(Bev)を併用する場合、初回は90分投与で忍容性が確認されれば2回目60分、3回目以降30分まで短縮可能です。 この短縮ルールを把握しておくことで、患者の外来滞在時間を大幅に減らせます。これは使えそうです。 shinmatsudo-hospital(https://www.shinmatsudo-hospital.jp/wp-content/uploads/BevFOLFIRI.pdf)
イリノテカンの活性代謝物SN-38の代謝に関わるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)に遺伝子多型が存在し、これが重篤副作用の発現リスクを大きく左右します。 多型の種類はUGT1A1*6とUGT1A1*28の2種類で、日本人に比較的多い*6も重要な評価対象です。 gi-cancer(https://gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_35.htm)
遺伝子型別のリスク分類が原則です。
- 野生型(*1/*1):イリノテカン150〜180mg/m²で開始可能 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-20590546/20590546seika.pdf)
- ホモまたは複合ヘテロ(*6/*6、*28/*28、*6/*28):重篤な好中球減少リスクが高く、開始用量を100mg/m²に減量することが推奨 tokushima-u.ac(https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/2/6/5/6/9/4/_/222407.pdf)
UGT1A1*28アレルを持たない症例ではGrade3/4の好中球減少が44%に発現するという報告もあります。 つまりUGT1A1検査を省略して通常量投与することは大きなリスクです。治療導入前の遺伝子検査を行うことが重要な条件です。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-20590546/20590546seika.pdf)
UGT1A1遺伝子検査は保険適用となっており(イリノテカン塩酸塩水和物を投与予定の患者が対象)、外来でも実施可能です。 「どうせ大丈夫だろう」という判断で省略すると、患者に重篤な骨髄抑制を招くリスクが残ります。また、CYP3A4に影響するサプリメントや薬剤との相互作用にも注意が必要です。 ds.cc.yamaguchi-u.ac(https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/hokenyakkyoku/regimenn_yakkyoku/FOLFIRI.pdf)
FOLFIRI療法で特に注意すべき副作用は、下痢と好中球減少の2つです。 この2つを適切にマネジメントできるかどうかが、レジメン継続の鍵を握ります。 nakagami.or(https://www.nakagami.or.jp/data/kankeisya/regimen/004_colorectal/0069.pdf)
下痢は発現パターンによって対応が異なります。 ds.cc.yamaguchi-u.ac(https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/hokenyakkyoku/regimenn_yakkyoku/FOLFIRI.pdf)
- 早発型下痢:投与中〜投与後24時間以内に発現。迷走神経刺激によるコリン作動性の症状であり、抗コリン薬(硫酸アトロピンなど)で対処します。
- 遅発型下痢:投与24時間以降に発現。SN-38による腸管粘膜傷害が原因で、ロペラミドを用いて管理します。Grade2以上の水様性下痢ではロペラミドの服用が推奨されています。 aomorih.johas.go(https://www.aomorih.johas.go.jp/section/cancer_sinryo_center/image/syokaki_syojujyou.pdf)
骨髄抑制(好中球減少)については、「点滴投与から1〜2週間後に出現しやすく、その後1週間程度で回復する」というパターンが基本です。 Grade3以上の好中球減少が出現した場合は休薬し、Grade2以下まで回復を待ってから次コースの投与を検討します。 shimizuhospital(https://www.shimizuhospital.com/dist/wp-content/uploads/2022/11/cb594eebd114d800f96ab016acbd24e2.pdf)
遅発型下痢による脱水は深刻になりやすいですね。患者には水分補給(スポーツドリンクなど)の重要性を指導し、下痢時には食物繊維・脂肪分の多い食べ物・刺激物を避けるよう説明することが欠かせません。 ds.cc.yamaguchi-u.ac(https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/hokenyakkyoku/regimenn_yakkyoku/FOLFIRI.pdf)
参考:FOLFIRI療法時の副作用管理(遅発性下痢のロペラミド使用を含む詳細な解説)
がん化学療法による有害事象とその対策〜消化器症状について(青森産業保健総合支援センター)
FOLFIRI療法は単独でも使用されますが、臨床現場では分子標的薬との併用が多く選択されます。 主な組み合わせは2種類です。 gi-cancer(https://gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_35.htm)
- FOLFIRI+ベバシズマブ(Bev):VEGF阻害薬。RAS変異・野生型を問わず使用可能。Grade3以上の好中球減少がFOLFOX+BV群に比べて有意に多い(45% vs. 35%)ことが示されており、骨髄抑制マネジメントが重要です。 gi-cancer(https://gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_35.htm)
- FOLFIRI+セツキシマブ(Cetuximab)/パニツムマブ:EGFR阻害薬。RAS野生型のみ適応。皮膚障害のマネジメントが必要になります。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21591725/21591725seika.pdf)
RAS遺伝子検査の結果によって選択できる分子標的薬が変わります。つまり遺伝子検査なしでは最適な組み合わせを選べないということですね。
CPT-11の投与継続期間中央値はFOLFIRI+BVで8.5ヵ月という報告があり、副作用マネジメントを適切に行えばQOLを維持しながら長期継続が可能です。 これは患者にとって大きなメリットです。病勢のコントロールを保ちながら治療を継続するには、血液検査を定期的にモニタリングし、早期に用量調整を判断する体制を整えることが条件です。 gi-cancer(https://gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_35.htm)
参考:FOLFIRI±Bev療法の適応・投与スケジュール・副作用ポイントを医療関係者向けに詳しく解説
FOLFIRI+Bevacizumab レジメン解説(消化器癌治療の広場)
減量・休薬の判断基準は施設ごとに微妙に異なることがありますが、一般的な目安として把握しておくべき内容があります。 基本は「重篤な有害事象が出たら休薬→回復後に次コース開始、かつ以降のコースで減量」という流れです。 shimizuhospital(https://www.shimizuhospital.com/dist/wp-content/uploads/2022/11/cb594eebd114d800f96ab016acbd24e2.pdf)
好中球数3,000/mm³未満では次コースを延期するレジメンも多く、2,000/mm³を割り込む状態が続く場合はイリノテカンの減量を検討します。 フルオロウラシルの急速静注部分を休薬するだけで毒性が軽減するケースもあります。 shinmatsudo-hospital(https://www.shinmatsudo-hospital.jp/wp-content/uploads/BevFOLFIRI.pdf)
見落とされやすいのが「薬剤・サプリメントの相互作用」です。 イリノテカンはCYP3A4で代謝されるため、セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ含有のサプリメント)や抗てんかん薬(カルバマゼピンなど)との併用で血中濃度が変動します。これは見落とすと副作用が一気に増強するリスクがあります。 ds.cc.yamaguchi-u.ac(https://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yakuzai/hokenyakkyoku/regimenn_yakkyoku/FOLFIRI.pdf)
患者がOTC製品を含むサプリメントを服用していないか、治療開始前に必ず確認することが欠かせません。確認の際は、「健康食品・サプリメント全般」を対象にした問診票の活用が実務的に効率的です。
また、間質性肺炎の発現はまれですが、見逃すと重篤化します。 咳・息切れ・発熱などの呼吸器症状が出た際は、ただの感冒と判断せず迅速な精査が必要です。これが原則です。 nakagami.or(https://www.nakagami.or.jp/data/kankeisya/regimen/004_colorectal/0069.pdf)
参考:国立がん研究センター中央病院が公開するFOLFIRI療法の手引き(患者・医療者向けの詳細な副作用説明資料)
FOLFIRI療法の手引き(国立がん研究センター中央病院)