制吐療法ガイドライン最新版の推奨治療と評価方法

がん化学療法における制吐療法ガイドライン2023年版の改訂内容と、催吐性リスク別の適切な制吐薬選択について解説します。高度リスクから最小度リスクまで、どのように制吐療法を組み立てるべきでしょうか?

制吐療法ガイドライン推奨治療

軽度リスクでもデキサメタゾン単剤ではカバーできません。


この記事の3ポイント
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2023年改訂版の特徴

日本癌治療学会が8年ぶりに全面改訂したガイドラインで、催吐性リスク別の最新制吐療法を提示

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4剤併用療法の標準化

高度催吐性リスクに対して5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、オランザピンの4剤併用が推奨

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リスク評価の重要性

抗がん薬の催吐性リスクを高度・中等度・軽度・最小度の4段階で評価し、適切な制吐療法を選択


制吐療法ガイドライン2023年版の改訂ポイント

日本癌治療学会が2023年10月に発行した『制吐薬適正使用ガイドライン第3版』は、2015年版から8年ぶりの全面改訂となりました。本ガイドラインは、がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐を適切に評価し抑制することで、がん患者のQOL改善と治療完遂を目指すものです。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


改訂の最大の特徴は、Minds2017(医療情報サービス)に準拠した作成手法の採用です。各章の総論やクリニカルクエスチョン(CQ)を充実させ、非薬物療法による制吐療法、患者サポート、医療経済などについても新たに解説を追加しています。これは本邦のエビデンスレベルの高い試験結果を積極的に採用したためです。 store.isho(https://store.isho.jp/search/detail/productId/2306303360)


第I章にはアルゴリズムと用法・用量を図式化したダイアグラムが明記され、第II章には各種抗がん薬の催吐性リスク分類が掲載されています。つまり実臨床ですぐに参照できる構成ですね。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/57666)


日本癌治療学会の制吐療法ガイドライン公式ページでは、ダイアグラムやアルゴリズムの詳細が確認できます。


制吐療法の催吐性リスク評価と分類

がん薬物療法により誘発される悪心・嘔吐の発現頻度は、使用する抗がん薬の催吐性によって規定されます。ガイドラインでは、制吐薬の予防的投与がない状態で抗がん薬投与後24時間以内に発現する嘔吐の割合に従って、以下の4段階に分類しています。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


催吐性リスクの分類基準は次の通りです。高度催吐性リスクは嘔吐発現率90%以上、中等度催吐性リスクは30~90%、軽度催吐性リスクは10~30%、最小度催吐性リスクは10%未満と定義されています。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


このリスク評価に基づき、過不足ない適切な制吐療法を選択することが制吐療法の基本です。リスク評価が正確なら効果的です。 eiyounet.nestlehealthscience(https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/antiemetic)


制吐療法の高度催吐性リスクに対する標準治療

高度催吐性リスク抗がん薬に対する標準制吐療法は、4剤併用が推奨されています。具体的には、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、オランザピンの併用です。 towayakuhin.co(https://www.towayakuhin.co.jp/oncology/assets/attachmentfile/attachmentfile-file-57.pdf)


この4剤併用療法は、NCCNガイドライン2017、ASCOガイドライン2017で標準制吐療法として記載されました。日本では以前はアプレピタント、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用が標準でしたが、海外ではすでにオランザピンを加えた4剤併用が採用されていました。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15104/J01461.2022030337)


オランザピンの追加・併用については、ガイドライン改訂版でもアルゴリズムにオプションとして記載され、3剤併用療法に対しては限られたエビデンスではあるものの有用であると考えられ「弱く推奨する」となっています。オランザピンは原則としてコルチコステロイド、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬等と併用して使用します。4剤併用なら嘔吐完全抑制率が向上しますね。 nichiiko.co(https://www.nichiiko.co.jp/medicine/oncology-contents/basic-antiemetic-therapy.php)


日本血液学会の制吐薬としてのオランザピン使用上の注意点資料には、併用する際の具体的な投与方法が記載されています。


制吐療法の中等度催吐性リスクに対する推奨

中等度催吐性リスク抗がん薬による急性期の悪心・嘔吐に対しては、5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用することが推奨されています。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


ただし、催吐性が高いカルボプラチン(AUC≧4)においてはNK1受容体拮抗薬を加えた3剤を併用することが推奨されます。この推奨は合意率100%(24/24名)で承認されたステートメントです。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


カルボプラチンは中等度リスクに分類されますが、投与量(AUC)が4以上になると催吐性が高まるため、高度リスクに準じた対応が必要になります。3剤併用が原則ですね。


制吐療法の軽度・最小度催吐性リスクへの対応

軽度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法は、前版ではデキサメタゾン単剤投与が推奨されていました。しかし実臨床ではデキサメタゾン、5-HT3受容体拮抗薬が広く投与されていることから、2023年版のダイアグラムでは2剤が掲載されています。 nichiiko.co(https://www.nichiiko.co.jp/medicine/oncology-contents/basic-antiemetic-therapy.php)


最小度催吐性リスクについては、通常、予防的な制吐療法は推奨されません。ただし突出性悪心・嘔吐が出現した場合には、メトクロプラミドプロクロルペラジンなどの投与を検討します。 teishinkai(https://www.teishinkai.jp/thp/data/media/sapporo_teishinkai/page/departments/pharmaceutical/yakuyakurenkei_202312.pdf)


実臨床と推奨の乖離を埋めるため、ガイドラインは柔軟に対応しています。個々の症例に応じた調整が望まれますね。


制吐療法で使用する基本的な制吐薬の種類と特性

がん薬物療法で使用する基本的な制吐薬には、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、オランザピンの4剤があり、これらを催吐性リスクによって使い分けます。 jsco-cpg(http://www.jsco-cpg.jp/antiemetic-therapy/guideline/)


5-HT3受容体拮抗薬は急性期・遅発期の悪心嘔吐に効果的で、第1世代と第2世代に分類されます。NK1受容体拮抗薬は嘔吐中枢のNK1受容体を抑えることで制吐効果を発揮し、高度催吐性リスクの抗がん薬治療への制吐療法として推奨されています。遅発期の悪心嘔吐に特に有効で、制吐効果の向上に大きく貢献します。 med.zenhp.co(https://med.zenhp.co.jp/seitozainoshuruiwakenojissenshishin.html)


デキサメタゾンはすべての催吐性リスクで基本薬として使用され、オランザピンは高度リスクで追加されます。4剤を適切に組み合わせることが重要です。


制吐療法における悪心・嘔吐が2剤併用で制御できない場合の対応

改訂されたガイドラインでも、悪心・嘔吐が2剤併用療法で制御できない場合は、3剤併用療法を検討するとされています。 nichiiko.co(https://www.nichiiko.co.jp/medicine/oncology-contents/basic-antiemetic-therapy.php)


制御不良例に対しては、まず投与されている制吐薬の種類と用量を確認し、ガイドラインに沿った適切な組み合わせになっているかを評価します。その上で、NK1受容体拮抗薬の追加やオランザピンの併用を検討することになります。


制吐療法の効果評価は主に患者さんの自己申告による評価法になりますが、その定義を確立するところから始めている状況です。効果判定の標準化が今後の課題ですね。 scchr(https://www.scchr.jp/press/%E6%8A%97%E3%81%8C%E3%82%93%E5%89%A4%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%82%AA%E5%BF%83%E3%83%BB%E5%98%94%E5%90%90%E3%81%AE%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E5%88%B6%E5%90%90%E7%99%82%E6%B3%95.html)


制吐療法ガイドラインにおける予期性悪心嘔吐への対処

予期性悪心嘔吐は、過去の化学療法で強い悪心・嘔吐を経験した患者が、次回の治療前から不安や恐怖によって悪心・嘔吐を感じる現象です。 teishinkai(https://www.teishinkai.jp/thp/data/media/sapporo_teishinkai/page/departments/pharmaceutical/yakuyakurenkei_202312.pdf)


予期性悪心嘔吐に対しては、薬物療法よりも心理的介入が重要となります。患者さんとの十分なコミュニケーション、リラクゼーション法、認知行動療法などの非薬物療法が有効です。ガイドライン第3版では非薬物療法のエビデンスに基づいた推奨も新たに追加されています。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/57666)


初回の化学療法から適切な制吐療法を行い、悪心・嘔吐をしっかりコントロールすることが、予期性悪心嘔吐の予防につながります。初回が肝心ですね。


制吐療法における医療経済的評価と患者サポート

ガイドライン第3版では、医療経済的評価についても新たにクエスチョンや解説が追加されました。制吐療法は支持療法の一つですが、高額な制吐薬を使用する場合も多く、費用対効果の検証が求められています。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/docs/events/minds-events/27th/02_27th_ppt.pdf)


患者委員が参加してガイドラインが作成されたことも第3版の特徴です。患者と医療従事者の意思決定支援に必要な情報提供を目指し、患者サポートに関する記載も充実しています。 store.isho(https://store.isho.jp/search/detail/productId/2306303360)


制吐療法の選択においては、催吐性リスクに応じた適切な制吐療法の適応を判断するとともに、患者の経済的負担も考慮する必要があります。患者視点の情報提供が不可欠です。


制吐療法の効果評価方法と治療完遂への貢献

制吐療法の目的は、がん薬物療法に伴う悪心・嘔吐を適切に評価および制御し、治療効果を上げ、最終的には患者さんの予後改善を図ることです。 eiyounet.nestlehealthscience(https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/antiemetic)


日常診療で求められる制吐療法の効果の評価法については、ガイドライン第3版で新たに記載されました。評価指標としては嘔吐完全抑制率(CR: Complete Response)が一般的に用いられ、悪心・嘔吐がまったくなく、かつ救済治療が不要な状態を指します。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/docs/events/minds-events/27th/02_27th_ppt.pdf)


適切な制吐療法により悪心・嘔吐が制御されると、患者のQOLが保たれ、化学療法を予定通り完遂できる可能性が高まります。治療完遂は予後改善に直結しますね。


制吐療法ガイドラインの海外版との違いと日本独自の必要性

もともと日本での制吐療法は、NCCNやASCOなど海外の学会によるガイドラインに準じて行われてきました。しかし制吐薬の承認状況や種類、投与量、エビデンスレベルなどが国内と海外では異なることから、日本独自のガイドラインの必要性が高まり、日本癌治療学会による『制吐薬適正使用ガイドライン』の誕生に至りました。 eiyounet.nestlehealthscience(https://www.eiyounet.nestlehealthscience.jp/archives/antiemetic)


海外ガイドラインでは標準とされている薬剤や用量が、日本では未承認または承認用量が異なる場合があります。また、日本人と欧米人では体格や薬物代謝に差があるため、同じ投与量でも効果や副作用の程度が異なる可能性があります。


日本のガイドラインは本邦のエビデンスレベルの高い試験結果を採用し、実臨床に即した推奨を提示しています。日本独自のエビデンスが重要です。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/docs/events/minds-events/27th/02_27th_ppt.pdf)


制吐療法における突出性悪心嘔吐の管理戦略

突出性悪心嘔吐は、予防的制吐療法を行っていても出現する悪心・嘔吐を指します。この場合、メトクロプラミド、プロクロルペラジンなどの救済治療薬を使用します。 teishinkai(https://www.teishinkai.jp/thp/data/media/sapporo_teishinkai/page/departments/pharmaceutical/yakuyakurenkei_202312.pdf)


突出性悪心嘔吐が頻繁に出現する場合は、予防的制吐療法が不十分である可能性を考え、ガイドラインに沿った適切な制吐薬の組み合わせに変更することを検討します。例えば、2剤併用で制御不良なら3剤併用への変更、NK1受容体拮抗薬の追加などを検討します。


救済治療薬の選択にあたっては、予防的に使用している制吐薬とは異なる作用機序の薬剤を選ぶことが原則です。作用機序を変えることで効果が期待できますね。


制吐療法の遅発期悪心嘔吐に対する対策

遅発期悪心嘔吐は、抗がん薬投与後24時間以降に出現する悪心・嘔吐です。高度催吐性リスクや中等度催吐性リスクの抗がん薬では、遅発期の悪心・嘔吐が問題となることが多くあります。


NK1受容体拮抗薬は遅発期の悪心嘔吐に特に有効です。アプレピタントなどのNK1受容体拮抗薬は、投与初日だけでなく2日目、3日目も継続して服用することで、遅発期の悪心・嘔吐を効果的に予防します。 med.zenhp.co(https://med.zenhp.co.jp/seitozainoshuruiwakenojissenshishin.html)


デキサメタゾンも遅発期の制吐に重要な役割を果たします。投与スケジュールに従って2日目以降も服用を続けることが、遅発期悪心嘔吐の予防につながります。継続服用が鍵です。